研究会運営について アジア中古車流通研究会

新興国における中古車流通の
健全化にむけて
アジア中古車流通研究会
2013年2月23日
京都大学
塩地洋
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報告の構成
Ⅰ 第1回~3回研究会の議論のポイント整理
Ⅱ 今後の研究会の課題
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報告の構成
Ⅰ 第1回~3回研究会の議論のポイント整理
Ⅱ 今後の研究会の課題
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研究会のミッション
①リーマンショック・震災・洪水からの再興と反転
②自動車産業が最後の砦
③アジア市場の拡大 世界販売台数の50%以上
④バリューチェーンの今後の柱としての中古車
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目的
近年,日本国内の自動車流通にかかわる新車
ディーラーや総合商社,オークション会社,中古車
販売会社などが,アジアに進出するケースが増大し
ている。昨年もインドネシア・ジャカルタや中国・蘇州
にオークション会社が進出するなど,アジアのほと
んどに国に日本国内の自動車流通関連企業が現
地法人を設立している。こうした状況の中で,京都
大学東アジア経済研究センターは「アジア中古車流
通研究会」を立ち上げ, 支援することをめざした。
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その目的は,アジア地域に進出している(あるいは
これから進出しようとしている)自動車メーカー,新
車ディーラー,総合商社,オークション会社,保険会社,
ローン会社,リース・レンタカー会社,中古車輸出会
社,中古車販売会社などに参加していただき,当該
領域を専門とする大学研究者も加わり,様々な問題
を多面的に議論し,また情報交換をしていく場とす
ることである。
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今年度の重点検討課題
①アジアの新興国中古車取引における不正情報,
詐欺,メーター巻き戻し,脱税,盗難車販売など
を正常化,近代化していく道を探る
②日本のオークションシステムの新興国での活用
の道を探る
③海外の新車ディーラーにおける新車購入顧客保
有車の下取とバリューチェーンの拡大
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今後の検討課題
①中古車流通に関わる政策,制度
・経済産業省などにも提案
②マーケティング戦略,ビジネスモデル
・ケース研究
③セースル手法,実務・管理手法
・成功事例のヨコテン
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この研究会のコアコンピタンス
①業界横断 複数業種の交流
②当該分野で競争優位を有する企業の集まり
③現地現物に基づく本音の議論
・政府の各種審議会との違い
④大学研究者による一般化,理論化
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議論のルール八カ条
①機密情報は出せなくとも,それ以外の情報は惜しげもなく
提供する――情報収拾は従,情報提供が主でのぞもう
――会社のためでなく,日本の将来のために
②フィージビリティ・スタディよりも数歩手前の感覚で――「実
現は到底無理だな」でも議論だけは活発に
③サクセスストーリーのみでなく,失敗談やどうしてもできな
かったこと,その原因を詳しく説明しよう
④自社事業ドメインに含まれない領域にも口をはさもう――
専門外からの素朴な質問は大歓迎
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⑤対立意見を積極的に言おう――研究会では対立を収束さ
せない。後の懇親会で仲直り――コンペティターとは仲良
くつきあうふりを,グループ会社や提携会社どうしはグル
にならない
⑥発言はすべてパーソナルオピニオン――会社の公式立場
ではない――議事録は残さない――ここで学んだことを研
究者が論文に書く時は情報提供者の許諾を得る
⑦「〇〇社長」「〇〇先生」は禁句――「さん」で呼び合う
⑧ドレスコードなし・飲食物持込自由・ただし禁酒禁煙
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東アジア経済研究センター
・京都大学大学院経済学研究科の公的組織
・研究,教育,人材育成,ネットワークの形成
・運営委員会(10名, 月1回)が運営
・センター長 塩地洋
東アジア経済研究センター協力会
・東アジア経済研究センターの活動全般を支援
する任意団体で個人会員と法人会員で構成
・会長 森瀬正博(京都銀行専務)
・理事会(13名, 年2回)と総会(年1回)が運営 12
東アジア経済研究センター
・ニュースレター発行(年40回程度)
・中国経済研究会(年8回)
・アジア中古車流通研究会
・国際シンポジウム
中国自動車シンポジウム等
・セミナーと講演会 「討論・アジア経済」セミナー
・人材育成プログラム アジアからの人材研修
・東アジア人材のための会社説明会(法人会員)
・東アジア経済研究センター叢書の出版
・人民大学,ソウル大学等との交流
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・FS前調査代行
東アジア経済研究センター協力会会員
・ニュースレター
