研修企画の考え方 (社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター 岩永 俊博 岩永 俊博とは 熊本県生まれ 熊本大学医学部卒業 熊本県立富合病院勤務(2年間) 牛深保健所、人吉保健所、阿蘇保健所の所長 保健所の仕事とは何だろう 実現すべき住民の健康とはなんだろう 阿蘇保健所、蘇陽町での活動 「こういうことが健康づくりなのかもしれない」ということに 気づく 国立公衆衛生院公衆衛生行政室長 各地での健康づくりの支援を経験 国立保健医療科学院 研修企画部長 地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 常勤顧問 研修とは ある期間に、ある能力や技 術を獲得するために設定され た一連のプログラム。 OJT 期間が設定され目的が明確であれば、研修といえ るが、何となく「現場で身につけろ」「先輩の後ろ姿 から学べ」では研修とはいえない。 研修会 獲得目的が明確であれば、研修といえるが、単な る手続きの説明では研修とはいえない。 住民への健康教育 期間が設定され目的が明確であれば、研修といえる。 県や保健所ではさまざまな研修が 行われています。 それらの研修は次のようなイメー ジではないでしょうか。 各研修の目的 また別の研修 別の研修 ある研修 こんなにいろいろな研修を、 たくさん進めているのに・・・・ 受講した人たちは自信を持って活動していますか? 地域の健康課題は解決の方向に向かっていますか? 子育ての問題は解決してきた? 精神障害者の問題は解決してきた? ほとんど解決しているとはいえない状況です なぜだと思いますか? 学習とは 経験によりひきおこされる認知構 造の変化と比較的永続的な行動 の変化であり、環境への適応行動 である。 認知構造:ものの見方や考え方の枠組み 学習 環境への適応行動 比較的永続的な行動の変化 経 験 両方が重要なのです 認知構造の変化 直接経験:本人が直接体験する 代理経験:他人の経験を観察する 模擬経験:設定された場で経験する 教授ー学習のステップ 提 示 動 機 づ け 再 注 習 意 得 現 化強 転 移 導 入 研修受け入 れの準備 展 開 知識や技術、認知 構造の受け入れ まとめ 受け入れ の確認 提示の段階 「自分は、これから何を学ぼうとしているの か」の認識を持たせる 研修目的、期待される獲得能力の明示 案内、お知らせ、挨拶など 動機づけの段階 「自分が学習しよう」という意欲を高める ○これを学ぶことが、自分の仕事や役割に とって、自分の組織にとって、どのような意 義があるのかを確認できる 所属意識が高い場合は、「組織にとって」が強 い動機に結びつくが、そうでない場合は逆効果 の危険性がある 動機づけの方法 教示型 偉い人の挨拶でおだてるなど。 相互学習型 課題整理法 学習者が企画段階から参加 注意の段階 学習の全体像と学習目標の設定 ある期間内ですべてを学ぶことは無理。 重要ポイントを絞り込む。 全体像の中で、今回はどの部分なのかを 明確にする。 習得の段階 新しい知識や技術考え方などを習得する 習得すべき内容や程度によって、それぞれ に適した方法を選択する。 教 示 型 :講義など 相互学習型:グループ演習など 体 験 型 :教育ゲームなど 再現の段階 学んだことを実際にやってみる 習得した内容について、テキストやマニュ アルを作成する。 実際の体験、練習問題、事例検討など。 転移の段階 学習内容と実践での活用との橋渡し 習得した内容を自分の業務にどう生かす かの討議。アクションプランの作成。 実践に向けての練習問題、事例検討など。 強化の段階 再現、転移のフィードバック 再現や転移の内容をフィードバックする。 よいところを評価、間違ったところを修正 研修を ある期間に、ある能力や技 術を獲得するために設定され た一連のプログラム。 と、定義すると 研修目的の設定 獲得しようとする能力や技術は何か? 研修ニーズの把握 研修ニーズの把握方法は? ニーズの考え方 理想とする状況 目的とする状況 足りない部分 = ニーズ、現状の問題とし て認識される 目的とする状況はいかにして設定されるか 目的とする状況 実践者としての 悩みや疑問、 思いなど ぶ思 つい かや り知 合識 いな ど の 研修担当者としての知識 経験から得たもの もし自分だったら スタッフ、専門家の支援 さきほどの研修のイ メージをもう一度考えて みましょう 各研修の目的 また別の研修 別の研修 ある研修 個々の研修の工夫に頭を痛めていませんか それぞれの研修の目的 がつながりを持つと強い 最終的な能力・技術 獲得すべき技術 獲得すべき能力 上位の目的 目的 ある研修 別の研修 また別の研修 しかし、本来的には 研修活動全体の目的 全体の目的から考える 研修活動全体 全体目的達成の手段 全体目的達成の手段 分野 分野 さらに手段 分野 手段 さまざまな事業 計画を立てるということは 現在の状況 理想の様子 実現すべきあるべき姿、理想の姿とは? 