米国金融政策の行方と日本への影響 - 大分大学経済学部

米国金融政策の行方と日本への影響
(サブプライム危機と米国金融政策運営)
大分大学経済科学研究科イノベーション・セミナー
2014年8月23日
大分大学経済学部
小笠原悟
1
• 金融政策とは何か
• サブプライム危機と米国金融政策
• 日本経済への影響
2
(1) 金融政策とは
広い意味では、中央銀行が経済の安定化や金融システムの
健全性・安定確保を目的として行う政策。財政政策とならぶ
経済政策の柱。
(2) 金融政策の目的
①物価の安定
②雇用の安定
マクロ経済政策
③適切な経済成長の維持
④為替レートの安定化など
⑤信用秩序の維持(金融システムの安定):「銀行の銀行」
流動性不足に陥った銀行に対し資金を貸し付けることに
よって危機を回避する-「最後の貸し手機能」
3
狭義的には金融政策の主たる目的は「物価の
安定」
• 日本銀行: 物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展
に資することをもって、その理念とする
• 欧州中央銀行: 第一義的な政策目的は、物価の安定を維持するこ
と。ただし、物価安定の目的に反しない限りにおいて、欧州共同体
の全般的な経済政策(経済成長や雇用の増大等)を支持する
• 米国連邦準備制度:完全雇用と物価の安定の達成、そして緩やか
な長期金利の安定の促進を目的とする
• 英中央銀行:政府が定めたインフレーション・ターゲティングに基づ
く物価安定の維持と英国政府の経済政策への支援
4
「物価」とは?:個々の財・サービスの価格を全体として捉えた一
般物価水準のこと。
項目別消費者物価の推移
(前年比%)
40.0
30.0
20.0
生鮮食品
被服及び履物
教養娯楽耐久財
ガソリン
10.0
0.0
-10.0
-20.0
-30.0
-40.0
200506 200606 200706 200806 200906 201006 201106 201206 201306 201406
出所:総務省統計局
5
一般物価とは(日本の場合)?
日本の消費者物価指数 (2014年6月分)
ウェイト
(2010=100)
%
指数
総合
10,000
103.4
生鮮食品を除く
9,604
103.4
食料・エネルギーを除く
6,828
100.6
食料
2,525
103.7
住居
2,122
99.2
光熱・水道
704
121.9
家具・家事用品
345
94.3
被服及び履物
405
103.1
保健医療
428
99.5
交通・通信
1,421
106.3
教育
334
101.1
教養娯楽
1,145
97.8
諸雑費
569
109.2
出所:総務省
前年比
寄与度
%
%ポイント
3.6
-3.3
3.22
2.3
1.52
5.1
1.29
0.1
0.03
8.1
0.64
5.1
0.16
2.0
0.08
1.4
0.06
3.6
0.52
2.3
0.08
4.7
0.50
4.7
0.28
(前年比%)
5.0
総合CPIの推移
消費税率引き
上げ(14.4)
総合CPI
4.0
生鮮食品を除く
3.0
食料(酒類除く)およびエネルギーを除く
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
200506 200606 200706 200806 200906 201006 201106 201206 201306 201406
出所:総務省統計局
6
なぜ「物価の安定」が必要なのか
• 物価水準が大きく変動すると、家計や企業にとっては、物価水準全般の変化を反
映したものなのか、相対価格の変化を反映したものなのかを、的確に識別すること
が困難となる。
• 一般論として物価上昇率が高いほど、個別の財・サービス価格の変動も大きくな
る。また、物価水準が大きく変動すると、経済・物価の先行きに関する不確実性が高
まることから、企業は長期的な見通しに基づいて計画を立てることが難しくなる。
• 金融市場で先行きの物価変動に関する不確実性が増大すると、プレミアムが発
生し、長期金利はその分上昇する。このため、物価上昇率が高まると、設備投資な
ど長期的な視野にたった経済活動が抑制されやすくなる。
7
(前年比%)
30.0
消費者物価とその変動
(%ポイント)
第1次オイルショック
前年比(左軸)
6.00
変動幅(左軸)
25.0
5.00
第2次オイルショック
20.0
4.00
15.0
消費税導入
消費税率
引き上げ
消費税率
引き上げ
3.00
10.0
2.00
5.0
1.00
0.0
0.00
-5.0
197106 197506 197906 198306 198706 199106 199506 199906 200306 200706 201106
-1.00
注:変動幅は前12か月間の標準偏差
出所:総務省統計局
8
過度のインフレ、デフレも好ましくない
消費者物価の前年比と変動
(前年比%)
5.0
前年比(左軸)
4.0
変動幅(右軸)
2.00
実質GDP成長率の推移
(前年比%)
(%ポイント)
4.0
3.0
1.50
3.0
1.00
2.0
2.0
1.0
0.0
1.0
0.50
0.0
0.00
-1.0
-1.0
-2.0
-3.0
-0.50
-2.0
-3.0
199206
-1.00
199606
200006
注:変動幅は前12か月間の標準偏差
出所:総務省統計局
200406
200806
201206
-4.0
-5.0
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
出所:内閣府
9
「物価の安定」とは?
