組織における会計の位置づけ - suzukiseminal top

製品ライフサイクル
製品ライフサイクル
製品の規格・開発から市場への
投入、成熟を経て、最終的に市
場から撤退するまで、製品のたど
る様々な段階
1つの製品・サービスや1つの製品グループには多くの経
営意思決定が関連しており、それらの生産を効果的に計
画し、コントロールするには、会計担当者とマネージャー
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は、製品のライフサイクルを考慮する必要がある
典型的な製品ライフサイクル
売上ゼロ
売上増加
売上安定
売上低下→売上ゼロ
(企画・開発)
(市場投入)
(成熟期)
(市場からの撤退)
• マネージャーは、計画プロセスにおいて、ライフサイクル全体の収益と
コストを認識しなければならない(計画)
– そして会計は、製品ライフサイクルを通じて、実際のコストと収益を
跡付ける
• 計画した費用・収益と、実際の費用・収益を定期的に比較することに
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よって、現時点での製品の収益性を評価し、現時点での製品ライフサ
イクルの段階を決定し、必要に応じて戦略を変更する(コントロール)
バリューチェーン
バリューチェーン
組織の製品やサービスに価値を
付加する一連の作業
会計担当者はバリューチェーン職能においてカギとなる役割をなす
職能の全てが企業の成功にとって重要というわけではないので、経
営者はどの職能によって企業の競争を獲得・維持するのかを決定し
なければならない
会計担当者は、バリューチェーンの各段階で発生するコストと比較し3
て、そこで生み出される価値に焦点をあてなければならない
組織における会計の位置づけ
意思決定は組織の成功に重要なものである
↓ マネージャーを支援するために・・・
多くの企業で会計担当者を雇用している
(彼らは様々な権限と責務を与えられている)
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ライン権限とスタッフ権限
ライン権限
部下に対して下方に行使される
↓
「命令」に近い意味
スタッフ権限
「命令」ではなくアドバイスをする権限
※どの方向に対してでも行使できる
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ライン部門とスタッフ部門
ライン部門
組織が基本的な活動を行うことに直接
的な責任を持つ全ての組織構成単位
スタッフ部門
ライン部門を支援・補助し、組織の基本
的な活動とは間接的に関連する
※ 企業の各補助部門は、製造部門が担当する
ライン職能を支援している
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コントローラー
コントローラー
組織における会計の最高責任者
ラインの役割を、販売担当役員や製造担当役員と彼らの部下が
務めるのに対し、コントローラーはスタッフの役割を担う
会計部門は、ライン部門に対して直接に権限を行使することはない
↓
会計部門の役割は、他のマネージャーに専門的なサービスを提供す
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ることにある (予算編成・差異分析・価格決定など)
コントローラーの仕事・地位(1)
コントローラーの仕事は、主に外部報告目的のデータ収
集に限られることがある
コントローラーが全事業部において経営の計画とコント
ロールを担う企業もある
※ 多くの企業では、コントローラーの地位は、これら両極端
の間のどちらかに相当する
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コントローラーの仕事・地位(2)
コントローラーは内部の「コンサルタント」としての役割を
強めつつあり、マネージャーが意思決定に有用な情報を
集めることを支援している
コントローラーは会計部門に対するものを除き、ラインの
権限を持っていない
しかしコントローラーは、関連するデータの報告と分析に
よって、組織の目標と一致する論理的な決定に経営者を
導く影響力を行使する
ある製造業の組織図 (図表1-8)
代表取締役
販売担当役員 技術担当役員
生産担当役員
各支店販売マネ 研究開発担当 受払・在庫、検査 製造責任者
購買
鋳造部門 機械部門 組立部門 仕上部門
人事担当役員
財務担当役員
雇用担当
財務担当
考査担当
会計担当
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コントローラとトレジャラーの相違
コントローラー職務
– コントロールの計画
– 報告と分析
– 評価と助言
– 税務管理
– 政府報告
– 資産保全
– 経済的評価
トレジャラー職務
– 資本の調達
– 投資家対策
– 短期資金調達
– 預金管理
– 与信と回収
– 投資
– リスク管理(保険)
・多くの人々は、コントローラーとトレジャラーの職務を混同している
・管理会計は、コントローラー職務の上からの3つを提供する主たる手段である
・トレジャラーは財務的な事項、コントローラーは業務的な事項に関わっている
・しかし、会計と財務の正確な区分は企業ごとに異なっており、小規模組織では、
同一人物がコントローラーとトレジャラーを兼ねることもある
公認管理会計士
公認会計士(CPA)
企業経営者が提供する財務
情報の信頼性を、公衆に対し
て再保証する独立の監査人
公認管理会計士(CMA) 内部会計担当者のCPAであ
り、管理会計士協会(IMA)の
CMAプログラムに総括されて
いる
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※ CMAの資格は、CPAの資格に相当するとされている
トップマネジメント
会計を学び、さらに管理会計担当者として働くことは・・・
① 会計部門で職が得られる
② 経営における最高の地位に就くことができる
③ 複雑な組織でも、その全てを扱うので、幅広い
知識を多く得られる機会ができる
近年の調査によると、マーケティング、製造、技術などの
他の分野ではなく、会計の部門からキャリアを積み始め13
たCEOが増加している
変化への対応

会計担当者は経営実務や技術の変化にシステムを適合 させなけ
ればならない
•
10年前までは、マネージャーの意志決定環境は変化していたのに、
会計システムは変わっていなかった
•
今日、多くの先進企業は、複雑で技術的でグローバルな環境に合
わせて会計システムを変化させた
•
会計担当者は、単に問題を指摘するだけでなく、問題解決の一部を
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担うようになっている
最近のトレンド(1)
主に3つの要因が、管理会計に変化をもたらしている
① 製造業中心の経済からサービス業中心の経済の移行
② 激化するグローバルな競争
③ 技術進歩
