91 3.1.3 首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明 (1

3.1.3
首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明
(1) 業務の内容
(a) 業務の目的
関東の太平洋沖で進行している平成 23 年東北地方太平洋沖地震の余効滑り等により活
発化した中小地震を含めた最近の中小地震の震源の決定、類型化を図る。また、古地震・
古津波記録すなわち計器観測記録、歴史資料、津波堆積物等の記録を収集し、分析するこ
とで、南関東で過去に発生した大地震の地震像を明らかにし、新たな時系列モデルを構築
する。これらをもとに中小地震と大地震の発生過程の関係を解明する。
(b) 平成25年度業務目的
前年度に引き続き、3.1.1「首都圏での地震発生過程の解明」と連携して中小地震の震源・
発震機構解の決定を行う。1885 年以降に南関東で発生した大地震の波形記録や検測値等の
収集、整理を行う。過去に南関東で発生した歴史地震に関する古地震記録を収集し、デジ
タルデータ化を実施する。津波堆積物や離水段丘面等の地形・地質学的調査、液状化痕や
歴史資料の再検討ならびに既往研究の整理に基づき、関東地震の発生履歴の推定を進める。
業務の円滑な遂行ならびに他課題との連携のため、検討会を開催する。
(c) 担当者
所属機関
役職
氏名
東京大学地震研究所
教授
佐竹健治
東京大学地震研究所
特任研究員
石辺岳男
東京大学地震研究所
特任研究員
村岸 純
東京大学地震研究所
特任研究員
鳴橋竜太郎
メールアドレス
(2) 平成25年度の成果
(a) 業務の要約
1) 前年度に引き続き、3.1.1「首都圏での地震発生過程の解明」から MeSO-net データの提
供を受けて、中小地震の震源・発震機構解の決定を行った。
2) 1885 年以降に南関東で発生した大地震の波形記録や検測値等の収集、整理を行った。
3) 1706 年 10 月 21 日(宝永三年九月十五日)の江戸地震以降の 南関東で発生した歴史地震
に関する古地震記録を収集し、デジタルデータ化を実施した。
4) 津波堆積物や離水段丘面等の地形・地質学的調査、液状化痕や歴史資料の再検討ならび
に既往研究の整理に基づき、関東地震の発生履歴の推定を進めた。
5) 業務の円滑な遂行ならびに他課題との連携のため、2013 年 6 月 7 日、2013 年 8 月 19 日、
2013 年 12 月 20~21 日の 3 回にわたり、検討会ならびに打ち合わせを開催した。
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(b) 業務の成果
1)MeSO-net による観測データを含めた中小地震の震源・発震機構解の決定
3.1.1「首都圏での地震発生過程の解明」から MeSO-net データの提供をうけて、2011 年
11 月 2 日以降、2012 年 6 月 5 日までに検測された 510 イベントの震源ならびに発震機構解
を推定した。震源決定は HypoMH(Hirata and Matsu’ura, 1987 1) )により行い、発震機構解
の 推 定 に は 初 動 が 8 観 測 点 以 上 で 報 告 さ れ て い る イ ベ ン ト を 対 象 と し て 、 HASHv2
(Hardebeck and Shearer, 2002 2) )を修正したプログラムを用いた。図 1(P.107)に本年度に
決定した 510 イベントの震源位置ならびに、精度の低いものを除いた 435 個の発震機構解
の分布、T 軸ならびに P 軸の方位分布をそれぞれ示す。また図 2(P.108)にはいくつかの
地震に対して推定された発震機構解と観測された初動の震源球表示を示す。
2)1885 年以降に南関東で発生した大地震の波形記録や検測値等の収集、整理
a) 関東における検測値データ(S-P 時間・初動)の収集ならびに整理
ⅰ) はじめに
首都機能が集中する南関東では、太平洋プレート(以下、PAC と略記する。)とフィリ
ピン海プレート(以下、PHS と略記する。)が陸のプレート下に沈みこんでおり、(1)活
断層で起こる浅い地震、
(2)陸のプレートと PHS 境界で発生するプレート間地震、
(3)陸
のプレートと PAC 境界で発生するプレート間地震、(4)PHS スラブ内部で発生する地震、
(5)PHS と PAC とのスラブ境界の地震、ならびに(6)PAC スラブ内部で発生する地震と、
