第2回成果発表大会 兵庫県支部代表 滞納者でクレーマー 明渡しまでの奮闘劇! 不良入居者への対処事例 ~滞納発生から明渡しに至るまで~ 和田興産株式会社 安田 正行 1 事例の内容 某マンションG 707号室 • 3LDK (66.33㎡) • 竣工年 1980年4月 • 賃料 120,000円 • 平成25年4月30日より契約開始 • ご夫婦、祖母、娘の4人にて居住 保証会社の審査も無事通過し、与信上も問題がないと思われた。 前年には、大規模防水工事を実施済みの物件である。 2 事 案 発 生 • 平成25年8月26日、大雨による雨漏りの発生。 • 第一報を受け現地に訪問。 • 防水施工会社担当、建物管理会社担当、当社保険担当、保険 鑑定人。 • 洋室一室にて雨漏り。 • 応急処置として、簡易清掃と水滴防止の養生を施す。 • 9月5日、防水施工会社による上階施工完了。 • 9月10日、再度大雨があり、再び漏水したとの連絡が入る。 3 4 不可解な点 • 現場の違和感。 • 連絡、アポ取りが困難。 • 防水施工後、2度目の漏水。 • 問題解決を望んでいないようにさえ。 • 賃料の振込みが遅れはじめる。 5 6 不安の的中 •現地確認の頑な拒否 •賃料支払の拒否 •クレームの発展 7 • 連絡をよこさない、何も対応してくれないという主張 • 水浸しで生活できる状態ではないとの主張 • 突然、連絡して来て、「すぐに来い!」とまくし立ててくる • アポ取得後、訪問直前でキャンセルされることによる業者の疲弊 • 担当者、担当業者の対応に誠意がない。上司を呼べと恫喝する • 「最初に被害を受けた物品に着物などがある」と高額品を追加してくる • 「支払う義務はないはずである」と賃料不払いを宣言してくる 8 ターニングポイント お客様へのご要望対応 • まず、事実確認 • 誠心誠意の対応 • 問題を解決する • ご説明し、ご納得いただく 悪質対象者への対処 • 要求が過剰。 対応可能範囲を明確に主張す る • 本来の発生事実が不明確に その裏取りを行い収集 • 虚偽もしくは悪意ある主張 9 対抗するため事実・記録の保 対応策を変える 不測の事態に備えるため対応スタンスを変更。 • 発生事例の再確認と保存 • 対応履歴を残す。 • 連携を強化する。 10 連携することのメリット 戦略を共有する • しっかり、履歴(証拠)保全に協力してもらう。 • 足並みを揃えた行動に。 • 相手の思惑にハマらないようにリスクを回避できる。 • 適切な時に、適切な人間がアプローチをかけられる。 11 相手の思惑にハマらない 明らかに相手側の挑発である • 過剰に反応してはいけない。 挑発にのっては、むこうに足元をすくわれる。 • かといって、ぞんざいに扱ってはいけない。 「誠意がない、対応してくれない」という主張を正当化してしまう • 拡大する主張に混乱してはいけない。 冷静に確認・記録をし、できうる対応を常識的に導き出す。 12 解決までの流れを確認 1. 雨漏りクレームの発生 2. 賃料滞納の常態化 3. 事案の複雑化 4. 合意書締結による事前解決 5. 明渡訴訟に移行 6. 明渡し完了 13 悪質な言いがかりの実例 ・10月16日 訪問時のこと 前日の10月15日、近畿地方を台風が通過し大雨となったので、防水 施工完了確認のため、事前に訪問アポイントを取る。 当日、約束通り訪問し、インターホンを鳴らすが・・・ 入室を拒否される そしてさらに・・・ 14 と、弊社の本社総務部に連絡される!! 15 記録を残すことで身を守る ボイスレコーダーを起動させ対応をしていた。 • 対応時に声を荒げることもなく、ドア越しにインターホン でやりとりをしていること。 • ドアをノックし、ドアノブを触ることもなかったことが記録さ れていた。 身の潔白を証明することができた!! 16 17 冷静さを失わないこと その場を離れた後、改めて電話連絡を入れる。 ・レコーダーによる記録あり。 ・ひと気の多い喫茶店に移し、会談にこぎ着けた。 ・この会談において、翌日の入室確認を導き出す。 この会談が、後に重要なものとなった。 18 弁護士の見解 • 賃料:120,000円 3LDK(66.3㎡) • 被害面積 7.5㎡ (全体の11.3%) • 漏水発生時8月25日(第一報日) • 被害期間 20日間 • 防水施工完了日 9月15日 • 1ヶ月分賃料120,000円に対して 按分をすると • 被害発生部分 1室 • 被害頻度2回 ※給排水と異なり一過性 未使用による損失金は・・・ 9,050円 以上の金額に基づき、修繕のための不便、謝意を込 めても、10万~15万円程度が目安である。 