• 「物価の安定」とは:「家計や企業等の様々な経済主体が物価
水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動
にかかる意思決定を行うことができる状況」
• 物価が安定することは、貨幣の購買力が安定することであり、
現金通貨の唯一の発行主体である中央銀行には、安定した貨
幣の購買力を維持する責務があると考えられている。
• 中央銀行の金融政策にはインフレ的な経済運営を求める圧力
がかかりやすい。このため金融政策運営を、政府から独立した
中央銀行という組織の中立的・専門的な判断に任せることが適
当である。
10
中央銀行の主な金融政策手段
• 公開市場操作(オペレーション):金融政策の最も代
表的な手段。中央銀行が金融機関に資金を供給し
たり、逆に吸収したりするために行う債券や手形売
買取引
• 準備率操作:金融政策の手段として、金融機関に対
し、預金額の一定率(準備預金率)に相当する金額
を中央銀行に準備預金として預けることを義務づけ
る制度
• 中銀貸出制度:中央銀行による民間金融機関に対
する貸出制度
11
公開市場操作の仕組み
コ ー ルレー トが誘導目標よ り高い時
日本銀行
コ ー ルレー トが誘導目標よ り低い時
買いオペ
売りオペ
債
券
を
買
う
資
金
供
給
日本銀行にある各行の
当座預金口座での取引
債
券
を
売
る
資
金
吸
収
インターバンク市場
(金融機関同士が資金を融通)
ここで短期市場金利が決まる
ブローカー
市中銀行S
(資金不足)
市中銀行O
(資金余剰)
資金不足 > 資金余剰 → コールレート ↑
買いオペ
資金不足 < 資金余剰 ← コールレート ↓
売りオペ
インターバンク市場(無担保翌日物コールレート)を見ながら、インターバンク内における資金量を
調節し、金利誘導目標を達成しようとする。
12
金融政策の概念図
中
央
銀
行
た金
働融
き 調
か節
け を
通
じ
銀行貸出
市場
短
期
金
融
市
場
資本市場
ス事
ト業
法
人
等
の
資
金
調
達
コ
実
体
経
済
活
動
金融政策の効果は、中央銀行による金融調節を通じた短期金融市場への働
き かけを起点とする。その結果、利子率、通貨、銀行信用といった金融変数
が変動し、個人消費や企業の生産・ 投資活動にしかるべき 影響を及ぼすこと
にな る。
伝統的金融政策
13
伝統的金融政策 vs 非伝統的金融政策
非伝統的金融政策:政策金利がゼロ近傍に低下し、それ以上
金利政策で対応できなくなる中で、その代替として講じられる政
策手段。
日本の非伝統的金融緩和
(兆円)
日銀当座預金残高(左軸)
40
0.5
量的緩和
政策
(01年3月)
30
ゼロ金利政策
(98年2月)
25
0.6
量的緩和解除
(06年3月)
無担保コールレート翌日物(右軸)
35
(%)
0.4
20
0.3
15
0.2
10
0.1
5
Jul-08
Jan-08
Jul-07
Jan-07
Jul-06
Jan-06
Jul-05
Jan-05
Jul-04
Jan-04
Jul-03
Jan-03
Jul-02
Jan-02
Jul-01
Jan-01
Jul-00
Jan-00
Jul-99
Jan-99
Jul-98
0
Jan-98
0
出所:日銀
14
米国連邦準備制度(Federal Reserve System)
• 1913年12月23日設立(スウェーデン国立銀行:1668年設立、イングランド
銀行:1694年設立、日本銀行:1882年)
連邦準備制度理事会(FRB)
議長
ジャネット・イエレン
副議長
スタンレー・フィッシャー
理事
ダニエル・タルーロ
理事
ジェローム・パウエル
理事
ラエル・ブレイナード
理事
空席
理事
空席
地区連銀
ボストン
ニューヨーク
フィラデルフィア*
クリーブランド*
リッチモンド
アトランタ
シカゴ
セントルイス
ミネアポリス*
カンザスシティ
ダラス*
サンフランシスコ
12人の地区連銀総裁
のうち持ち回りで4人
が議決権を持つ
連邦公開市場委員会(FOMC)
・定例的会合は年8回開催され、フェデラル・ファンド・レート(FFレート)の誘導目標及び
公定歩合を決定
・議長はFRB議長、副議長はニューヨーク連銀総裁が担当
15
大恐慌との比較
NYダウ株価指数
18000
恐慌前の水準に戻っ
たのは1954年11月に
なってから
2013年3月に
