なぜ情報実験か?その2 最低限知識の確認と さらなる飛躍にむけて 北海道大学理学研究科 地球惑星科学専攻 林 祥介 [email protected] 2006年02月10日 目次 • 情報実験の目的の確認 • 情報科学的アプローチ – 知の爆発, V. Bush 1945 • 最低限確認: 技術知識編 – Internet の基本, セキュリティーの基本(パスワード) • 最低限確認: 利用者知識編 – 管理運営構造と自力更正 • 日本の大学の特殊性 – 貧弱な管理運用体制=利用者に対する高いモラルの要請 – 地球惑星での体制 • 近所の活動あれこれ – – – – 教育・研究資料公開, 講義・セミナー動画配信 大容量高速ネットワークを介したデータ転送 遠隔計算, 遠隔制御 … 情報実験の目的の確認 • Internet の文化的背景と技術の最低限を理解し, • 少なくとも,置かれている状況を慮ることを知る: – 他人に迷惑をかけてはならない – 自分のことは自分でやらなくてはならない • 願わくば – 相互扶助による運営へ協力ならびに貢献 – 地球惑星科学の情報化を真に進められる人材が育つこ とを期待する. (これが本当の野望) 情報科学的アプローチ • 本当にやって行かなければならないことは 知の爆発への対応 • そもそも V. Bush (1945) 人類にとっての真の挑戦は 原子をさらに細かく調べたり 生命の複雑さを探求したりすることではなく 科学技術が氾濫させる情報のよりよい管理方法を 発見することだ. → 計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと. 最低限確認 利用者的技術編 最低技術知識の確認 これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ • 計算機あれこれ – 基本 Unix (Linux), TCP/IP, X – 計算機のハードウェアの名前とイメージ メモリ,CPU,ハードディスク,バス,… – 計算機を動かしている基本ソフトウェア (OS) と それにまつわる基本単語 ブートする, シャットダウンする,…, 電源は切っていいとは限らない 最低技術知識の確認 これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ • ネットワーク基本単語 – TCP/IP – IP アドレス (IP address) • • • • ネットマスク(netmask) ネットワーク(network)アドレス ホスト(host)アドレス ブロードキャスト(broadcast) アドレス – ドメイン (domain) • ホストネーム(host name)・ドメインネーム (domain name) • DNS – ポート(port)・ピア(pier) • 空いてるポートは危険 • ウイルス/ワームの侵入口 最低限確認 利用者知識編 最低利用知識の確認 • パスワードと暗号化 – パスワード • パスワードは絶対である. ネットワーク計算機セキュリティーに対する 最初にして最後の砦 • 正しいパスワード. 『辞書』(あらゆる辞典)にのってそうな単語はダメ – 暗号化 • ネットワーク上では暗号化を施さなければまるみえ. SSH (secure shell) 計算機アカウントアクセス時 SSL (secure socket layer) WEB アクセス時 最低利用知識の確認 • セキュリティー – まずは自分をまもる • 自分のアカウントに侵入されない • 意図しないプライバシーの全世界への公開 • ウィルス防御・駆除ソフトの導入は必須 – それは, 他人(仲間/プロジェクト)をまもること • アカウントをとられると, 計算機内の他人/プロジェクト の資源が危険にさらされる. – それは, 世界(ネットワーク全体)をまもること • 踏台にされ, 知らない間に他の重要資源攻撃に荷担 させられる. 最低利用知識の確認 • ネットワーク常時接続→計算機は『危険物』 – 車と同じ • 運用操作技術の習得, 適切な日常点検, 適切な管理 – 車のような成熟した技術ではない → 知識の更 新が必要. • 整備不良, 管理不備により深刻な被害をもたらした場 合は刑事責任 • ネットワークの機器のログの確保提供義務 • 当局への提供においては個人情報の扱いに注意必 要 最低利用知識の確認 • 資源とその管理 – 何が何処の管理に属するか • 重層的なハードウェア, ソフトウェア環境 • 対応した重層的な管理組織 • 技術管理者・政策管理者・危機管理者 – 障害発生レベルと対応した管理組織の掌握 • 例: メールの配送 – ネットワークの管理運用者 – 計算機資源のハードウェアと OS レベルの環境の管理運用 者 – メールサーバーソフトウェアの管理運用者 – メールリストの管理運用者 最低利用知識の確認 • ネットワークの管理運用者 – SINET 国立情報学研究所 