(通信)符号理論入門 (誤り検出と誤り訂正) (9章) 1 通信路符号と冗長性 ここからは、通信路符号化において、主に2元符号を考察してい く。通信路アルファベットを B {0,1} とする。 (定義)情報ビットと検査ビット 通信路符号語は、情報源符号語に加えて意識的に冗長部分 を付加して構成される。情報を表す記号列を情報部分といい、 冗長性を表す記号列を冗長部分という。特に、2元符号の場 合、情報部分を情報ビット、冗長部分を検査ビットという。 2 通信路符号の数学的表現 情報ビッ ト 冗長ビッ ト u (u1, u2 , , un ) ( x1, , xk , p1, , pnk ) nビッ ト kビッ ト n kビッ ト ( x, p) 符号語=情報部分+冗長部分 ただし、 x ( x1, x2 , , xk ) p ( p1, p2 , , pnk ) 1 i k , ui xi B {0,1} k 1 i n, ui pi k B {0,1} 3 パリティ検査(符号) まず、1番単純な通信路符号としてパリティ検査について考え る。パリティ検査は1誤り検出符号になっている。 パリティ検査符号は以下の符号語の形式になる。 u ( x1, x2 , , xn1 , p ) n1ビッ ト 情報ビット 1 ビッ ト 冗長ピット これらに関係する概念を順にみていく。 4 ハイパーキューブ (定義)ハイパーキューブ 次のように再帰的に定義される構造をハイパーキューブ という。n 次元のハイパーキューブを HC(n) と書く。 (1)1次元のハイパーキューブ(基礎) 線分 HC(1) 0 1 (2)次元のハイパーキューブ(帰納) HC(n 1)と HC(n 1) を対応する頂点同士、辺で 結び,最上位ビットだけが異なるように0,1を割り振る。 HC(n 1) HC(n 1) 0 x1 1 x1 xn1 n1 HC(n) xn1 n1 5 例 HC(1) 0 HC(2) 1 00 10 01 11 HC(3) 001 000 011 010 101 100 111 110 6 HC(4) 0010 0000 1010 0110 1000 1100 0100 0011 0111 1110 1011 1111 0001 0101 1001 1101 7 練習 HC(5) を図示せよ。 8 排他的論理和 (定義)排他的論理和 次の真理値で定められる論理関数を排他的論理和という。 論理変数 と論理変数 の排他的論理和を と書く。 x y x y 0 0 1 1 0 1 0 1 x y x y 0 1 1 0 排他的論理和は2進数の加算、 減算に対応する。 9 2を法とする計算 で X を2で割った余りを意味する。(この計 算を2を法とする計算という。) X (mod2) x y (mod2) を考える。これは、以下のように計算できる。 x (mod2) y (mod2) 0 0 1 1 0 1 0 1 x y 0 1 1 2 x y (mod2) 0 1 1 0 排他的論理和と同一 10 x y (mod2) を考える。これは、以下のように計算できる。 x (mod2) y (mod2) 0 0 1 1 0 1 0 1 x y x y (mod2) 0 1 1 0 0 1 1 0 排他的論理和と同一。、 2を法とする加算とも同一。 1(mod2) 1 11 練習 次の式を計算せよ。 (1) 1 0 11 0 11 (2) 11 0 0 0 11 (3) 1 0 1 0 0 1 0 (4) 3 4 7 5 8 9 1(mod2) (5) 9 3 6 4 8 7 5 (mod2) (6) 5 4 3 8 6 9 2 (mod2) 12 パリティ(遇奇性) (定義)パリティ n 符号語 u u1 , , un B に対して、次式が 成り立つとき、偶数パリティを持つという。 u1 u2 un 0 n ui (mod 2) 0 i 1 また、次式が成り立つとき、奇数パリティを持つという。 u1 u2 un 1 n ui (mod 2) 1 i 1 13 例 次の符号が偶数パリティを持つか、奇数パリティを持つ かを判定せよ。 u (u1 , , un ) (0,0,1,1,0,1,0,1) 00110101 略記法 u mod2 0 i よって、偶数パリティを持つ。 これ以降では、 mod2 符号に現れる1の 個数が偶数 を省略することもある。 14 練習 次の符号が偶数パリティを持つか、奇数パリティを持つ かを判定せよ。 (1) (1,1,1,0,1,1,0,1) (2) (0,1,0,1,1,0,1,1) (3) (0,0,0,1,1,0,1,1) (4) 10111000 11001100 (6) 01001100 (5) 15 パリティ検査(符号) (定義)パリティ検査(符号) 1ビットの検査ビット(パリティビット) p B を持ち、偶数パリ ティだけを符号語とするような符号を(偶数)パリティ検査符号と n1 いう。情報ビットを x ( x1 , , xn1 ) B とすると次式が 成り立つ。 u ( x1 , , xn1 , p) B x1 xn1 p 0 p x1 xn1 n 偶数パリティ検査では、 情報ビットが偶数パリティを持 てばパリティビットは0で、 奇数パリティを持てばパリティ ビットは1。 16 例 次の情報源符号語から、偶数パリティ検査符号を構成せよ。 