ダウンロード - JPモルガン・アセット・マネジメント

Quarterly Perspectives
Japan | 4Q 2014
Guide to the Markets - Japan
のダウンロードはこちら
www.jpmorganasset.co.jp/GTM/jp.pdf
STRATEGISTS
Yoshinori Shigemi
Executive Director
Global Market Strategist
J.P. Morgan Funds
Dr. David P. Kelly, CFA
Managing Director
Chief Global Strategist
J.P. Morgan Funds
Tai Hui
Managing Director
Chief Market Strategist Asia
J.P. Morgan Funds
J.P.モルガン・アセット・マネジメントより、「Quarterly Perspectives」
の最新号をお届けします。本書では「Guide to the Markets」の主
要テーマに注目し、ポートフォリオの議論に関わる重要なポイ
ントをご紹介します。
「Quarterly Perspectives」および「Guide to the Markets」は、「Market Insights」プロ
グラムの一部です。このプログラムは、投資家の皆さまが感情に左右されること
なく、論理的に金融市場や経済を分析する手法を提供するものであり、最終的に
皆さまが合理的な投資判断を行う手助けとなるよう、開発されています。
今四半期のテーマ
1 市場のテーマ1:FRBによる利上げと金利の上昇
まもなく「通常の関係性」が回復する
2 市場のテーマ2:世界的な「低成長」への期待
投資スタイルが「日本化」し、「利回り追求」が続く
3 「金利上昇」と「低成長期待」下の投資①
キャピタルを狙う株式投資が王道。銘柄選択も重要
4 「金利上昇」と「低成長期待」下の投資②
引き続きインカムを求める場合には「アクティブ投資」
Quarterly Perspectives
1 市場のテーマ1:FRBによる利上げと金利の上昇
まもなく「通常の関係性」が回復する
ポイント
•
通常の長期国債市場においては、
米国国債の動きがより支配的で
す。すなわち、米国の長期金利の
動きが、日本やドイツの長期金利
の動きを決めがちです。
•
これに反し、米国の長期金利が、
欧州の長期金利低下に「つられ
る」ように低下したのは、米国独
自の金利変動要因に欠いていた
ことが大きいと見られます。すな
わち、①米国で利上げの織り込み
が進まず、あるいは②インフレ期
待が高まらなかったことが要因の
1つと考えられます。
•
今後はこれまでとは反対に、利上
げの織り込みやインフレ期待の高
まりによって、米国の長期金利は
自律性を取り戻し、上昇に転じる
ものと見られます。
米国の長期金利は大方の予想に反して低下
2014年に入ってから、米国の長期金利は低下基調をたどりました。米国10年国債利回り
は年初の3%近辺から低下し、8月の終わりには2.3%台に達しました。その後、9月以降は
上昇に転じており、足元では2.5%近辺での推移となっています。
2014年の年初時点において、市場参加者の多くは米国の長期金利は上昇するものと見て
いました。なぜ、米国国債利回りは市場の大方の予想に反して低下したのでしょうか。
長期金利低下の要因を検討するには、世界の長期国債市場における「通常の関係性」に
ついて振り返るのがよいと思われます。また、そうした「関係性」に鑑みると、長期金利の見
通しが見えやすくなる可能性があります。
世界の長期国債市場における「通常の関係性」
まずは、世界の長期国債市場における「通常の関係性」について考えてみます。ここでは
先に株式市場について考えるのが、より直観的と思われます。
株式市場においては、前日の米国株式市場の影響を、翌日以降の日本を始めとするア
ジアの株式市場は受けがちです。また、1日単位のみならず、もう少し長めのトレンドで
も、こうした影響を一定程度見出すことができます。
世界の債券市場においては、特に長期国債市場で同様の関係性が確認されます。すなわ
ち、前日の米国市場における長期金利の影響を、翌日の欧州や日本の長期国債市場は
受けがちです。また、少し長めのトレンドでも同様で、米国の長期金利が上昇もしくは低下
