知的所有権センターアルケア株式会社の「エスアイエイド」は、シリコーンゲルでコーティングした医療用創傷被覆保護（ドレッシング）材だ。ドレッシング材としては、国産初のシリコーンゲルコーティング製 VOL. 76 品である。医療機器は一般に発売から浸透するまで長い年月を要するが、エスアイエイドは2010年の発売後から非常に早いペースで売上げを伸ばしてきた。その要因は、ドレッシング材交換時の痛みや組織損傷を軽減し、効果的な創傷治療を実現したことが、創傷治療のニーズに応えた被覆保護材「エスアイエイド」特　許　第4899019号商標登録　第5309778号第5309779号　ほか医療現場のニーズにマッチしたためである。従来のシリコーンを用いたドレッシング材は、傷からの滲出液を吸収する材料が傷と固着する場合があり、はがす際に新生組織を損傷し、患者に痛みを与えてしまう難点があった。そこで、同社は傷に密着し、かつ穏やかにはがせる機能を追求した。傷との接触面をシリコーンコーティングする場合、滲出液を吸収する微細な穴をあける必要がある。競合特許を回避しながらこれらの機能・構造を実現する手法として見いだしたのが、メッシュ状のニットにコーティングする方法だった。一方で、シリコーンの持つ非固着性のため、熱や粘着等によるメッシュと吸収材料の一体化が難しかった。その課題を解決したのが、メッシュにコーティングするシリコーンを増やし、吸収材料にしみ込ませて一体化する画期的な手法である。これによって、生産効率が飛躍的に向上し、吸収材料と傷の固着も防げる。「目指す機能を実現するため最適な穴の大きさ、シリコーンの粘度、量、圧着の加重などを見いだすのに苦労しました」というのは、同社バイオインターフェイス開発研究部の上田充志さんだ。メッシュ、吸収材料から新たに開発して、５cm角ほどの試作品を手づくりしては実験を繰り返すこと２年に及んだ。エスアイエイドは製造方法も含めた特許を取得しているが、同社はさらに、痛みを軽減する製品として「マイルドピール」という技術ブランドを商標登録し、シリコーンを使ったラインナップを展開。ブランド戦略を図っている。「知財を最大限に活かしてユニークな商品で勝負するという開発方針があり、開発現場とマーケティング、知財担当者が緊密な関係で動いています。医療機器は安全性・安定性などの確認に長期間を要することから、開発初期の製品設計から知財が積極的に関与しています」と同社知財グループの中村茂義さんは言う。「開発テーマに関連する特許の明細書を開発担当者に見てもらうことで、逆に設計の自由度が高くなる」とも。エスアイエイドはインドネシア、タイなどアジア諸国でも発売しており、同社はここでも知財強化による事業展開を推進してゆく予定だ。関連知財：特許第4899019号商標登録第5309778号、第5309779号ヒット商品を支えた知的財産権（季刊誌パテント・アートニーVol.76、2014冬号、日本弁理士会発行） http://www.jpaa.or.jp/?cat=689 より転載お問い合わせ知的所有権センター　TEL：092-622-0035 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2015.3 27