文部科学省の大学間接続を担うプロバイダ – 情報基盤センターHINES 北海道大学キャンパスネットワークのプロバイダ – 理学研究科営繕掛/理学研究科情報ネットワーク委員会 HINES 部局支線 = 理学研究科が配線管理 運用管理は HINES – 地球惑星科学専攻ネットワーク委員会 理学研究科の配線管理の実体 地球惑星専攻内のネットワーク接続の掌握, 管理, 運用 – 各々の研究室等 各研究室の情報環境 最低利用知識の確認 • 計算機資源の管理運用者 – 情報基盤センター(メディア教育) 学部学生用計算機資源 – 情報基盤センター(大型計算機システム) 院生・研究者用計算機資源 スーパーコンピュータ – 地球惑星科学専攻ネットワーク委員会 地球惑星科学構成員のための主要サーバ群 dns, www, mail, news, ftp, router, ... 最低利用知識の確認 • 日本の大学では – 自分のことは自分でやる • 自力更生(自分のことは自分でやる) • 自分で自分の環境を構築できる. 自分の責任におい て何をやっても良い. • 無保証 • ボランティア(相互扶助) – 貧弱な管理運用体制 • 大学の精神に根ざす歴史的事情と貧乏とにより現在 も昔(自力更生時代)とあまりかわらない運用体制に なっている 最低利用知識の確認 • 日本の大学では自力更正 – 貧弱な管理運用体制 • 大学の精神に根ざす歴史的事情と貧乏とにより,大 学の情報環境の維持管理運用は昔のまま – 利用者は 自由な活動 高いモラル ボランティア精神 – 対応して個々人に要請されることは 自力更正 日本の大学の特殊性 日本の大学環境(1) • 計算機は計算機 (目的は数値計算) – 計算機は高価=自前の計算機なんて夢のまた夢 – 計算といえば大型計算機センターへ • Unix は, なかなかはやらなかった – Unix が輸入されたのは結構古くて 1977 年ごろ 東大和田研などだ が, ワークステーション時代(1980年代末)になるまで Unix は情報系 以外の人々が使うことはほぼなかった – Unix が走るマシン(DEC の機器)は高価だった. – Unix は 英語しかしゃべれなかった. – そうこうしているうちにワープロ・パソコン時代へ • 弊害:各分野での情報化への遅れ(情報科学者の 試みが周囲に広がらない) 日本の大学環境(2) 日本のInternetは大学から • Internet の文化的背景 – Unixの文化の継承=基本精神は, そのまま古きよき大学の精神 • • • • 自力更生(自分のことは自分でやる) 自分で自分の環境を構築できる. 自分の責任において何をやっても良い. 無保証 ボランティア(相互扶助) – 研究室から学科, 学部, 大学, 研究所, そしてそれら相互のnetwork 同士を接続し, 自分のネットワーク上を他人のパケットが通過するこ とを許容することにより総体として Internet を作っていっていった 日本の大学環境(3) Internet の黎明: 研究実験接続の時代 • WIDE 1988 年-現在 (村井純http://www.wide.ad.jp/ ) – Internet それ自体を研究する目的. – 大学や企業の研究室, 研究グループを会員組織とする実験プロジェクト. – 多種多様な組織を繋いだ時に生じる技術的・政治的・社会的諸問題を経験 する. • TISN 1989 年 ~ 1996 年 – 東大理学部を中心として日米国際回線の共同利用のために組織された. – 接続は原則として会員組織のみ. 会員は理学研究目的の組織に限定してい た. – 科学技術庁省際ネットワーク(IMnet)に吸収されることにより発展的に解消. 日本のInternet 日本における Internet の発展: プロバイダへ • プロバイダ=Internet 接続サービスを提供する「組織」 – ボランティアベースのメタネットワークが巨大化するにつれ組織のネットワー クに対して, ネットワークを接続するためのネットワークが分化していった. • SINET (1991 年末) – 大学・研究機関のためのプロバイダ • 本格的に整備されたのはこの 1994 年春あたり. • 文部省(文部科学省)による大学・研究組織間接続のための業務レベル 基幹ネットワーク. • 学術情報センター(現在の情報学研究所)が管理運営. • TISN 発足のころ学術情報センターのネットワークは ``internet‘’ をサ ポートしていなかった. • SINET の下に各大学が独自のキャンパスネットを運営 – HINES, UTnet, Kuins, ... 