高値更新
高値:14,164.53
(07/10/9)
16000
14000
53.8%下落
12000
10000
安値:6,547.05
(09/03/09)
8000
出所:http://livedoor.blogim.jp/
出所:Thomson Reuter Datastream
16
2013/07/01
2013/01/01
2012/07/01
2012/01/01
2011/07/01
2011/01/01
2010/07/01
2010/01/01
2009/07/01
2009/01/01
2008/07/01
2008/01/01
2007/07/01
2007/01/01
2006/07/01
2006/01/01
2005/07/01
2005/01/01
6000
17
18
サブプライム危機下の金融政策
(%)
7
6
主要中銀政策金利の推移
BNPパリバ傘下の
ファンド資産凍結
リーマン・ショック
米国(FFレート)
5
英国(ベースレート)
4
ユーロ圏(主要買いオペレート)
日本(無担保翌日物レート)
3
2
1
14/07
14/01
13/07
13/01
12/07
12/01
11/07
11/01
10/07
10/01
09/07
09/01
08/07
08/01
07/07
07/01
06/07
06/01
05/07
05/01
0
出所:各国中銀
19
非伝統的金融政策を導入する主要中銀
(対GDP比率)
60
50
40
30
G4中央銀行バランスシートの推移①
(07.Q1=1)
G4中央銀行バランスシートの推移②
4.5
FRB
4
FRB
ECB
3.5
ECB
BOE
3
BOE
日銀
2.5
日銀
2
20
1.5
1
10
0.5
0
0
出所:各国中央銀行、Thomson Reuter Datastream
対GDP比資産規模は日銀が最も大きい
が…
出所:各国中央銀行、Thomson Reuter Datastream
金融危機後の緩和局面ではFRB、BOEが最
も積極的に緩和してきた
20
サブプライム危機発生後のFRB金融政策運営
07.8.17
07.9.18
07.10.31
07.12.11
08.01.22
08.1.30
08.3.16
08.3.18
08.4.30
08.10.8
08.10.29
08.12.16
10.2.18
伝統的金融政策
公定歩合引き下げ(6.25%→5.75%)
FFレート引下げ(5.25%→4.75%)
公定歩合引き下げ(5.75%→5.25%)
FFレート引下げ(4.75%→4.50%)
公定歩合引き下げ(5.25%→5.00%)
FFレート引下げ(4.50%→4.25%)
公定歩合引き下げ(5.25%→4.75%)
FFレート引下げ(4.25%→3.50%)
公定歩合引き下げ(4.75%→4.0%)
FFレート引下げ(3.5%→3.0%)
公定歩合引き下げ(4.0%→3.5%)
公定歩合引き下げ(3.5%→3.25%)
FFレート引下げ(3.0%→2.25%)
公定歩合引き下げ(3.25%→2.5%)
FFレート引下げ(2.25%→2.0%)
公定歩合引き下げ(2.5%→2.25%)
FFレート引下げ(2.0%→1.50%)
公定歩合引き下げ(2.25%→1.75%)
FFレート引下げ(1.5%→1.0%)
公定歩合引き下げ(1.75%→1.5%)
FFレート引下げ(1.0%→0-0.25%)
公定歩合引き下げ(1.25%→0.5%)
公定歩合引き上げ(0.5%→0.75%)
07.12.12
08.03.11
08.03.06
08.09.19
非
伝
統
的
金
融
緩
和
措
置
08.10.6
08.10.7
08.10.21
08.11.25
09.3.18
10.11.3
11.9.21
12.1.20
12.9.13
そ
の
他
08.3.24
08.9.16
08.9.21
非伝統的金融政策
ターム物入札型貸出制度(TAF)創設
ECB、スイス中銀とスワップ協定で合意
ターム物証券貸出制度(TSLF)創設
プライマリー・ディーラー向け連銀窓口貸出制度(PDCF)創
設
ABCPマネーマーケットファンド・リクイディティファシリティ
(AMLF)創設
超過準備に対する付利を導入
コマーシャル・ペーパー・ファンディング・ファシリティ(CPF
F)創設
マネーマーケット投資家向け貸付制度(MMIFF)創設
ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)創設, エージェン
シー債・エージェンシーMBS買入を発表,(QE1)
バランスシートの拡大。7500億ドル相当のMBS、1000億
ドル相当のエージェンシー債、3000億ドル相当の長期国
債購入を表明
長期国債の追加購入を発表(6000億ドル)月750億ドル、
2011年第2四半期まで(QE2)
オペレーション・ツイスト
インフレーション・ターゲティング
米国債月額450億ドル、MBS400億ドルの追加購入を発
表、終了期限を限定せず
その他
JPモルガンのベアスターンズ買収支援のため、300億ド
ルを保証
AIGに対して850億ドル貸付
ゴールドマン・サックス、モルガンスタンレーに対して銀行
免許を与える
出所:セントルイス連銀などの資料を参考に作成
21
伝統的金融政策から非伝統的金融緩和策へ
第一局面(2007年8月~08年8月)
伝統的金融政策
• 公定歩合の引き下げ(6.25%→0.5%)
窓口貸出による流動性の供給が目的
• FFレートの引き下げ(5.25%→0-0.25%)
短期金利の引き下げによる景気刺激
非伝統的金融政策(信用緩和策)
• ターム物入札型貸出制度(TAF)
• ターム物証券制度(TSLF)
• プライマリー・ディーラー向け連銀窓口貸出制度(PDCF)
• ABCPマネーマーケット・ファンド・リクイディティ・ファシリティ(AMLF)
• コマーシャル・ペーパー・ファンディング・ファシリティ(CPFF)
• マネーマーケット投資家向け貸付制度(MMIFF)
• 各国中銀との通貨スワップ協定
22
シャドウ・バンクの拡大で従来の金融政策だけ
では対応できなくなった
シャドウ・バンクは市場から
の短期資金調達が多い
・市場の資金は逃げ足が速い
・危ない金融機関には貸さない(カウン
ター・パーティ・リスク)
(bp)
シャドウ・バンク(預金を
取り扱う銀行以外の金
融機関)の資産規模が
急拡大
TEDスプレッド
500
450
民間金融機関の信用リスクが急
400
激に悪化⇒資金繰りの逼迫化
350
300
250
200
150
100
50
0
07/1 07/7 08/1 08/7 09/1 09/7 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7
注:3か月物Libor-3か月物TB
出所: the Bloomberg ProfessionalTM service
23
信用緩和(Credit Easing)から量的緩和(Largescale Asset Purchase Program)へ
第2局面:QE1(2008年11月~2010年3月)
• 米国債3000億ドル、MBS1.25兆ドルなど、合計1.725兆ドル購入
第3局面:QE2(2010年11月~2011年6月)
• 米国債6000億ドル(月750億ドル)購入
QE2plus(2011年9月~)
• オペレーション・ツイスト(短期セクターを売却し長期セクターを購入
し、長期金利の低下を促す)(11.9.21)
• インフレーション・ターゲティング(インフレ率の目標を設定・公表し
て、それが守られるよう中央銀行が金融政策を行うという金融政
策の『枠組み』を導入 (12.1.20)
第4局面:QE3(2012年9月~2013年12月)
• 米国債月額450億ドル、MBS400億ドル購入
24
金融危機下のFRB資産構成
(10億ドル)
5,000
4,500
その他
流動性対策
エージェンシー債+MBS
国債
QE3
QE2
4,000
QE1
3,500
3,000
純粋な信
用緩和
2,500
2,000
1,500
1,000
伝統的金
融緩和
500
0
07/01
08/01
09/01
10/01
11/01
12/01
13/01
14/01
出所:FRBのデータを元に筆者作成。
25
FRBの出口戦略①
「量的緩和」の縮小開始(テイパリング、Tapering)
2013年5月22日:「雇用の持続的回復が確認できれば、今後数回の金融政
策会合で資産購入ペースを縮小できる」(バーナンキ前FRB議長議会証言)
2014年1月:長期国債を月額450億ドルから400億ドルへ、MBSを同400億ド
ルから350億ドルへ
2月:長期国債を月額400億ドルから350億ドルへ、MBSを同350億ド
