1 第4回岐阜建築鉄骨技術交流会 (かんたん構造講義) 第2部 その1 構造計算の基礎用語 (材料力学の話) 久米構造設計室 久米純一 2 これから説明すること 高校の物理では 作用力 F 構造計算では 荷重 ここで何が おきているのか = 反作用力 F’ F = -F’ ここまでしか習わない 支点反力 応力 構造計算の目的 その1 物体に力がかかる 力を増していくと やがて壊れる いつ壊れるか知りたい 3 物体の中の力関係 荷重 P (N) 1mm2 の部分をとりだしてみる かかっている力 = P / A シグマ → 応力度 σ 材料の強さ → 許容応力度 f 例 SS400 f = 156 N/mm2 長期 かかっている力 断面積 A (mm2) 材料の強さ 応力度 σ ≦ 許容応力度 f なら 安全 4 構造計算の目的 その2 物体に力がかかる 力を増していくと 変形する どれだけ変形するか 知りたい 5 物体の中の変形 荷重 P (N) 1mm3 の部分をとりだしてみる かかっている力 = P / A → 応力度 σ L (mm) 材料の硬さ → ヤング率 E 例 SS400,SM490,SN400 E = 205000 N/mm2 断面積 A (mm2) 1mm3の部分の変形 = σ/E 全体の変形 = σ/E * L 6 応力と変形の関係 変形 = 応力度/ヤング率 δ = σ /E 変形は応力度に比例する 応力度、変形のどちらかが分かれば、他方も分かる 応力度、変形のどちらで考えても良い 7 応力(変形)は2種類ある 体積が変化する変形 = 引張、圧縮応力度 σ(シグマ) σ≦f 引張、圧縮変形 δ(デルタ) δ=σ/E 体積が変化しない変形 = せん断応力度 τ(タウ) (fsは許容せん断応力度) τ ≦ fs せん断変形 (Gはせん断弾性係数) δ=τ/G 8 モデル化 これまでは、物体をかたまりのまま考えましたが このままでは扱いにくいので 細長い線材に置きかえて考えます これをモデル化と言います 9 曲げモーメント、捩りモーメント 10 線材にモデル化すると、応力は次のようになります 圧縮力 C 引張力 T (軸方向力 N) せん断力 Q 曲げモーメント M 捩りモーメント MT 代表的な応力の公式 M P w P w 11 ( l は梁の長さ) Q P l 4 P 2 wl2 8 wl 2 P l P wl2 2 w l 曲げモーメントの扱い 曲げモーメントは 下図のように圧縮応力度と引張応力度に分解できる 圧縮 引張 σ= M/Z (Zは断面係数) (H型鋼などでは圧縮、引張とも同じ値) 応力度 σ ≦ 許容応力度 f の式が使える! 同様に、捩りモーメントは、せん断応力度に分解できます。 12 細長い柱の注意点(1) 太短い柱の場合 細長い柱の場合 P P A 「座屈」と言う σ= P/A σ≦f σ= P/A σ≦f ではうまくいかない そこで... 13 細長い柱の注意点(2) 細長い柱では、 細長比λに応じて f を低減する → fc λ= κ * L / i κ :柱の両端の状態によって決まる係数 L :柱の長さ i :断面2次半径 σ≦ fc で、これまでと同じように検討できる P L L 柱の中間に座屈止めを入れると 座屈を起きにくくできる = 座屈長さを短くする 注)座屈は圧縮がかかったとき起きます。引張りでは起きません。 14 のとき fC 15 fcの計算式 2 1 0.4 F 3 2 2 3 2 のとき fC 0.277F 2 : 圧縮材の細長比 L i : 限界細長比 2 E 0.6 F F : 鋼材の基準強度 厚さ 40mm以下のSS 400, SN 400では 235N m m2 細長い梁の注意点 座屈は梁に曲げモーメントがかかったときにも起きる 細長比 λ に応じて許容応力度 f を低減 → fb λ= L / ib L L L 中間に座屈止めを入れるのが有効 16 17 fbの計算式 H型鋼などが強軸まわり に曲げを受けるときの 大きいほう、かつ、 f b は次の2式のうち f t 以下とする lb i 2 f b 1 0.4 f 2 t C M M C 1.75 1.05 2 0.3 2 M1 M1 fb 900 lb h Af 2 かつ 2.3以下 M 2 M 1 : 座屈区間端部における 小さいほうおよび大き いほうの強軸 まわりの曲げモーメン ト。 