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平成20年度
液化窒素新規利用者保安教育
予備知識
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絶対温度(K) = 摂氏温度(℃)+273.15
• 圧力の単位
絶対圧‥‥‥真空を基準にした圧力
ゲージ圧‥‥大気圧を基準にした圧力
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圧力計はゲージ圧を示している
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圧力単位の換算
1気圧 = 1 [kg/cm2] = 0.1[Mpa] = 760 Torr
1[bar] ≒ 1気圧
1[psi] ≒ 0.07気圧
液化窒素及び窒素ガスの性質
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温度がとても低い
1気圧での沸点 77K=-196℃
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蒸発しやすい
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蒸発すると約650倍に膨張する
流動性がよい
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沸点付近の温度の窒素ガスは滞留しやすい
窒素ガスは無味、無色、無臭
窒息性ガスである
シーベル
もっとも手軽な液化窒素容器。
小容量(5~20L)のものが多い
魔法瓶のような2重構造になっていて、2重の容器の
間が断熱真空になっている。 軽量化のため外側
の容器はアルミニウム材などが使われている。
蓋は上からかぶせるだけで密封できない。
圧力上昇による容器破壊を防ぐため
容器から液化窒素を汲出す時はサイフォンを使用する
頚部が強度があまり高くないので、傾けて使用すると
変形、破損のおそれがある
変形、破損すると断熱真空が破れ、蓋周辺に霜がつい
て中の液化窒素を閉じこめ、圧力の異常上昇を招
くおそれがある
セルファー
自加圧容器 (50~1000L)
2重構造になっていて真空断熱層を持つ
加圧コイルは外界との熱接触を良くしてある部分
で、加圧弁を開くと加圧コイルに流れ込んだ液
化窒素が蒸発し、加圧弁を通って容器内部に
窒素ガスとなって戻ってくる。 このことによっ
て容器内部の圧力を上昇させる
加圧コイル付近の容器外面に霜がつくことがある
がこれは異常ではない
液取り出し弁は液化窒素を取り出すためのもので
ある。 この弁は液化窒素によって直接冷やさ
れる部分なので、熱収縮によって弁がロックさ
れてしまうことがある。 弁を開けるときは完全
に開けきらずに、また閉めるときは軽く閉める
程度にする。
ガス放出弁は容器内部の窒素ガスを大気中に
逃すためのもの。 液化窒素を他の容器等
に移すとき以外は常に開放しておく
安全弁、破裂安全板は容器内部の圧力が異常
に高くなった時にガスを逃し、容器自体の
爆発を防ぐための安全装置
液面計がついているものもあるが、
低温室所有のセルファーは、液化窒素汲
入れ口として使用するため取り外している
安全に取り扱うために
液化窒素の取扱で起こる事故
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窒息
凍傷
爆発・爆発による負傷
火災(爆発を伴う)
窒息について
酸素濃度%
症状
16~12
脈拍・呼吸数の増加
精神集中に努力が要る
細かい筋肉作業がうまくいかない
頭痛
14~9
10~6
10~6の持続
またはそれ以下
判断力が鈍る
発揚状態、体温上昇
不安定な精神状態
刺し傷などを感じない
酩酊状態
当時の記憶無し
チアノーゼ
意識不明
中枢神経障害
けいれん
チアノーゼ
昏睡⇒呼吸緩徐⇒呼吸停止
⇒6~8分後 心停止
窒素ガス自体に毒性は無い
空気中の酸素濃度は通常20%程度で
あるが、これが16%よりも低くなると
酸欠症状があらわれる
酸素濃度の低いガスを肺の中に吸い込
むと、血液中の酸素が肺の中に放
出され急速に窒息する
純窒素ガスを吸入した場合、一息で気
絶することもある
転倒などで死亡するおそれもある
部屋の中で液化窒素を多量に扱うとき
は窓を開けたり、換気扇を使用する
など換気に努める。
酸素濃度モニターを設置するようにする。
(警報ブザーが鳴る)
上位階の研究室ではエレベーターで液化窒素を運ぶことが多いが
充填した液化窒素容器と同乗することは避ける
エレベーターで運ぶ場合は、液化窒素容器のみを運ぶようにし、
他者が同乗してこないよう警告文を掲示するなど措置する
とくに 1~3年生 が利用するようなエレベーターでは
しっかりと対策を講じること
五十嵐キャンパス内で使用する場合は一般車両での運搬はしないこと
キャンパス外で使用するため車両での運搬が必要な場合は、転倒防止、換気
に十分気をつける。