ルから300億ドルへ
5月:長期国債を月額350億ドルから300億ドルへ、MBSを同300億ド
ルから250億ドルへ
6月:長期国債を月額300億ドルから250億ドルへ、MBSを同250億ド
ルから200億ドルへ
7月: 長期国債を月額250億ドルから200億ドルへ、MBSを同200億ド
ルから150億ドルへ
8月: 長期国債を月額200億ドルから150億ドルへ、MBSを同150億ド
ルから100億ドルへ
このままいけば、年内に資産購入額の縮小は終了する(年内のFOMCはあと3回)。
26
FRBの出口戦略②
Normalization(正常化)に向けたプロセス
政策金利の引き上げ
• 引き続きFFレートを主要政策金利と位置付け、25bpの
レンジを誘導目標とする
• 超過準備預金に付与する金利の調整をFFレートを目
標レンジに誘導する主な手段とする
バランスシートの縮小
• バランスシートの縮小は、段階的かつ予測可能な形
で行い、主として国債を用いるべき
• FRBのエージェンシー市場への関与を早く解消するた
めに、MBSを売却すべきか
27
金融市場は利上げのタイミングに注目している
1977年連邦準備改革法
「FRBおよびFOMCは雇用の最大化、物価の安定、穏
やかな長期金利を効率的に実現することを目的とし、
経済の長期的な潜在成長率に見合った通貨と信用の
統計の長期的な増加を維持しようとする」
FRBの2つの使命:雇用の最大化と物価の安定
28
経済データは改善しているが…
米国失業率の推移
11
6
10
5
4
7
3
6
2
出所:米労働省
14/01
12/12
11/11
10/10
09/09
08/08
07/07
06/06
05/05
04/04
03/03
02/02
01/01
0
99/12
3
1
98/11
4
インフレ目標
97/10
5
コアCPI
96/09
8
90年からの
平均(6.1%)
コアPCEデフレーター
95/08
9
米国消費者物価指数の推移
(前年比%)
94/07
(%)
注:総合指数から食料・エネルギーを除いたもの
出所:米労働省、米国経済分析局
29
イエレン議長は幅広い雇用市場関連データの
改善に注目している
(週)
45
平均失業期間と長期失業者比率
(%)
50
68
仕事探しをあ
きらめた人が
67
増えている可
35
66
能性がある
30
65
25
64
20
63
15
62
45
40
35
平均失業期間(週、左軸)
30
長期(27週以上)失業者数比率(右軸)
25
20
15
40
10
10
5
5
0
0
出所:米労働省
労働参加率の推移
(%)
61
労働参加率:生産年齢人口(16歳以上)に占
める労働人口の割合
60
出所:米労働省
30
出口に向けたフォワード・ガイダンス
• 「失業率が6.5%を下回り、1~2年先のインフレ率見通しが
2.5%を上回らないかぎりゼロ金利政策を継続する」(2012年
12月)---エバンズ・ルール
• 「緩和停止時期の目安として、失業率7%」(2013年6月)
• 「失業率が6.5%を下回っても十分長期に現在の政策金利を
継続する」(2013年6月)
• 「6.5%の失業率は金融当局が定義する完全雇用ではない」
(イエレン、2014年1月)
• 「インフレ率見通しが長期の目標である2%を下回るかぎり、
資産購入プログラムを停止した後もかなりの期間にわたって
現在の政策金利を継続する」(2014年7月)
31
想定される日本への影響
経済活動を通じた影響
-米国景気の回復で輸出が回復する
金融市場を介した影響
-日米金利格差の拡大で為替円安が進む
32
経済活動を通じた影響:米国景気の回復で輸
出が回復する⇒生産増
日本の地域別輸出シェア(付加価値ベース)
日本の地域別輸出シエア
100%
100%
90%
20.2
80%
26.2
24.9
70%
60%
40%
30%
20%
41.9
10%
46.2
14.1
12.5
17.8
16.4
2008
2009
0%
1995
アジア
80%
米国
70%
60%
出所:IMF, Direction of Trade Statistics
20.2
29.8
25.7
19.6
30%
20%
10%
30.4
26.8
その他
アジア
EU
31.4
32.7
20.0
19.2
22.9
21.3
2008
2009
50%
40%
16.1
27.5
