高等学校における発達障害のある生徒 への支援-

第4回 特別支援教育(不登校・学習支援・就労支援・家庭及び関係機関との連携)
に関するセミナー
2013.8.9
-高等学校における発達障害
のある生徒への支援-
主催 高校生セーフティーネット研究会
主管 博多高等学校・西日本短期大学付属高等学校・立花高等学校
後援 福岡県・福岡市・福岡県教育委員会・福岡市教育委員会
福岡県私学協会・福岡県私学教育振興会
講師 NPO法人教育研究所 所長 牟田武生
1. 発達障害を持つ生徒の支援
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
平成14年度文科省調査義務教育課程「知的遅れはないもの
の学習面や行動面で著しい困難を示す」と担任が回答した
児童生徒の割合・・・6.3%
10年後、それらの児童生徒は17歳~25歳になっている。
高等学校への進学率97.9%(平成21年5月)
平成19年宮城教育大学特別支援教育センター「高等学校に
おける特別支援教育システムに関する研究」で全国調査に
協力した高等学校のうち半数が支援を必要とする生徒は在
籍しないと回答。
特別支援教育や各種障害についての知識や理解が充分に
伝わってないことがわかった。
2
2. 発達障害とは
自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎
性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障
害、その他これに類する脳機能の障害であり、
その症状が通常、低年齢において発現するも
のを言う。
その中で、LD、ADHD、高機能自閉症HFA、
アスペルガー症候群については、文部科学省
では次のように定義している。
3
3. 4つの障害
1 LD (学習障害)
全般的な知的発達の遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するまた
は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に困難を示すもの
2 ADHD (注意欠陥多動性障害)
年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、衝動性、多動を特徴とする行動
障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの
3 HFA (高機能自閉症)
3歳位までに現れ、
①他人と社会的関係の困難さ
②言葉の発達の遅れ
③興味や関心が狭く、特定のものにこだわることを特徴とする自閉症のう
ち、知的発達の遅れを伴わないもの
4 アスペルガー症候群
知的発達を伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の遅れを伴わないも
の
4
4-1. 参考概念図(1)
Ⅱ-3
通常学級に在籍する特別な支援を必要とする
通常学級に在籍する特別な支援を必要とする児
童生徒の全国調査 (2002文部科学省) )
児童生徒の全国調査(2002年文部科学省
ほかに知的障害および
その周辺と推定される者
6.3 %
3%
学習面の困難
1.1%
L D
4.5%
行動面の困難
2.9%
0.4%
0.3%
0.2%
上野一彦 H20作成
ADHD
2.5%
学習面か行動面に
著しい困難 を持つと
担任教師が回答した数
HFA*
0.8%
*高機能自閉症
11
5
4-2. 参考概念図(2)
自閉症とその仲間たち(自閉症スペクトラム)
高機能広汎性発達障害
(高機能 PDD)
アスペルガー症候群
高
高機能自閉症
IQ 70 以上
IQ
低
対人関係
の困難
コミュニケーション
(ことば)の
発達の遅れ
こだわり
興味・関心
の狭さ
自閉症
(自閉性障害)
19
上野一彦 H20作成
6
5. 経緯