様々な型の大地震が発生してきた。しかしながら、1855(安政二)年江戸地震などの歴史
地震のみならず、計器観測時代に発生した大地震を含めてどこで発生した地震であったの
か不明なものが少なくない。
日本における近代計器観測は 1870 年代半ばに始まり、煤書きの波形記録や検測値、被
害記録等が収集・保管されている。その後の焼失等のため不完全ではあるものの、これら
は計器観測時代初期に発生した地震に関する貴重な資料として、その地震像解明に活用さ
れてきた。例えば宇津(1979 3) , 1982 4) )は、1885 年から 1925 年までの日本で有感であった
M6 以上の地震(ただし、M6 未満の被害地震も含む)について、震源とマグニチュードの
検討を行った。また宇津(1981) 5) は、東経 136°-144°、北緯 32°-38°の関東・中部地域
で 1904 年以降 1925 年までに発生した M5.5 以上の有感地震カタログを作成した。なお、
震源の深さは約 100 km 以深の地震のみが数値として示され、100 km 以浅の地震は vs(震
源がごく浅く大陸側プレート内部の地震、ほとんどが深さ 0~15 km であると考えられるも
の)、s(プレート境界面あるいはその付近の地震、日本の内陸部・沿岸部では深さ 40~80 km
程度、沖合ではより浅い)、d(深発地震であるが深さがわからないもの)に分類されてい
る。
計器観測時代初期に発生した地震の震源・発震機構解の推定あるいは類型化は、 気象庁
による震源カタログ(1923 年 1 月 14 日~)以前の地震活動を議論するうえで重要な課題
である。特に関東地方はこの時期、1923 年大正関東地震(M7.9)発生前の数十年間にあた
り、1894 年 6 月 20 日の明治東京地震(M7.0)などの被害地震が発生した。しかしながら、
近年の地震に対して用いられている震源・発震機構解の推定手法を、そのまま計器観測時
代初期の地震に適用するには困難が伴う。例えば、刻時精度が現在と比べて著しく劣り、
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P 波や S 波の到達時刻が周辺の観測点における報告値から著しく乖離した ものがある。こ
のため、これらの地震の震源決定には時計のずれに依らない S-P 時間が用いられることが
多い。また地震計の計器特性が必ずしも保存されておらず、紙送り速度や倍率などが不明
な場合が少なくない。さらに観測点分布が疎であったため、発震機構解の推定も容易では
ない。
日本では近年、全国に展開された高感度地震観測網や広帯域地震観測網で捉えられた地
震波形に基づき、震源や発震機構解が高精度で決定されるようにな ってきた。また 2008
年度から 5 か年で実施された「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」において、高
精度の震源決定や強震動予測に必要な地震波速度構造と非弾性常数の三次元分布を解明す
るとともに、プレート境界面の形状やプレート内における弱面の存在等を把握することを
目的として、296 観測点からなる MeSO-net が首都圏に展開され、観測が行われている(酒
井・平田, 2009 6) ;笠原・他, 2009 7) )。これらの観測網に基づく地震の S-P 時間や初動等を
データベースとして活用して、S-P 時間や初動の類似性から、計器観測時代初期に発生し
た地震の震源・発震機構解を従来よりも高精度で推定できる可能性がある。そこで本年度
は、1885 年~1923 年に関東地方で稼働していた観測点と対比可能な観測点を対象として、
S-P 時間と初動を整理し、その特徴を議論した。
ⅱ)データならびに手法
明治・大正期に関東ならびにその周辺域において気象官署(気象大学を含む)によって
設置、観測が行われていた 21 観測点(水戸・柿岡・筑波山・宇都宮・足尾・前橋・熊谷・
秩父・柏・銚子・勝浦・富崎・館山・東京・八丈島・横浜・横須賀・沼津・松本・甲府・
浜松)、ならびに東京帝国大学による 5 観測点(本郷・一ツ橋・筑波・鎌倉・三崎(油壷))
を対象とした。なお、気象官署における地震計観測の履歴として浜松( 1966) 8) を参考に
した。また、東京帝国大学等による観測点は歴史地震気象検索システム(野口・他, 2001 9) )
によった。S-P 時間ならびに初動の整理にあたり、1923 年 1 月 14 日以降 2011 年 12 月 31
日までの気象庁総合検測値ファイル、ならびに 2008 年 4 月 1 日以降 2012 年 6 月 5 日まで
