16.ネフローゼ症候群 15 市川 39 酒井 63 中井 87 本出 ネフローゼ症候群 • 腎糸球体、特に糸球体基底膜に起こる疾患 • 単一疾患ではなく症候群 • 種々の病気によって起こる 1)蛋白尿 2)低アルブミン血症 3)浮腫 4)高脂血症 ネフローゼ症候群 分類 一次性(腎臓が主因) • • • • 微小変化群 膜性腎症 膜性増殖性腎炎 巣状糸球体硬化症 ネフローゼ症候群 分類 • 二次性(腎臓以外の全身性疾患に由来) 1)代謝性疾患 糖尿病、アミロイド症、粘液水腫、妊娠中毒症 2)全身性疾患 SLE、紫斑病etc. ネフローゼ症候群 病態生理 1) 蛋白尿 charge-barrier 通常、糸球体毛細血管壁は陰性荷電 →アルブミンは陰性荷電 →ろ過されない charge-barrier障害 →尿中アルブミン増加 →蛋白尿 ネフローゼ症候群 病態生理 2) 低アルブミン血症 アルブミンの尿中への喪失増加 肝臓での代謝性アルブミン合成亢進不十分 ネフローゼ症候群 病態生理 3)浮腫 蛋白尿 →低蛋白血症 →血漿膠質浸透圧低下 →血管内から間質へ体液移動 →浮腫 →レニン・アンギオテンシン系活性化 →水ナトリウム排泄低下 →循環血漿量、細胞外液量増加 →浮腫の増量 ネフローゼ症候群 病態生理 4)高脂血症 ネフローゼ症候群 病態生理 5)凝固。線溶系の異常 血栓症 6)免疫異常 • 尿中への蛋白漏出;血清免疫グロブリンの低 下 4)高脂血症 1)蛋白尿 2)低アルブミン血症 3)浮腫 ネフローゼ症候群 診断 1蛋白尿3.5mg/day以上を維持する 2低蛋白血症 血清総蛋白<6.0g/dl または血清アルブミン<3.0g・dl 3高脂血症 血清コレステロール>250mg/dl 4浮腫 ①経口ステロイド療法 プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) 合成副腎皮質ホルモン製剤 コルチゾールの4倍の作用 抗炎症作用(白血球類からのサイトカイン産生 抑制) 免疫抑制作用(液性抗体の産生抑制) 病的な白血球破壊 プレドニンの構造式 プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) 薬物動態 • 1~2時間で血中濃度ピーク • 肝臓で速やかに分解される • 24時間後には血中から完全に消失 プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) 用法・容量 • 通常は経口投与 • 最初に大量を投与し、効果が出てきたら、投与 量を漸減し、維持量投与に移る • 1日1回早朝に投与、または早朝から夜にかけて 投与量を減らしていく (∵血中ステロイド濃度は、日内変動があり、早朝 に高く午後から低下し、夜中に最低のレベルとな る。) プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) 副作用 • • • • • • 成長障害 骨粗しょう症 緑内障や白内障 Cushing 症候群(ムーンフェイスetc.) 免疫力の低下 体毛が濃くなる プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) 投与する際の注意 長期間にわたって投与 →Negative Feedbackによる副腎抑制 →急に投与中止 →急性副腎不全になる (徐々に投与量を減らしていくことが重要) プレドニン(5mg) (一般名 ブレドニゾロン) 禁忌 • 有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌 症の患者 • 結核性疾患の患者 • 単純疱疹性角膜炎の患者 • 後嚢白内障の患者。 • 緑内障の患者 • 高血圧症の患者 ステロイド療法による骨粗鬆症 ボナロン(5mg) (アレンドロン酸ナトリウム水和物) ・ビスホスホネート製剤 ・ステロイド治療の副作用の骨粗鬆症の治療薬 ・骨量を増やし、骨を折れにくくする ボナロンの構造式 ボナロンの構造 ボナロン(5mg) (アレンドロン酸ナトリウム水和物) 作用機序 ビスホスホネート構造を持ち骨に吸着される →破骨細胞が骨を溶かすときに、骨からはなれ、 破骨細胞のなかへ取り込まれる。 →破骨細胞の骨吸収を止める →骨量増加 ボナロン(5mg) (アレンドロン酸ナトリウム水和物) 用法・容量 • 成人にはアレンドロン酸として5mgを1日1回、 毎朝起床時に水約180mLとともに経口投与す る。 • 服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水 を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避ける ボナロン(5mg) (アレンドロン酸ナトリウム水和物) 薬物動態 • およそ50%は変化せずに腎臓から排出 • 残りは骨組織に強い親和性を持ち、骨の表 面に吸着 ボナロン(5mg) (アレンドロン酸ナトリウム水和物) 副作用 • • • • • 食道・口腔内障害 胃・十二指腸障害 肝機能障害、黄疸 低カルシウム血症 顎骨壊死・顎骨骨髄炎 ボナロン(5mg) (アレンドロン酸ナトリウム水和物) 禁忌 • 食道通過を遅延させる障害のある患者 • 30分以上上体を起こしていることや立ってい ることのできない患者 • 本剤の成分あるいは他のビスホスホネート系 薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者 • 低カルシウム血症の患者 ②尿たんぱくに対して 尿たんぱくに対する治療 ペルサンチン-Lカプセル(150mg) 2カプセル 朝夕食後 一般名:ジピリダモール(Dipyridamole) 化学構造式: [用法・用量] 成人にはジピリダモールとして1回150mgを一日二 回経口投与する。(年齢症状により適宜増減) 尿蛋白減少を目的とする場合には、投薬開始後4週 間を目標に投薬し、尿蛋白量の測定を行い、以降の 投薬継続の可否を検討する。減少が見られない場合 は投薬を中止するなどの適切な処置をとる。 ジピリダモール [効能・効果] ・慢性糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む)における尿蛋白 の減少 ・ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の 抑制 [作用] ・抗血小板作用 ・尿蛋白減少作用 ・血栓/塞栓抑制作用 ジピリダモール [作用機序] ・抗血小板作用 ①血管壁からのプロスタサイクリン (PGI2) の放出促進,作用増 強及び血小板のトロンボキサンA2 (TXA2) の合成抑制により, PGI2 とTXA2 のバランスを改善 ②血液中アデノシンの赤血球、血管壁への再取り込み抑制 ↓ 血液中アデノシン濃度上昇 ↓ 血小板のアデニル酸シクラーゼを活性化 ↓ 血小板内cAMP の合成を促進 ↓ 血小板凝集抑制 ジピリダモール ③血小板内cAMP ホスホジエステラーゼ(PDE)活性抑制 ↓ 血小板内のcAMP濃度上昇 ↓ 血小板凝集抑制 ジピリダモール ④cGMPホスホジエステラーゼ活性抑制 ↓ cGMP濃度上昇 ↓ 血小板凝集抑制 ・尿蛋白減少作用 抗血小板作用、糸球体係蹄壁の陰荷電減少抑制作用等 ↓ 尿蛋白減少(腎炎の発症や進展には、凝固・線溶系・血小板 が関与しているとの報告あり) ジピリダモール [副作用] ・狭心症状の悪化 ・出血傾向(眼底出血、消化管出血、脳出血など) ・血小板減少 ・過敏症(気管支痙攣、血管浮腫など) ・頭痛 ・発疹 ・悪心、嘔吐、嘔気、下痢、腹痛 ・頻脈、潮紅、動悸、血圧低下 ジピリダモール [禁忌] 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者に対 する投与 [併用禁忌] アデノシンとの併用 体内でのアデノシンの血球、血管内皮や各臓器での 取り込みを抑制し、血中アデノシン濃度を増大させる ことにより、アデノシンの作用を増強する。 これにより完全房室ブロックや心停止などが発現する ことがある。 [併用注意] キサンチン系製剤(テオフィリン、アミノフィリン) アデノシン三リン酸二ナトリウム 降圧剤 ③浮腫に対して 浮腫 edema =体の皮下組織や臓器の組 織間隙に水分が多量に貯 留した状態。皮下組織では むくみを呈する。水腫。 (大辞林による) 浮腫 edema 水 水 水 ネフローゼ症候群における浮腫の機序 ①underfill説 低蛋白血症により膠質浸透圧が低下、水が間質へ →有効循環血液量の低下 →代償機構によって二次性に腎Na再吸収が亢進 →代償不足により浮腫が生じる ②overflow説 一次的に腎臓でNa排泄障害が生じ、水、Na貯留 →循環血漿量が増加 →毛細血管静水圧が上昇、浮腫が生じる underfill overflow 浮腫を軽減する対症療法 1)安静臥床、四肢挙上 2)塩分、水分制限:3~4g/日以下の食塩制限 3)食事療法:総エネルギー35kcal/kg/日、蛋白0.8~ 1.1g/kg/日(日本腎臓学会による) 4)利尿薬 5)アルブミン製剤:著しい低アルブミン血症でショッ ク状態に陥る危険がある場合の みに限定 利尿薬の種類と作用部位 1) フルイトラン錠 一般名:トリクロルメチアジド サイアザイド(チアジド)系降圧利尿薬 【適応】 ・高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧 ・心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫 ・月経前緊張症 【用法・用量】 通常、成人はトリクロルメチアジドとして1日2~8mgを1~2回に分割 経口服用する。年齢、症状により適宜増減する。 