サービス産業ではますます競争が激しくなっており、会
計情報の利用が増加している
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最近のトレンド(2)
経済変化に打ち勝つ競争力を維持するには、マネー
ジャーは意思決定がコストに与える影響を理解し、会計
担当者はマネージャーの予測を支援する必要がある
マネージャーは意思決定プロセスにおいて、会計情報を
直接利用できるので、全てのマネージャーは以前より会
計情報をよく理解する必要があり、会計担当者は理解し
やすいデータベースを作らなければならない
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ジャストインタイム思考
マネージャーは (1)生産工程に製品が滞留する時間を減らす
(2)価値を付加しない活動(検査や待ち時間等)
に製品が滞留する時間をなくす
といったように、ムダを排除していかなければならない
↓ そこで採用された考え方が・・・
ジャストインタイム思考 生産工程に製品が滞留する時間を減らし、
価値を付加しない活動に製品が滞留する
時間をなくすことで、ムダを排除する考え 17
コンピュータ統合生産システム
コンピュータ支援設計(CAD) 効率的に生産できる製品の設計
コンピュータ支援生産(CAM) 生産設備を指示・制御する
CADにより、製造コストが大幅に下げることができ、CAMによって、
遅延の少ない、効率的でスムーズな生産フローが可能となる
コンピュータ統合生産システム(CIM)
ロボットやコンピュータ制御機械に加え、CADやCAMを利用するシ
ステムで、完全なCIMシステムを導入した企業では、ほとんど労働
者を使用せず、日常作業は、ロボットとコンピュータ制御機がこなす
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倫理的行動基準
管理会計担当者の倫理的行動基準
IMAが制定したCPAとCMAの行動規範で、能力、守秘、
誠実さ、客観性からなる
客観的で正確な外部・内部の財務報告をなすことは、基
本的にはラインマネージャーの責任だが、管理会計担当
者もその報告に責任を負っている
会計システム、手続、編集が信頼でき、不正がないこと
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を保証するのは、全ての会計担当者の責任である
倫理上のジレンマ
非倫理的な行動 = 専門家の倫理基準を犯す行動であるが、基準
には個人の解釈と判断に委ねられるケースも多い
このジレンマに対する正しい答えはないが、重要なポイントは、倫
理的な側面を認識し、判断に当たってそれを考慮することである
経営者が真に誠実で、倫理基準を明確に支持することは、組織全
体の倫理的な行動にとって、唯一最大の動機づけとなる
最終的に、倫理基準は個人的なものであり、各人の価値観による
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第一章のまとめ(1)
会計情報の主な利用者について
会計情報は、企業内部のマネージャーが、短期の計画
とコントロールの意思決定、非経常的意思決定、全社
方針と長期計画の作成を行うために役立つ
マネージャーは、会計情報を利用することにより、業績
報告、注意喚起、問題解決が可能となる
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第一章のまとめ(2)
会計システムの設計に関する諸問題
管理会計情報システムは、マネージャーに役立つよう
設計され、コスト便益基準(優れた決定による便益がシ
ステムのコストを上回ること)によって判断されるべき
システムがもたらす便益は、行動上の諸要因(システム
がマネージャーとその意思決定にどう影響するか)に影
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響される
第一章のまとめ(3)
計画とコントロールにおける予算と業績報告の役割
予算と業績報告は、計画とコントロールに必須の手段
予算は計画プロセスで作成され、組織の目的を行動に
変えるための手段となる
業績報告は実際の結果を予算と比較し、マネージャー
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は業績報告を業績の監視・評価・報償に利用し、それ
によってコントロールを行う
第一章のまとめ(4)
バリューチェーン職能での会計担当者が果たす役割
会計担当者は、計画とコントロールにおいてカギとなる
役割を果たす
会計担当者は、企業のバリューチェーン全体を通じて、
意思決定者のためにコストと収益の情報を収集・報告
する
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第一章のまとめ(5)
コントローラーとトレジャラーの役割の比較
会計担当者は、ラインマネージャーに情報と助言を提
供するスタッフ従業員である
会計の責任者はコントローラーと呼ばれることが多い
トレジャラーが主に財務業務に関わるのに対して、コン
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トローラーは業務の実績を測定・報告する
第一章のまとめ(6)
管理会計の最近のトレンドについて
会計システムと会計担当者自身の将来的価値は、どれ
だけ素早く適切に変化に対応できるかにかかっている
会計システムに影響する最近のトレンドとして、経済に
おけるサービス産業の成長、グローバルな競争、技術
の進歩などが挙げられる
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第一章のまとめ(7)
管理会計担当者の倫理的責任について
外部・内部会計担当者は、倫理基準に従うことを期待さ
れている
しかし多くの倫理上のジレンマは、価値判断を必要とし、
単に基準を適用すればよいというわけにはいかない
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第一章のまとめ(8)
企業において管理会計どのように利用されるか
管理会計は企業の最終的な目標・目的を達成するため
に不可欠な役割を担っている
管理会計情報は、製品・サービスのライフサイクル全体
を通じて、また活動のバリューチェーン全体を通じて利
用されている
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参考文献
Horngren,C.T., G.L.Sundem, and W.O.Stratton,
Introduction To Management Accounting, Eleven Edition,
Prentice Hall, 1999(渡邊俊輔監訳『マネジメント・アカウ
ンティング』TAC出版、2000年)
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