見る/開く - 琉球大学

【琉球医学会】
【Ryukyu Medical Association】
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[原著]沖縄県における一般病院の診療圏(第1報)入院外医
療
崎原, 盛造; 新城, 美也子; 勝, 洋子
琉球大学保健学医学雑誌=Ryukyu University Journal of
Health Sciences and Medicine, 4(3): 238-246
1981
http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/4134
琉球医学会
琉大保医誌4(3) : 238-246, 1981.
沖縄頻における一般病院の静療圏
(第1報)入院外医療
琉球大学医学部保健学科保健社会学教室
崎原 盛造 新城美也子 勝 洋子
は じ め に
沖縄県は昭和55年に保健医療基本構想1)を策
定したが,その中で保健医療ニードを基本的に
充足する地域として6保健医療圏城を設定した.
すなわち,北部,中部,南部,那覇,宮古およ
び八重山の圏域に区分し,各圏域内において第
1次的医療と第2次的医療の完結と第3次的医
療の一部を充足するために,保健医療施設の適
正配置,機能分担および保健医療機関の有機的
な連携を図ることをE]的としている.
この行政的に決定された保健医療圏が実際に,
その圏内に居住している住民の医療需要充足を
目的とする行動の結果形成される実態的あるい
は経験的圏域とどの程度の整合性があるかとい
う問題については崎原がすでに報告2ト4)したと
ころである.すなわち,南部医療圏を除いてや
や低い完結度で計画圏域と経験的圏域の整合性
が確認された.
一方,医療供給側の視点に立てば各医療機関
の診療Egを明確にしておくことは,地域医療計
画を策定する上で不可欠な作業であるが,沖縄
県における医療機関の診療圏に関する報告は皆
無である.
そこでわれわれは沖縄県内の一般病院の診療
圏の明確化と病院群の類型化を試みたのでその
結果について報告する.
分析資料および研究方法
本研究で用いた資料は,昭和52年10月から53
年9月までの1年間の国民健康保険診療報酬請
求明細書(いわゆるレセプト)に基づいて作成
された2次資料である.上記の基礎データは各
医療機関から毎月提出されるレセプトを沖縄県
国保連合会のコンビュタデータとして入力保存
されたものであり,沖縄県内の一般病院19施設
の入院外受診件数を市町村別に,国保被保険者
1,000人当り(昭和53年3月末日被保険者数)
の受診率を算出して,各病院の診療圏の広がり
と深度(患者吸収率)を分析した.
結 果
1.各病院の地域別患者吸収率
診療圏はその医療機関の診療機能を反映する
ものであり,それによって地域との関係も明ら
かにすることができる.それは病院を利用した
患者の空間的分布と地域別吸収率(患者からみ
れば利用率)で示すことができる. 19病院の市
町村別患者吸収率は表1に示すとおりであった.
国立U R病院は那覇市にあって病床数400で
県内最大規模の統合病院である.対象期間の1
年間の外来受診者総数は国保被険者1 ,000人当
り48.2で,県立C病院の75.4に次いで患者吸収
率の高い病院である.地域別患者吸収率は竹富
町の7.9を最低に,最高は渡嘉敷村の95.0で,
県内全市町村から患者を吸収している.さらに
19病院中,本病院を第1位に選好する市町村は
那覇市,佐敷町,与那原町,離島の仲里村,具
志川村,渡嘉敷村,北大東村の7市町村である.
すなわち,非常に広域的かつ深度の深い(患者
吸収率が高い)診療圏をもつ病院である.そう
いう意味で,県内でもっとも高度な診療機能を
有すると思われる病院であり,基幹病院的存在
である.
沖縄県における一般病院の診療圏
239
Table 1. Utilization rate of each hospital by municipality
(excluding less than 5per 1,000insured people).