19 敗訴の可能性も・・・ 設備に不備があった後に、家賃滞納・損害賠償が発生した実例 • 管理会社は幾度か復旧対応のための連絡を入れたが繋がらな かった。 • そして、履歴も残さないまま放置してしまった。 • 後日、入居者からはまったく対応がなされなかったと主張された。 • 結果、家賃の未払いについて管理会社側の主張は全面的には認 められないものとなった。 20 有利な物証がない場合 合意書の取得をめざす ・悪質なクレーマーだと言いたい。 しかし、公にはそれを裏付けるほどのモノがないのも事実である。 なんの物証もない = なにもできていないという状況。 • ひとつの区切りを。 改善のために行動を起こしていることの証拠 被害を受けた方のために何かをしようとしている証拠 21 明渡訴訟に勝つための戦略 • 補償金を受け取らせ、それと引き換えに「合意書」を残す。 • 家賃滞納問題と漏水被害問題を切り離す必要がある。 • 漏水被害における対応と補償は解決済みであるという証拠を残 す。 それができていない段階では明渡訴訟には踏み切らない。 「肉を切らせて、骨を絶つ」 後に控える訴訟に勝つ! 22 家賃保証会社との連携 事案の複雑化による長期化、もしくは敗訴の可 能性を懸念。 • 管理会社 漏水補償に専念。 • 家賃保証会社 督促に専念。 波状にゆさぶりをかける。 23 連携を取りつつ、個別に対応 • 当社(管理会社) :補償金を支払う意思がある。※すぐさま、現金を用意できる • 家賃保証会社:督促を加え続けてもらう。 • 工事会社 ※漏水補償問題とは無関係 :室内修繕のアポ取りを続けてもらう。 ※粛々と対応履歴の集積 • 当社弁護士の見解 「現時点で十分な対応履歴が蓄積されている」 これ以上の譲歩はないと、相手の決断を促す 24 株式会社リクルートフォレントインシュア、小久保氏 趣味:ボディービルディング 25 合意書取得に成功! • 11月11日、面談の設定に成功。 「今日中に現金を用意してくれるならば、サインする」とのこと。 • 実際に赴いたときに、また激高する一幕もあった。 • 経過の履歴資料と録音記録があることを示し、最終判断であ ると決断を促す。 • 無事、補償金として現金受領。受領書と合意書を獲得。 26 即座に明渡訴訟へ 本当の目的 漏水問題だけの解決ではなく、滞納問題の解決。 悪質なる入居者であることは明白 即座に明渡訴訟へ。 有効な物証も確保できた。 漏水問題の分離が成功。 27 想定された主張に反論 • 裁判は公平、裁判官は双方の主張を平等に聴くこととなる。 • 被告側の虚偽めいた主張も、最初は耳を傾ける。 • 物証をもって反論を示していくことで真実を伝えていく。 「綿密な記録と対応履歴のおかげで非常に有利に反論を進め ていくことができた。裁判官は次第に被告側に悪意があるよう に認識するようになっていった」とのことであった。 28 事案の解決へ • 平成26年8月3日、明渡完了。 • 追加の賠償金などを要することなく解決。 • 滞納賃料については保証会社様より全額弁済いた だけた。 • 現在は新規契約者様を獲得し、何事もなくお住まい いただいている。 29 想定された最悪の事態 もし、対応の記録・履歴も残していなかったら? 「悪徳管理会社である」という主張が通っていたのかもしれない。 もし、漏水問題と滞納問題の区切りがつけられていなかったら? 訴訟における敗訴、もしくは長期化もあったかもしれない。 もし、被告側の主張が通っていたら? 保証会社の免責事項に該当し、滞納家賃を弁済してもらえな かったかも。 30 総括として大切なことを振り返る 1. 記録、対応履歴をしっかりと残す。 2. ステークホルダーとの関係作りを大切にする。 3. 丸投げをせずに、管理会社が対応の中心となる。 4. 先を見越した戦略を立てる。 どれも基本的なことであるが、そのことが本当に 大切 31 完 ご清聴、ありがとうございました。 兵庫県支部代表 和田興産株式会社 安田 正行 32
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