トレンドにある場合、欧州や日本の長期金利もその影響を受けがちです。
Guide to the Markets - Japan, p12
2 | Quarterly Perspectives
•
「利上げはまだ先」との見方
が、これまで長期金利の上
昇を抑制してきました。
•
しかしながら、米国では景
気の拡大によって雇用の増
加が続いており、失業率は
(FRBが考える)完全雇用の
水準に近づいています。
こうした関係性は、そもそも経済のファンダメンタルズ、あるいは「世界経済の力学」に根差
していると考えられます。例えば、ユーロ圏やかつての日本は貿易収支が黒字の地域で
あり、消費や投資といった内需の不足を、輸出という外需で補う経済構造です。したがって、
海外景気の影響を受けやすくなります。対称的に、米国は世界最大の貿易赤字を持つ国
であり、相対的に見て海外景気の影響を受けにくい、内需主導の経済構造です。昔から、
「米国がくしゃみをすると、日本は風邪をひく」という表現がなされます。
米国の金融市場は米国経済の動向を反映します。これと同様に、各国の金融市場はそれ
ぞれの経済動向を反映するわけですが、それは米国経済の影響を受けたものです。した
がって、各国の金融市場は米国の金融市場と関係を持つことになります。
記憶に新しいところでは、昨年5月に米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長(当
時)が量的緩和政策の縮小に言及し、その発言以降、米国の長期金利は3%台まで上昇し
ました。その過程において、ドイツや英国の長期金利はやはり上昇を見せています。
失われた「通常の関係性」
しかしながら、今年の中盤以降、「欧州の長期金利低下が米国の長期金利低下につな
がっている」と議論が盛んになりました。つまり、「通常」とは逆の関係が生じています。
その要因として、国際的な裁定関係が挙げられます。
例えば、ドイツ10年国債利回りは1%を下回る水準にまで低下する一方、米国10年国債利
回りは2.5%程度であったことから、利回りが約1.5%上回る米国債は、債券市場の投資家
にとって魅力的に映ります。結果として、米国債市場に安定的に資金が流れ、米国の長期
金利は低位で安定したものと見られます。
ここで見落とされがちな、重要かつシンプルなポイントがあります。
•
米国のみならず、世界的に景
気は拡大していることが確認
できます。
•
各国の景気拡大は、互いに独
立したものではなく、互いに影
響を及ぼし合っていると考えら
れます。
•
なかでも、世界最大の貿易赤
字国である米国経済の需要拡
大が、世界の景気をけん引し
ていると見られます。
Guide to the Markets - Japan, p5
J.P. Morgan Asset Management
3
Quarterly Perspectives
それは、「FRBによる利上げの織り込みが進まない」中で、「欧州の長期金利が低下した」
という2つの条件が同時に満たされたために、米国の長期金利は欧州の影響をより受けや
すくなったと見られる点です。
利上げの織り込みが進まず、米国の長期金利の動向にとって重要な政策金利見通しが
先々フラットであるということは、「米国独自の金利変動要因」が薄れることを意味します。
結果として、米国の長期金利は、他の国の影響をより受けやすくなったと考えられます。
米国の長期金利は自律的なメカニズムを取り戻す
こうした中、足元の金融市場では、ようやく利上げの織り込みが進みつつあります。そうし
た状況を最もわかりやすく示しているのは米国2年国債利回りの動向です。過去の関係性
からも明らかなように、2年国債利回りの動向は将来の政策金利を「先読み」して動きます。
今後は、米国で利上げの織り込みがさらに進むことで、米国の長期国債市場では米国自
身の要因がより支配的になり、米国の長期金利は「自律的なメカニズム」を取り戻すと見ら
れます。
また、もう1つ重要な点として、欧州や日本の長期金利も今度は主従が逆転するように、米
国の長期金利の影響を受けて上昇する可能性があります。
•
これまで米国の長期金利が上
がらず、欧州の長期金利低下
につられてきた要因は、米国
サイドの要因(利上げの織り込
みやインフレ期待の高まり)に
欠いていたためと見られます。
•
今後は、米国の更なる景気拡
大により、利上げの織り込みが
進み、あるいはインフレ期待が
