河川工学 -流出解析-

河川工学
水文循環2
昼間コース
選択一群 2単位
朝位
http://www.suiri.civil.yamaguchi-u.ac.jp/
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本日の内容
大雨に関する予警報
流出現象の概説
大雨に対する予警報
山口県の場合の注意報・警報基準(下関地方気象台HPより)
注意報基準
1時間雨量 30m m
大雨注意報 3時間雨量 50m m
24時間雨量 100m m
1時間雨量 30m m
洪水注意報 3時間雨量 50m m
24時間雨量 100m m
注意報
警報基準
1時間雨量 50m m
大雨警報 3時間雨量 80m m
24時間雨量 150m m
1時間雨量 50m m
洪水警報 3時間雨量 80m m
24時間雨量 150m m
警報
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kijun/yamaguchi.pdf
流出(runoff):降水から河川流への変換現象
降水
降雨遮断
浸透
蒸散
窪地貯留
浸透
表面滞留
表面流
蒸発
表面流出
地下水面
地下水流
地下水流出
速い中間流出
河道
河川流
遅い中間流出
降水(precipitation):
上空より地上に降る水を総称して降水という。雨,雪,霧,あられ・ひょうなどが
含まれる。
河川に関係するものは主に雨と雪であるが,特に雨と関係が深い。
ある流域に雨量観測所(黒丸)がある.
この流域全体に降った平均的な雨量(流域平均雨量)を求める
流域
雨量観測所
流域全体に同一の雨量強度で雨が降れば,どこか一カ所の雨量で代表で
きるが,場所によって降雨強度が異なる場合はどうすればよいか?
算術平均法
各観測所の観測値を単純平均する方法
1 n
R   Ri
n i 1
観測所が均等にある場合は各観測所の雨量の算術平均でよい.
観測所の配置が均等ではない場合は各観測所が代表する領域の面積を
重みとする荷重平均で求める(ティーセン法(Thiessen method)).
n
ai
R   Ri
i 1 A
隣り合う観測所を結び,その結んだ線の垂直二等分線を引く.これら二等分
線からある観測所を囲む多角形が形成される.この多角形の領域の雨量を
その観測所が代表するものと考える.Aは流域の面積.aiはある領域の面積.
等雨量線法
各雨量観測所のデータを用いて等雨量線を描き,各等雨量線によって囲
まれた部分の面積を求めて,それらに等雨量線の雨量の平均値を乗じた
ものを作成し,それらの平均をとったもの。
Ri  Ri 1 ai
R
2
A
i 1
n
等雨量線
50mm
a1
a3
40mm
a4
a2
30mm
20mm
50  a1 45 a2  35 a3  25 a4
R
a1 a2  a3  a4
200
300
300
400
200
200
平成17年台風14号襲来時の山口県の積算雨量の分布(単位mm)
等雨量線の例
降雨遮断(interception):
降った雨が地表面まで到達せず最終的に蒸発してしまう現象.
樹木による損失を樹冠遮断損失という.これは総降雨量の10~30%に達する.
(樹木を伝わって地表面に届く流れを樹冠流という.)
蒸発(evaporation):
水の水蒸気への変換.
蒸散(transpiration):
植物が光合成をする際に,根から吸収した水を葉の気孔から蒸発させる作用.
蒸発散(evapotranspiration):
蒸発と蒸散をあわせて用いる用語.
浸透(infiltration):
地表に達した降雨の地表面を横切って地中へと移動する現象.
窪地貯留(depression storage):
降雨の一部が地表面の凹地に貯まる現象.貯留した水はやがて表面流,蒸発,
浸透のいずれかの形態で移動する.
表面滞留(surface detention):
雨の降り始めは地表到達と同時に浸透するが,時間経過とともに地表面が濡れ
てくる.地表面に水が一時留まる現象を言う.留まった水はやがて表面流,浸透
のいずれかの形態で移動する.表面貯留(surface storage)とも言う.
損失(loss):
流域に降った雨のうちで流出しない成分
全流出に対し,蒸発散が損失
直接流出に対し,基底流量,蒸発散が損失
重要!
損失(loss);蒸発散
降雨
初期損失(initial loss);降雨遮断
余剰降雨
(浸透できなかった降雨)
浸透
中間流
(subsurface flow)
表面流
(overland flow)
速い流出
地下水流
(ground water flow)
遅い流出
表層流
直接流出
(direct runoff)
短い時間で流
出する成分
全(総)流出
地中流
基底流出
(base runoff)
長い期間をかけて流出す
る成分
流出解析:流域に降った雨から河川流量を推定すること.
降雨から流量増加まである程度の時間がかかるので,その間に流出解析を行い
河川増水を予測する.避難勧告や水門操作などに役立てる.
治水計画では想定降雨量から想定洪水流量を算出して計画を立てる.
(降水量のほうが計測しやすくデータも多い.)
降水量(mm)
インプット
河川流量(m3/s)
流出解析
アウトプット
ハイエトグラフ(hyetograph):降雨時における降水量と時間の関係
ハイドログラフ(hydrograph):河川流量と時間の関係
ハイエトグラフ
時間
降水量
逓減曲線
流量
集中曲線
直接流出の始まり
ハイドログラフ
時間
洪水などの短期流出では直接流出が解析対象
ダム貯水など利水では総流出や基底流出が解析の対象
直接流出量の算定
既知のハイドログラフから直接流出成分を分離する
A点は直接流出の始まり.終わりは?
logQ
ピーク流量 P
対
数
表
示
し
た
流
量
逓減の度合いがG点で変化
(一般的には変化点が現れる)
G1:表面流出と中間流出の境
G2:中間流出と地下水流出の境
G1
G2
A
B
B点はA点を水平に伸ばし,ハイドログラフと交わる点
時間(普通目盛)
1)AB線よりも上部を直接流出成分とする方法(水平分離法)
2)AG2線よりも上部を直接流出成分とする方法(勾配急変点法)
注)ハイドログラフの直接流出成分には河川への直接降水を含んでいる。
有効雨量(net effective rain)
流域に降った雨の内、河川流出にならないものが生ずる。これを降雨の損失とい
う。洪水流出では直接流出分とならない降雨分を損失雨量という。総雨量から損
失雨量を引いたものが有効雨量という。