読書行為>と場

11月30日 サブゼミ発表
<読書行為>と場
小幡将久 小林洋平 田中彰人
序章


これまでの「読書」研究
この論文の<読書行為>研究
– 読書の5次元

対象、行動、志向、共在、場所
– <読書行為>の定義

「あらゆる対象・行動・志向・共在・場所に関する文字メディアとの接触」
– 目的

日常的に行われている<読書行為>の存立を「場所」という観点か
ら究明する。
– 研究方法

文献、インタビュー、観察
2
目次
序章
第Ⅰ部

第一章

第二章

第三章
第Ⅱ部

第四章

第五章
結章
電車と<読書行為>
自宅と<読書行為>
理美容室と<読書行為>
生活の中の<読書行為>
移動体電子機器と<読書行為>
3
第一章 電車と<読書行為>
小林洋平
電車内での<読書行為>の起源

車内読書の起源 =人力車
– 読書空間に適した「安定した場」

汽車内読書の誕生
– 消化すべき「空白時間」

読書の均一化
– 音読という伝統VS公共性の論理

読書から<読書行為>へ
– 読書対象の多様化
参考:永嶺 重敏, 2004, 『<読書国民>の誕生』
5
多様化する<読書行為>の対象
←電車内に偏在する様々な広告
↓電車内の映像広告
6
電車内という場の性質

時間的剰余
– 制限された自由な「空白時間」

空間的制約
– 「まなざしの体制」(田中2007)




視覚以外の感覚の規制
選択肢の限定
どうしても「気になってしまう」モノ
黙読による「読書」→<読書行為>
参考: 田中大介, 2007, 「車内空間の身体技法 ―戦前期・電車交通における〈狼雑さ〉と『公共性』」
7
電車内<読書行為>成立の三要素


「安定した場」
「空白時間」
– 消閑を要請

「まなざしの体制」
– 他の行為の可能性を排斥し選択肢を狭める
– 「まなざしの体制」からの脱却

共在による「身体所作の自己検閲」(田中 2007:44)機能の低下?
8
乗客の視点から見た<読書行為>

電車の中の場所
– 「四隅」:電車のドアと座席が直角に交わる空間


比較的身体的な自由を保障
身体所作
– 座わっている/立っている
– 手の所作
– 携帯電話

電車内空間の意味づけ
– 「読書する場」としての電車
9
第二章 自宅と<読書行為>
小幡将久
1.自宅という空間の性質

一人になれる場

家族と共用の場

所有物すべてが対象

制限のゆるい「空白時間」
11
2.自宅の中での私的空間

私的空間
・・・自室、トイレ、浴室など
趣味の読書
集中
入浴中の読書
12
3.自宅の中での公的空間

公的空間
・・・リビングなど
家族の目
家族で共有する対象
子供の勉強
13
第三章 理美容室と<読書行為>
田中彰人
1.美容室という場

「安定した場」
– 椅子に座る

「空白時間」
– 施術までの待ち時間、施術中(散髪中、染髪中)の時間

限定された選択肢
– 「見る、聞く、話す」は可能
– 高い身体の拘束度(首すら自由に動かせない)

共在
– 施術中は美容師と一緒にいる

「気になってしまうモノ」(田中)としての雑誌
15
美容院・理髪店で施術中にどのようなことをしていますか(複数可)
担当者と会話
65.2
備え付けの雑誌・新聞・本を読む
49.6
鏡で施術を見る
19.5
携帯電話を利用する
5.6
持参した雑誌・新聞・本などを読む
5
テレビ・DVDを見る
3.9
音楽を聴く
2.3
0
10
20
30
40
50
60
ネットリサーチ(my アンケート)
16
2010年9月9日~9月14日 回答数19,931(男性7,927名、女性12,004名)
70 %
美容室の様子(ギミック北浦和店)
17
18
2.読ませる力

消極的読書としての<読書行為>
– 「パラパラ読む」(男性G)
– 「自分が普段読まなそうな雑誌」でも読む(女性Y)
– 「さーっと目を通す」「写真だけ眺める」「なんとなく手に取る」…

パフォーマンスとしての<読書行為>
– 美容師の親切への応答として


「最初の一冊のだけ儀礼的に読む」(男性G)
「変えてくださいと言うのは悪い気がする」(女性W)
– 美容師への牽制として(「読むか話すか」の図式を利用)

「髪を切りに来ただけなのに一々口をきかれる」のがいやなので、
普段だったら「絶対読みたくない」雑誌を「仕方なく」読む(男性C)
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美容院・理髪店で施術中にどのようなことをしていますか(複数可)
担当者と会話
65.2
備え付けの雑誌・新聞・本を読む
49.6
鏡で施術を見る
19.5
携帯電話を利用する
5.6
持参した雑誌・新聞・本などを読む
5
テレビ・DVDを見る
3.9
音楽を聴く
2.3
0
10
20
30
40
50
60
ネットリサーチ(my アンケート)
20
2010年9月9日~9月14日 回答数19,931(男性7,927名、女性12,004名)
70 %
3.読ませない力

「え?ケータイって使っていいの?」(男性Go)
– 普段の生活で「空白時間」があれば常に携帯電話を操作してい
る男性G、女性Y、男性Hも利用しない。
– 染髪中も利用しない
→独特の美容室内秩序空間の存在
– サンクションの不在
– 「よそ者」の自己規制


「お客様」としてもてなされている空間
他の客とのコミュニケーションの不可能性
⇔ 店員同士のコミュニケーション
21
結章
まとめ

<読書行為>の必要条件
– 「安定した場」
– 「空白時間」

<読書行為>の促進条件
– 選択肢の制限


身体的制限、他者の視線、自己規律
<読書行為>の複雑さ
– 対象、行動、志向、共在の複雑な絡まり合い
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おわり
ご清聴ありがとうございました