に MeSO-net で検測が行われた 3,086 地震に対する検測値を用いた。明治・大正期の観測点
と対比可能な観測点は気象庁検測値中で 69 観測点、MeSO-net あるいは既存観測点で 19
観測点である。S-P 時間ならびに初動をそれぞれの観測点ごとに 1 ファイルに纏めた。な
お移設等によって観測点コードが変更された場合は 、別の観測点として取り扱った。
ⅲ)各観測点における S-P 時間・初動の分布
図 3(a)(P.109)に宇都宮、東京、銚子、ならびに前橋の気象庁観測点で記録された S-P
時間ならびに初動の分布を示す。それぞれの観測点における S-P 時間や初動の検測数は稼
働期間ならびに周辺の地震活動度に強く依存し、例えば気象庁総合検測値ファイルにおい
て 1923 年 9 月 1 日大正関東地震以降の S-P 時間が報告されている東京では、13,356 地震に
対する S-P 時間、1,824 地震に対する初動が報告されている。図 3(b)
(P.109)に柏(E.KW8H)、
本郷(E.YYIM;弥生)、横須賀(E.KH2M;第二海堡)、ならびに鎌倉震研(E.SYOM)と
対比可能な MeSO-net 観測点に対する S-P 時間ならびに初動の分布を示す。弥生観測点は、
現在の東京大学地震研究所 1 号館脇に設置されており、明治・大正期に観測されていた本
郷観測点(当時、東京帝国大学構内)との距離は 1 km 未満である。したがって、明治・
大正期に本郷観測点で観測された S-P 時間との比較対象として適当である。銚子観測点で
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は、その西側で発生する PAC 上面の地震(銚子付近あるいは千葉県北西部など)ならびに
PHS 上面の地震(茨城県南西部など)の多くでその初動が押しになる。これは HASHv2 か
ら方位角、射出角を計算し、PAC あるいは PHS 上面で発生する地震の位置における典型的
な発震機構解上にプロットすることでも確認され、銚子における初動はその地震がプレー
ト地震であったがどうかに対して重要な示唆を与えると考えられる。
b) 関東およびその周辺域で発生した地震の発震機構解の整理
本年度はまた、5 つの発震機構解カタログを統合して近年に関東で発生した地震の発震
機構解を整理した。1 つ目は関東・東海地殻活動観測網による初動発震機構解(松村・関
東東海地殻活動観測研究グループ, 2002 10 ))である。これは、1979 年 7 月以降 2003 年 7 月
まで稼働した関東・東海地殻活動観測網による初動に基づき推定されたものであり、防災
科学技術研究所によって公開されている。その数は関東およびその周辺域(東経 138°-
141.5°、北緯 34°-37.25°)において 42,431 個である。2 つ目は F-net メカニズム解を用い
た。このメカニズム解は、広帯域地震観測網( F-net)による波形記録から防災科学技術研
究所によって決定、公開されている。3 つ目は気象庁によって公開されている初動発震機
構解である。用いた期間は、1997 年 10 月 1 日以降 2012 年 3 月 9 日であり、関東およびそ
の周辺域において 3,013 地震に対する発震機構解が推定されている。4 つ目は JUNEC 初動
メカニズム解カタログ(Ishibe et al., 2014 11 ))である。このカタログは国立大学観測網地震
カタログ(JUNEC)の P 波初動ならびに HASH(Hardebeck and Shearer, 2002 2 ))に修正を
加えたプログラムを用いて、1985 年 7 月から 1998 年 12 月までに日本で発生した 14,544
個の地震のメカニズム解を推定したものである。このカタログは稠密地震観測網・自動波
形データ転送システムの発展前の期間に発生した微小地震(M2.0 以上)に対するメカニズ
ム解を豊富に含むため、当時の起震応力場の解明などに有効な情報となると期待される。5
つ目は、昨年度ならびに今年度に本課題で推定した 2,047 地震に対する発震機構解である。
図 4(P.110)に整理された発震機構解の分布、発震機構解の累積個数と 1 年あたりの個数、
ならびに規模別頻度分布を示す。統合された発震機構解数は、関東地方において 50,000 個
以上に及ぶ。今後は、これらを計器観測時代初期の地震に対して観測された初動と対比す
ることで、それらの類型化に活用する。