高まることにより、米国の長期
金利は自律性を回復して、上
昇に転じるものと見られます。
•
実際、利上げに先んじて動く2
年国債利回りはじわじわと上
昇しています。
投資家の関心はそうした中で、どういう投資行動を取ればよいかという点ですが、それに
ついては、次のセクションで説明する、もう1つの「市場のテーマ」を合わせて考えることが
適切と見られます。
FRBによる債券買い入れの終了
も需給要因から、米国の長期金
利を上昇させる可能性があります。
Guide to the Markets - Japan, p8
4 | Quarterly Perspectives
2 市場のテーマ2:世界的な「低成長」への期待
投資スタイルが「日本化」し、「利回り追求」が続く
ポイント
•
世界的に見て低成長への期待が
強まっています。その背景として
は、高齢化による生産年齢人口
の伸び鈍化や、生産能力に余剰
があるために設備投資が進まな
いことなどの点が挙げられます。
•
低成長への期待により、「利回り
追求」の動きは世界的なトレンド
になりつつあります。しかも、こう
したトレンドはまだしばらく続く可
能性があります。
前節の「市場のテーマ1」では、長期金利が上昇する可能性について議論しました。これは
向こう数年間の比較的短い時間軸の話です。本節では、少し長めの時間軸における、市
場のテーマについて議論します。
世界的な「低成長」への期待
先進国を中心に、世界経済は「低成長」期を迎えるのではないかとの期待が強まりつつあ
ると言えます。
「低成長」への期待が強まっている最も大きな要因としては、今後、先進国を中心に高齢化
がさらに進み、生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)の伸びが鈍化していく点が挙げ
られます。米国を例にとると、国連によれば、過去50年間における生産年齢人口の伸び率
は年率で1.2%程度でしたが、これから先の50年間については0.3%程度に留まると推計さ
れています。
また、さらに重要な点として、先進国のみならず、中国やその他のアジア諸国においても人
口の高齢化は加速しています。中国国家統計局は、2012年において同国の生産年齢人
口が減少に転じたと発表しています(中国の場合は15歳から59歳までの人口)。また、シン
ガポールや韓国では日本以上のスピードで高齢化が進んでいます。
人口動態に加えて、足元の設備投資が盛り上がりに欠いている点も「低成長」への期待に
つながっている重要な要素です。今日の投資(教育を含む)は明日の生産性や生産量を左
右するため、経済成長にとって大変重要な要素です。
その設備投資が伸びない要因として、いくつかの点が指摘されています。
長期的に見ると、米国の経済成
長率は鈍化しています。
この要因の1つとしては、高齢化
によって生産年齢人口の伸びが
鈍化している点が挙げられます。
もう1つの要因としては、生産年
齢人口の伸び鈍化やこれまでの
資本蓄積によって、必要な投資の
伸びが鈍化していることも挙げ
られます。
Guide to the Markets - Japan, p11
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5
Quarterly Perspectives
まず、先進国ではリーマン・ショック以前に、中国ではリーマン・ショックの後に、一部のセク
ターで積み上がった余剰資本を解消する圧力にさらされています。生産能力は需要を上
回っているとの指摘です。また、先進国では生産年齢人口の伸びが鈍化していることから、
新たに必要となる資本装備も限定的です。すなわち、企業が新たに設備投資を行って生
産能力を増やしたとしても、そこから得られる事業収益見通し(投資の期待収益率)もやは
り限定的なものに留まります。
さらに、過去で言えば蒸気機関や自動車などの生産性を飛躍的に高めるようなイノベー
ション(技術革新)が枯渇するとの指摘もあります。
最後に、やはり先進国を中心に、公的債務が積み上がり、社会保障負担が増す中で、こ
れらを支える労働力人口の伸びが鈍化していることから、インフラ設備の更新も滞りがち
になります。
これらを含む要因により、設備投資や政府による公共投資は停滞しているとの指摘があり
ます。
世界の投資スタイルは「日本化」している
