PHITS

PHITS
Multi-Purpose Particle and Heavy Ion Transport code System
PHITS 応用実習4:
多種多様な線源の設定方法B
2015年8月改訂
Title
1
本実習の目標
Dump dataを線源とした粒子輸送シミュ
レーションを実行できるようになる。
60Co線源より放出された光子をz=20cmの位置でdump
dataとして蓄積し、
それらを線源として鉛の遮へい体に照射したシミュレーション
Purpose
2
SourceB.inpの確認
基本計算条件
入射粒子: 60Co線源を模した1.173と1.333MeVの光子
体系: 円柱状の水(半径10cm, 厚さ20cm)と真空のみ
タリー: [t-track]によるフルエンス空間分布
[t-cross]による水領域へ入射する光子のエネル
ギー分布
60Co線源
Water
計算体系
track_xz.eps
Check Input File
cross_eng.eps
3
実習内容
1. Dump dataを用いた線源
2. まとめと宿題
Table of Contents
4
Dump dataを用いた線源
指定した領域に入射した放射線の情報を蓄え、
それを線源とした2段階計算をすることができる
水の部分を通過した位置に遮へい体を置き、
その厚さを変えながら遮へい効果を調べたい
60Co線源
水
鉛
2段階目の計算の線源
鉛の厚さを変えて、
2段階目の計算を何度
も行うことが可能
1段階目の計算で、
鉛に入射する光子の情報を記録する
Dump data
5
使用方法
1.
2.
3.
4.
5.
[t-cross], [t-product], [t-time]タリーにおいて、dumpパラメー
ターを加える
PHITSを実行し、1段階目の計算を行う
タリーで指定したファイル名に_dmpが付いたファイルが作成さ
れる。これに線源データが書き出されるので、そのデータを線
源とする[source]セクションを作成する(s-type=17を使う)
古い[source]セクションとdumpパラメーターを加えたタリーのセ
クションはoffで無効にする
PHITSを実行し、2段階目の計算を行う
タリー中のdumpパラメーター
の入力形式(1段階目)
[T-Cross]
・・・・・・
file = ******.out
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
dumpデータを用いた[source]セク
ションの入力形式(2段階目)
同
じ
[Source]
s-type = 17
file = ******_dmp.out
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
データの個数を指定
(正ならバイナリで、負ならアスキー形式で出力)
Dump data
6
Dump定義文
Dump定義文によって、dump dataとして出力するデータの
種類と順番を指定します
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
番号 物理量
順番を変えることもできる
番号 物理量
1
kf 粒子の種類
11
c1 カウンタ1の値
2
x 空間座標のx成分
12
c2 カウンタ2の値
3
y 空間座標のy成分
13
c3 カウンタ3の値
4
z 空間座標のz成分
14
sx スピンのx成分
5
u 速度のx成分
15
sy スピンのy成分
6
v 速度のy成分
16
sz スピンのz成分
7
w 速度のz成分
17
name 粒子の衝突回数
8
e エネルギー
18
nocas イベント番号
9
wt ウェイト
19
nobch バッチ番号
10
time 時間
20
no カスケードID
Dump data
7
使用する際の注意
 (1段階目)指定した領域を粒子が複数回通過することによる
ダブルカウントを避けるために、dump dataを蓄える領域は
outer regionとする
 (1段階目)1段階目も含めた統計計算を行うには、粒子情報
と共にイベント番号(nocas)とバッチ番号(nobch)もdumpする
 (1段階目)エネルギー分布等を同時にタリーし、dump dataと
して蓄えた結果が線源として十分な量であるかどうかを確認
する
 (2段階目)Dump dataを線源とする計算は局所的な結果しか
与えないことに気をつける
粒子情報と共にイベント番号(nocas)とバッチ番号(nobch)を1
段階目でdumpした場合は、 1段階目も含めた統計誤差を算
出するidmpmode=1*が適用される。(イベント番号とバッチ
番号がない場合は旧来のidmpmode=0が適用され、2段階目
だけで統計誤差が算出される)
*PHITS2.80から有効
Dump data
8
課題1
水の部分を通過した粒子の情報をdump dataとし
て蓄えるために、水の後ろ部分(z軸の正の側)を
outer regionとして設定しましょう
 水の後ろ側(z軸の正の側)に半径10cm, 厚さ5cmの
円柱状の領域をouter regionとして定義する(セル番
号は102とする)
 [cell]セクションにおいてouter regionとして設定する
場合は、物質番号の箇所を-1とする(密度の項目は
必要ない)
Dump領域
(outer regionとして定義)
Dump data
9
セル番号
課題1の答え合わせ
水の部分を通過した粒子の情報をdump dataとし
て蓄えるために、水の後ろ部分(z軸の正の側)を
outer regionとして設定しましょう
track_xz.eps
SourceB.inp
[Surface]
10 so
500.
