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信頼と自己開示
原 謙治
2004/10/13
「自己開示の心理学的研究」
榎本博明著、1997出版
基本的に親しい人の間の自己開示を扱う
研究とはあんまり関係ないかも…
親しい人は父、母、同性の友人、異性の友人
自己開示の項目分類
精神的自己
知的側面
• 知的能力に対する自信・不安や知的な関心事
情緒的側面
• 心を傷つけられた経験、
情緒的に未熟と思われる点
志向的側面
• 拠り所としている価値観、
目標としている生き方
自己開示の項目分類
身体的自己
外見的側面
• 容姿・容貌や外見的魅力
機能・体質的側面
• 体質や健康、運動神経
性的側面
• 性に関する関心や悩み
自己開示の項目分類
社会的自己
私的人間関係の側面
• 同性関係
 友人への好き・嫌いや友人関係における悩み事
• 異性関係
 過去の恋愛経験や異性関係における悩み
公的役割関係の側面
• 興味を持っている業種・職種や
人生における仕事の位置づけ
自己開示の項目分類
物質的自己
小遣いの使い道、服装の趣味など
血縁的自己
親に対する不満や要望、家族に関する心配事
実存的自己
孤独感や疎外感、
人生における不安や生きがい
この他に趣味、意見、噂話などの
自己に直接言及しない話題も
心理的距離と自己開示難易度
以下の3条件の比較
特に親しい友達
顔見知り程度の友達
知り合ったばかり(初対面)の友達
開示しやすい要素
自己に直接言及しない3側面
趣味、意見、噂話
物質的自己、公的役割関係の側面
最も開示しやすいのは趣味
開示しにくい要素
情緒的側面、外見的側面、性的側面、血
縁的自己
「顔見知り程度」で同水準
私的人間関係の異性関係の側面
「知り合ったばかり」で同水準
私的人間関係の同性関係の側面
自己開示難易度のまとめ
心理的距離が大きいと開示しやすい要素
としにくい要素の開きが大きい
「知り合ったばかり」では趣味の果たす役
割は大きい
自己開示の心理的抑制要因
得点の高いもの
「話したことを他人に漏らされたりしたら嫌だか
ら」
「どんなに親しい間柄でも感受性や物の見方、
考え方は違っているものだから」
「へたに深入りして傷つけたり傷つけられたり
というようなことになりたくないから」
男女差については省略
自己開示の性差
一般的に女子の方が自己開示度が高い
性役割
男子は低開示者の方が肯定的に評価される
女子は高開示者の方が肯定的に評価される
自己開示相手による性差
見知らぬ人への自己開示欲求は男子の方
が強い
相手が初対面の異性である場合に特に強い
同性の友人へは女子が強い
異性の友人へは男子が強い
性別的特性の自己開示傾向(男女共通)
自分の男性的特性を同性に開示
女性的特性を異性に開示
性役割同一性との関連
男性型の人は見知らぬ人、ちょっとした知
り合いへの自己開示度が高い
女性型の人は親しい人への自己開示度が
高い
両性型の人は最も自己開示度が高い
自己開示と諸性格特性
外向性・内向性
男性では社会的外向性・思考的内向性の
高いものほど自己開示度が高い
権威主義傾向の強い者
暖かい人間的な交流よりも権力獲得を
追及する人
自己開示度が低い
自己開示と諸性格特性
マキャベリズム得点の高い者
合理的な者
競争相手に対するより共同者に対する
自己開示の方が有意に高い
肛門性格の強い者
倹約、けち、几帳面、頑固、反抗的、拒否的
自己開示度が低い
相手の自己開示レベルに合わせて
自分の開示レベルをあまり調整しない
パーソナリティの健康性
ジョハリの窓
自己に対する知
覚の拡大
BをAに移動
CをAに移動
DをBかCに移動
パーソナリティの健康性
以下ではパーソナリティの健康性に関る
諸特性と自己開示の関連を述べる
諸特性
自己評価、自我同一性、孤独感、
対人関係スキル、防衛的傾向、神経症傾向、
自己実現傾向、親密性地位
自己評価
自己評価の高い側面は自己開示しやすい
男子で相関の強かった項目
• 友人関係、優しさ、容貌
女子で相関の強かった項目
• 友人関係、社交性、容貌、意志力、経済力
自我同一性地位
4つの自我同一性地位
同一性達成
• 危機経験の末に自分なりの回答を見出し、それに傾倒
モラトリアム
• 現在危機の最中で、何かに傾倒したいと模索中
早期完了
