3 4 2 rr lr T − ⋅ + = τ τ π

機能性流体を用いた柔軟関節マニピュレータの開発
中村研究室
1.緒
4年
2組
16番
赤松
験
4.実
雄貴
言
現在,産業ロボットを初めとした従来のロボットシステムは隔離さ
れた環境で作業している.しかし,医療・福祉の分野では人間とロボ
ットの自動化における協調活動が期待されているため,人間に対する
安全性の確保が強く要求されている.
一方,機能性流体として注目されているER流体は,電場の印加に
より,その粘性が可逆的に変化するような流体である.この流体はセ
ミアクティブデバイスの機能を有しているため,対人衝突を想定した
際にはフィルセーフの観点から安全性に優れたシステムの構成が可
能となる.
そこで,本研究では対人衝突時の安全性を考慮したER流体を用い
た柔軟関節マニピュレータを開発する.
2.柔軟関節マニピュレータ
衝突力を緩和させるためには,ロボットの関節の柔軟化,緩衝材の
設置,軽量化などの方法があるが,本研究ではこの中のER流体を用
いた関節の柔軟化による衝突力の緩和の効果を検討する.
研究で開発したマニピュレータの概略をFig.1に示す.この図より,
マニピュレータは,最も基本的な構成である2リンクとした.第1関節
部・第2関節部はそれぞれアクチュエータによって駆動する.第2関節
部はモータによるラジアル方向の回転を傘歯車によって回転方向を
スラスト方向に変えることでリンク2を回転させる.また,ER流体を
用いたブレーキが搭載されている.
Motor(2nd joint)
2nd link
4.1 実験システム
本実験システムをFig.3に示す.この図より,リンク2の角度はポテ
ンショメータによって測定される.また,リンク2に印加される衝突
力はリンク2に装着された力センサによって測定される.さらに,モ
ータやER ブレーキは計測されたデータに基づき,PCを介して制御さ
れる.
θ1
θ2
f
Motor
Force sensor
ER brake
Driver
Motor
High
Volt
Amp
Driver
Fig.3
A/D
PC
D/A
The configuration of the experimental system with the manipulator
4.2 位置の制御実験
Fig.4に位置の制御実験の結果を示す.これより,ERブレーキを装
着しない際と,ERブレーキを装着した際のマニピュレータの位置制
御の挙動について検討する.ERブレーキに0.0[kV/mm]を印加した際
の角度の立ち上がりは,モータのトルクがERブレーキのトルクに比
べ大きいためリンク2がその回転に追従できず,目標角度に達してい
ない.一方,ERブレーキに3.0[kV/mm]を印加した際には,ERブレー
キがリンク2の慣性力に対して十分なトルクをもっていることから目
標角度に達している.このことから,ERブレーキを装着した際でも
3.0[kV/mm]の電場を印加すれば,ERブレーキは正確な位置の制御を
実現できることがわかった.
100
E=0.0[kV/mm]
Non-ER brake
80
ER brake
Foundation
angle[deg]
1st link
Motor(1st joint)
Fig.1 Schematic diagram of the manipulator
E=3.0[kV/mm]
target angle
60
40
20
3.柔軟関節マニピュレータの設計
0
本研究で開発するマニピュレータは第1・2関節がそれぞれ駆動する
た め,モ ータの トルク は動力 学と運 動学の 双方を 考慮し て Τ1 ≧
39.96[Nm], Τ2≧9.15[Νm]とした.
また,作業中はER効果によってモータの回転軸とリンク2は固定す
る.そのために必要な保持トルクTERは第2関節部の動力学のみのトル
クを考慮すればよいのでTER≧3.56[Nm]となる.上記の条件に基づい
てERブレーキの設計を行う.ERブレーキに必要なトルクは次式によ
って算出することができる
4
⋅ τ d ( r12 − r22 )
3
Electrodes(−)
Electrodes (+)
Disk
Slip ring
Input output shaft
Cover
Fig.2
Fig.4
(1)
ここで,τc,rc,lc,τd, r1,r2はそれぞれシリンダ部のせん断力,内
径,高さとディスク部のせん断力,内径,外径となっている.これよ
り,シリンダ部の厚さを2[mm],ディスク部の内半径を13[mm],せん
断力は2.5[KPa]としてERブレーキのディスク半径を検討した結果
rC=85[mm],TER=4[Nm]とした.
この結果を基に作成したERブレーキをFig.2に示す.本ERブレーキ
は4枚のディスクが連結されている.そして,高電圧印加時の感電を
さけるためMCナイロンによるカバーを装着している.
A configuration of the ER brake
200
400
600
800
Time[ms]
1000
1200
1400
Experimental result of position control
4.3 衝突実験
Fig.5に衝突力の緩和について考える.ERブレーキを装着しない場
合,ERブレーキを装着して3.0[kV/mm]を印加して衝突させた場合,
衝突した瞬間に電場の印加を切った場合に関する,マニピュレータの
衝突実験の結果を示す.この図から,電場の印加を切った場合の最大
衝突力は,その他の場合に比べて31[N]低減されてる.
100
Collision
With controller
Collision(E=3.0[kV/mm])
80
Force[N]
T ER = 2π rc2 l cτ c +
0
60
40
20
0
250
500
Fig.5
Time[ms]
750
1000
Experimental result of collision and with controller
5.結 言
本論文では,人間との安全な衝突を可能にするため,機能性流体を
用いた柔軟関節マニピュレータを開発した.人間の痛覚耐性値に基づ
いた制御システムを考案した.位置の制御実験によって,ER ブレー
キに 3.0[kV/mm]の電場を印加することで正確な位置制御を実現した.
衝突実験によって人間との衝突力と接触力を緩和した.