ただし、高血圧症に用いる場合には少量から服用を開始して徐々 に増量すること。 悪性高血圧に用いる場合には、通常、他の降圧剤と併用すること。 【作用機序】 近位尿細管で尿細管腔内に分泌され、原尿中を輸送 ↓ 遠位尿細管でNa+-Cl-共輸送体を阻害し、Na+やCl-の再吸収を抑制 ↓ 水の再吸収の抑制(利尿作用) 【副作用】 ・だるさ、めまい、ふらつき、立ちくらみ ・低カリウム血症(だるさ、筋力低下、動悸、便秘) ・血糖値の上昇、糖尿病の悪化 ・尿酸値の上昇、痛風の悪化(発作誘発) ・発疹、光線過敏症 【重い副作用】 ・再生不良性貧血・・・(0.1%未満) 【禁忌】 ・ 急性腎不全(腎機能が悪化する) ・体液中にNa・Kの減少している者(電解質の悪化を 招く) ・チアジド系薬に過敏歴ある者 ・無尿(本剤の効果が期待できないため) 2)アルダクトンA 2)アルダクトンA 一般名:スピロノラクトン カリウム保持性利尿薬、抗アルドステロン薬 【適応】 ・高血圧症(本態性、腎性等)。 ・心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、 悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水、栄養失調性浮腫。 ・原発性アルドステロン症の診断および症状の改善。 【用法・用量】 通常、成人1日50~100mgを分割経口服用する。年齢、症状により適 宜増減する。 ただし、「原発性アルドステロン症の診断および症状の改善」のほか は他剤と併用することが多い。 【作用機序】 <アルドステロンの作用> 集合管において、Na+チャネル(ENaC:epithelial Na channel)を 増加させ、Na+の再吸収が増加(水の再吸収も増加) + Na+の増加に伴い、K+チャネルによるK+排泄が増加 アルドステロン受容体と結合し、アルドステロンの作用を阻害 【副作用】 ・乳房がふくらむ、乳首の腫れや痛み、生理不順、 性欲減退、多毛、声が低くなる ・だるさ、めまい、頭痛 ・吐き気、食欲不振 ・発疹、じん麻疹 【重い副作用】 ・高カリウム血症 ・急性腎不全 【禁忌】 ・ 過敏症の履歴がある。 ・ 急性腎不全 ・ 高カリウム血症 ・ 無尿 利尿薬のまとめ ・利尿薬の第一選択薬 =ループ利尿薬が多い(効果が強い) ↓が Henle係蹄上行脚でNaの再吸収が抑制されると、 下流の遠位尿細管で代償性の機能亢進 ↓ サイアザイド系やカリウム保持性利尿薬を併用で 効率が良くなる 今回はサイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド)と カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン)を併用 ④高脂血症に対して リピトール錠(10) 1錠 分1 夕食後 (アトルバスタチンカルシウム水和物) HMG-CoA還元酵素阻害薬 肝臓におけるコレステロールの合成に関与する酵 素の作用を阻害することで、コレステロールの産生 を抑える。 コレステロール生合成系の律速酵素であるHMGCoA還元酵素を選択的かつ競合的に阻害する。 リピトール(アトルバスタチン)の作用機序 肝臓でのコレステロール合成の律速酵素であるHMGCoA還元酵素を阻害 ↓ コレステロールの合成抑制 ↓ 肝臓内のコレステロール含量低下 ↓ LDL受容体の発現が誘導、肝細胞膜のLDL受容体が増加 ↓ コレステロール含有率の高いリポ蛋白LDLの取り込み↑ ↓ 血中コレステロール低下作用 リピトール錠 (アトルバスタチンカルシウム水和物) • スタチン系抗高脂血症薬 • HMG−CoA reductase 阻害 リピトール錠 (アトルバスタチンカルシウム水和物) 用法・用量 • 高コレステロール血症:通常、成人は1回1錠(ア トルバスタチンとして10mg)を1日1回服用します。 年齢・症状に応じて適宜増減され、重症の場合 は1日2錠(20mg)まで増量されます。 • 家族性高コレステロール血症:通常、成人は1回 1錠(アトルバスタチンとして10mg)を1日1回服用 します。年齢・症状に応じて適宜増減され、重症 の場合は1日4錠(40mg)まで増量されます。 リピトール錠 (アトルバスタチンカルシウム水和物) 副作用 • • • • • • • 横紋筋融解症, 血小板減少症, 紅皮症, 中毒性表皮壊死症, 糖尿病(高血糖), 皮膚粘膜眼症候群, ミオパシー(筋肉のけいれん)。 リピトール錠 (アトルバスタチンカルシウム水和物) 禁忌 • 本剤で過敏症を起こしたことがある人 • 肝機能が大きく低下している人 • 妊婦 ネフローゼ症候群の治療のまとめ ①ステロイド投与 →プレドニゾロン(+アレンドロン酸) ④アトルバスタチン ②ジピリダモール ③トリクロルメチアジド +スピロノラクトン
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