使い方(PDF)

Gaussian & WebMO 2015 -1
Gaussian および WebMO による分子軌道計算
Gaussian は世界で最も広く使用されている量子化学計算プログラムである。ここでは,
Gaussian の入力ファイルと出力ファイルの扱いを容易にするため,Web ベースの計算支援
プログラム WebMO を併用して計算を行う方法を説明する。
※ Windows 用の市販プログラムである Chem3D,GaussView などと Windows 版 Gaussian
の組み合わせでも同様のことができる。Gaussian の入力ファイルは ChemDraw で描い
た構造式を Chem3D にコピーペーストすることで容易に作成できる。
※ Gaussian の入力ファイルは,分子中の原子の座標,分子全体の電荷,多重度,および
計算内容を指定するキーワードから成る(原子間の結合関係を入力する必要なし,8
ページ参照)
。入力ファイルを直接ワープロ等で作成することも可能である。
I.
ログイン
(1) Web ブラウザに以下のアドレスを入力して,ログインページを表示する。
(理大 13 号館と 22 号館からのみアクセス可能)
http://fc035.chem.ous.ac.jp/~waka/cgi-bin/webmo/login.cgi
※ http://fc035.chem.ous.ac.jp/~waka/ でも上記 URL に遷移する。
(2) username と password を入力し,ログイン。
(3) 最初に表示されるのは “WebMO Job Manager”(以前の計算の一覧が表示される)
。
Gaussian & WebMO 2015 -2
II. 構造の入力
(4) “New Job” メニューの “Create New Job” をクリックすると,分子編集用の Editor が現れ
る。
ログアウトは右上端の “Logout” を
クリックする。
Gaussian & WebMO 2015 -3
※ 予め作成しておいた入力ファイルを用いる場合は “Import Molecule” をクリック。
Gaussian 入力ファイルのほかに Mopac 入力ファイル,PDB, MOL, XYZ 形式のファイ
ルが利用できる。
以下に,例としてトルエンを作成するための手順を述べる。
(5) “Build” メニューでこれから描画しようとする原子または原子団を指定する。
まずベンゼン環を描くため,“Fragment” を選択する。
※ 画面の任意箇所をクリックすると,その箇所に指定した原子または原子団が描画され
る。
※ 既に描いている原子を起点としてドラッグすると結合ができる。
(6) “Choose Fragment” ダイアログが現れるので,
Category “Rings”
Fragment “Benzene”
を選択して OK。
(7) 画面の中心付近をクリックするとベンゼン環が描画される。
Gaussian & WebMO 2015 -4
(8) メチル基を追加するため,“Build” メニューの “C” をクリック。
(9) ベンゼン環の水素上でクリックすると,水素が炭素に置換される。
Gaussian & WebMO 2015 -5
(10) 水素不足箇所に適切な数の水素を追加するため,“Clean-up”メニューの“Add Hydrogen”
をクリック(直ちに水素が付加される)
。
Gaussian & WebMO 2015 -6
(11) この段階ではメチル基とベンゼン環の結合距離が短すぎるので,Gaussian の計算を始
める前にできるだけ正確な分子の形に整えておく。
ここでは,分子力場法(Molecular Mechanics)で最適化する。
“Clean-up”メニューの “Mechanics”-“Optimize” をクリック。
最適化は一瞬で終了し,適切な結合距離になっているはずである。
Gaussian & WebMO 2015 -7
III. 計算の実行
(12) “Build Molecule” の右下の矢印をクリック。
左のようなダイアログが
現れたら,通常は Gaussian
を選択する。
Gaussian & WebMO 2015 -8
(13) Gaussian の計算オプションを選択・入力する。
<Job Options タグ>
Job Name
分子式が入力されているが適
当に変えてよい
Calculation
“Geometry Optimization”
(構造最適化)
Theory
ここでは “PM3”
Basis Set
非経験的分子軌道法,密度汎
関数法の計算のときに選択
Charge は分子全体の電荷
Multiplicity は “Singlet”
<Advanced タグ>
Cartesian Coordinates に
チェックを入れておく
Additional Keywords に
“gfprint pop=full”
と入力しておくと,後で Jmol
を使って分子軌道を図示でき
る
<Preview タグ>
“Generate” ボタンを押すと Gaussian の入力ファイルがテキストの形で確認できる
“OPT” (optimization) キーワードがあることを確認