c) 関東およびその周辺域で発生した大地震の波形記録、震度データの収集 ならびに整理
計器観測時代初期に発生した大地震の震源や発震機構解の推定、類型化 のための基礎デ
ータとして、明治・大正期に発生した大地震の震度データや波形記録の収集、整理を実施
した。
1926 年以降に発生した地震の震度については、気象庁によって震度データベースが構
築・公開されている(石垣・高木, 2000 12 ))。一方で、1925 年以前の震度データは当時の観
測状況ならびに資料の残存状況により網羅的にデータが収集できない期間がある が、1873
年以降 1925 年までの震度データを取り纏めたものとして石垣(2007)13) がある。また、宇
津(1989)14) は 1901 年~1926 年に日本付近で発生した M6.0 以上の地震および被害地震の
震度分布図を纏めた。本年度は、石垣(2007) 13) によってアーカイブ化されたデータを基
に 1873 年以降 1925 年までに関東で発生した 686 地震の震度データを抽出し、そのうち震
度報告数が 10 観測点以上の 120 地震に対する震度分布図を作成した(図 5、P.110)。図 6
(P.111)に示すように、残されている震度データは観測状況、資料の残存状況に強く依存
94
する。例えば 1904 年~1911 年の 7 年間は地震観測表が中央気象台年報(地震の部)に残
されているため、震度データが比較的充実している。今後、震度データに基づき震源像解
明をするにあたっては、これらの観測状況ならびに資料の残存状況が時代により大きく異
なることを考慮する必要がある。また波形記録として東京大学地震研究所に所蔵されてい
る関東で発生した大地震の煤書き記録(マイクロフィルム)を高解像度でスキャンして取
り纏めた(図 7、P.111)。
3)過去に関東およびその周辺域で発生した大地震の選定と古地震記録等の収集・デジタル
データ化
関東では江戸幕府が開府された 17 世紀初頭以降、歴史資料が徐々に増加し、これらの
被害記述に基づき震度分布の解明ならびに震源域の推定等が行われてきた。しかしながら、
収集された歴史資料の多くはアナログ媒体のままであり、これらの歴史資料 を検索機能付
き電子データベース化することは、今後の歴史地震研究を効率的に推進するための基礎資
料として非常に重要である。また、地震観測網によって観測された近年の地震の震度分布
や、MeSO-net で観測されたデータに基づき高解像度で推定された地震波減衰構造と、歴史
資料に基づき推定された震度分布を対比することで、歴史地震の震源決定あるいは類型化
への活用が期待される。古代・中世に発生した歴史地震・噴火に対する史資料は、
「古代・
中世地震・噴火史料データベース」(石橋・古代中世地震史料研究会, 2011 15 ))に電子化さ
れている。しかしながら、近世史資料のデータベース化はその量が膨大なため、
「ひずみ集
中帯プロジェクト」による「古地震・津波等の史資料データベース」など わずかな先行研
究に限られる。そこで本課題では、関東ならびにその周辺域において江戸時代以降に発生
した顕著地震に対する史資料デジタルデータベースの作成を目標として、史資料の収集・
デジタルデータ化を実施している。
平成 24 年度には、1600 年以降 1703 年元禄地震までを対象としてこれらの歴史資料を収
集し、デジタルデータ化を実施した。本年度は 1703 年元禄地震の後、江戸時代に発生した
顕著地震のうち、
「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」において実施した 1812(文
化九)年の神奈川地震、1853(嘉永六)年の小田原地震、ならびに 1855(安政二)年の江
戸地震(ただし一部)を除く 17 地震に関する歴史資料の収集・デジタルデータ化を実施し
た(表 1、P.105~106、図 8、P.112)。史料の信頼性の検討を行い、明治時代以降に作成さ
れたものや原本が不明なものはデジタルデータ化の対象から除外した。デジタルデータ化
の書式は、電子データベースにおいて検索機能が可能な XML 言語とした。調査した史料
は、
『増訂大日本地震史料』
(第一巻、第二巻)、
『新収日本地震史料』
(第二巻、第二巻別巻、
補遺、補遺別巻、続補遺、続補遺別巻)、
『日本の歴史地震史料』
(拾遺、拾遺別巻、拾遺二、
拾遺三、拾遺四ノ上)に掲載された史料である。図 9(P.113)に XML 化準備作業(マー
カー引き作業)の一例を示す。また、昨年度にデジタルデータ化を実施した 17 地震に関し