世界的に見て、こうした「低成長」への期待が強まることは、今後も「低金利環境」と「利回り
追求」の動きが続く可能性があることを示唆します。言い換えると、キャピタル・リターンに
期待するのではなく、インカム・リターンを期待する動きが根強く続いていく可能性がありま
す。まさに、日本の「後追い」をするように、世界の投資スタイルが「日本化」に向かってい
る可能性があります。
長期で見た、長期金利の低下
傾向も、潜在成長率やトレン
ド成長率の低下を一部反映し
ているものと見られます。
Guide to the Markets - Japan, p9
6 | Quarterly Perspectives
日本の金融市場の歴史は「利回り追求」の歴史
日本の金融市場の歴史は「利回り追求」の歴史と言えるかもしれません。
日本で最初に「ゼロ金利政策」が導入されたのは1999年2月のことです。その後、2000年8
月と2006年7月に同政策の解除(=利上げ)がそれぞれ実施されますが、いずれも再び
「ゼロ金利」に戻り、2008年12月以降、現在に至るまでは同政策が維持されています。
「ゼロ金利」の下、日本の金融市場では長らくの間、「利回り追求」の動きが続いています。
こうした動きは特に、個人投資家向けの人気商品を例に取って見ると顕著です。
まずは2001年以降、「先進国ソブリン」と呼ばれるような先進国の国債に投資するファンド
が残高を徐々に増やしました。こうした動きは、2006年12月頃まで続きます。
また、2004年6月に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始して以降、日米金利差
の拡大が生じる過程では円安が加速しました。「円キャリー・トレード」と呼ばれる、高金利
通貨と、ゼロ金利通貨の円との金利差を利用した取引が、円安傾向を後押しする共に、外
貨建て債券への投資を一層、促しました。
間もなく投資家は、先進国国債の利回り水準では飽き足らなくなり、2000年代初頭からの
新興国ブームが追い風となる形で、米ドル建てや現地通貨建ての新興国国債に投資する
ファンドが注目を集め、「利回り追求」の動きはさらに加速しました。
そうした折、2008年9月にリーマン・ショックが世界を襲い、日本の後を追うように、先進国
の政策金利は押しなべて「ゼロ金利」か、各国にとっての歴史的な低水準にまで達しました。
その後も「利回り追求」の勢いは衰えることを知らず、ここ数年は世界のハイ・イールド債券
やREITに投資するファンドや、通貨選択型ファンドが日本の投資家を魅了しています。
ここまでの2つの市場のテーマ、①「長期金利の上昇」と、②「世界的な低成長への期待」
の下、日本の投資家はどのような行動を取る必要があるかを次に考えてみます。
•
日本の投資家にとってみると、
2007年頃までは米国や欧州と
いった主要国との金利差に着目
した投資に妙味がありました
(先進国の国債など)。
•
しかしながら、リーマン・ショック
によって、米国や欧州の金利は
日本に近づいて、金利差はほと
んどなくなりました。
•
先進国の国債に変わって、ハ
イ・イールド債券やREITといった
資産が人気が集まりましたが、
これらの資産では割高感が意
識されています。
世界的な「利回り追求」の動きに
より、国内でのインフレ率を十分
に上回るようなインカム系資産は
少なくなりつつあります。
Guide to the Markets - Japan, p71
J.P. Morgan Asset Management
7
Quarterly Perspectives
3 「金利上昇」と「低成長期待」下の投資①
キャピタルを狙う株式投資が王道。銘柄選択も重要
投資のヒント
•
たとえ「低成長への期待」が強ま
る局面であっても、株式投資の期
待リターンは債券の期待リターン
を上回ると考えられます。そうした
局面では、事業(株式)の期待リ
ターンはかつてに比べて低下する
かもしれませんが、それに合わせ
て企業の資金需要が減少し、金利
(債券の期待リターン)も低下する
ためです。
•
「金利上昇」や「低成長への期待」
にかかわらず、株式投資は「永遠
の王道」です。
•
ただし、金利が上昇する局面では、
これまでゼロ金利であるがゆえに
生き永らえることができた企業が
あぶり出されます。そうした局面
では銘柄選択やアクティブ投資が
重要になります。
投資の王道はやはり株式投資