Gaussian & WebMO 2015 -9
(14) 計算オプション入力後,右下の矢印をクリックすると,計算が開始する。
※ ここでログアウト(右上端の “Logout” をクリック)しても計算は継続している。
再度ログインすると現在の状況が確認できる。
計算中の “WebMO Job Manager”(Number 6 の Status が “Running” になっている)
※ 途中で止めたい場合は Actions の×をクリック。
Gaussian & WebMO 2015 -10
(15) 計算終了すると,Status が “Complete” になる(Number 6 の計算時間は 4.3 秒)
。
※ 何らかの理由で計算が失敗した場合は “Failed” と表示される。
IV. 計算結果の表示
(16) “WebMO Job Manager” の Actions の虫メガネアイコンをクリックすると計算結果が表
示される。
※ Job を削除したい場合は,左端のチェックボックスにチェックを入れてから “Delete”
をクリックする。
※ 計算結果を自分のパソコンにダウンロードしたい場合は,左端のチェックボックスに
チェックを入れて,“Download” をクリックする。計算に関係するファイルをまとめ
て zip アーカイブ形式で保存する。zip 形式ファイルは Windows 7 や Mac OS X ではそ
のままダブルクリックして開くことができる。
Gaussian & WebMO 2015 -11
(17) Gaussian(この場合は PM3 法)で最適化された構造,エネルギー,双極子モーメント,
Mulliken ポピュレーション解析による電荷などが表示される。
※ 電荷は Partial Charges の欄に表示される(虫メガネアイコンをクリックすると,分子
の絵の上に図示される)
。
※ 終了する場合は,“View Job” 画面左側の Actions の “Job Manager” をクリックして Job
Manager に戻り,“Logout” をクリック。
※ Gaussian の生の出力ファイル(テキストファイル)を見る場合は,画面左側の Actions
の “Raw output” をクリック。
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(18) 分子軌道(HOMO,LUMO など)の係数を読み取るためには Gaussian の生の出力ファ
イルを開く(“Raw output” をクリックすると別ウィンドウに表示される)。
まず,“Optimized Parameters” の出力が現れるまでスクロール。
Item
Value
Threshold Converged?
Maximum Force
0.000020
0.000450
YES
RMS
Force
0.000004
0.000300
YES
Maximum Displacement
0.001756
0.001800
YES
RMS
Displacement
0.000433
0.001200
YES
Predicted change in Energy=-1.064953D-08
Optimization completed.
-- Stationary point found.
---------------------------! Optimized Parameters !
! (Angstroms and Degrees) !
--------------------------------------------------! Name Definition
Value
Derivative Info.
!
Gaussian & WebMO 2015 -13
-------------------------------------------------------------------------------! R1
R(1,2)
1.4855
-DE/DX =
0.0
!
! R2
R(1,13)
1.0987
-DE/DX =
0.0
!
! R3
R(1,14)
1.098
-DE/DX =
0.0
!
分子構造パラメータの出力の後,分子軌道関連の出力が現れる。
**********************************************************************
Population analysis using the SCF density.
**********************************************************************
Orbital symmetries:
Occupied (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A)
(A) (A) (A) (A) (A) (A)
Virtual
(A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A) (A)
(A) (A) (A) (A) (A) (A)
The electronic state is 1-A.