Hospitals
M
u n ic ip a lit y
N a ha
Ishik a w a
U R
N
C
9 1 .9
5 9 .7
10 .1
N
1 7 .4
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31 9 .0
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1 5 .3
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G in o w a n
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Iも r a r a
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G
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S
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1
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3 8 .2
1 8 .7
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N ag o
23 .1
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7 4 .9
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K u n ig a m i
2 9 .8
5 .9
2 8 .7
28 2 .6
O gim i
1 9 .4
8 .5
2 5 .9
3 3 7 .0
柑 g ashi
2 5 .4
3 9 .6
3 4 5 .1
3 2 .5
4 6 2 .3
6 .2
2 2 .7
38 1 .7
9 .5
27 .1
M
3 6 .1
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4 6 8 .3
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2 9 .2
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34 .1
3
12 .6
Is h i e a k i
N a k iiin
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2 7 .6
1 6 .5
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4 27 .7
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♯ 2
3 1 .3
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3 5 .7
l l .8
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2 2 ▼4
10 .5
8 .0
8 .1
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O nn a
2 1 .6
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4 4 .9
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G in o z a
1 2 .7
13 8 .8
17 5 .7
6 .6
K in
1 3 .2
24 0 .5
2 4 .5
Le
5 2 .9
28 .3
26 4 .2
Y o n a g u su k u
2 3 .0
2 4 7 .5
9 .0
8 .3
195 .4
1 0 .3
Y o m it a n
1 8 .4
18 1 .0
9 .6
K ad ena
1 9 .6
19 1 .5
24 .2
C h a ta n
1 7 .5
17 6 .6
K ita n a k a e u s u k u
1 7 .5
17 2 .6
7 .1
15 .3
5 .8
N ak ag usu k u
5 1.0
6 .4
115 .1
9 .7
3 6 .5
10 .8
2 9 .2
N id ーIh a ra
6 0 .2
3 2 .2
23 .2
1 9 .6
3 .2
10 . 3
2 7 .6
T o m ig u su k u
7 2 .8
3 6 .3
8 ▼5
5 7 .fi
17 .1
2 6 .5
18 .9
K o c h iiーd a
6 6 .0
4 6 . 1
s
o
2 3 .2
l l .1
2 7 .6
2 6 .2
G u s h ik a m i
3 9 .2
4 7 .9
9 .8
4 5 .1
18 .7
3 0 .0
22 .6
T am a gu suk u
8 1 .4
4 5 .4
l l .3
2 2 .6
24 .4
2 2 .6
3 7 .4
K a t su r e n
T .5
9 .9
2 1 .4
3 3 ▼l
C h in e n
4 9 .4
2 5 .9
10 .0
2 0 .6
26 .1
12 .0
4 0 .5
S
a s h ik i
9 3 .f
4 0 .9
25 .4
2 3 .1
16 .5
14 .6
8 2 .2
Y
on ab aru
7 1 .7
29 .4
1 3 .4
2 8 .5
35 .0
16 .8
4 2 ー5
0 Z8 ′
t0
8 4 .4
4 9 .3
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3 5 .1
2 1 ー4
3 1 .6
25 .9
H aeb aru
6 7 .3
3 .2
8 .8
2 0 .3
20 .6
3 5 .6
2 2 .5
N ak azato
4 9 .6
1 4 .2
1 3 .0
1 7 .5
24 .3
G ushika w a-so n
5 0 .3
2 5 .4
1 8 . 1
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T
9 5 .0
9 5 .0
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14 . 8
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5 8 .8
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5 8 .4
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8 .7
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T
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6 5 .9
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9 .7
9 1 .1
M
in a m id a ito
4 0 .8
1 0 6 .7
2 2 .7
2 3 .6
1 9 一1
9 3 .2
35 .1
6 .2
Ih e h a
1 9 .8
2 6 .0
"・ O
8 .1
9 .9
29 .6
I z en a
3 9 .0
5 6 .8
18 .4
