「すざく」搭載X線CCDカメラXISの 放射線バックグラウンドの解析 ーバックグラウンドの起源の解明を目指して− 加藤菜々子、穴田貴康、尾崎正伸、 村上弘志、堂谷忠靖 (宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部) 1. 本研究の動機 2. 解析方法 3. データの処理方法 4. 結果 5. 考察 6. まとめ 本研究の動機 衛星軌道上で観測されるバックグラウンド ・ 宇宙X線背景放射(Cosmic X-ray Background: CXB) ・ 検出器固有のバックグラウンド (Non X-ray Background: NXB) 「すざく」は低軌道 X線CCD検出器XISのバックグラウンド: 地球磁場によって低く抑えられている この特長を活かすため、検出器バックグラウンドの起源を解明し、 さらに低減することが重要 XISのバックグラウンドデータを解析し、 検出器中でのバックグラウンド放射線の振る舞いを考察する 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 2 X線CCD検出器バックグラウンドの特徴 フレームイメージ イベント抽出後 X線と判定されてしまうイベントが 含まれている可能性がある 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 3 解析方法 1 イベントの空間分布 QuickTimeý Dz TIFFÅià• èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇÇ• ÅB 距離 1フレームでのイベント間の距離の頻度分布 陽子が生じるトラックのふちには、 X線と判定されてしまうイベントが 含まれている可能性がある 陽子が生成する密集したトラックに付随して X線と認識されるイベントが生じているか否か 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 4 解析方法 2 電子雲の広がり Grade0のイベント数に対する、他のGradeのイベント数の比(Grade分岐比) Grade判定法:電子雲の広がりによってイベントを分類 ・ 電子雲の広がりが小さいイベント Grade0 Grade2 Grade3 Grade4 Grade6 X線と見なされるイベント =「X線グレード」 ・ 電子雲の広がりが大きいイベント Grade1 Grade5 Grade7 バックグラウンドとなっている放射線と そのエネルギー依存性を評価する 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a X線以外によるイベント =「非X線グレード」 X線のみのデータから作成した グレード分岐比と比較 5 データの処理方法 XISの視野が夜側の地球を向いている時間帯(夜地球)のデータ 検出器バックグラウンドのデータとして利用可能 データ抽出条件 ・ 2005年9月から2005年10月 ・ 夜地球 ・ 全Grade (0-7) ・ ノーマルモード ・ 地磁気異常帯(South Atlantic Anomaly: SAA)の除去 ・ 較正源, hot pixel, flickering pixel, bad column等の除去 ・ 光漏れの更新異常フレームの除去 ・上記で除去できなかった異常イベントを含むフレームの除去 XIS0,2,3 (FI) XIS1 (BI) ACTY QuickTimeý Dz T IFFÅià• èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇÇ• ÅB QuickTimeý Dz TIFFÅià• èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇÇ• ÅB QuickTimeý Dz TIFFÅià• èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇÇ• ÅB QuickTimeý Dz TIFFÅià• èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇÇ• ÅB ACTX 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 6 結果 1. イベントの空間分布 QuickTimeý Dz TIFFÅià• èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇÇ• ÅB 距離 ←← フレームイメージ Sensor: XIS0, Energy range: 7.0-10keV 多 多 い 非X線グレード い X線グレード 頻 密集 度 / 距 離 一様に分布 → → 少 少 な な い い ←近い ←近い 距離 遠い→ 遠い→ ・ 非X線グレード(Grade5,7) 同士は、密集しやすい ・ X線グレード(Grade0234,6)と、非X線グレード(Grade7)の 位置の相関はない 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 7 結果 1. イベントの空間分布 異なるエネルギー範囲で比較 Energy range: 2.5-6.0keV 非X線グレード X線グレード Energy range: 7.0-10keV 非X線グレード X線グレード どちらのエネルギー範囲においても、 ・非X線グレード(Grade5,7) 同士は、密集しやすい ・X線グレード(Grade0234,6)と、非X線グレード(Grade7)の位置の相関はない 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 8 結果 1. イベントの空間分布 2.5-6.0keV 7.0-10keV 2.5-6.0keV 7.0-10keV FI(XIS0) BI(XIS1) ・非X線グレード(Grade5,7) 同士は、密集しやすい ・X線グレード(Grade0234,6)と、非X線グレード(Grade7)の位置の相関はない 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 9 考察 ・非X線グレード(Grade5,7) 同士は、密集しやすい ・X線グレード(Grade0234,6)と、非X線グレード(Grade7)の位置の相関はない X線グレードは、陽子の生成するトラックに 付随して生じていない シミュレーションによると CCD検出器のハウジングで生じるX線や電子がX線グレードとなり、 バックグラウンドに寄与していると予想されている (穴田 日本天文学会2006年春季年会W65a) ハウジングで生じる二次粒子によるX線グレードのイベントであれば 空間分布に相関は見られないはず 今回解析したXISの実データは、シミュレーションの結果を支持する 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 10 結果 2. 電子雲の広がり Sensor: XIS0, Energy range: 2.5-6.0keV Sgr A Eastのデータ フレーム数で規格化し、 非X線バックグラウンドを 差し引いてある X線のみのデータとして扱える X線グレード X線のみのデータから成るグレード分岐比と若干異なる X線の光電吸収以外のプロセスが バックグラウンドに寄与していると考えられる 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 11 結果 2. 電子雲の広がり FI (XIS0) 0.6-1.3keV 2.5-6.0keV 7.0-10keV どのエネルギー範囲でも同じように X線のみのデータから成るグレード分岐比と若干異なる X線の光電吸収以外のプロセスも バックグラウンドに寄与している 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 12 結果 2. 電子雲の広がり BI (XIS1) 0.6-1.3keV 2.5-6.0keV 7.0-10keV 0.6-1.3keVで、X線データとほぼ等しい 非常に小さな電子雲しか生じないプロセスが バックグラウンドとなっている可能性が高い 高エネルギー程、Grade5,6,7が大きくなっている X線の光電吸収以外のプロセスの寄与が大きくなる 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 13 まとめ 「すざく」搭載X線CCD検出器XISの夜地球のデータを解析した 1. イベントの空間分布 X線グレード(Grade0,2,3,4,6)は、陽子が生成する密集した トラックに付随して生じていない 2. 電子雲の広がり FI: X線の光電吸収以外のプロセスもバックグラウンドに 寄与している BI:低エネルギーでは、非常に小さな電子雲しか生じない プロセスがバックグラウンドなっている可能性が高い 高エネルギーほど、 X線の光電吸収以外のプロセスの 寄与が大きくなる 2007. 9. 28 天文学会 2007年秋季年会 W52a 14
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