• 危機的な経験なしに大人から受け継いだ生き方に傾倒
同一性拡散
• 危機経験に関らず何にも傾倒しない
疎外的達成
• 危機経験を通して何にも傾倒しないという信念に傾倒
自我同一性地位と自己開示度
自己開示度の一般的傾向
同一性達成群はどの相手に対しても高い
同一性拡散群はどの相手に対しても低い
「自我同一性の達成は親密な人間関係を築くための
前提条件」(エリクソン)
親と友人への自己開示度
早期完了群は親に対して高く、友人に対して低い
• 権威主義、友人との表面的な関係
疎外的達成群は親に対して低く、友人に対して高い
• 権威を否定、対等な深い人間関係を求める
モラトリアム群はほぼ平均的
友人への自己開示度は高い
自我同一性地位と開示側面
社会に向かっていくような面の開示度
知的側面、志向的側面、公的側面、意見
同一性達成群で高く、同一性拡散群で低い
情的な面の開示度
情緒的側面、実存的自己
早期完了群で低い
自己実現傾向
自己開示度と正の相関
自己開示度と関係する自己実現の側面
神秘的経験
共同社会感情
問題中心性
民主的性格構造
新鮮な鑑賞力
自己実現傾向の高低
高自己実現群の自己開示
志向的側面、知的側面、公的側面が中心
開示相手
• 男子は同性、異性の友人中心
• 女子は母親と同性の友人中心。父親へも高い
低自己実現群の自己開示
身体的自己の機能的側面、物質的自己、知的側面が
中心
開示相手
• 男子は異性の友人が特に低く、同性の友人中心
• 女子は父親と異性の友人が著しく低く、同性友人と母親中心
社会心理学領域における
自己開示研究
自己開示の相互性
対人認知
親密化過程
自己開示の相互性
親しい人間に対する日常的な自己開示の
相互性が存在
初対面の人間に対して
相手の自己開示レベルに合わせて自分の自
己開示レベルを変える
相互性の説明
信頼-好意仮説
自己開示を信頼の証とみなす
相手に好意を持ち、信頼に応えるために自己開示
社会的交換仮説
Give and Take
• もらったものと同等なものを返さなければという気持ち
相手に自己開示して得られるものの計算
• 肯定的な相手に多く自己開示
• 長く付き合う相手に多く自己開示
モデリング仮説
要求される行動の判断が難しい状況では相手の行動
を模倣する
相互性の説明
3つの中では社会交換仮説が有力
状況によって相応しい説明は異なる
3つの仮説が複雑に絡む
相互性の崩壊
初対面の場合
過度な開示者には不信を抱く
• 社会規範に沿わない
親しい間柄の場合
ある程度親しくなるまでは相互性が存在
相手が親友の場合は相互性なし
• 信頼関係ができるとすぐに返報する必要なし
 夫婦間での自己開示の相互性の相関は低い
対人認知
開示者に対する認知
被開示者に対する認知
開示者に対する認知
友人に対する自己開示
適切とみなされる
深い自己開示が好まれる
見知らぬ人に対する自己開示
不適切と見なされる
深い自己開示は好まれない
年下に対する自己開示
同年輩や年上の者に対するより不適切
自己開示のタイミング
知り合って間もない頃の深い自己開示
不適切
性格的に未熟
かなり知り合ってからの深い自己開示
適切
開示者の動機
否定的に評価される自己開示
無差別な場合
隠れた意図をもっているように思われる場合
Webから情報を取得する場合は不特定多数向けとは
いえ否定的な評価はしないのでは?
• 少なくとも読みに来た人向け
開示者に好意を持つ自己開示
自分が特に聞き手として選ばれたと
感じた場合
被開示者に対する認知
初対面の相手に深い自己開示をすると相手を好
意的に見る
認知的不協和を低減させるため
• 社会規範についての認知
 「初対面の相手に深い自己開示をすることは
好ましくない」
• 自分の行動についての認知
 初対面の相手に自ら深い自己開示をしてしまった
一般に高オープナーが好まれる
相手から親密な自己開示を引き出す能力のある人
「自己開示の心理学的研究」
のまとめ
研究との関り
将来的に協力関係が必要になりそうな
初対面の人への自己開示
• 目的に合う開示者の特性
 男子向き?
 低権威主義、高マキャベリズム、
低肛門性格、高自己評価、同一性達成群、
高自己実現度
• 開示する動機
 相手を選ぶ
• 開示することで相手に好意を持つかも
• 相手も相互的に自己開示してくれるかも
その場限りの初対面の場合は自己開示は
好まれないので注意