20リットル以上の容器を車両で運搬する場合は法令の制限があるので、別途問い合わせてください。
窒息時の対応
酸素濃度の十分な環境へ避難する、避難させる
救急車、救急救命行為の必要な場合は避難させた後に処置すること
窒息症状があったと思われる場合は、病院で状況を説明し診療を受ける
凍傷について
軍手や布の手袋など液体が染み込む材質のものを着用して液化窒素を扱うと、液化窒素
が手袋にかかったときに、液が手の表面に長く留まるため、ひどい凍傷を起こす
液化窒素貯槽の汲出し用ノズルなど、液化窒素で冷やされた物体を掴む場合には、革手
袋など液体の染み込まない材質のもので手首のゆったりとしたものを使用する
革手袋等を使用していても長時間触れていると凍傷の可能性がある
液化窒素を汲出す際などに液化窒素が体や足にかかることもある。
液化窒素が染み込みやすい格好は避ける
窒素を汲出す際に液面を見る必要がある場合は、安全めがね等を着用する。
患部の感覚がなくなるほどの凍傷や、液化窒素が目に入った場合などは、すみやかに病
院で診察を受ける
液化窒素だけでなく、運搬中の蒸発ガスなど低温のガスにも注意が必要
爆発・破裂について
液化窒素は蒸発して窒素ガスになると体積が約650倍に膨張する
液化窒素を入れる容器を密封しないように気をつける
密封すると、容器内部の圧力が徐々に上昇し、容器が破裂する
流量調整バルブを閉止すると、電磁弁と
流量調整バルブの間に留まった液化窒
素が蒸発し、電磁弁を破損することがあ
る。 流量調整バルブは閉止しないように
する
火災について
広口の容器など空気に触れる面積の広いものに液化窒素を長時間放置してい
ると、酸素が窒素よりも沸点が高いため、空気中の酸素と液化窒素とが置
換する。
結果、液化窒素中に多量の液化酸素が含まれた状態になる。
液化酸素と有機物が接触するとなんらかの点火源によって発火、爆発する危険
性がある。
火気の取扱いには十分に注意すること。 火だけではなく電気、摩擦などいろん
なものが点火源になりうる。
また、不要な液化窒素は通風のよい屋外で廃棄する
使用上の注意(安全面から)
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使用する室内では、酸欠防止のため換気を十分行う
酸素モニターを設置することが望ましい
残ガス放出は通風のよい室外で行う。 ピット内には放出させない
乗用車や人の乗っているエレベーターで運搬しない
かかった液化窒素が、裾・靴などの部位に留まらないような服装で
汲み入れの際は革手袋を着用
汲み入れ、汲出しの際は眼を近づけない
容器や配管に入れたまま密閉状態にしない
容器の液取り出し口は水分や炭酸ガスが侵入し凍結することがないように
容器内の水分は使用前に取り除く
開放容器に入れたまま長時間放置しない
火気の取扱には十分注意する
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容器や装置の初期予冷は、液化窒素の蒸発を制御しながらゆっくり行う
事故例
北海道大学工学部窒息死事故(1992/8/10)
北海道大学工学部の低温実験室において、停電中に室温を下げようとして
容量25Lのシーベル内の液化窒素を室内にばらまいた。
液化窒素が気化して窒素ガスが室内に充満し、酸欠状態から呼吸不全となり、
助手、大学院生の2名が死亡した
研究センター窒息死事故(1990/8/27)
液化窒素貯槽からパイプで連結された3Fの実験室内で
100Lの容器への汲み出し作業を継続したまま退室した。
その後汲み出し作業を停止するために戻ったところ、
液化窒素が溢れ出ていたため停止作業をしたものの
室内に充満していた窒素ガスにより窒息し死亡した
食品工場液化窒素貯槽破裂事故(1992/8/28)
札幌市石狩町の食品工場で、液化窒素貯槽の弁を全て閉じたために
貯槽内部の圧力が上昇して破裂した。
周囲の建物も含め、当事者に7700万円、第三者に3億5900万円、
総額4億3600万円の被害が生じた
セラミック工場爆発事故(1991/1/18)
岐阜県揖斐郡揖斐川町のセラミック工場において、可燃性有機物のベンゼン(第四類危険物)
を含んだセラミックの粉末を、液化窒素で冷却しながら運搬していたところ、激しい爆発が起こり
従業員2名が死亡、1名が軽傷を負った
液化窒素が液化酸素に置換して、危険物のベンゼンと接し、
何らかの点火源によって爆発に至ったものと思われる
県立高校ラムネ瓶破裂事故(2004/5/29)
福岡県立門司高校の文化祭で、液化窒素を使った物質の状態変化の演示実験中
液化窒素を入れたラムネ瓶が破裂し、10人がガラス片で怪我を負った
新潟大学での
利用方法・利用状況
新潟大学は「第1種高圧ガス製造者」として
高圧ガス保安法の適用を受けています
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液化窒素貯槽
9,960L (8,964L利用可能)
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ヘリウム液化装置の予冷
液取り (課金します)
