授業がうるさくなったら 翌週から指定席制にします。 周りに迷惑をかけないように! 履修上の注意 • 大人数の講義なので、細かく個人の都合に 応えることは不可能です。 • そこで、本授業では公式なルールに従います。 • 履修要覧(p.10) – 『履修した科目の単位を修得するためには、その 授業科目の授業に3分の2以上出席し、所定の 試験に合格しなければなりません。』 – ①3分の2の出席、②試験の合格 • 本科目では、本日からの三分の二が単位習 得の必要条件①になります。 『世界経済の謎』の二つのプロ ローグ 第三回 2005年4月25日 久松佳彰 プロローグ 日本の開国 • 1852年~53年、ロシア のプチャーチン提督の 日本を目指す航海 • 目的は、日本との北方 の領土の確定と、日露 間の通商条約の締結。 • 随行していたのは作家 のゴンチャロフ。『日本 渡航記―フレガート「パ ルラダ」号より』岩波文 庫 プチャーチン提督の航海 プチャーチン提督 vs. 川路聖謨公使 • プチャーチン: – 日本人が通商を怖れるのは杞憂であり、通商は人民の 福祉を潤すが、通商によって凋落した国民はなく、かえっ て富強になった。 – そして、外国人が日本人と取り引きをする品物の例を挙 げて説明した。 – 『窓に紙が貼ってあるから(障子)寒い。ガラスにすればよ い。』 – <日本・塩⇔ロシア・魚>の取り引きはどうか? – 全人民で米を作る必要はなく輸入して、その代わりに人 民の一部を採鉱に使えば、富は増える。 プチャーチン提督 vs. 川路聖謨公使 • 川路聖謨(その1) – 魚・ガラス・米などの必需品の輸入は結構である。 – しかし、見事な時計(立派な卓上天文時計)を運 んで来たら、日本人は何もかも手放して素っ裸に なってしまうだろう。 – 時計は気に入ったが、本日の話は笑ったまま打 ち切りにするのが上分別だと思う。 プチャーチン提督 vs. 川路聖謨公使 • 川路聖謨(その2) – 交易は日本では、まだ新たな未熟の業である。 – どのように、どこで、何を交易するべきかを考える 必要がある。 – 娘は嫁に出すが、それは娘が成人をした後でで あって、成人にならないと出さない。 – 交易も日本が成人にならないとできない。 プチャーチン提督 vs. 川路聖謨公使 • プチャーチンが述べた のは、理路整然とした 自由貿易論 • 川路聖謨が述べたの は幼稚産業保護論と呼 ばれる代表的な保護貿 易思想 自由貿易の恩恵 • 鎖国政策により、約300年にわたって「自給自 足」を行なってきた日本が、いっきに「自由貿 易」に転換した。 • 経済学にとっては、日本はほぼ実験室のよう な条件で自由貿易の経済効果を試した。 自由貿易の恩恵 • ヒューバー(1971)の研究 – “Effect on Prices of Japan’s Entry into World Commerce after 1858” JPE 79 (3) • 1846~55年の商品価格体系と、1871~79 年の商品価格体系を比較 • 主要輸入品(綿花・綿糸・綿織物・金属・砂 糖)の平均価格は55%も下落 • 主要輸出品(生糸・茶)の平均価格は33%も 上昇 自由貿易になると… • (国際価格>国内価格)である商品は輸出さ れ、(国際価格<国内価格)である商品は輸 入される。 • 貿易によって自国の価格にも変化が起きる。 – 輸出商品の国内価格は上昇し始める(理由:輸 入の需要が増大するから) – 輸入商品の国内価格は低下し始める(理由:海 外から安価な商品が入ってくるから) • 調整が終わると、国内価格≒国際価格に。 自由貿易になると… • 輸出品を生産する生産者の収入を増加させ、 輸入品を消費する消費者の生活費を低下さ せるので、わが国全体としては貿易から利益 を受けることになる。 • 輸入品価格が55%も低下、そして輸出品価 格が33%も上昇 – 物凄い変化 – 鎖国下の日本経済が世界経済の実勢と離れて いた 開国の利益の推計 • ヒューバーは、実質賃金を推計して、日本が 開国から受けた利益の大きさを測ろうとした。 – 実質賃金とは、労働者が受ける名目額の賃金を 消費財の名目価格(物価)で割った値 – 労働者の購買力(実質所得)を測る • その賃金で消費財(例:食べ物)がどれだけ買えるか • 1846~55年→1871~79年 – 名目賃金は20%上昇、生活必需品の価格は 30%低下、つまり実質賃金は67%の上昇! 開国の利益の推計 名目賃金(1871 79) 1 0.2 1.71 生活必需品の価格(1871 79) 1 0.3 • 1846~55年の、名目賃金および生活必需品の価 格を1としたときには1846~55年の実質賃金は1÷ 1=1になる。1871~79年については教科書に従う と上記のような計算になり、約70%の実質賃金の上 昇ということになる。 