・各種シンポジウムへの参加
・シンポジウム後の懇親会費免除
・東アジア人材のための会社説明会参加(法人)
・協力会員限定の研究会への参加
・FS前調査の依頼(法人)
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2012年度研究会テーマ
年月
会場
2012年5月
京都
2012年7月
京都
2012年11月
東京
2013年2月
名古屋
テーマ
中国中古車
運営打合せ
韓国中古車
インドネシア
中古車
タイ中古車
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2012年度に実施した海外現地調査
8月 インドネシア
8月 韓国
8月 中国
9月 インドネシア
12月 タイ
(2013年)
2月 ニュージーランド
3月 マレーシア (予定)
3月 韓国 (予定)
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今年度の研究で明らかになった
新興国の中古車市場の特徴
①情報の非対称性の存在
②需要と供給のギャップ→高価格化
→利幅分け合い
③小売と卸売の未分離 (次回)
④BtoC を CtoC へ見せかけ (次回)
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今年度の研究で明らかになった
新興国の中古車市場の特徴
①情報の非対称性の存在
②需要と供給のギャップ→高価格化
→利幅分け合い
③小売と卸売の未分離 (次回)
④BtoC を CtoC へ見せかけ (次回)
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「新興国の様々な問題は,
1980年以前の日本でも見られた」
↓
では日本ではどのようなプロセスを通じて
情報非対称化問題は解決してきたのか
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情報の非対称性の縮小プロセス
新車ディーラー 中古車販売本気化
下取率の増大 小売価格の明示
競争激化による公正性の増大
大規模中古車販売店舗
多数の商品展示と小売価格の明示
オークションの発達
多数の商品展示と卸売価格の明示
中販連
自主規制
行政
自動車公正
取引協議会
表示義務
価格
走行距離
修復歴
保証
商品情報誌(小売価格)
オークション落札価格情報
買取専門店の登場
下取/買取価格の明示
ネットでの検索が可能に
情報の非対称性の縮小
欲しい商品がどこにあるか
相場価格も見える
ユーザーの利益
短時間で欲しい車を適切な価格で
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(1) 新車ディーラーが中古車に本気で取り組み
始める
・下取に注力→仕入れ市場の競争激化
・価格を明示した小売
・行政/自動車公正取引協議会との連携
・プライスシートの表示項目の統一化
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(2)大規模中古車店舗の登場
・多数の商品展示と小売価格の明示
・新車ディーラーとの競争激化
→公正性を示すことによる差別化
・チラシなどによる価格相場情報の普及
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(3) オークションの発達
・三つの経路
中販連系オークション 専業店の玉の交換
メーカー系オークション 新車ディーラー
企業系オークション
利益を得るビジネス
・全国百数十カ所
・オークション会場の増大と大規模化
・オークション経由比率の増大 相対取引の縮小
・オークション落札価格の公表
→相場価格の「見える化」
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・地域間価格差の縮小
百物百価
(4)中古自動車販売協会連合会
・業界健全化
・自主規制
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1966年 富洋モータース事件
タクシー使用10万㎞過走行車をメーター巻戻
「自家用車6千㎞」と表示
景表法違反 公取が排除命令
マスコミなどで社会的問題化
→業界全体の危機
一方で,業界団体結成→健全化
他方で,行政の監督強化→公正取引規約
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ただし業界の中は,
二つのグループに分かれる
業界健全化派 VS アウトサイダー
非対称性縮小
非対称性から利益
中古車販売業者 2万数千社の内,
中販連に1万2千社加盟
アウトサイダーの中の悪徳業者排除のためには,
①市場競争 + ②行政等による監督強化
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(5) 行政指導と自動車公正取引協議会の設立
・ルールづくり 自主規制の一つ
・自動車公正取引規約
・プライスシートにおける表示義務
価格 走行距離 修復歴 保証
・「車両本体価格」など価格表示の用語定義
・査定協会など様々な業界団体
・ シルバーブック/イエローブックの発行
・オークション価格のトレーサビリティ
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シルバーブック
消費者が中古自動車を購入する際の目安とな
るよう、中古車価格を網羅したガイドブックを発
行しております。全国を3地区(北日本版・中央
日本版・西日本版)に分け、各ブロック版を毎