自分たちが考えて いる要望や「不安の 裏返し」ではない。 単に「こうあればいい」、 「こうしたい」ということで もない。 計画は分けて考えましょう 1.基本計画 事業計画 設計図から具体的な作業計画へ 2.定期点検計画 3.改修計画 4.事件察知計画 5.事件への対応計画 研修に当てはめてみると 1.基本計画 事業計画 なんのためにどんな研修をしたらいいんだろう 2.定期点検計画 研修の成果は生かされているか 3.改修計画 技術や知識の問題点をどのように補うか 4.事件察知計画 技術や知識の未熟による問題発生の把握 5.事件への対応計画 個々の研修の企画の権限しかない場合 (何か一つの研修を企画する場合) 目的の具体性 研修の目的、目標は具体的に表現されているか 研修の目的、目標が具体的に 表現されていなければ、効果 的な研修の組み立ては困難で すし、評価も困難です。 研修の目的の例 地域組織育成能力の向上 在宅看護技術の習得 エイズに関する基礎的知識の習得 目的が抽象的 地域組織育成能力 技術の習得 基礎的知識の習得 ○分かったつもりになりやすい ○本当はどういうことなのか分かっていない ○いい言葉なので、いいことのように思える ○達成度が測定できない=評価ができない きれいな言葉は心地よく、安心するから要注意 抽象的な目的の例 地域組織育成能力の向上 具体的に何ができること? 在宅看護技術の習得 今回はその中でどのようなこと のできる力? エイズに関する基礎的知識の習得 基礎的知識とは何? 行動目標 ○○ができるようになる ○○ができる 学習目標 ○○が分かる ○○が分かるようになる 研修の評価 目的は達成できたのか 費用、期間、資源の投入 効率、効果など 現 状 結 果 回数 参加人数 かけた時間 かかった費用 イ ン プ ッ ト 介入(活動) ・基本となる考え方 ・展開方法 ・展開の内容 アウトカム評価 本当にいい活動か どうかが大切です プ ロ セ ス 評 価 目的の達成度を測定するために も目的の具体性が重要です。 学習のステップ 導 入 研修受け入 れの準備 展 開 知識や技術、認知 構造の受け入れ 学習のステップに合わせた評価と いうことを考えてみましょう まとめ 受け入れ の確認 学習のステップによる評価 導 入 研修受け入 れの準備 展 開 知識や技術、認知 構造の受け入れ まとめ 受け入れ の確認 受講者自身の受け入れ準備 や動機付けはできたか? 観察、テスト 知識や技術は受け入れられ たか? テスト、レポート 態度や行動の変化は起こっ たか? 観察、他者評価 評価のレベル レベル4 成果達成度 レベル3 行動変容度 レベル2 学習到達度 レベル1 研修満足度 職場の業績向上や地域の変化など 他者評価や具体的な業績の変化 日常行動や意識の変化など インタビューや他者評価 知識や技術など、目標獲得の程度 テスト、レポート 研修に対する満足度 時期、場所、時間、環境など 研修で獲得しようとすることは何か? 新しい知識の獲得 新しい技術の獲得 知識の再確認、再認識 技術の再確認、再認識 知識や技術の応用能力 知識や技術の開発能力 講義を基礎に再 現、転移、強化 C-Cテスト、教材 作成、事例活用 法など 事例活用法、事 例研究など 研修は単発なのかシリーズなのか? 1回だけで修了 同じ受講者が段階的に、時間をおいて受講 研修期間はどの程度可能なのか? 一つの獲得目標に対して 数時間 1~2日、2~3日、それ以上 その他 受講者の数 会場の広さや設備 研修を企画する際 以上のようなことを視野に入れ、研 修方法や評価方法を選択する 実践型研修 • • • • 課題の明確化 解決策の決定 実践の試み 学びの確認、普遍化の検討 ある素材をもとに受講者が組み立てる 実 践 型 参 加 的 ※ 講 義 型 内容構造化の準備 受講者の主体性 ※:参加的手法を用いた研修という意味 グループ作業、ディベート、事例活用法、事例研究など いずれにしても 研修目的を明確にし、目的 に応じた方法を用いることが 重要です。
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