学習指導要領の基本理念は「生きる力」を育てること
平成17年4月施行「発達障害者支援法」発達障害のある生
徒に対する支援の法的な位置付けが明確化
同年12月中央教育審議会で「特別支援教育の支援のあり方
最終報告」高等学校における特別支援教育の推進、特に発
達障害のある生徒への指導及び支援についての重要性
平成19年度から国公私立高等学校を対象にした具体的な
支援モデル事業「高等学校における発達障害支援モデル事
業」の研究委嘱開始
福岡県では西日本短期大学付属高校
7
6. 2.2%意味
文科省(特別支援教育の推進に関する調査研究者会
議ワーキンググループ、2009)において「高等学校に
おける発達障害等の困難のある生徒の在籍は約2.2%
と推定報告 (※学校種の内訳として全日1.8%、定時14.1%、通信15.7%)
医師による発達障害の場合
・長野県教育委員会特別支援教育課(2011)0.48%
・鳥取県教育委員会高等学校課(2009)0.6%
・千葉県総合教育センター(2010)0.15%
8
7-1.
詳細な調査を行った千葉県総合教育センター(2009)
調査対象・・千葉県内の高等学校 全212校 アンケート調査
発達障害の「診断がある」または「疑いがある」生徒の在籍状況
② 県立全日制
① 県内高等学校全体
該当者
なし
37%
診断書有
在籍
15%
疑い有在
籍
20%
両方が在
籍
28%
190校回答 在籍学校121校(63%)
該当者なし
42%
診断書有
在籍
11%
疑い有在籍
21%
両方が在籍
26%
124校回答 在籍学校73校(58%)
9
7-2.
詳細な調査を行った千葉県総合教育センター(2009)
調査対象・・千葉県内の高等学校 全212校 アンケート調査
発達障害の「診断がある」または「疑いがある」生徒の在籍状況
③ 公立定時制
該当者なし
17%
両方が在籍
33%
④ 市立全日制
診断書有在
籍
11%
疑い有在籍
39%
18校回答 在籍学校15校(83%)
該当者なし
57%
両方が在
籍
0%
診断書有
在籍
14%
疑い有在籍
29%
7校回答 在籍学校3校(43%)
10
7-3.
詳細な調査を行った千葉県総合教育センター(2009)
調査対象・・千葉県内の高等学校 全212校 アンケート調査
発達障害の「診断がある」または「疑いがある」生徒の在籍状況
⑤ 私立全日制
該当者なし
35%
両方が在籍
30%
⑥私立通信制
診断書有在籍
30%
4校回答
在籍高校全て(100%)
疑い有在籍
5%
37校回答 在籍学校37校(65%)
11
8. 障害別在籍状況
「診断がある」「疑いがある」生徒の障害別在籍者数及び割合
LD
ADHD
アスペルガー
症候群
HFA
発達障害のある生徒数
県立全日制
87(人)
(27.7%)
87(人)
(27.7%)
80(人)
(25.5%)
71(人)
(22.6%)
314(人)
(42.3%)
公立全日制
26(人)
(22.8%)
38(人)
(33.3%)
12(人)
(10.5%)
44(人)
(38.6%)
114(人)
(15.3%)
市立全日制
0(人)
(0%)
1(人)
(33.3%)
1(人)
(33.3%)
1(人)
(33.3%)
3(人)
(0.4%)
私立全日制
18(人)
(18%)
32(人)
(32%)
53(人)
(53%)
7(人)
(7%)
100(人)
(13.5%)
私立通信制
103(人)
(49.5%)
47(人)
(22.6%)
32(人)
(15.4%)
26(人)
(12.3%)
208(人)
(28.1%)
全
234(人)
(31.7%)
205(人)
(27.7%)
178(人)
(24.1%)
149(人)
(20.2%)
739(人)
体
(障害別人数は重複診断を含む)
千葉県の高等学校における発達障害等の困難のある生徒の在籍率は0.5%
診断名を持つ者の約3.3倍であった。
12
9. 学習指導における支援
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
授業進行の進度、理解を確認しながら
視覚的な教材や提示(板書の仕方・プリントの工夫)(見てい
ると認知の違い)
授業中の適切な声かけ
座席の工夫(目の届きやすい場所)
個別指導(放課後等)
提出物で点数が取れるような配慮
端的で順序立てた説明
授業内容のポイントの明確化(ポイントをわかりやすく板書)
板書の仕方でノートが取れるようになる
必要に応じて、補助講師を入れる
13
10. 生活における支援
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
予定変更がある時は個別に説明を十分に行う
体調への考慮
伝達方法の工夫、メモ書きなど随時渡す
提示物の工夫、わかりやすく、注意が行くように!
あらかじめ、行事等、予定を板書する
担任が理解しているかの確認を随時行う、また、約束ごとの
確認も!
「並ぶ」「移動」する時に十分な配慮
他の職員からも声かけ
光過敏性がある人も多いので配慮を!
14
11. 人間関係における支援
相手の気持ちを察することが苦手であり、友達づきあいの仕方
が分からなかったりして、誤解やトラブルになることもある。
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
クラス替えでは、本人の人間関係性を十分に配慮する
常に人間関係を注意深く観察する
グループ編成の際は構成メンバーに配慮を!
担任を3年間固定する
十分な会話を担任は心がける
重要なことは個別に伝える
周囲の生徒の理解と協力を促す
孤立への対応も十分に考えておく
行事時のサポート
15
12. 問題行動における支援
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アスペルガーの特性を十分に考えて指導する
パニック時のクールダウンの場所を確保
困った時に相談する人と場所を確保
問題行動・発言について一緒に考える
問題行動がある時は、その時になるべく単純化して、2分内
で叱る
周囲への協力の要請
16
13-1.校内の支援体制(①学習指導)
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習熟度別授業
定期考査の別室受験
進級への配慮
教科担任と学年担当の連携
少人数制の指導
人的配慮
教科指導での配慮
特性に合った評価
実技教科への配慮
17
13-2.校内の支援体制(②校内委員会)
校内委員会の設置
 月1回の校内委員会
 早期発見・早期対応
 校内サポート体制の構築
 教員間連携