月1日に発行しています。
中立機関の査定協による
イエローブック
6年前までの
消費者と自動車販売業界の方々に、中古車取
引きの目安となる中古車の価格情報を提供す
るため、小売価格と卸売価格を掲載し、乗用車
版・貨物車版に分け、毎月1日に発行していま
す。
全メーカー全車種全型式
小売価格と卸売価格
中古車価格ガイドブック・査定ガイド(グレードの見分け方)
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(6) 買取専門店の登場
・下取/買取市場の競争激化
・下取/買取価格の相場の見える化
・オークションへの買取車の大量供給
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(7) 商品情報雑誌(小売価格)
・安価でコンビニですぐに買える
・ネット上でも掲載
・ユーザーが価格相場情報を得るのに便利
・短い時間で欲しい商品を見つけることが可能に
(新興国で導入が可能となる条件)
・情報雑誌の販売で利益があがる
・商品情報掲載を望む中古車販売店が増大
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・しかし価格情報を明示しない店がなおも多数派
『Goo』1冊で約2万台 400~600社の中古車販売業者
1頁掲載料24万円
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【表示項目】
車種・型式
価格
ナンバー
販売会社名
塗色
【非表示項目】
距離数 「巻直し当然 意味ない」
オプション
修復歴 (修復定義なし)
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(8) オークション落札情報の公表
・プロト『週刊オークション情報』
・以前の業者間の相対取引(一対一の取引)で
は,その取引価格は外部の者,とくに一般ユー
ザーには見えなかった
・落札価格が公表,出版されると「見える化」
・新興国でこのビジネスが成り立つ条件
オークション会場が多い
落札台数が多い オークション経由比率が高い
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プロとプロの取引価格=オークション価格=情報の非対称性がない
オークション運営会社による評価点
オークション運営会社はクレーム対応に責任持つ
『週刊 オークション情報 5月第3週西日本版』PROTO
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以上の(1)~(8)のプロセスを通じて,
情報の非対称性が縮小していくプロセス
・しかし(1)~(8)には日本固有のプロセスがある
・例えば欧米ではオークションが未発達である
・フリート比率が高いために,メーカーがのバイ
バック比率が高く,メーカーが大量の高年式
の中古車をディーラーに供給している
・オークション経由比率が小さい
・アジアの新興国でどのように推移するかは,
それぞれの国の条件に応じて異なる
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情報の非対称性の縮小過程
新車ディーラー 中古車販売本気化
下取率の増大 小売価格の明示
競争激化による公正性の増大
大規模中古車販売店舗
多数の商品展示と小売価格の明示
オークションの発達
多数の商品展示と卸売価格の明示
中販連
自主規制
行政
自動車公正
取引協議会
表示義務
価格
走行距離
修復歴
保証
商品情報誌(小売価格)
オークション落札価格情報
買取専門店の登場
下取/買取価格の明示
ネットでの検索が可能に
情報の非対称性の縮小
欲しい商品がどこにあるか
相場価格も見える
ユーザーの利益
短時間で欲しい車を適切な価格で
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どれを先行させるか どこから始めるか
どのような組み合わせが有効か
(例) 買取とオークション ローンとオークション
オークションと情報誌
日本の複数の業態のペア
商社とオークション会社 新車ディーラーと商社
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今年度の研究で明らかになった
新興国の中古車市場の特徴
①情報の非対称性の存在
②需要と供給のギャップ→高価格化
→利幅分け合い
③小売と卸売の未分離 (次回)
④BtoC を CtoC へ見せかけ (次回)
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新興国で中古車流通の健全化が進まない
最大の理由は供給が需要に追いつかず
需給バランスが崩れていること
↓
RQ1: 何故需給バランスが崩れるのか
↓
RQ2: 需給バランスが崩れると何が起こるのか
(1)価格が高くなる
(2)売り手市場化 買手無視 不正の温床
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(3)流通多段階化 利幅の分け合い
RQ1: 何故需給バランスが崩れるのか
経済成長と所得の増大によって需要は急拡大
中古車供給量は,数年前の新車販売台数に制
約される
需要 › 供給
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JBA 塩山氏資料
小売価格とリセールバリューの特徴
現在
供給
≦
需要
=
高値安定
・古い車(安い車)の供給が圧倒的に少ない
・90年代の乗用車自体がそもそも少ない
