PHITS

PHITS
Multi-Purpose Particle and Heavy Ion Transport code System
総合実習(III):
陽子ビームで雪だるまを溶かそう
2015年9月改訂
title
1
実習目的
将来,実用化が期待される(?)ビームライフルが
現在の技術でどの程度実現可能か,陽子ビームで
雪だるまを溶かす数値実験を行って検討してみよう
• ジオメトリの作成
• 線源の変更
• 規格化の概念
について
実習します
写真提供:佐藤大樹氏
Purpose
2
snowman.inpの確認
基本計算条件
入射粒子: 100MeV陽子(半径1.0cmのペンシルビーム)
体系: 原点に半径5cmの水
タリー: [t-track]によるフラックス空間分布
[t-deposit]による水球内の吸収線量(Gy/source)
[volume]セクションで体積を定義する必要有り
…
x:
y:
p:
h:
#
track.eps
Serial Num. of Region
Dose [Gy/source]
xlin ylog afac(0.8) form(0.9)
x
n
n
y(all
),l3
n
num
reg
volume
dose
r.err
1
1
5.2360E+02
2.9853E-11 0.0032
deposit.out
2.9853 x 10-11 (Gy/source)
Check Input File
3
本演習の流れ
1. 雪だるま体系を作る
2. 照射条件を調整する
3. 雪だるまを溶かすために必要となる
ビーム電流・出力を決定する
Procedure
4
雪だるま体系の作成
この実習で作成するジオメトリ
\phits\utility\rotate3dshow
方針
• 大小2つの雪玉にアルミプレートを乗せたシンプルなものとする
• 雪玉は,密度1g/cm2の水とする(温度の指定はしない*)
• アルミプレートは,小玉の上にピッタリと乗せる
*温度は,低エネルギー中性子の挙動にのみ影響する
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ステップ1:雪玉(大玉)を作る
大きい雪玉(半径20cm)を芯の周りに作る(中心 z = 0 cm)
ヒント
• ジオメトリの描画はicntl = 8
• 原点を中心としたsurfaceは”so 半径”で定義
• 元からあった半径5cmの球の領域と重ならない(二重定義を防ぐ)
ように大玉の領域から半径5cmの球の領域を除く
Step 1
6
ステップ2:雪玉(小玉)を作る
小さい雪玉(半径15cm)を大きい雪玉の上に乗せる(中心 z = -25cm)
ヒント
• z軸上を中心としたsurfaceは”sz 中心z座標 半径”で定義
• 2つの雪玉が重なってニ重定義になってしまうので,小玉から大玉
の領域を除く(もしくは逆でもよい)
Step 1
7
ステップ3:アルミプレートを乗せる
1. [material]セクションでアルミ(27Al)を定義する
2. 半径10cm,厚さ4cmの円柱アルミプレートを作る(-40cm < z < -36cm)
ヒント
•
•
•
•
z軸に平行な円柱面は”cz 半径”で定義
z軸に垂直は平面は”pz z座標”で定義
アルミの密度は2.7g/cm3(重量密度で定義する場合は負値)
雪玉領域からアルミプレート領域を除くことにより雪玉に埋め込む
Step 2
8
ステップ4:陽子ビームのエネルギーを
調整する
陽子ビームのエネルギーを調整し,芯での吸収線量が最も大きくなるようにする
(1MeV単位で調整する)
ヒント
•
•
•
•
粒子輸送を実行するにはicntl = 0とする
入射エネルギーは[source]セクションのe0パラメータで決定
芯での吸収線量はdeposit.outで確認
陽子による吸収線量はブラッグピーク付近で最も高くなる
Step 3
9
ステップ5:陽子ビーム電流を調整する
一般的な陽子線治療の電流値(10nA)で1秒間照射
したときの芯での吸収線量(Gy)を計算しよう
ヒント
• PHITSの計算結果は線源が1つ発生する当たりに規格化されている
maxcas, maxbchは計算精度(統計誤差)に関係する値で規格化とは無関係!
• 複数の線源が発生する状況を模擬するには,[source]セクションのtotfact
パラメータを変更する
例) 陽子が100個発生した場合の吸収線量を計算する場合はtotfact = 100.0
• 1A(アンペア)は,1秒当たり1C(クーロン)の電流が流れる状態を表す
• 素電荷(陽子1つ当たりの電荷)は1.6x10-19Cとする
Step 4
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ステップ5の回答
Totfactを変える
とスケールが変
わることに注意
1. 1アンペアで1秒照射するときの発生陽子数は
1.0 / 1.6E-19 = 6.25E18(個)
2. 10nAで1秒照射するときの発生陽子数は
6.25E18 x 10 x 1E-9 = 6.25E10(個)
Totfact = 6.25E10としたときの吸収線量は1.2740(Gy) (陽子294MeV入射の場合)
Answer to Step 4
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ステップ6:雪だるまの芯を溶かす
ために必要となる電流を計算する
1. 雪だるまは-10℃の氷と仮定する
2. 1秒間の陽子ビーム照射で一気に氷を0℃に加熱して溶かすために
必要なビーム電流(アンペア)及び出力(ワット)を手計算で求めよう
ヒント
•
•
•
•
氷の比熱は0.5 (cal/g/K) = 2.1 (J/g/K)とする
氷の融解熱(相転移に必要な熱量)は333.5(J/g)とする
1Gy = 1(J/kg) = 0.001(J/g)
ビーム出力(MW) = 粒子エネルギー(MeV)×電流(A)
ちなみに…
国内最大出力を誇るJ-PARCの最大ビーム出力は約1MW
Step 5
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ステップ6の回答
1. 10nAで294MeV陽子ビームを1秒間照射したときの吸収線量は?
2. 氷の温度を10K上昇させ,溶かすために必要な熱量は?
3. 1秒間でその熱量を与えるために必要な電流は?
4. このときのビーム出力は?
雪だるまを溶かすためには,1MW弱のビーム出力が必要となる
(詳細な回答は,answer\answer-exercise3-jp.pptに書いています)
• 現在の加速器技術では,雪だるまを溶かすのが精一杯
(ただし,長時間照射すれば金属も溶かせる)
• ガンダム級のビームライフル(一瞬でモビルスーツを爆破
する)を作るためには,まだまだ技術革新が必要!
Answer to Step 5
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まとめ
• 雪だるま体系を作り,それを陽子ビームで溶か
すための最適な条件をPHITSで計算した
• PHITSのタリー結果は,通常,線源1つ発生当
たりに規格化される
• 実際の条件を模擬するためには,totfactパラ
メータを用いてタリー結果を再規格化する必要
がある
Summary
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