足元の経済・金融市場の情勢からは次の4つの点が指摘されます。①世界経済をけん
引する米国の景気拡大、②これを背景とする米FRBの利上げと金利の上昇、③欧米の
ハイ・イールド債券や世界のREITの割高感、そして④低成長への期待、です。
①から③はいずれも、債券投資に比べ、株式投資に有利な局面であることを示唆しま
す。一方、④については、株式投資の妙味が薄れる局面ではとの見方もあるかもしれま
せんが、必ずしもそうではありません。
確かに、世界が低成長に陥るとすれば、株式投資の期待リターンはこれまでに比べ、
低下する可能性があります。しかし、それは同時に、株式投資よりもリスクが小さい債
券の期待リターンも低下することを意味します。つまり、これら2つはパラレルに動く傾向
にあります。
そもそも企業は利益を出す存在です。赤字で持ち出しになるならば、誰もビジネスを行
いません。同様に、企業が銀行借り入れや債券発行によって債務を背負うのは、利払
い負担をカバーして余りあるほどの収益を生み出せるとの見込みがあるためです。
それでは、「低成長」に対する期待が高まり、高い利益を生み出しにくい環境に陥るとど
うなるでしょうか。企業は不採算な事業を売却し、借り入れを返済します。そうすると、資
金の需給が緩んで金利が低下します。金利はどこまで下がるでしょうか。企業が利益を
生み出せる水準まで低下します。そうでなければ、企業は借り入れを行わないためです。
こうしたメカニズムが働くことにより、事業(もしくは株式)の期待リターンは、金利(債券
の期待リターン)を上回ります。
Guide to the Markets - Japan, p72
8 | Quarterly Perspectives
•
インフレ・デフレにかかわらず、
株式のリターンが土地に代表
される不動産を概ね上回って
います。
•
その背景は、企業は土地を
「原材料」にして、事業を行う
ためです(土地を借りてきて、
事業を行うためです)。
•
土地の期待リターンが、(原
材料である)事業投資の期待
リターンを上回るならば、誰
もビジネスを行うことはなく、
土地に投資するでしょう。
•
借り入れについても、土地と
同様に考えることができます。
•
投資の王道は株式投資です。
ここまでの議論の中で、重要かつ見落としがちなことが1つあります。それは、株式投資が
債券投資と比べて有利になるために、「景気が良い」という前提は必ずしも必要ないという
ことです。「景気は並み」(=経済は実力どおり)でもよいのです。「並み」の環境では事業
(株式)の期待リターンは「良い」ときに比べて低下するかもしれませんが、一緒に金利も低
下します。
「金利上昇」や「低成長への期待」にかかわらず、株式投資は「永遠の王道」です。
「過剰流動性の回収」は不採算企業をあぶり出す。銘柄選択が重要。
それでは上とは反対に、株式の期待リターンが債券の期待リターンを下回るのはどのよう
な状況でしょうか。それは、「景気が悪い」か、「株式バブル」のときです。
実際には、米国の景気が後退する兆しは見られず、株式市場がバブルに踊っているという
状況にもありません。そして、バブルを生み出す可能性のある過剰な流動性はようやく取り
除かれようとしています。
過剰な流動性が取り除かれて金利が上昇する局面では、これまで流動性が確保されてい
たがゆえに生き永らえていた企業があぶり出されます。
すなわち、低金利ゆえに採算が取れていた、一部の企業の収益性や資金繰りは悪化し、
生き残りが困難になる企業が出てくる可能性があります。前節でも議論したとおり、これは
利上げがある米国や英国の企業のみに限った話ではなく、米国での金利上昇は他国の金
利にも影響を与える可能性があります。
そうした環境では、競争力が高い企業を見出す銘柄選択能力がこれまで以上に重要です。
そして、世界的な低成長が続く局面では、株式市場全体の期待リターンは、これまでの実
績に比べて低水準に留まる可能性があります。そうした中でも、一定程度の高いリターン
を求めるには、やはり銘柄選択能力が重要ということになるでしょう。
とはいえ、個人投資家にとって銘柄を1つ1つ見極めるのは困難ですし、個別銘柄への投
資には多額の資金が必要となる場合があります。そうした中での1つの選択肢は、プロ
フェッショナルが銘柄を厳選して投資を行うアクティブ・ファンドへの投資を行うことです。
Guide to the Markets - Japan, p51
•