M 2 M 1は単曲率の場合正、複曲率の場合 負とする。区間中央の モーメントが M 1 より大きい場合は C 1とする。 h : はりのせい (cm) A f : フランジの断面積 (cm 2 ) : 限界細長比( f cの場合と同じ ) f t : 許容引っ張り応力度 F 1.5 18 傾いた梁の注意点 梁を横倒しに傾けるとZが減ります θ 傾斜角度とZの関係 Z(cm3) 1500 細幅 H-400x200 傾いた梁のZは、 次の式で計算 できます。 1 Z cos sin Zx Zy 中幅 H-340x250 1000 広幅 H-300x300 500 0 0 15 30 45 60 75 90 θ(°) 非対象断面の梁の注意点 C型、L型、コ型、などの左右非対称の鋼材を梁に使った場合、 図1のように回転を起こし、十分な強度が出ません。 (ボードで回転を拘束されている母屋などは除きます) 回転の効果を考慮したZを正しく計算するのは難しいのですが、略算 としては、次の方法で計算できます。 非対称梁の回転考慮したZの略算法 フランジの1片を切り取ったH型鋼の例 図1 ① 縦の板材を中心と考える。その板 は全断面有効 ② 中心に対して、左右対称に付けら れた横向きの板も全断面有効 ③ 中心に対して、非対称の横向きの 板は幅1/4の部分だけが有効 ④ 有効な部分だけで構成された断 面のZを単純計算する 19 断面2次モーメント I 断面の形によって決まる、曲げ変形のしにくさを 表す数値を 断面2次モーメント I と言います 代表的なたわみの公式 P δ L w δ 1 P l3 48 E I 5 wl4 384 E I δ 1 P l3 3 EI δ 1 wl 4 8 EI P w L ( l は梁の長さ) 20 21 断面2次モーメント I の公式 以下の方法で複雑な形のI,Zを計算できます。 B BD 12 D ① 3 A3 o X A2 D D D4 12 D D X ② o 4 64 D d B D3 d 3 12 A1 x3 x1 x2 A1 x1 A2 x2 A3 x3 A1 A2 A3 I I1 A1e1 2 e1 A1, I1 B o I は足し算できます。 ③ h2 o h1 I Z1 I / h1 Z 2 I / h2 22 断面係数 Z の公式 B B B D2 6 D D D 2 D3 12 D d D H型、C型などは鋼材の規格表を見てください。 注)Zは足し算できません。 形などのZの計算方法は、後で説明します。 B D3 d 3 6D D3 32 練習問題 次の梁断面の I および Z を求めなさい 30 e2 X 20 60 A1, I1 e 1 A2, I2 20 数字の単位はcm ① A1 = 60*30 = 1800 cm2 A2 = π*102 = 314.2 cm2 1800*30-314.2*20 X = = 32.1 cm 1800-314.2 ② I1 = 30*603/12 = 540000 cm4 I2 = π*204/64 = 7853 cm4 e1 = 32.1-30 = 2.1 cm e2 = 32.1-20 = 12.1 cm I = 540000+1800*2.12-(7853+ 314.2*12.12)= 494088 cm4 ③ Z1 = 494088/32.1 = 15385 cm3 (下側) Z2 = 494088/27.9 = 17718 cm3 (上側) 参考 穴のない四角断面の Z = 18000 cm3 23 どの断面がどの力に強いか 同じ断面積(トン数)のときの比較 強いための条件 圧縮 ◎ ◎ × △ △ iが大きい 上下左右対称 引張 ○ ○ ○ ○ ○ Aで決まるので どれも同じ 曲げ (破壊) ○ ○ × ◎ △ Zとibが大きい 左右対称 曲げ (撓み) ○ ○ × ◎ △ Iが大きい 左右対称 捩り ◎ ◎ × △ △ iが大きい 24 25 参考文献 • 日本建築学会/鋼構造設計基準/丸善 • 飯野 富士雄/のれん力学(巨大地震から高層・ 超高層建築を救う)/朝日新聞社 27 28
© Copyright 2024 ExpyDoc