15 .6
2 1 .2
4 1 .2
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K it a d a i to
G usuk u be
9 .9
6 .4
4 4 0 .4
6 .1
7 .9
1 4 .6
3 2 2 .1
U en o
l l .0
3 5 5 .2
rt
Irab u
2 1 .0
9 .7
24 6 .7
9 .5
2 1 7 .0
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4 1 .5
7 .1
1 3 .0
5 .4
ー
5 .2
1 9 .2
7 .4
2 3 .6
T a k et o m i
7 .9
8 .3
12 .9
2 9 0 .2
9 .1
Y on ag un i
3 1 .3
9 .8
1 3 .2
1 0 3 .1
l l. 1
T
4 8 .2
24 .1
7 5 .4
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a
22 .1
2 1 .7
S him o n
T
2 8 .3
4 5 .3
2 6 ▼8
20 .2
1 6 .0
23 .2
14 .6
1 2 .5
崎原盛造 ほか
240
Hospitals
M
#
un icip ality
N aha
4
17.1
♯ 5
♯6
4 4 .4
5 6 .0
Ishika w a
G u shik a w a
O kina w a
G ino w a n
10 .2
♯ 7
♯ 8
37 .8
♯ 9
6 .8
ヰ lo
♯1 1
* 12
6 .8
15 .8
10 6 .9
2 2 .4
9 .7
12 1 .5
28 .5
1 4 .2
7 .8
19 1 .1
5 3 .9
3 5 .4
14 8 .4
7 1 .f
i
20 .1
15 7 .9
7 .5
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5 .0
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58 .3
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25 .5
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3 2 .2
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5 .9
19 .8
5 9 .3
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2
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49 .7
17 .7
K itan a ka g usu ku
15 .7
N a k ag usu k u
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15 .2
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24 .5
9 .0
l l .7
1 2 .」
5 .0
N ish ih a ra
T o m ig u suk u
K o chind a
G u shika m i
T a m a gu suk u
7 .7
15 .5
5 5 .7
1 3 .1
15 .3
4 6 .0
3 6 .0
25 3 .5
1 17 .3
7 .8
2 3 .5
5 1 .4
7 2 .4
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13 .2
2 9 .0
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l).7
2 5 .0
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13 1 .1
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C h in en
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5
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3 1 .7
9 ▼
1
l l .4
29 .7
7 .0
2 2 .5
4 6 .1
ll .8
241
沖縄県における一般病院の診療圏
県立N病院は那覇市に所在する240床の病院
で,全患者の吸収率は24.1であり, 19病院中8
位である. 5/1,000以上の患者吸収率をもつ地
域は53市町村中31市町村であり,本病院を第1
位に選好する地域は渡嘉敷村,座間味村,南大
東村および伊是名村の敢島に限定されている.
要するにその診療圏は沖縄本島南部と周辺離島
が中心で,患者吸収率もこれらの地域に限定的
に高くなっている.
県立C病院は具志川市に所在する399床の病
院で,県内ではもっとも患者吸収率が高く,そ
の診療圏は国立UR病院と類似したパターンを
示している.とくに中部の各市町村からは所在
地の具志川市の319.0を最高に,隣接する石川
市,沖縄市,与那城村,勝連町,嘉手納町およ
び読谷村から180.0以上の高い吸収率をもつ,
深度の深い診療圏である.本病院を第1位とす
る地域は所在地の具志川市を含む中部の12市町
村に及び,県内の基幹病院的存在であると同時
に,中部の地方病院としての機能も併せもつ,
きわめて重要な病院であることが示唆される.
県立N G病院は北部の中心地名護市に所在す
る281床の病院である.本病院の診療圏は宜野
座村以北の全市町村と離島の伊江島を含む地域
に限定されているが,これらの地域からきわめ
て高い吸収率を示す,深度の深い病院(175.7553.2)であり,北部の地区病院として機能し
ていることが明らかである.
県立M病院は平良市に位置する195床の,宮
古群島中唯一の一般病院であり,宮古群島全域
を包含する診療圏をもつ.患者吸収率も所在地
の平良市から427,7,城辺町から440.4,他の町
村からも200以上あり,深度の深い診療圏であ
り,まさに宮古群島の中核病院として機能して
いることを示すものである.
県立Y痛院は石垣市に位置する125床の病院
であり,診療圏は八重山群島全域である. M病
院と同様に,所在地の石垣市からは468.3、隣
接して散在する離島よりなる竹富町からは290.2.
遠隔地の与那国町からは若干低くなってはいる
が103.1という高い吸収率の診療圏をもち,八
重山群島の中核病院として存在している.
日赤のS病院は那覇市に位置する204床の病
院であり,診療圏は那覇市を中心に,その近郊
市町村を含むが,患者吸収率は隣接する豊見城
村の57.6が貴高で,比較的低い病院である.ま
た本病院を第1位に選好する市町村も皆無であ
り, 53市町村中26ヶ所(49.0%)からは5/1,000
以下の患者吸収率しかなかった.
私的医療機関は12施設で,もっとも広い診療
圏をもつ病院は♯ 1であり, 5/1,000以上の吸
収率が52市町村(98%)に及び,西原町と敵島
の渡名喜村は本病院を第1位に逮好している.
しかしながら全患者の吸収率は23.2で,それ程
深度の深い診療圏ではない.
♯2は♯1と同一医療法人により開設された
那覇市所在の病院で,病床数は119床で♯ 1と
同規模であるが診療科目は少ない.本病院の患
者吸収率は全体では14.6で♯ 1の約2分の1に
すぎず,地域的にも南部に限定された深度の浅
い診膚圏である.