わが国をめぐる貿易関係 • 1997年において、日本の貿易額は、輸出・輸 入ともに世界第三位であった。 • 貿易相手地域では、アジアの貿易シェアが近 年高まっている。 • 貿易の品目構成では、輸出も輸入も機械類 が第一位である。 第Ⅰ部: 国際取引の5つの動機 • • • • (a) 異なった財の交換 (b) 異なった時点に行われる支出の交換 (c) リスクの分散 (d) 価格差からのもうけをねらった行動(裁 定) • (e) 投機 • これらが第Ⅰ部の内容です 第Ⅱ部 プロローグ(p.168~) • 経済組織における「ねずみ講」的な仕組み – 「ねずみ講」ってなに? • 『会員を鼠算(ねずみざん)式に拡大させることを条件 として、加入者に対して加入金額以上の金銭その他の 経済上の利益を与える一種の金融組織。投機性が強 いので法律で禁止。連鎖配当組織。無限連鎖講。→ マルチ商法』(広辞苑) • 鼠算:『和算で、「正月には雄雌2匹の鼠が12匹の子 を生み、2月には親子いずれも12匹の子を生み、毎 月かくして12月に至れば、鼠の数は2×712の算式に より276億8257万4402匹の数になる』という問題 ねずみ講とバブルの理論 • ねずみ講は欧米でも別の名称で存在する • 「チェイン・レターズ」、「ポンジーのゲーム」、 「ピラミッド方式」など。 • アメリカでは「ポンジーのゲーム」と呼ばれる が、これは1920年代のボストンで、ねずみ 講を始めた人物、チャールズ・ポンジーの名 前からきている。 アルバニアのねずみ講 アルバニア アルバニアの貧しさは人災 • アルバニアはアフリカの諸国と肩を並べるくら い貧しい。ギリシャの一人当たりGNP(所得 の尺度)はアルバニアの20倍! • 海外に移住したアルバニア人の送金が頼り。 • アルバニアの貧しさは、1946年のアルバニ ア人民共和国の建国以来、40年も独裁を続 けたホッジャ労働党第一書記の政策に原因 がある。⇒人災 エ ン ベ ル ・ ホ ッ ジ ャ アルバニアの孤立化への道 • スターリンの共産主義 – つまり、米国とは貿易せず • スターリン⇒フルシチョフの穏健路線 – アルバニアはソ連と断絶 • アルバニアは自由主義社会と共産主義社会 と断交 • でも、中国がいたが、中国・米国関係の改善 と共に、アルバニアは中国と断絶。 • 鎖国の開始!自給自足⇒貧しさへの道 ホッジャ死後のアルバニア • 1992年サリ・ベリシャの大統領当選 – 市場経済システムの積極的導入 – 欧米からの経済援助 • 市場経済は上手くいったのか? 「ねずみ講」事件 • 共産主義時代: 銀行なし⇒タンス預金 • 銀行設立は1992年以降 • ところが、預金の大部分は、政府の監督下に ある銀行ではなく、監督下にない「投資会社」 に向かった。 • 理由: 金利の差にあまりに違いがあった • 年利19% vs. 月当たり8%(年利152%) 最大の投資会社ヴェファ • 高い金利で預金を集め、預金者に対して月 利で6~10%の金利を払っていた。 • その金利支払の元は? • ヴェファの説明では「鉱山、スーパーマーケッ ト、旅行業、食品産業、材木加工、、、世界1 8カ国との取り引き」 • 事実は、スーパーや小さなソーセージ工場に 投資は限られていた つまり、、、 • 投資会社は「ねずみ講」だったのである。 • ここでの「ねずみ講」とは、 – 高い金利で預金を引き付け、その元本と金利の 支払には次の預金を回し、その元本と金利の支 払にはさらにその次のよきんを回すという商法 • 預金の流入が止まれば破綻⇒実際、破綻 • 怒った国民が暴動化(1997年) • 無政府状態へ 政府の釈明 • ベリシャ大統領:『ねずみ講を規制しなかった 過ちは認めるが、政府が被害を弁済する義 務はない』=まぁ正論 • しかし、投資会社の献金が政府の政治資金 源だったのである! • それが暴動から無政府状態になる原因だっ た • 多国籍軍の介入 「マネー・ゲーム」の危険な誘惑 • アルバニア国民も「うさん臭いビジネスである ことは分かっていた」らしい。でも、ブラック・マ ネーのマネー・ロンダリングだと思っていたと いうのである。 • たしかに隣国セルビアとの密輸があり、資金 洗浄需要=資金流入はあったのである。 • そこで、アルバニア人たちもマネー・ゲームの スリルに麻薬のように引きつけられてしまった に違いない。 でも、、、 • アルバニア国民はたった300万人。 • ねずみ講はいつまでも続くはずがない。 • では、「ねずみ講」的なものはアルバニア特 有のものだろうか? • 実は毎日の生活と切り離せないものもあるの だ。 来週からは • 世の中の「ねずみ講」 的なものを見ることにし ます。 • 次回は、第10章「ねず み講とバブルの理論」 をやります。 今日は終わり。 お疲れ様 Have a nice Golden Week!
© Copyright 2024 ExpyDoc