患者が求める緩和ケア

「薬学がんプロフェッショナル研修会」
2015.06.14
外来化学療法の経験と
患者が求めるサポート
イデアフォー世話人 中澤幾子
イデアフォー
1989年、乳がんを乳房温存療法で治療した患者たちが立ち
上げた会。
 代表をおかず、複数の世話人による合議制で運営。

活動目的
●インフォームド・コンセントの推進とイン
フォームド・チョイスへのサポート
●医療全般に対する患者視点の情報収
集と提言
●乳がんの治療法に関する情報の収集と
提供
イデアフォーの活動
<情報提供>
●講演会、セミナー、勉強会の開催と、講演録発行。
●乳がん治療に関する病院、患者へのアンケート調査実施
と冊子発行。
●『乳ガン・乳房温存療法の体験』『わたしが決める乳がん
治療』『乳がん あなたの答えがみつかる本』『再発後を生
きる』等、乳がんに関する本の編集、出版。
●臨床試験ワークショップの開催(1998年、2000年)と『患者
が学ぶ臨床試験』の編集、出版。
●ワークショップ「医学論文を読もう!」開催、報告書発行。
乳がん治療に関する論文を和訳したものを題材とし、評価・議論して
自分がその治療法を選択するかを考える。
→2015年7月5日開催:テーマ「乳がんのホルモン療法」
イデアフォーの活動
<患者・会員へのサポート>
●無料電話相談
●おしゃべりサロン (毎月1回)
●再発おしゃべりサロン (隔月1回)
●「仲間の相談」 (男女共同参画センター横浜北主催)
で世話人が進行役(年4回)
●会員交流 (新入会員の集い、会員おしゃべりサロン等)
●会員専用メーリングリスト
乳がん患者としての体験
1993年7月:総合病院外科で乳がんと診断される。
触診のみで、「乳房を残すという方法もあるが、
あなたの場合は腫瘍が大きいので全摘」と
言われる。検査結果が分かる1週間後を予約。
怒り!
↓↓↓
乳房温存療法の情報を探すものの、
当時の温存率は23%、情報がほとんどなかった。
→偶然、雑誌でイデアフォーを知る。
乳がん患者としての体験
★電話で教えてもらったイデアフォー編の体験記『乳がん・
乳房温存療法の体験』を繰り返し読む。
→これから自分が受ける治療について知ることで、
怖くなくなるのを実感。
1993年7月:温存療法で治療が可能なら受けたいと思い、
体験記にあった慶応大学放射線科医師の外来
に行く(予約・紹介状なしでもOKと本を読んで理解した)。
→エコー等の検査の結果、十分温存可能と診断され、
手術を担当する外科医のもとへ。
手術の切り方、放射線、抗がん剤治療について
効果・副作用・後遺症も含めて詳しい説明を受ける。
乳がん患者としての体験
1993年8月:調布の病院で乳房温存手術を受ける。
抗がん剤治療(CMF)も同時に開始。
1週間後に1クール目後半実施。
↓
吐き気も倦怠感もなく、副作用を何も感じないため、
他の患者から
「栄養剤だったんじゃないの」と言われる。
→手術の翌々日から、放射線治療のために
慶応病院へ週5日(月~金)通い始める。
乳がん患者としての体験
CMF療法とは
釈迦に説法で恐縮ですが…
無病5年生存率75%
当時乳がんの術後補助療法として欧米では標準治療とされていた。
一方、日本では多くの病院で単剤の経口薬UFTが使われ、CMFを
実施している病院は限られていた。
※多剤併用の点滴による抗がん剤治療は、正しく実施できない医師も
多々いるので、安易に出せる単剤の経口薬が普及しているという現実
があったが、UFTには乳がんに関するEBMがなかった。
このことから、UFTの治療効果がCMFと同等であることを証明するた
めの「N・SAS-BC01」という臨床試験が実施(1996年~2001年)された。
乳がん患者としての体験
CMF療法―続き
C : シクロフォスファミド
M : メトトレキサート
F : フルオロウラシル
1クール=半量点滴→1週間休み→半量点滴→3週間休み
標準: 6クール実施
(それ以下だと効果が下がり、12クールでは命の危険があるとされる)
※イデアフォーの医師へのアンケート調査(2004年・2010年)から
2000年以降より強力な組み合わせの抗がん剤へとシフトして、
CMFはほとんど使われなくなっている。
ザンクト・ガレン会議で「too old, but enough」と評価された。
乳がん患者としての体験
1993年9月:CMF治療2クール目開始。