90%
EU
36.1
50%
その他
米国
0%
1995
出所:OECD, Trade in Value added
実は、日本の輸出はまだ欧米への依存が高い。
33
米日金利格差とドル円レート
(bp)
400
130
米日10年国債利回り格差(左軸)
350
120
ドル円レート(右軸)
300
110
250
100
200
150
100
50
0
04/08
90
期待される効果
ドル建て資産価格の上
昇、輸出関連株の上昇
など
05/08
06/08
07/08
80
70
08/08
09/08
10/08
11/08
12/08
13/08
60
14/08
出所:Thomson Reuter Datastream
34
しかし、リスクもある
• 米利上げ期待で新興国市場から米国への資金
回帰⇒新興国通貨の下落
• 米国債バブルの崩壊で長期金利急上昇
-国債価格急落でドル売り→ドル安円高
-日本の国債市場にも波及⇒長期金利急騰
-米株価急落⇒日本株にも波及
急激な為替円高、株価急落と長期金利上昇のトリ
プル安でデフレ圧力再燃⇒日銀の超金融緩和政
策の長期化(市場の混乱は、日銀の追加緩和など
で短期間に収束するかもしれないが、日銀の金融
政策正常化にはかなり時間がかかる可能性大)
35
利上げとドル売りのクライマックス
94年から95年にかけての利上げ局面
では、メキシコ通貨危機の影響もあっ
たが、1ドル=100円割れ
(%)
9
8
ヒストリカルには、利上げ開始後数か月間
はドル安円高が続く場合が多い
米国利上げとドル円相場
米10年国債利回り(左軸)
(利上げ開始時=100)
円安
130
FFレート(左軸)
125
ドル円レート(右軸)
120
7
115
円安
110
利上げ時からの平均的乖離(右軸)
88年4月第1週
94年2月第1週
97年3月第3週
99年6月第3週
04年6月第4週
(%)
4
3
2
105
1
110
6
105
5
100
0
100
-1
95
-2
95
4
90
3
2
115
FRB利上げ後のドル円相場
85
円高
-3
90
-4
85
80
-5
円高
-6
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
42
44
46
48
50
80
出所:Thomson Reuter Datastream
週目
36
非伝統的金融緩和政策は壮大な実験
FRBが出口に成功すれば…
• 世界経済にとってはポジティブ(米国牽引に
よるグローバル景気回復)
• ECBや日銀が出口戦略を進めていく上での参
考になる
失敗すれば…
• 金融市場の混乱で世界経済は再び下落
• 金融政策正常化が一層困難に
37
用語解説
ターム物入札型制度(TAF)
FRBが預金取り扱い金融機関に対して貸出資金を入札によって供給する制度
ターム物証券制度(TSLF)
プライマリー・ディーラー(政府公認証券ディーラー)に対して、FRBが保有する国債を貸し出す制度
(PDCF)
プライマリー・ディーラー向け連銀窓口貸出制度(PDCF)
国債やエージェンシ-債MBSを担保に、非預金取り扱い金融機関向けに資金供与を行う制度(通
常の連銀窓口貸出は預金取り扱い機関に限られているため)
ABCPマネーマーケット・ファンド・リクイディティ・ファシリティ(AMLF)
銀行持ち株会社などが、MMFからABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)を買い取り際に資金を
融資する制度
コマーシャル・ペーパー・ファンディング・ファシリティ
FRBが設立した特別目的会社が、ニューヨーク連銀からファイナンスを受けて、CPやABCPを発行会
社から買い取って流動性を供給する
マネーマーケット投資家向け貸付制度((MMIFF)
民間セクターが設立した特別目的会社が、預金証書や銀行手形、金融機関発行のCPを買い取り、
短期金融市場の投資家に対して流動性を供給する制度
Tapering(テーパリング「先細り」)
量的緩和政策の縮小。資産購入額を徐々に減額し、最終的にゼロにすること
フォワード・ガイダンス
中央銀行が先行きの政策金利を低水準に据え置くなどの方策によって金融緩和強化することを
狙った政策。金融政策の狙いや方向性に関して市場に誤解が生じないように、体系だった政策の
先行きや将来の対応を示し、その効果を高めるもの。
38