て、刊本や原史料に遡って記述が正しいか精査する校訂作業を実施した(図 10、P.113)。
この校訂作業に使用する刊本には、省略や誤記が含まれていたため、原本にあたる必要が
ある史料も含まれている。そのため、本年度は主に 1703 年元禄地震に関する史料の調査を
実施した。奈良県大和郡山市にある柳沢文庫において、1703 年元禄地震の被害について詳
細な記述が含まれている『楽只堂年録』の史料調査や複写を行った。また徳島県立図書館
95
に所蔵されている『元禄年中大地震大火事記』の撮影、小田原市立図書館では『小田原地
震覚書』の複写を行った。図 11(P.114)に複写された史料の一部を示す。1855 年安政江
戸地震に関する史料については、弘前市立弘前図書館ならびに千葉県文書館において調査
を行った。当時の江戸市中に数多く存在していた大名屋敷に関する被害記述は、それぞれ
の本国(藩)に残されていることがある。そのため地震像の解明には関東のみならず、日
本全国に及ぶ史料調査が必要である。これらの史料は次年度以降、校訂作業のためだけで
はなく地震の被害復元などの研究に活用する。
4)津波堆積物や離水段丘面等の地形・地質学的調査、液状化痕や歴史資料の再検討ならび
に既往研究の整理に基づく関東地震の発生履歴の推定
a) 1495 年(明応四年八月十五日)の地震
静岡県伊東市(宇佐美)の遺跡発掘現場から 15 世紀のイベント性堆積物が発見され、
1498(明応七)年東海地震の誤記とされてきた 1495 年(明応四年八月十五日)の地震が関
東地震であり、これによる津波堆積物である可能性が示唆されている(金子 , 2012 16) )。一
方で、
「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」において実施した神奈川県小網代湾に
おけるハンディージオスライサー調査からは、歴史資料に基づき関東地震の可能性が指摘
されてきた 1293(正応六または永仁元)年鎌倉大地震(石橋, 1991 17 ))と対比される津波
堆積物が見つかっている(Shimazaki et al., 2011 18) )。これらの 2 地震がいずれも関東地震
であった場合、その発生間隔は、202 年(1293 年の地震と 1495 年の地震間)、208 年(1495
年の地震と 1703 年元禄地震間)、220 年(1703 年元禄地震と 1923 年大正関東地震間)とな
り、発生間隔は 200 年程度と規則的である。一方で 1495 年の地震は関東地震ではなく、1293
年の地震が元禄の一つ前の関東地震であった場合、元禄地震との発生間隔は 410 年となり、
地震調査委員会(2004)19) による(大正型)関東地震の平均発生間隔 200~400 年と調和的
で大きなばらつきがあることになる。1495 年の地震が関東地震であったのか否かは、上記
の観点から重要な課題である。
b) 静岡県伊東市におけるボーリング試料の分析
本年度は、平成 24 年度に静岡県伊東市宇佐美地区の 4 箇所において実施した直径 86 mm
のオールコアボーリング掘削から採取された地質試料を、コア試料の層相観察、堆積年代
推定のための放射性炭素年代測定、火山灰分析、出土した土器の同定等に基づき分析した。
暦年較正には暦年較正プログラム OxCalv4.1(Bronk Ramsey, 2009 20) )を使用し、較正デー
タとして陸源試料には Intcal13(Reimer et al., 2013 21) )を用いた。盛り土を除いた元の地面
の標高は何れの地点も 7.0 m 前後である。
図 12(P.115)に柱状図、採取された木片等の放射性炭素年代、ならびにコア写真の一部
を示す。最も陸側のコアでは約 6.7 m の堆積層が採取された。耕作のため近世の地層は乱
されているが、このコアには過去約 7,500 年間の地層記録が保存されていることが分かっ
た。コア試料は有機質のシルト層や粘土層を主体とし、そこに様々な厚さ(最大 85 cm、
薄いもので 1~2 cm)の礫層や砂層が 15 枚以上挟在する。これらの礫層や砂層は基底部に
侵食面を持ち、葉理が発達し級化構造を持つなど、突発的に発生した流水によって堆積し
たものである。また、砂層や礫層は内部に級化するユニットが何層か重なっていることが
多く、単発の洪水よりは大波が繰り返し押し寄せる津波で堆積したように見える(図 12(c)、
96
P.115)。一部の砂層や礫層は海側から陸側へ細粒化・薄層化を示し 、津波堆積物の可能性