♯ 3も那覇市に位置する176床の病院であり,
那覇市とその近郊市町村を診療圏とするが,忠
者吸収率は佐敷町の82.2が最高であり, 5/1,000
以上の市町村は39.6%にすぎない.
♯ 4は那覇市在の財団法人を開設者とする55
床の小規模病院であるが人間ドックを併設した
病院である.本病院の診療圏も那覇市とその近
郊地域に限定され,しかも患者吸収率は19病院
中18位で,きわめて深度の浅い診療圏である.
♯ 5は那覇市に位置し, 55床の個人病院であ
る.診療圏は♯2-♯4の各病院のそれときわ
めて類似しており,患者吸収率も14.6にすぎな
yjBra
♯ 6は宗教法人によって開設された那覇市在
の22床の小規模病院であるが,その診療圏はか
なり広く, 5以上の患者吸収率の市町村は44ヶ
所(83%)に及ぶ.仝患者の吸収率も31.7と高
く, 19病院中5位を占める特異的な存在の病院
mim
♯ 7は糸満市に所在する98床の個人病院であ
り,所在地から231.0と高い患者吸収率をもつ
ものの診療圏は隣接する1町2村に限定された,
きわめて小さな範囲である.
崎原盛造 ほか
♯ 8は豊見城村に所在する139床の病院で,
民法組合によって開設されている.この病院の
診療圏は那覇市とその近郊市町村であるが,特
に南部地域からの患者吸収率がきわめて高く,
本病院を第1位に選択しているところが7∴市町
村もあり,南部地区の中心的医樟機関であるこ
とを示している.
♯ 9は浦添市に位置する41床の個人病院で,
脳神経外科を標傍している専門病院であり,し
かも立地条件が利用者にとって必ずしも便利と
城との関係も見られる.
♯11は沖縄市に所在する88床の個人病院であ
る.包含される地域は5以上が17市町村でむし
ろ狭小な診療圏であるにもかかわらず,中部地
区全域からの利用率が高く(109-191), 100以
上の吸収率が10市町村に及んでいる.全患者の
吸収率も46.1で国立UR,県立C病院に次いで
3番目に高い診療圏をもつ病院であり,県立C
病院との補完的関係が推測される.
♯12も同じ沖縄市にある84床の個人病院であ
るが, ♯11とほぼ同規模で診療圏の広がりも類
似しているにもかかわらず,患者吸収率はきわ
は言えず,患者吸収率は19施設中もっとも低か
った.診療圏としても狭小で深度の浅い病院で
%m
‡10は同じく浦添市にある医療法人が開設す
めて低い.
2.病院の模型化
病院の診療圏を構成している要素,すなわち,
患者の地理的分布と患者吸収率の関係を図示す
る157床の病院である.全体的にはそれ程高い
患者吸収率ではないが,所在地の浦添市そして
隣接する宜野湾市を中心に高い吸収率と高い選
ると図1のとおりであった.これは各病院の診
療機能と地域との結びつきを明瞭に表現するも
のであり,図から明らかなように診療圏の広が
好順位にあり,かつ沖縄県最北端の伊平屋島の
住民も本病院を第1位に選好するなど特異な地
ォサ
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Number of municipalities of which patients utilize the hospital 5 and over per
1,000 insured people
Fig. 1. Relationship between geographical extent and utilization rate of each hospital.
Hospitals withョ mark are utilized atfirstrank of order by people of one and more
municip alites.
沖縄県における一般病院の診療圏
243
りと深度に基づいて病院の類型化が可能である.
すなわち,国立UR病院,県立C病院,医療法
人♯1病院,宗教法人♯6病院が1つのグルー
プを形成しており,その特徴は診療圏の広域性,
深度の深さ,そして選好順位の高さである. ♯
6は極小規模の病院であるが診療圏の広さが著
明であり,特異な存在であることを示している.
国立UR病院と県立C病院は平均患者吸収率は
それ程高くはないが,仝患者の吸収率が高く,
診療圏の広さが最大であることから,県内の基
幹病院的機能を有していることが推測される.
第2のグループは県立N病院,民法組合♯ 8
病院,医療法人♯10および個人♯11病院であり,
その特徴は,やや広域的診療圏を有するも深度
は比較的浅いことである.
第3のグループは県立M, Y, NGの各病院
と個人病院の♯7である.その特徴は,診療圏
域は狭小であるが,患者吸収率がきわめて高い
ことである.