x1 ( x11 , , x71 ) (1,0,1,1,1,0,0) p1 x11 mod2 0 (1) よって、以下のように通信路符号語が得られる。 u1 ( x , , x , p ) (1,0,1,1,1,0,0,0) (1011100,0) 略記法 1 1 (1) 1 7 1 x2 ( x12 , , x72 ) (0,1,1,1,1,0,1) p2 x12 mod2 1 よって、以下のように通信路符号語が得られる。 u2 ( x12 , , x72 , p2 ) (0,1,1,1,1,0,1,1) (0111101,1) 17 練習 以下のような情報源記号が与えられているとき、偶数 パリティ検査符号を求めよ。 (1) (2) (3) (4) (5) (6) x1 (1,1,1,0,1,1,0) x2 (0,1,0,1,1,0,1) x3 (0,0,0,1,1,0,1) x4 1011100 x5 1100110 x6 0100110 18 偶数パリティ符号における符号語 HC(1) 0 HC(2) 00 01 HC(3) 001 000 011 010 1 :符号語 10 11 101 100 111 110 19 HC(4) 0010 0000 1010 0110 1000 1100 0100 0011 0111 1110 1011 1111 0001 0101 1001 1101 :符号語 20 練習 情報ビットが4ビット x B で、パリティビットが1ビット p B の偶数パリティ符号 u B5 を考える。この符号語になりえ るハイパーキューブ HC(5) 上頂点を図示せよ。 4 21 ハミング距離 (定義)ハミング距離 長さ n の2元符号( n次元ブールベクトル) x ( x1 , , xn ) Bn y ( y1 , , yn ) Bn に対して、次式で定義される距離 h( x, y) をハミング距離と いう。 n h( x, y) ( xi , yi ) i 1 ただし、 0 xi yi xi , yi 1 xi yi 異なる ビットの 総数 ビットが異なるとき に1で等しいとき0。 22 ハミング距離は次のようにも書ける。 n h( x, y) xi yi i 1 n h( x, y) xi yi 2 i 1 23 例 次の2つの系列のハミング距離を求めよ。 x 100101 B 6 y 101110 B 6 解 100101 101110 h( x, y) 3 24 練習 次のハミング距離を求めよ。 (1) h(011,110) (2) h(1100,0110) (3) (4) h(011001,101010) h(00011011,10010110) 25 ハミング距離とハイパーキューブ HC(3) 001 000 101 100 011 010 111 110 h(001,010) 2 HC(3) 001 000 101 100 011 010 111 110 h(001,110) 3 ハイパーキューブ上での 経路長がハミング距離 26 HC(4) 1010 0110 0010 1000 0000 1100 0100 0011 0111 1110 1011 1111 0001 0101 1001 1101 h(0010,1111) 3 27 練習 x 1100 B , y 1011 B 4 次の2つの系列 をハイパーキューブ を求めよ。 4 HC(4) 上に図示し、ハミング距離 h( x, y) 28 距離の3公理 (公理)距離の公理 n x, y,z K ,(K Bや や ) n 任意の 次元ベクトル に対して、次の3つの性質を満たす関係 d : K n K n を距離という。 (1) (2) (3) d ( x, x) 0 逆に、 d ( x, y) 0 なら x y d ( x, y) d ( y, x) 同一地点間の距離は0 d ( x, y) d ( y, z) d ( x, z) ユークリッド距離だけが距離なのでは ない。様々な距離の概念がある。 距離は対称的 3角不等式 29 様々な距離1(ユークリッド距離) x ( x1 , , xn ), y ( y1 , , yn ) d2 ( x, y) n ( xi yi ) i 1 n 2 xi yi i 1 1 2 2 n 最もよく用いられる 距離 x2 2次元での等 距離線は円 になる。 x1 30 様々な距離2(マンハッタン距離) x ( x1 , , xn ), y ( y1 , , yn ) n d1 ( x, y) xi yi i 1 1 1 1 n xi yi i 1 n 碁盤の目状の町で の最短路。 x2 2次元での等 距離線は菱型 (回転した正方 形)になる。 x1 31 様々な距離3( L 距離) x ( x1 , , xn ), y ( y1 , , yn ) d ( x, y) max xi yi n ある軸での最大値 n i 1 n p lim xi yi p i 1 1 p x2 2次元での等 距離線は正方 形になる。 x1 32 様々な距離4( Lp 距離) x ( x1 , , xn ), y ( y1 , , yn ) n p d p ( x, y) xi yi i 1 マンハッタン距離は 別名 1 距離と もいう。 L n 1 p ユークリッド距離は 別名 2 距離と もいう。 L 33
© Copyright 2024 ExpyDoc