11 cz
10.
12 pz
0.
13 pz
20.
14 pz
25.
[Cell]
100 -1
10
101
1 -1. -11 12 -13
102 -1
-11 13 -14
110
0
-10 #101 #102
Dump data
outer regionでは粒子の
輸送が行われない
10
課題2
60Coを起源とするガンマ線が水の部分を通過した
場合の状態を、dump dataとして蓄えてみましょう
 [t-cross]セクションをコピー&ペーストし、合計2つの[t-cross]を
用意する(1つ目はdump data用で、2つ目は蓄えたdataが十分
かどうかを調べるため)
 1つ目の[t-cross]にdumpパラメーターを加える(蓄積するデータ
は番号1から9までの9種類とイベント番号[番号18]とバッチ番号
[番号19]の合計11種類)
 1つ目の[t-cross]において、セル番号101から102に移動する光
子をタリーするように変更する。また、neを1にし、出力ファイル
名をcross_photon.outなどに変更する
 2つ目の[t-cross]において、セル番号101から102に移動する光
子をタリーできるよう条件を加える(areaは1.0とする)
水の領域
(セル番号101)
Dump領域
(セル番号102)
101から102に移動する光子をdumpする
Dump data
11
課題2の答え合わせ
60Coを起源とするガンマ線が水の部分を通過した
場合の状態を、dump dataとして蓄えてみましょう
SourceB.inp
[T-Cross]
・・・・・・
1
101
102
1.000000
・・・・・・
ne = 1
unit = 1
axis = eng
file = cross_photon.out
output = flux
part = photon
epsout = 1
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
[T-Cross]
・・・・・・
reg = 2
non
r-in r-out
1
110
101
2
101
102
・・・・・・
cross_eng.eps(2ページ目)
area
1.000000
1.000000
Dump data
連続スペクトルとなるべき
部分がまばらで、線源と
して十分ではない
12
課題3
線源として十分な量のdump dataを求めましょう
 maxcasを増やしてdump data量を大きくする
cross_eng.eps(2ページ目)
maxcas=1000の結果
maxcas=10000の結果
まだ隙間がある
Dump data
13
課題3の答え合わせ
線源として十分な量のdump dataを求めましょう
cross_eng.eps(2ページ目)
maxcas=100000の結果
隙間もなくなっており、線源として使用可能
(ただし、相対誤差は10~20%)
Dump data
14
課題4
Dump dataを線源とした輸送計算を実行させましょう
 s-type=17を用いる新しい[source]セクションを作成する
(60Coを線源とする方はoffにする)
 セル番号102の領域をvoidにする(物質番号の箇所は0)
 Dumpパラメーターを含んだ[t-cross]はoffにする
dumpデータを用いた[source]
セクションの入力形式
[Source]
s-type = 17
file = cross_photon_dmp.out
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
cross_photon_dmp.outと
cross_photon.outが必要*
*イベント番号とバッチ番号がdumpデータ
に含まれる場合、”_dmp”が付いてない方
のファイルから、自動で1段階目のmaxcas
とmaxbchを読み込む(2段階目のmaxcasと
maxbchは無視される)
Dump data
15
課題4の答え合わせ
Dump dataを線源とした輸送計算を実行させましょう
SourceB.inp
[ S o u r c e ] off
totfact = 2.0
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
[Source]
s-type = 17
file = cross_photon_dmp.out
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
[Cell]
100 -1
10
101
1 -1. -11 12 -13
102
0
-11 13 -14
110
0
-10 #101 #102
[ T - C r o s s ] off
・・・・・・
dump = -11
1 2 3 4 5 6 7 8 9 18 19
track_xz.eps
水の後ろ側からdump dataにある
粒子が放出されている
Dump data
16
課題5
水の後ろ側に鉛の遮へい体を置きましょう
 セル番号102の領域中の物質を鉛(密度11.34g/cm3,
同位体比は右表を参照)に変える([material]と[cell]
セクションを書き換える)
 遮へい効果を調べるために、セル番号102の後ろ側
(z軸の正の側)にセル番号103の領域(円柱状で半
径は10cm, 厚さは1cmとする)を定義する
 セル番号102から103に移動する粒子をタリーできる
ように[t-cross]に条件を加える(areaは1.0とする)
鉛の同位体比
204Pb 0.014
206Pb 0.241
207Pb 0.221
208Pb 0.524
1cm
セル番号103
(真空)
セル番号101
(水)
セル番号102
(鉛)
Dump data
17
課題5の答え合わせ1
水の後ろ側に鉛の遮へい体を置きましょう
SourceB.inp
[T-Cross]
・・・・・・
reg = 3
non
r-in r-out
1
110
101
2
101
102
3
102
103
・・・・・・
[Material]
mat[1] 1H 2 16O 1
mat[2] 204Pb 0.014
206Pb 0.241
207Pb 0.221
208Pb 0.524
[Surface]
・・・・・・
13 pz
20.