第4のグループは日赤S病院,医療法人♯2,
個人病院♯3,財団法人♯4病院,個人病院♯
5, ‡9および♯12の7病院である.このグル
ープの診療圏の特徴は狭/Jvf生と低い患者吸収率
岩佐は地域概念として定義する一方, 「ある病
院の診療圏--・」という表現をしている事実か
ら明白なように,診療単位の意味をも含めて用
いており,明確な区別はしていないと考えられ
る.日本病院管理学会では「診療圏とは,特定
の診療単位について,これを利用する人々の空
間的な分布範囲をいう」という定義案を提出し
たとのことであるが,6)早急な用語の統一的見
解が痛感される.
われわれは日本病院管理学会の定義案を一応
妥当であると考え,医寮施設ごとにその利用す
る患者の地理的分布によって形成される圏域を
診寮圏として用いることにする.
この診療圏の構成要素として岩佐は広がりと
深度を挙げているが,広がりは患者の居住地か
ら病院までの距離であり,深度は単位地域にい
る患者の内の何%をその病院が吸引しているか
ということである.喜多村7)も診療圏を区画す
る基準は,制約要素としては時間距離であり,
拡大要素としては魅力であると報告している.
各病院の診療圏を明確にする方法として本研
究で用いた要素も,患者の地理的分布と患者吸
収率である.この患者吸収率は単位地域として
にあり,診療機能の低さあるいは特殊な診療機
能を有する病院群であると言えよう.
の市町村の被保険者1,000人当りで算出したが,
これは岩佐のいう診療圏の深度を表現するもの
であり,また喜多村が診療圏の拡大要素として
考 察
診療圏は主に病院管理の領域で使用されてい
いる医療機関の魅力を反映した結果でもある.
診療圏の構造について岩佐は絶対的診療圏,
選択的診療圏,限界的診療圏,無制約診療圏の
る用語であるが,その概念について一般化され
た定義はまだ得られていない。岩佐5)は「受診
活動が他の範囲と場所的に区別されて,同質的
四つが存在すると報告8)しているが,中村9)は
単位人口当りの患者数が多い地域を絶対的診療
圏,少ない地域を限界的診療圏とし,外来初診
な共通性をもって行なわれている範囲である」
と定義し,その同質的な共通性という条件は,
病院が患者を集める勢力圏であり,生活圏や経
済圏のような地域概念と同じであると述べてい
患者について人口1,000人対6以上を絶対的診
療圏,それ以下を限界的診療圏としている.本
研究では初診患者に限定していないので直接比
較することはできないが,単位地域における被
る.そのために「(地域概念としての)診療圏
とは,ある範囲の地域を想定してその地域で発
生する医療ニ-ドのほとんど大部分がその内部
保険者1,000人当りの患者吸収率5以上を基準
として,各病院の診療圏を明らかにすることは
可能である.
国立UR病院は絶対的診療圏と考えられる所
で自足し得る範囲のことである.Jと再定義して
いるが,後者はまさに医療圏を示す概念であっ
て,診療圏とは区別すべき用語である.しかし,
在地からの患者吸収率が著明に高いわけではな
いが,第1位選好順位ではあり,かつ県内全市
崎原盤造 ほか
町村から多数の患者を吸収していることから,
無制約診療圏からの患者が多く,中央病院的性
格が強いと言える.
県立C病院は所在地を中心とする中部一円か
ら高い患者吸収率をもつと同時に県内全域から
高い吸収率をもつ病院であり,絶対的,選択的,
無制約診療圏をカバーしている地方病院的性格
と中央病院的性格を併せもつ,もっとも重要な
医療機関であることを意味する.
県立N病院は国立UR病院に隣接し,さらに
市内の他の医療機関との東食・も推測される立地
条件のもとにあり,絶対的診療圏と選択的診療
圏より構成される珍療圏が特徴で,地区病院的
性格の強い病院であると言えよう.
県立NG, M, Y, ♯7, ♯8, 井lo, ♯11
の各病院は絶対的診療圏からの患者が多いので
地区病院的性格の明瞭な病院群である.
以上のように各病院の診横国の広がりと深度
に基づいて,いくつかの病院群に類型化するこ
とができたが,広域的な診寮圏をもち,かつ患
者吸収率も高い病院群は広域高深度型と呼ぶこ
とが出来る.この柄院群は国立UR病院と県立
C病院に代表され,珍寮機能が高く,高度な医
療サービスを提供している中央病院的あるいは
特殊的性格の痛院である.