私の吐き気対策:事前に十分な水分を採り、
吐き気を催す前に家に帰りつくように急ぐ。
↓
夜中吐き気で目覚める。
その後1時間ごとに吐く。「トイレで寝ようか」
9回吐き続け、「もう胃しか出すものはない!」
→それから1週間、匂いに過敏になる。特に夕方以降の
電車内のアルコール臭に嫌悪感を催し、絶望的になる。
吐きながら放射線治療に通う。
乳がん患者としての体験
1993年9月:CMF治療2クール目後半実施。
→1週間辛い思いをして、ようやく楽になったのに、またか、と
いう気持ちで臨んだ抗がん剤治療。本気でいやだと思い、
ぐったりしている人たちの気持ちが初めてわかった。
抗がん剤=細胞毒であることを実感。
粘膜が再生を阻止され、徐々にボディブローのようにきいて
きて、いかに丈夫な胃を誇る身体であっても負けてしまう。
↓
副作用はおよそ1週間で回復したが、
可能性として説明されていた後遺症(閉経)は一生モン。
乳がんの薬物療法
<術後補助療法>
ホルモン療法
●従来TAMを5年飲み続けることで再発防止効果があるとさ
れていたが、AIにスイッチしてさらに5年延長、都合10年
継続がより効果的と言われている。
●閉経前の患者にはLH-RHアゴニストが使われるケースが
多い。
↓
この時点で言われる副作用
ホットフラッシュ、不定愁訴等の更年期症状
→主治医はあまり取り合ってくれないケースが多い。
乳がんの薬物療法
抗がん剤治療
●様々な組み合わせによる治療がされているが、常により強
力な薬剤が選ばれる傾向にある。
●リスク分類が細分化され、効果の予測がある程度できること
から、初回治療での保険適用が認可された分子標的薬を
使うケースも増加している。
↓
この時点で言われる副作用
脱毛。吐き気止め、白血球増加等の薬剤使用により、
以前のように吐き気を訴える患者は減っている。
→現在使われる抗がん剤の多くで、初期の段階に
ほとんどの髪が抜けてしまう。
乳がんの薬物療法
<再発治療>
再発おしゃべりサロンから
●再発患者からの「再発治療の情報交換の場がほしい」と
いう要望に応え、1998年6月から開催。
●薬物療法を受けるのは、がんの根治を目指すのではな
く、日常生活を支障なく続けるためであるとし、副作用等
でしんどくなったら休薬するなど、上手に薬物療法を受
けている人が多い。
乳がんの薬物療法
<再発治療>
再発患者にとって
薬は「希望」
1年生き延びれば、
また新たな薬や治療法が開発されている
かもしれない。
ある患者の言葉
「多くの医療者は、再発したら治療はもう
ないと思っているけど、そうじゃない。
ひとつひとつの症状が取れるとわかる
だけでも、患者は安心できる。
死ぬ前日まで私は生きているのだか
ら、もっと再発後の研究をしてほしい」。
医療費問題
例:1年に1,000万円かかる承認薬を使用
↓
3割負担として300万円が自己負担だが、
高額医療費が適用されるので、
本人負担は100万円程度、
しかし、国保からは900万円支出となる。
患者にとっても国保にとっても負担は重い。
がん治療薬は高い!
再発患者の治療はゴールが見えない。
ジェネリック医薬品への疑問
●ジェネリックって、本当にオリジナルと同じ?
●抗がん剤のジェネリックは本当に信じていいのか?
●ホルモン剤のジェネリックはかなり普及している?
●どのくらいの期間使用した結果があり、効果の比較はな
されているのか?
●本当に安心ならば、医師の処方にもっとあってもいいの
ではないか。
●薬剤師の判断はありなのか?
西洋医学だけではなく、漢方の情報も
●がん研有明に漢方サポート科開設
治療の対象:西洋医学的治療がうまくいかない、がん患者
の全身症状、がんに伴う様々な苦痛、副作用や
後遺症(同科部長星野恵津夫氏の講演を10月31日に開催)
●患者同士の情報交換でも、漢方薬による副作用症状軽減
の話はよく出る。
●がん患者のことがわかる漢方科のある病院情報がない。
●薬剤師に聞けば最寄りの漢方科を教えてもらえると、患者
は多いに助かる。
患者が求めるサポートとは
●日常生活を続ける希望につながる薬の開発
●その薬が保険適用になって、誰もが使えるものとなる
(国保が破たんしそうなことは無視して)
●使用している薬の副作用軽減の情報
(西洋医学、東洋医学を問わず)
●主治医以外の、薬に関する相談ができる専門家がいて、
主治医を通さず、いつでも相談できるシステム
ご静聴ありがとうございました。