14 pz
25.
15 pz
26.
area
1.000000
1.000000
1.000000
track_xz.eps
[Cell]
100 -1
10
101
1 -1. -11 12 -13
102
2 -11.34 -11 13 -14
103
0
-11 14 -15
110
0
-10 #101 #102 #103
鉛の領域で粒子フルエンスが減少
Dump data
18
課題5の答え合わせ2
水の後ろ側に鉛の遮へい体を置きましょう
課題3の結果
cross_eng.eps(2ページ目)
cross_eng.eps(3ページ目)
鉛の前後(左右の結果)で
1.173MeVと1.333MeVのスペ
クトルの強度がおよそ1/100
になっている
(1/1000になる鉛の厚さはど
の位か調べてみましょう)
Dump data
19
実習内容
1. Dump dataを用いた線源
2. まとめと宿題
Table of Contents
20
まとめ
 Dump機能を用いることで、dump dataとして蓄えた2次粒子を線
源とするシミュレーションが効率よく行えるようになった
 粒子情報と共にイベント番号とバッチ番号を同時にdumpしておく
ことで、1段階目も含めた統計誤差計算idmpmode=1が行える
(PHITS2.80以降)
idmpmode=1の注意点
•dumpデータをソースに使用する計算では、totfactが無視される
⇒dumpデータを作るとき(1段階目の計算時)にtotfactを設定する
•マルチソースと共に使用することはできない(代わりにSumtallyを使用する)
•[Parameters]セクションで指定する再開始計算(istdev<0)および全ての情報をダンプさせる
オプション(dumpall=1)と同時に使用できない
•従来の統計処理を行いたい場合は、イベント番号もしくはバッチ番号の含まれていない
dumpデータを使用するか、またはidmpmode=0を明示的に指定する
•dmpmultiの値を設定することで、dumpデータの使い回しが行える(dmpmulti=2.0⇒2回)
Acknowledgement
idmpmode=1およびdmpmultiによる使い回し計算は、日本原子力学会「2015年春の年会」での
波戸氏(KEK)らの発表“モンテカルロつなぎ計算における不確かさ評価”(演題番号N50)を参
考に改良を行ったものです。
Summary
21
宿題
1辺10cmの正方形の形状をもつ134Cs線源をz=-0.5cmの面上に
x=0,y=0の点を中心として配置し、鉛を越えた領域の実効線量を
求めよ
134Cs線源
(s-type=5を用いる)
光子のエネルギー
[MeV]と放出割合[%]
0.563 8.4
0.569 15.4
0.605 97.6
0.796 85.5
0.802 8.7
1.365 3.0
(割合は1壊変あたり)
水
鉛
この領域の実効線量はどのく
らいか?(PHITSに内蔵の実
効線量換算係数を用いる。
[recommendationにある
H10multiplier.inpを参照])
ただし、光子の換算係数に2
次電子の寄与が含まれてい
るため、電子・陽電子の輸
送は行わない(eminを調整)
Homework
22
宿題(解答例)
実効線量の空間分布(鉛の厚さを5.0cmとした場合)
1段階目
2段階目
dmpmulti=10.0
dmpmulti=1.0
なお、この実効線量の換算係数はAP(前方-後方)
の照射条件で評価されたものです。
Homework
23