18
13-3.校内の支援体制(③校内の連絡調整)
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担任と養護教諭との連携
担任・学年・教科担当の情報交換
公務分掌に位置づけ学校全体で支援
学年全体への配慮
教育相談・支援係りを配置
入学時の配慮
発作時の対処方法の確認
特別支援コーディネーターを中心に会議実施
校内研修会の実施
他生徒の配慮と全体理解
19
13-4.校内の支援体制(④校外との連携)
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



スーパーバイザーとしてのスクールカウンセラーに
相談
スクールカウンセラーとの面談
発達障害者支援センターを通じての進路指導
医療機関との連携
教育センターとの相談
特別支援学校との連携
主治医との連携
20
13-5.校内の支援体制(⑤保護者・本人への対応)
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



保護者への段階的説明(疑いのあるもの)
保護者から対応の要望を聞く
個別相談に乗る
希望に応じスクールカウンセラーとの相談
保護者の希望に応じ専門機関の紹介(疑いのある
もの)
長所をほめる
家庭・保護者との連携
21
14. 個別の教育支援計画や
個別指導計画の作制や活用
平成21年3月に告示された高等学校指導要領
の総則が示された。
「個別の教育支援計画」の目的として
障害のある幼児・児童・生徒が豊かな生活が送れるよ
うにするために、教育、福祉、医療、労働等との関連
機関との連携をとり、一人一人の教育ニーズに応じて、
生涯を通して一貫した支援が行うことを目的に作成さ
れた。
22
15. 発達障害生徒の進学
平成23年度から大学入試センター試験における特別
措置申請の障害区分に「発達障害」が追加された。
適用した特別措置
① 試験時間の延長
② 別室の設定
③ 試験室入り口までの付添者の同伴
④ トイレの近い試験室での受験
⑤ 英語のリスニング音声での配慮
23
16. 就職
家庭や地域社会、公共職業安定所(ハローワーク)をはじめとする関係機関
との連携が必要になってきた。ハローワークの関係機関である。
地域若者サポートステーション(全国160箇所・厚生労働省認可事業)では、
平成25年度より、次の事業が強化された。
① 在学生に対するアウトリーチ(訪問支援)
② サポステと学校等との中退者情報の共有による中退者支援の強化
③ 不登校期間が長期に及ぶ者等に対する学び直し支援
一部認可を受けた団体では、合宿形式を含む生活面等のサポートと職場実
習の訓練を集中的に実施している。
① 職場実習(OJT訓練)による基礎的能力の付与
② 基礎礎的資格の取得支援
③ 就職活動の基礎知識等の獲得
24
17-1. 参考資料(1)
2013年5月決定 DSM-5での「アスペルガー症候群について扱い」
DSM(アメリカ精神医学会)の作った診断基準Ⅳから5へ、19年ぶりの改訂
DSM-Ⅳで
・小児自閉症
・アスペルガー障害を含む「広汎性発達障害」
・レット障害・・・X染色体の異常、自閉症との関連がないため、診断から除外
・小児崩壊性障害・・・区別の必要性なし(発症件数少)
これらがDSM-5では
「自閉症スペクトラム」という一つの診断名に統合
25
17-2. 参考資料(2)
狭義の「自閉症」の診断では