244
要 約
昭和52年10月から53年9月までの1年間の沖
縄県における国保資料に基づいて,県内19病院
の入院外受診件数を市町村別に,被保険者1 ,000
人当り受診率で患者吸収率を表わし,各病院の
診療圏を明らかにし,かつ,病院の類型化を試
みた_
1)国立UR,県立C,私的病院♯1および♯
6病院は広域的診療圏をもち,患者吸収率も高
い広域高深度型の病院群であり,特に国立UR
と県立Cは中央病院的性格の診療圏をもつ.
2)県立N,私的病院♯8, ♯10および♯11は
やや広域的診療圏をもつが,患者吸収率は比
較的低い病院群であり,地方病院的性格の診
寮圏をもつ.
3)県立NG, M, Yおよび私的病院♯7は病
院所在地とその近郊地域からの患者吸収率が
著明に高い地域限定高深度型の病院群で,也
区病院的性格の病院である.
4)日赤S,私的病院♯2, ♯3, ♯4,♯5,
♯ 9および♯12は診寮圏の広がりは一様でな
く患者吸収率も低い散在低深度型の病院群で
あり,診療機能は高くないかあるいは特殊な
診療機能をもつ病院であると考えられる.
やや広域的診療圏であるが患者吸収率はそれ
程高くない病院群は広域低深度型であり,中規
模で診療機能がやや高く,特定地域と密接な関
係をもつ病院であり地方病院的性格の病院がこ
の型に含まれよう.
次に診療圏の広がりに特徴はなく,患者吸収
率も低い病院群は散在低深度型であり,中小規
模で診療科目は少なく,特定地域との関係もみ
られない病院である.診療機能はどちらかと言
文 献
1 )沖縄県:沖縄県保健医寮基本構想,昭和55
年
2)崎原盛造:医療圏設定に関する一考察,第
19回日本病院管理学会稔会発表(1981年11
月,那覇市)
3 ) SAKIHARA, S. : Medical service areas
えば低く,あるいは特殊な診療機能をもってい
る.
in Okinawa. Part I. Independency as
最後は病院所在地とその近郊地域からの患者
吸収率が著明に高い病院群であり,地域限定高深
度型である.この型はその地方の住民にとって
4, 109-117, 1981.
重要な病院であり,絶対的診療圏からの患者が
多いので地区病院的性格の病院群がこの型に含
Ilira
areas. Ryukyu Univ. J. Health Sci. Med.
4 ) SAKIHARA, S. : Medical service areas
in Okinawa. Part II. Local features of
southern Okinawa. Ryukyu Univ. J.
Heal血Sci. Med. 4, 118-125, 1981.
5)岩佐 潔:診療圏と地域計画, 「医療制度
沖縄県における一般病院の診療圏
245
とその周辺」所収 P. 75-89,医学書院,
東京, 1973.
6)倉田正一,林 喜男:地域医療計画, P.
151,篠原出版,東京1977.
7)喜多村治雄:診療圏の経済学的考察,日本
公衛誌5, 428-433, 1958.
8)岩佐 潔:前掲書∴P. 77-79
9)中村 賢:大学病院の医療圏,公衆衛生39,
797-808, 1975.
246
Service
Areas
I.
Seizo
of General
Outpatient
SAKIHARA,
Care
Miyako
Department
School
Service
of Health
areas of
Sciences
19 general
and Yohko
KATSU
Sociology
of Medicine,
in Okinawa
in Okinawa
Services
SHINJO
of Health
Faculty
hospitals
Hospitals
University
were delineated
of the
based
Ryukyus
on the receipts
of
the National
Health
Insurance
Program (Kokumin Kenko Hoken) in the period
from October
1977 to September
1978.
1. The national
UR hospital,
prefectural
C hospital
and nongovernmental
hospitals
of # 1
and # 6 had the
cental
hospitals.
largest
service
area,
particularly
both
UR and C hospitals
seemed to be
2. Although
the prefectural
N hospital,
non-governmental
hospitals
of #8, #10 and #11
had comparatively
larger service areas, patients
visiting
from each unit area were not great
and had characters
as of regional
hospitals.
3. The prefectural
NG, M, Y hospitals
and non-governmental
hospitals
of # 7 were considered to be the district
hospitals
in each locality,
serving particularly
for patients
from local
areas
4.
# 5,
of
and their neighbor
municipalities.
Service
areas of the Red-Cross
# 9 and #12
were not clearly
service
areas were sporadic
with
hospital
delineated
relatively
and non-governmental
due to their irregular
lower
attractiveness
hospitals
of # 2, # 3,#4,
pattern.
Their features
for
patients.