・90年代の中古車は50万円以下、しかしステータス性は低く故障も心配
・中古車の供給が需要に追いついていない ←供給を上回る需要が発生
・中古車として供給される車も現行型がほとんど
・まともな中古車は軒並み100万円以上になってしまう
販売台数(万台)
まだ少ない
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
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00
20
01
20
02
20
03
20
04
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20
06
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07
20
08
20
09
20
10
20
11
100
80
60
40
20
0
日本では逆に
需要の停滞・縮小
中古車供給量は,数年前の新車販売台数
需要 ‹ 供給
中古車価格の下落が早い
中古車輸出の増大
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需給バランスが崩れると何が起こるのか
(1)価格が高くなる
・インドネシアで3年落ち中古車価格が新車の
70~80%
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図1 中古車価格の推移の概念図
①新車製造コスト割高
価格
②輸入新車価格割高
(物流費+高関税)
③中古車市場
供給 ˂ 需要
中国での中古車価格の推移
年 7~10%下落
約 15 年でゼロに近づく
日本での中古車価格の推移
年 20%~30%下落
5年
7 年でゼロに近づく
10 年
15 年
使用年数
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需給バランスが崩れると何が起こるのか
(2) 売手市場となる
・買手無視 不正取引
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需給バランスが崩れると何が起こるのか
(3) 流通多段階化 利幅の分け合い
・多数のブローカーが流通に介在
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ブローカーの役割とその実態
ブローカー介在型流通の典型例
都会から地方への流通
情報
来店するも
希望車なし
金
カムリを欲しい地方の小金持ち
300万円
近所の中古車販売店
条件を伝え
探せと指示
270万円
地元のお抱えブローカー
信頼できる仲
間に連絡
250万円
都会のブローカー
在庫車を見
つけて交渉
230万円
在庫を持つ中古車販売店
店頭表示価格300万円
カムリ
200万円
在庫仕入
1990年頃までの日本の高級中古車市場と全く同じ構造。
店頭価格が表示されていないケースも多い。その方がブローカーにとっても販売店にとっても何かと都合が
良い場合があるからだ。
ブローカー介在型流通の典型例
情報
今の車が高
値で売れたら
乗り換える
条件を伝え
買手を探せと
指示
新下(新車販売時の下取車)の場合
カムリ
旧型から新型への代替検討客
180万円
新車ディーラー営業マン
190万円
仲の良いブローカー
複数の中古
車屋と条件
交渉
200万円
一番高値をつけた中古車販売店
店頭表示価格300万円
金
これも、1990年頃までの日本と全く同じ構造。
中古車販売店に「仕入れはどうしてるの?」とたずねると、「ウチにはブローカーが7人もいる」などと返ってく
る。つまり、ブローカーネットワークの大きさと質=一番の強み、と言える。
逆に、「オークションはネットワークが脆弱な新参者が行くところ」というイメージもある。
新車ディーラーは中古車に興味も無く、営業マンの「溶かし」は容認されている。
広州で生産されたプジョー505
倉庫に置かれたまま書類の上で
吉林省交通開発公司(11万5千元)
↓
山東省威海市物資服務公司(12万8千元)
↓
吉林省長春市生産服務公司(13万5千元)
↓
広東省台山研物資貿易中心(15万2千元)
↓
河北省泰皇島市生産資料服務公司
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報告の構成
Ⅰ 第1回~3回研究会の議論のポイント整理
Ⅱ 今後の研究会の課題
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2013年度 研究会テーマ
日程
会場
2013年5月25日
京都
2013年7月27日
京都
2013年11月23日
東京
2014年2月21日
名古屋
テーマ
ミャンマーの中古車流通
新興国中古車流通健全化⑵ (塩地)
マレーシアの自動車産業
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幹事9名 (案)
地域 関東
28
業種
ディーラー 10
メーカー 11
商社等 12
木村
中古車 9
金融・保険 5 寺澤
調査 10
大学 11
計 68
井上
3
東海
11
関西
25
他
4
N名古屋
1
1
1
1
1
1
ダイハツ
久井
種谷
2
孫
3
岡本
1
日程調整,報告者選定などをメール会議で決める
3
9
52
お知らせ
ジェルピザ GERPISA の京都開催
自動車産業をテーマとする国際学会
2014年6月4・5・6日
京都大学時計台記念館
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