Alpha occ. eigenvalues --1.46627 -1.19315 -1.08776 -0.94709 -0.79335
Alpha occ. eigenvalues --0.75651 -0.65581 -0.60872 -0.55677 -0.53715
Alpha occ. eigenvalues --0.53540 -0.53030 -0.48642 -0.46690 -0.45978
Alpha occ. eigenvalues --0.45027 -0.35726 -0.34701
Alpha virt. eigenvalues -0.01385 0.01636
0.10402
0.11855
0.12798
Alpha virt. eigenvalues -0.12836 0.13407
0.14563
0.14636
0.15644
Alpha virt. eigenvalues -0.15806
0.16437
0.18636
0.19001
0.19507
Alpha virt. eigenvalues -0.19565 0.22710
0.23443
Molecular Orbital Coefficients
1
2
3
4
5
(A)--O
(A)--O
(A)--O
(A)--O
(A)--O
軌道エネルギー
EIGENVALUES --1.46627 -1.19315 -1.08776 -0.94709 -0.79335
1 1
C 1S
0.23291
0.51051
0.00007
0.45256
0.00025
2
1PX
-0.06038 -0.06221
0.00002 0.08501
0.00027
3
1PY
-0.00001 -0.00007
0.04651 -0.00015
0.12766
軌道係数
4
1PZ
-0.00023
0.00045
0.00000
0.00278
0.00001
5 2
C 1S
0.41850
0.36027
0.00022 -0.19895 -0.00013
6
1PX
-0.05778
0.14911 -0.00009 0.25078 -0.00001
・・・・・・
EIGENVALUES -1 1
C 1S
2
1PX
3
1PY
4
1PZ
5 2
C 1S
6
1PX
16
(A)--O
-0.45027
-0.00024
0.00104
-0.18210
0.00023
-0.00029
-0.00103
17
(A)--O
-0.35726
0.00000
-0.00001
0.00624
0.00008
0.00000
0.00000
18
(A)--O
-0.34701
0.00070
0.00044
-0.00001
-0.15358
0.00009
0.00033
被占軌道(O)でエネルギー最大=HOMO
19
(A)--V
0.01385
-0.00050
-0.00315
0.00004
0.02418
-0.00082
-0.00035
20
(A)--V
0.01636
0.00000
0.00001
0.00550
0.00019
0.00001
0.00000
空軌道(V)でエネル
ギー最小=LUMO
Gaussian & WebMO 2015 -14
<参考
分子軌道の表示方法>
Web ブラウザ上の無料版 WebMO 単独では分子軌道を図として表示することができない。
しかし,次に示すいくつかの方法で図示することができる。
A. Jmol を使う
計算オプションに “gfprint pop=full” と入力しておくと,raw output ファイルを無料の
Jmol(http://jmol.sourceforge.net)で読み込み,構造や分子軌道を表示することができる。
B. Chem3D や GaussView を使う
Chem3D や GaussView があれば,以下の (a) ~ (c) または (a’) ~ (d’) の方法で作成し
た formatted checkpoint ファイル(拡張子 fch または fchk)をこれらのプログラムに読ませ
ることで表示できる。
(a) 上記手順の (13) において,“Advanced” タブの “Additional Keywords” に
“formcheck” を追加する。
(b) 計算終了後,“WebMO Job Manager” の “Download” をクリックして計算結果を zip
形式で保存する(手順(16)参照)
。
(c) zip ファイルを解凍すると,“test.fchk” という名前のテキストファイルがあるので,
これを Chem3D などで読み込む。
または,
(a’) 上記手順の (13) において,“Advanced” タブをクリックし,“Save Checkpoint File” に
チェックを入れる。
(b’) 計算終了後,“WebMO Job Manager” の “Download” をクリックして計算結果を zip
形式で保存する(手順(16)参照)
。
(c’) zip ファイルを解凍すると,“output.chk” という名前のバイナリファイルが確認でき
るが,このままでは Chem3D などで読めない。
(d’) Gaussian を実行したのと同じ OS(今回の場合は 64bit Linux)上のプログラム
“formchk” を用いて,chk 形式ファイルを fchk 形式に変換する。
C. iOS 版の WebMO アプリを使う
WebMO Premium(2015 年 4 月 14 日現在 600 円)を購入すると,iPhone や iPad 上で構造
の組み立てから Gaussian を使った計算,さらに分子軌道を含む計算結果の表示ができる。
※ iPhone, iPad 上で計算を行っているわけではなく,Web ブラウザ上の
WebMO と同じように端末として動作している。