子供のケガ -家庭でできる初期治療ー 湘南厚木クリニック 形成外科 安藤史子 はじめに 子供は生来好奇心旺盛で、活発で、怖いもの 知らずで、時に大人が予想もつかない行動をと る。それゆえ転落事故や交通事故、擦り傷、切 り傷、やけどなどの様々なケガに見舞われる危 険性がある。しかし一方、適切な処置を行えば、 小児は回復が早く、元気になるのも早い。そこ で、親や保護者にとって大切なことは、不測の 事態にそなえ、いかに応急処置の知識をもって いるかということである。さらに、なによりも大切 な事は、周りの大人が、出来得る限りの安全対 策をとることである。 子供のケガと形成外科の関わり 子供のケガは、その子供の一生に肉体的 機能だけでなく整容的や、精神的にも大き な影響を残すことが多い。また、患児本人 だけでなくその保護者にも少なからず影 響を及ぼす事となる。形成外科では、傷 の治療、傷跡の治療を通じて整容的にも 精神的にも、出来る限りケガの影響を残さ ず、元の状態に近づける事を目的とする。 形成外科外来を受診される 子供のケガ ・切創、挫創、擦過傷 ・顔面打撲、鼻出血、骨折 ・口(口唇、口腔内)外傷 ・熱傷 ・化学損傷 ・動物の咬傷 等 子供がケガをした!! まず、 *何が起こったか? *どうして起こったか? *相手は何か? を確認しましょう。 車・自転車・虫・動物・コンクリート・アス ファルト・土・石・火・湯・その他。 切創、挫創、擦過傷 1.水で傷を洗浄し、同時に ガーゼか柔らかなブラシを使って そっとこする。 2.洗浄後も残った泥や砂を できるだけ取り除く。 この際、小出血を伴うことがある。 *砂などが取りきれずに残った場合は、傷が治癒 しても刺青のように色素が残る可能性があるた め。 切創、挫創、擦過傷 3.清潔なガーゼなどで 傷を軽く圧迫して止血する。 4.傷が完全に隠れる大きさのガーゼか 応急絆創膏でおおう。 *綿やその他毛羽立ったもので局所をお おわないこと。傷に固着して治癒が遅 れる。 切創、挫創、擦過傷 こんな時は、すぐ病院へ! ★出血が止まらない ★ガラスなどが刺さり、取り除けない ★ギザギザの傷、深い傷 ★いつまでも傷が治らずジクジクしている 顔面打撲、鼻出血、骨折 1.子供を座らせるか、抱っこして、腫れを抑えるた めに冷やしたタオル等で受傷部を冷やす。 2.大量の鼻出血があれば、ボウル等の上に顔を 突き出させて小鼻の付け根あたりを押さえて止 血する。 3.下を向かせて血液や唾液を飲み込まずに吐き 出させる。 *鼻血を飲み込むと気持ちが悪くなったり、誤嚥の 恐れがあるので、仰向けに寝かせない。 顔面打撲、鼻出血、骨折 こんな時は、すぐ病院へ! ★鼻血が止まらない ★口が開きづらい ★痛みや腫れが強い ★歯列の乱れ(咬み合わせが合わない) ★物が二つに見える 口(口唇、口腔内)外傷 1.子供を座らせるか、抱っこして、ボウル等 の容器の上に顔を突き出させる。 2.傷の上にガーゼ等を当て、親指とひとさし 指で挟んで10分間程圧迫する。 *固まった血を洗い流して再出血する可能 性があるので、うがいはさせない。 口(口唇、口腔内)外傷 こんな時は、病院へ! ★出血が止まらない ★ギザギザの傷、深い傷 ★歯がぐらつく(歯列の乱れ) 熱傷 1.水道水で15分は冷やす。 2.いったん冷やしたあと、衣服を慎重に脱がせ、 痛みが残っていれば再び冷却する。この際、皮 膚に固着した部分はその周囲をハサミで切って 皮膚を剥がさないようにする。 *衣服等体に密着している ものを無理に脱がせると、 熱傷部の皮膚が一緒に はがれ、より重症になる 恐れがある。 熱傷 3.清潔なガーゼや毛羽立っていない布で患 部をおおう。 *ローションや油、軟膏、アロエ等を塗って はいけない。ヒエピタ等の冷却材や湿布を 貼ってはいけない。 *水ぶくれを 破ったりしない。 熱傷 こんなときは、すぐ病院へ! ★顔・関節・手や指・性器のやけど ★水ぶくれができた ★皮膚が白くなった 化学損傷 クリーナーや漂白剤などの家庭用の薬品は化学 損傷の原因になりうる。このタイプの損傷は症 状がゆっくり進行するが、重篤なことも多い。 化学損傷の識別 ★強い、刺すような痛み ★局所の発赤または変色 ★水泡形成またはびらん 化学損傷 1.