日本株式は、米国株式に劣後
していますが、外国人投資家
は日本株を買い増しています。
•
その理由は、個別銘柄で見る
と上昇する銘柄があるためで
す。
•
年初来で見て、TOPIXの米ド
ル建てリターン(米国の投資
家にとってのリターン)はマイ
ナスですが、個別銘柄で見る
と、これを上回る銘柄は多く
あることがわかります。
•
これは、アクティブ投資(銘柄
選択)の重要性を示唆してい
ます。
J.P. Morgan Asset Management
9
Quarterly Perspectives
4 「金利上昇」と「低成長期待」下の投資②
引き続きインカムを求める場合には「アクティブ投資」
投資のヒント
•
「利回り追求」という投資のテーマ
はこれからも続く可能性があります。
しかしながら、バリュエーションの
割高感にせよ、金融政策の方向性
にせよ、投資家を取り巻く環境は
変わりつつあります。投資家はこう
した変化を前に、ポートフォリオを
再考することが望ましいと言えます。
•
まず、ハイ・イールド債券やREIT
に対する投資配分の偏りがあれ
ば、これを分散させることが重要
となります。分散先としては、短期
債券市場や変動利付債券市場、あ
るいは株式市場(高配当株式など)
が挙げられます。
•
また、ハイ・イールド債券やREIT、
高配当株式といったインカム系の
資産の中でも、バリュエーションや
政策などの局面変化をうまく捉えて
機動的に入れ替えを行うようなアク
ティブ投資も一案です。
インカムを引き続き求めたい場合に、何を考慮に入れる必要があるか
前節で展開したように、たとえ株式投資が「王道」であっても、日本では永らく「利回り追求」
の動きが続いてきたわけですから、多くの投資家にとり、債券やREITなどから、株式への
シフトは容易ではないかもしれません。
さらに重要なこととして、世界的な「低成長への期待」により、「利回り追求」の動きが持続
する可能性も考えられます。
そうした局面では、欧米のハイ・イールド債券や世界のREITが引き続き有利との見方もあ
るかもしれません。しかしながら、これらの資産は少しずつ割高な領域に入りつつあります。
「利回り追求」の動きが世界的なトレンドとなり、投資家層に厚みが生まれたことも、これら
の資産が割高感を持ち始めた要因と見られます。
加えて、米国や英国では利上げが予定されており、金利は上昇の方向です。これはハイ・
イールド債券やREITにとって不利に働きます。
米国や英国の利上げについてはもう少し考えておくべきことがあります。
米国や英国などの一部の国々は政策金利の引き上げを既に、あるいはまもなく開始する
一方で、ユーロ圏は政策金利をさらに引き下げており、追加緩和も模索しています。また
日本も追加緩和に踏み切る可能性があります。
過去10数年の主要国の金融政策を振り返ると、緩和・引き締めのタイミングに違いはある
ものの、方向性は概ね同じでした。一方で、今回の局面のように、一方が引き締める中で、
他方が緩和に出るという、金融政策が反対方向を向くのは約20年ぶりのことです。すなわ
ち、多くの市場参加者にとっては「初めての経験」とも呼べるものです。
過去10数年の主要国の金
融政策を振り返ると、緩和・
引き締めのタイミングに違
いはあるものの、方向性は
概ね同じでした。
Guide to the Markets - Japan, p10
10 | Quarterly Perspectives
日本や欧州が金融緩和を続ける
一方で、米国が金融引き締めに
出るというように、金融政策の方
向性が異なるのはおよそ20年ぶ
りのことです。
1994年から始まるFRBによる利上げ局面と、1990年代初めから1990年代後半まで続く、
ドイツ連銀と日銀による利下げ局面では、最終的にドル高が生じ、新興国のいくつかの
国々が苦難に陥りました。
すなわち、今回の利上げ局面は、単なる利上げ局面ではなく、20年前ほどではないにせよ、
金融市場に大きな変化をもたらす可能性もあります。
ここまでをまとめると、「利回り追求」という投資のテーマはこれからも続く可能性がありま
す。しかしながら、バリュエーションの割高感にせよ、金融政策の方向性にせよ、投資家を
取り巻く環境は変わりつつあります。投資家はこうした変化を前に、ポートフォリオを再考す
ることが望ましいと言えます。
テーマは同じでも、環境は変わりつつある。新たな局面を乗り切るには?