物質生産棟内の送ガス(ゲージ圧1.6気圧)
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利用時間 土日祝を除く
月曜9:00~金曜17:00
土日祝の利用を希望する場合は
教職員が一日3回
貯槽の日常点検を実施することが条件
液化窒素の利用は登録制 (容器一つ一つごとに登録)
登録容器と登録者(教員)名による利用量管理
登録者へ利用量・汲出し回数に応じた使用料金の請求
(平成20年度は液1リットルあたり62円、利用1回あたり620円の課金を予定)
汲出し前後の重量を量り、汲出し液量に換算している
登録証のバーコードをバーコードリーダーで読み取ることで
汲出しの記録は自動的にPCに貯めこまれている
異常な記録は適宜係員が排除しているので、使用料金に加算されない
貯槽の異常、自動供給装置に異常を発見した場合は、
ヘリウム液化室上階の核実験準備室(257室) 長谷川または立川へ連絡する
不在の場合は090-9424-2352 立川まで
窒素ガスの利用は登録制ではないが、利用者は使用開始時に立川に連絡すること
共用ベッセルを利用したい研究室にはあらかじめ登録証を作成する。
共用ベッセルは利用していないときは必ず返却すること。
液化窒素自動供給装置
使用方法
容器をロードセルの中央に置きます
適切な長さの管を容器に挿入します
容器に液化窒素が残っているときは
残っている液が管の先から飛び出て
くることがあるので注意してください
容器に挿入した管とベーローズ配管をつなぎます
Oリング付きセンターリングと上図の金具(KFクランプ)を
使って、
挿入した管とベローズ配管をしっかり固定します
ねじはきつめに締めてください
しっかり固定しないと継目から液化窒素が漏れます
挿入した管が容器の口の中央付近にくるように
容器の位置を調整してください
『表示』ボタンを押し
タッチパネル付き表示器が表示さ
れるようにします
バーコードリーダーでバーコードを読
み取ります
バーコードリーダーの両側にあるボタ
ンを押し「ピッ」という音がしたら
読み取り完了です
タッチパネル上の『充填条件』をタッチします
タッチパネルが「充填条件画面」に切り替わります
最大充填量が『設定量』として表示されます
設定量の数値だけ充填したい場合は
タッチパネル上の『充填状況』をタッチします
タッチパネルが「充填状況画面」に切り替わります
準備がよければ『開始』をタッチします
電磁弁が開き充填が開始されます
充填量が設定量に達すれば自動的に充填が終了
します
タッチパネル上の『停止』をタッチしても終了します
緊急時以外は『緊急停止』ボタンで終了しないでください
接続金具をドライヤーで温めて
霜を取り除きます
接続金具を外し、挿入した管を容器から取り出します
『表示』 ボタンを押し、タッチパネルをOFFにします
容器の容量よりも少ない量を充填したい場合
「充填条件画面」 で
設定量の数値の下の辺りをタッチします
テンキーが表示されますので、
希望の数値を入力します
例. 「5リットル」にしたいなら
「5」⇒「0」⇒「0」⇒「ENT」 で
設定量が5.00[L]になります
使用上の注意(安定供給のために)
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バーコードリーダーを落とさないように (衝撃に弱い)
KFクランプはドライヤーで温めてから外すこと (クランプ付近の霜が融けるまで)
温めずに取り外すとシール材のOリングが切れる
流量調整バルブを動かした時は、汲取りが終わったら元の位置に戻す
• 汲取りが終わったら自動供給装置の 『表
示』 ボタンをOFFにする
長時間つけっぱなしにしておくとタッチ
パネル液晶の寿命が短くなる
• 通常は タッチパネル上の 『停止』 を押
して終了すること
• 『非常停止』ボタンを押して汲取りを終了さ
せた場合は 右に捻って解除した上で『電
源』を一回切って入れなおす
• 登録容器に適合した登録証を用いる
異なる登録証を使用すると大量に溢れ出る
ことがあります
低温室液化窒素セルファーへの
液化窒素の汲出し方
1.頂部の盲栓を外す
2.ガス放出弁が開いた状態、
液取り出し弁、加圧弁が閉じた状態で
あることを確認する
3.盲栓をつけていた孔に適切な長さの
管を挿入します
以後、圧力計の数字が上昇しないことを
確かめながら、シーベルの場合と同
様に汲出してください
貸出用セルファー(120L)は
4台用意してあります
貸出には事前に登録証を作成してください
汲出し手順が終了したら
頂部の盲栓をしっかりと閉めてください
ガス放出弁は絶対に閉じないように
低温室液化窒素セルファーからの
液化窒素の汲出し方
1. ガス放出弁を閉じる
2. 圧力計を見ながら加圧弁を調整して
容器内部の圧力を上げる
3. 液取り出し弁(どちらか)を開ける
液体の取り出し中は常に圧力計に注意し、
過大な圧力がかからないよう加圧弁
を調整する
汲出しが終了したら
4. 取り出し弁を閉じ、加圧弁を閉じる
5. ガス放出弁を開ける
液取り出し弁が凍りついた場合はブロ
アーで暖める。