社会性の障害・・・年齢に応じた社会集団と人間関
係の構成・コミュニケーションの障害
常同性・・・無目的な行動、道順や服を着る順番への
固守、手のひらをひらひらさせる等
この2つが伴わないとDSM-5では診断されない。
DSM-Ⅳでは、一つでよかった。(診断)
26
17-3. 参考資料(3)
診断基準から外れるのは「特定不能の広汎性発達障害」

DSM-5では、アスペルガー障害は自閉症の範疇に入るため
「社会性の障害」と「常同性」の2つが必要要件になる。

DSM-Ⅳの診断基準では、対人的相互反応の発達に重症で
広汎的な障害であり、言語的または非言語的なコミュニケー
ション能力の障害や常同的な行動・興味・活動の存在を伴っ
ているが、特定の広汎性発達障害、統合失調症、分裂病型
人格障害、または回避性人格障害の基準を満たさない場合
に「特定不能の広汎性発達障害」用いるとした。この中には
「非定形型自閉症」が入る。
27
17-4. 参考資料(4)

知的障害を伴わない高機能群では、常同性が伴わない場合
が多い。常同性があったとしても幼児期にあって青年期には
ほとんどなくなり、生活に影響を及ぼすことは少なくなってい
る。

日本では「特定不能の広汎性発達障害」という診断名では患
者がわかりにくいということ、知的障害が伴わない高機能自
閉症という言葉が広がり、医師はアスペルガー障害と診断し
た。
※「社会性の障害」「常同性」2つの要件を満たすものがアスペルガーである
28
17-5. 参考資料(5)
Chakrabarti et al(2001)調査
DSM-Ⅳのサブカテゴリー
16.8
自閉性障害
アスペルガー障害
8.4
レット障害
0.6
小児期崩壊性障害
0.6
36.1
特定不能の広汎性発達障害
0
5
10
15
20
25
30
35
40
一万人あたりの人数
29
17-6. 参考資料(6)
特定不能の広汎性発達障害はDSM-5への改訂で自
閉症スペクトラムから外れ、
「社会性コミュニケーション障害」と言う診断名に変わる。
参考文献 井出草平 Webronza.asahi.com
「自閉症の診断基準の改訂とアスペルガー
の削除について
30
17-7. 参考資料(7)





琉球大学 教育学部紀要(77):145-152 知念幸人・田中淳士
富山大学 人間発達科学研究実践総合センター紀要 教育実
践研究 第7号 通巻29号抜粋 平成25年1月芝木智美・水内
豊和
千葉県総合教育センター 研究報告第379号「高等学校におけ
る特別支援教育の実践的研究(1)平成22年3月研究指導主事
松本巌他
東京都教育委員会発行 「高等学校における特別支援教育の
推進」パンフ 平成21年3月
東北大学発達障害学生修学支援研究会 「東北大学における
発達障害学生修学支援システムの構築」に関する報告書 平成
22年3月」教育学研究科長 宮腰英一他
31
長い間、ご清聴頂き、感謝します。
分科会の参考になれば幸いです。
END
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