河川工学 -流出解析その1- 合理式と単位図法 昼間コース 選択一群 2単位 朝位 http://www.suiri.civil.yamaguchi-u.ac.jp/ [email protected] 流出モデル(runoff simulation model)の種類 流出モデル:流出解析を行うための具体的解析方法.複雑な流出現象を比較的 簡単な物理的概念で説明し数学的に記述している.モデルには通常,適用範囲 がある. 合理式(rational formula) 単位図法(unit-hydrograph) 貯留関数法(storage function method) 等価粗度法(kinematic wave method) タンクモデル(tank model) 合理式 洪水到達時間T(流域最遠端に降った雨が流出し流域末に到達する時間)以上の降雨の 継続時間があった場合、流域末地点での最大流出量(ピーク流量)を求める手法。 流量 到達時間Tで流量は最大になる。 時間 到達時間T 流出と時間の関係は上図(単位図)のようになると仮定している。 全流域にわたって同一の強度で雨が降り続けると仮定。 小流域、雨量記録の少ない流域で適用される。 雨が20分だけ降った場合流域最下流における流出流量 流量 小流域C Aからの流出 Bからの流出 20分 Cからの流出 Q 小流域B 20分 時間 小流域A 20分 40分 20分 60分 足し合わせる(線形) 流量 この地点の流量を考える Q 流域全体の到達時間は60分 時間 20分 40分 60分 雨が40分だけ降った場合流域最下流における出流量 流量 小流域C Aからの流出 Bからの流出 20分 Cからの流出 Q 小流域B 20分 時間 小流域A 20分 20分 40分 60分 80分 流量 2Q この地点の流量を考える 時間 20分 40分 60分 80分 雨が60分(流域の洪水到達時間)だけ降った場合流域最下流における出流量 流量 Q 時間 20分 40分 60分 80分 120分 流量 Qp=3Q 時間 20分 40分 60分 80分 120分 流出量の最大流量(ピーク流量) Qp rA r:平均降雨強度(通常単位はmm/h) A:流域面積(通常単位はkm2) Qp:ピーク流量(通常単位はm3/s) 単位をそろえるための係数を導入 1 Qp rA 3.6 実際には降水が全て流出しないので補正係数(流出係数)を導入する。 合理式 1 Qp f p rA 3.6 到達時間 L 自然流域 Tp 1.67 10 S 3 0.7 都市流域 L Tp 2.40 10 S 3 L:流域最遠点から流量計算地点までの距離(m)、S:平均流路勾配 0.7 流域の状況 急な山地 起伏のある土地,山林 平らな耕地 山地河川 平地小河川 流出係数 0.75-0.90 0.50-0.75 0.45-0.60 0.75-0.85 0.45-0.75 流域が流出係数に応じていくつかの領域に分割できる場合 1 N Qp r f pi Ai 3.6 i 1 流出係数に応じて分割された領域 fp3=0.4 fp2=0.5 fp1=0.8 流域全体 例題1 • ある流域(面積2km2,到達時間0.8h)に降雨 強度15mm/h,継続時間3hの降雨があった。 流出係数fpが0.6のとき,ピーク流量を求めよ。 1 Qp f p rA 3.6 1 2 3 0.6 15(mm/h) 2(km ) 5(m /s) 3.6 例題2 • ある流域(面積2km2,到達時間0.8h)に降雨 強度15mm/h,継続時間3hの降雨があった。 この流域の3割は流出係数fpが0.8であり,残 り7割は0.5である。この場合のピーク流量を 求めよ。 1 1 Qp r f pi Ai r f p1 A1 f p 2 A2 3.6 i 1 3.6 1 3 15 0.8 0.3 2 0.5 0.7 2 4.9(m /s) 3.6 N 単位図法 河川のある地点における単位時間・単位有効雨量による流出ハイドログラフは同型と 仮定して、線形に重ね合わせてハイドログラフを求める(線形応答システム) 。 雨量 A 時間 上図のような単位時間・単位有効雨量があった場合に、例えば下図のような流出が 発生すると仮定する。 流量 Q 時間 T 単位図 雨量 B 1.5倍の雨量では? A 時間 単位図を1.5倍にすればよい 流量 1.5Q Q 時間 T 雨量 0.5倍の雨量が後に続く場合は? A B 時間 雨量Bに対しこのよう な流出が発生 雨量Aに対しこのよう な流出が発生 流量 Q 時間 T 単位図 流量 時間 0.5Q T 0.5倍した単位図 両ハイドログラフを足し合わせれば良い 雨量Aに対する流出 流量 雨量Bに対する流出 流量 Q 時刻 T + 時刻 0.5Q 単位図 T 流量 0.5倍した単位図 雨量Bの流出開始時刻は降り始め 時間から計ると雨量Aの分だけ遅 れていることに注意!! = 時刻 任意のハイエトグラフに対して同様の操作を行う。 貯留効果の小さい流域(線形性の確保)で実測値が豊富なところで適用される。 P.43 例題3.1 1時間に10mmの雨が降った場合の流出量(m3/s) 単位図 流量 0時間後 1時間後 2時間後 3時間後 4時間後 5時間後 0 20 50 30 10 0 60 流量(m3/s) 50 40 30 20 10 0 0 1 2 3 時間(h) 単位図 4 5 6 mm 35 30 25 20 15 10 5 0 7-8時の雨 単位図 流量 8-9時の雨 9-10時の雨 0時間後 1時間後 2時間後 3時間後 4時間後 5時間後 0 20 50 30 10 0 単位図法による計算法(p.44) 7-8時の雨 8-9時の雨 9-10時の雨 流出量 時刻 20m m 30m m 5m m 8時 0 0 0 0 9時 40 0 0 40 10時 100 60 0 160 11時 60 150 10 220 12時 20 90 25 135 13時 0 30 15 45 14時 0 0 5 5 15時 0 0 0 0 120 流量(m3/s) 100 80 60 40 20 0 0 2 4 6 8 10 時刻 7~8時の雨量(20mm)に対する流量 12 14 160 流量(m3/s) 120 80 40 0 0 2 4 6 8 時刻 10 12 8~9時の雨量(30mm)に対する流量 14 16 30 流量(m3/s) 25 20 15 10 5 0 0 2 4 6 8 時刻 10 12 9~10時の雨量(5mm)に対する流量 14 16 250 流量(m3/sec) 200 150 100 50 0 8 9 10 11 12 時刻 13 14 15 宿題: p.51の練習問題3において、問表3.1のハイエトグラフとp.187の 解表3.1の単位図を用いて問表3.2が得られることを確かめよ。 次回講義日に提出すること。宿題提出は単位取得のための欠 格条件です。未提出の場合は不合格になります。 単位図 0時間後 1時間後 2時間後 3時間後 4時間後 流量(m 3/s) 0 20 30 10 0 2-3時の雨 3-4時の雨 4-5時の雨 5-6時の雨 10m m 5m m 15m m 20m m
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