日本のInternet 日本における Internet の発展: プロバイダへ • ISP (= Internet Service Provider)個人や企業のための商 用プロバイダ – IIJ が1992 年末, 開業 • ここにはじめて研究とは関わりのない業務でInternet に参加し 通信をおこなうことができることになった. – 1995 年は Internet 元年と日本では呼ばれている • プロバイダにより, 個々人や企業などが契約さえすれば Internet へのアクセス提供を実質的にうけられるようになったからである. • web と ブラウザの普及により一般に見えるようになった 日本の大学環境(3) 日本のInternetは大学から • 日本における Internet の発展に大学や研究者個々人の活 動は触媒として有効に機能した. – WIDEプロジェクトの役割が非常に大きい – Unixのワークスステーションとしての普及と同時期に開始, むしろ ネットワーク接続のためにUnixを導入するようになる – 日本の大学の触媒機能 • 情報科学発展に対してはいまいち(各業界との交流があまり生まれな かった) • 大型計算機・スーパーコンピュータの発展には大きく寄与 • Internet の発展には本質的に寄与 • このことが逆に大学におけるネットワークの運用を現在困難 にしている – 予算がないこともあり昔と同じままの体制(使う人が作る人=利用者 は高いモラルと技術知識を持っていることが前提) 地球科学科でのネットワーク運用体制 • 地球惑星専攻/地球科学科での体制と階層 – ネットワーク委員会 (netcom) • • http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~netcom/ 政策決定, 運用責任 – ネットワーク技術支援グループ (epcore) • • http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epcore/ 実働担当の学生ボランティアグループ, EPNetFan の運営 – EPNetFan • • http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epnetfan/ 相互扶助的勉強会, epcore メンバー養成, 情報実験の運営 – 物理実験I(情報実験) • • • • http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~inex/ 支援グループ等々に迷惑かけないための啓蒙 ボランティア養成 情報科学的アプローチのできる地球惑星分野の科学者・技術者への きっかけの ご近所での展開 ご近所での展開 • 遠隔計算・遠隔観測のためのネットワーク環境の構築 – Gbit大域のネットワークの設計と接続, 制御を自前で行う必要 • http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~ssinet/ Super SINET • http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~jgn/ JGN→post JGN • 環境研究所, 天文台, 宇宙研のスーパーコンピュータの利用へ • 遠隔授業,望遠鏡観測などのためのインフラ • ネットワーク上での知識提供実験 / ネットワーク上での教育 実験 – 参考: School of Internet (WIDE) (http://www.soi.wide.ad.jp/) – 地球惑星業界でも同様な試みを展開する必要 • WIDE SOI にならった我々の動画配信活動 Mosir プロジェクト (http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~mosir/ ) ご近所での展開 計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと • 地球流体電脳倶楽部 • http://www.gfd-dennou.org/ • 地球惑星(流体現象)にかかわる諸々の知見をネット ワーク上にためる • そのための道具作りをおこなう • 情報交換に便利な数値データ構造の考察 • 地球惑星科学における知見データの構造自体を考え る おわりに • 今後の機材の利用 →EPNeTFan に登録, 参加することにより, – ルート(機材あたり1名)としての責任(セキュリティー対 策)を担ってもらう. – 実験機材(3N+1,3N+2)は次の9月まで使える. – さらに 3N 機材担当者に昇格すると在籍するかぎりずー と使える. • VTA になってもらうけど. • 連絡先 [email protected] • おしまい, おつかれさまでした. 参考書, 参考文献 • 歌田明弘, 2000: 本の未来はどうなるか 新し い記憶技術の時代へ, 中公新書 1562, 中央 公論新社 • 山岸俊男,2000: 社会的ジレンマー「環境破 壊」から「いじめ」までー,PHP新書117,PHP 研究所
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