流水で十分に洗い流し、 化学物質を除去する。 2.清潔な布でおおう。 *化学物質の名称がわかるようにしておくこと。 *除去の際はゴム手袋を着用し、また気化した 薬剤に注意する。 *服を脱がせるときは、薬剤が付着した布が健 常な部位に触れそうなら服を切って除去する。 動物の咬傷 比較的軽度なもの 1.流水で十分に傷を洗う。 2.清潔なタオルやティッシュペーパーなどで傷を 拭き、応急絆創膏などを貼る。 深い咬傷 1.清潔なガーゼやタオルで傷を直接圧迫し、心臓 より高い位置に患部を挙上して保持する。 2.清潔なガーゼやパッドで傷をおおい、包帯をしっ かり巻いて、病院へ。 動物の咬傷 *破傷風の予防接種歴を確認。 *飼い犬に咬まれた場合、飼い主に狂犬病 ワクチンの接種歴を確認する。 *咬まれたのが海外だったり、咬んだ動物 が密輸されたものの場合、子供を受診さ せて狂犬病のワクチンを受けさせなけれ ばならない。 傷をきれいになおすには 傷をきれいに治すには、適切な処置を行い、 早く、しっかりなおす事が大切です。 傷跡を出来る限り残さないためには、傷が 治った後のケアもこころがけましょう。 残ってしまった傷跡に対しては、状態に応じ て様々な治療法があります。 ・・・・・・詳しい事はまたの機会に・・・・・・ 家の中や周りでの安全 家の中の家具やその他のものの位置、置き方 をこどもに危険のないように工夫して変える 窓に鍵をかけ、子供が開けられないようにする ふだん、飲食物を入れておく入れ物に、洗剤、 薬品などの危険なものを決して入れない 家の中や周りでの安全 常に子供の手の届く範囲を把握し、 重い物、壊れやすいもの、尖ったものは遠ざけ る。 脚立や椅子をテーブルや棚から離しておき、 子供がよじ登らないようにする。 家の中や周りでの安全 熱い飲み物、酒類、薬、コップ、たばこ、 マッチ、ライターなどを子供の手の届くとこ ろに置かない。 テーブルクロスは使わない。 家の中や周りでの安全 《扉》 ガラスには安全フィルムを貼り、 子供がぶつかっても割れたガラスが 飛び散らないようにする 子供の目にもわかるようにガラス表面にステッ カーなどを貼る 扉を開け放すときはロックをかける。半開きにし ない。 家の中や周りでの安全 《電気》 使っていない電気製品のプラグは抜いて おく 使っていないコンセントには安全カバーを 取り付ける 家の中や周りでの安全 ポットやトースター、炊飯器、加湿器、アイ ロンなどは本体はもちろんコードも届かな いようにしておく 家の中や周りでの安全 《台所》 食器棚や引き出しにストッパーを取り付け、 容易に開かず、引き出しすぎて落下しな いようにする 家事仕事をしている時は、周りで遊ばせな い 家の中や周りでの安全 調理中、鍋の取っ手はコンロの端からは み出さないようにする 家の中や周りでの安全 《ゴミ箱》 切り口の鋭い缶やその蓋、また壊れたガ ラス製の物は分けて子供の手の届かない ところに捨てる。 ゴミ箱には、子供が開けたりひっくり返し たりできないような容器を用いる。 屋外での安全 《自転車》 親が乗せて運転するときも 子供にはヘルメットを かぶせる。 子供を補助いすに乗せた まま、そばを離れない。 屋外での安全 《自転車》 子供の足が車輪に接しないように座らせる。 屋外での安全 公園などの遊び場 遊具に破損がないか チェックする 車庫 車を出し入れする際は、子供がどこにい るか、車庫の付近にいないか、必ず確認 する おわりに 子どもがケガをした場合、親や保護者に とって大切なことは、不測の事態にそなえ、 いかに応急処置の知識をもっているかと いうこと、そして実際に、いかに冷静に適 切に対処できるかということである。 判断に迷った場合、不安な場合は、躊躇 することなく病院へ。 参考 ◆子どもの応急処置マニュアル(監訳:大塚 敏文、発行:株式会社南江堂) ◆赤ちゃんの病気&ホームケア大百科・ひ よこクラブ特別編集(発行:株式会社ベ ネッセコーポレーション) ◆お子さま119番ー万有製薬 (http://www.banyu.co.jp/sukoyaka/banyuleft1.htm)
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