新たな局面を乗り切る1つの選択肢は、やはり長期分散投資です。投資家は自身のポート
フォリオに「偏り」がないかを再考する必要があります。
分散投資の観点からまず挙げられるのは、これまでの日本の投資家の動向を考えると、
永らく人気の高かった欧米のハイ・イールド債券や世界のREITなどから、資金の一部を別
の資産に移すことです。
投資先としては、リスク許容度に応じ、短期債券市場や変動利付債券市場、あるいは株式
市場などが挙げられます。定期的なインカムを求める投資家は株式市場を敬遠するかもし
れませんが、高配当株式に資金の一部を配分することで、「金利上昇に耐性のある、イン
カム重視のポートフォリオ」を構築することが可能です。
あるいは、インカム系の資産の中でも、バリュエーションや政策などの局面変化をうまく捉
えて機動的に入れ替えを行うようなアクティブ投資も一案です。
個人投資家の多くは、仕事も家族も持つ人たちです。こうした人たちが、「どの銘柄が、ど
の資産が適切か」を考えることに日々時間を費やすのは必ずしも望ましい姿とは言えませ
ん。長期分散投資やプロに運用を委ねる利点はこうしたところにもあります。
•
資産クラスのパフォーマンスは毎
年、毎月異なります。
•
こうした中で、上昇する資産を
毎回見つけ出して、それにうまく
乗り換えていくのは個人投資家
にとっては至難の業です。
•
長期分散投資やプロに投資を委
託することが重要な選択肢とな
ります。
Guide to the Markets - Japan, p73
J.P. Morgan Asset Management 11
Quarterly Perspectives
Quarterly Perspectives
Japan | 3Q | 2014
Market Insightsプログラムは、グローバルな金融市場の幅広いデータや解説を、特定の金融商品に言及することなく提供するものです。お客さまの市場に対する
理解と投資判断をサポートします。本プログラムは現在の市場データから投資のヒントや環境の変化を読み解きます。
本資料に記載の見通しは投資の助言や推奨を目的とするものではありません。また、J.P.モルガン・アセット・マネジメントあるいはそのグループ会社において記載
の取引を約束するものでもありません。予測、数値、意見、投資手法や戦略は情報提供を目的として記載されたものであり、一定の前提や作成時点の市場
環境を基準としており、予告なく変更されることがあります。記載の情報は作成時点で正確と判断されるものを使用していますが、その正確性を保証するもので
はありません。証券や金融商品への投資のメリットは投資家ご自身で評価する必要があります。また、法務、規制、税務、信用、会計およびかかる投資が投資
の目的に適合するかどうかに関しては専門家の助言とともに判断してください。投資判断の際には必要な情報をすべて入手してください。投資資産の価値およ
び得られるインカム収入は市場環境や税制により上下するため、投資元本が確保されるものではありません。過去のパフォーマンスおよび利回りは将来の成果
を示唆・保証するものではありません。為替相場の変動により投資資産の価値は上下します。小型株への投資は、通常市場に対する感応度が高いことから、
高いリスクが伴います。新興国への投資は変動率が高くなる傾向があり、元本リスクが高くなる可能性があります。さらに新興国の経済・政治は先進国よりも不
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• 英国以外のEU諸国:JPモルガン・アセット・マネジメント(ヨーロッパ)S.à r.l.
• スイス:連邦金融市場監督機構の監督下にあるJ.P.モルガン(スイス)SA
• 香港:証券先物委員会の監督下にあるJFアセット・マネジメント・リミテッド、JPモルガン・ファンズ(アジア)リミテッド、JPモルガン・アセット・マネジメント・リアル・ア
セット(アジア)リミテッド
• インド:証券取引委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント・インディア・プライベート・リミテッド
• シンガポール:金融管理局の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(シンガポール)リミテッド、JPモルガン・アセット・マネジメント・リアル・アセット(シンガ
ポール)プライベート・リミテッド
• 台湾:金融監督管理委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(タイワン)リミテッド、JPモルガン・ファンズ(タイワン)リミテッド
• 日本:金融庁の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号 加入協会:日本証券業協
会、一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会)
• 韓国:金融委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(コリア)カンパニー・リミテッド(韓国預金保険公社による保護はありません)
• オーストラリア:証券投資委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(オーストラリア)リミテッド(ABN55143832080)(AFSL376919)(Corporation Act
2001(Cth)第761A条および第761G条で定義される販売会社に配布が限定されます)
• カナダ:J.P.モルガン・アセット・マネジメント(カナダ)インク
• 米国:証券取引委員会の監督下にあるJ.P.モルガン・インベストメント・マネージメント・インク、J.P.モルガン・ディストリビューション・サービシズ・インク(FINRA
SIPC会員)
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過去のパフォーマンスは将来の成果を示唆・保証するものではありません。
分散投資は投資成果を保証するものではなく、損失リスクを完全に排除するものでもありません。
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特段の記載がない限り、すべてのデータは2014年9月30日時点のデータを記載しています。
MI-QPJ-J October 2014
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