がある。礫層や砂層の時間間隔は、160~440 年に 1 回程度と気象現象(高潮)に比べて極
めて低頻度である。最新イベントは 10 世紀以降と推定され、宇佐美遺跡から報告された
15 世紀のイベント性堆積物に対応する可能性が高い。宇佐美地区には急流河川が分布して
おり、流水イベントとして洪水も可能性として考えられるため、今後は洪水と津波堆積物
の識別を進める。
c) 神奈川県大磯町におけるボーリング掘削調査
神奈川県大磯町池田公園の 5 か所において、2013 年 11 月にロータリー式ボーリング掘
削調査を、12 月に自走型打撃式土壌サンプラー(ロングフェース、ウインチ内蔵)による
掘削調査を実施した(図 13、P.116)。調査地域は海浜砂丘の後背湿地に位置する住宅地の
一画にあり、津波によって運ばれた土砂が堆積している可能性がある。採取された試料の
うち、OIS-1’ボーリングでは深度 1.5 m 付近にイベント性砂層が認められ、茶色部分には
火山ガラスが多く含まれている(図 13、P.116)。また深度 3 m 付近からは、古式土師器(5
~6 世紀)が出土し、少なくとも深度 3 m 付近が 5~6 世紀以降に相当すると考えられる。
しかしながらこれらのイベント性堆積物が津波や高潮(海起源)であるのか、洪水や土石
流(陸起源)であるのかについては堆積物の層相のみからは判断が困難であるため、今後
慎重に検討する必要がある。
5)検討会・打ち合わせの開催
本課題は地形・地質学、日本史、地震学を専門とする研究者が協力して進める分野横断
型の研究課題である。また、3.3.1「首都圏での地震発生過程の解明」や 3.3.4「首都圏の過
去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立」等の他課題と連携して業務を遂行してい
る。そのため、業務の円滑な遂行ならびに他課題との連携のため、年に数回の検討会を開
催している。本年度は、2013 年 6 月 7 日、8 月 19 日に東京大学地震研究所において検討会・
打ち合わせを開催した。また、12 月 20~21 日には平成 24 年度にボーリング調査を実施し
た静岡県伊東市において検討会・打ち合わせならびに巡検を実施した(図 14、P.117)。
(c) 結論ならびに今後の課題
MeSO-net による観測データを含めて、2011 年東北地方太平洋沖地震後に活発化した中
小地震の震源ならびに発震機構解の決定を行った。今後は初動だけでなく、P 波と SH 波
の振幅比を用いることにより、発震機構解の精度・信頼性をより向上させることができる
可能性がある。また、計器観測時代初期に発生した大地震の震源・発震機構解の推定、類
型化のために地震波形記録や、震度データを収集・整理するとともに、近年の地震観測網
による S-P 時間・初動ならびに発震機構解を整理しその特徴を議論した。今後は収集した
データと MeSO-net 等によって明らかにされつつある地震波速度構造や減衰構造に基づき、
明治・大正期に関東およびその周辺域で発生した大地震の震源・発震機構解の推定 、類型
化を試みる。
関東およびその周辺域における長期的な地震活動度の変化や歴史地震の震源像解明に用
いる基礎資料として、1706 年 10 月 21 日(宝永三年九月十五日)の江戸地震から、1859
年 1 月 11 日(安政五年十二月八日)の岩槻地震までの 17 地震に関する歴史資料の収集・
97
デジタルデータ(XML)化を実施した。また、1703 年元禄地震に関する詳細な記述が含ま
れている『楽只堂年録』(柳沢文庫所蔵)や『元禄年中大地震大火事記』(徳島県立図書館
蔵)等の史料複写を行い、史料の校訂作業に活用した。今後はこれらの歴史資料中の被害
記述に基づき震度分布を推定し、MeSO-net による観測から推定された地震波減衰構造を考
慮して計器観測時代初期の地震と同様にその類型化を試みる。また平成 24・25 年度に収
集・デジタルデータ化を実施した 34 地震、ならびに首都直下地震防災・減災特別プロジェ
クトにおいてデジタルデータ化した 3 地震(1812(文化九)年の神奈川地震、1853(嘉永
六)年の小田原地震ならびに 1855(安政二)年の江戸地震の一部)に対する校正・校訂作
業、ならびに資料収集を継続する。これらは平成 28 年度に歴史地震研究の基礎資料として
電子データベースとして公開する。
1495(明応四)年の地震が関東地震であったのか否か 、また関東地震の発生履歴解明を
目的として平成 24 年度に静岡県伊東市で実施したボーリング掘削調査から採取された地
質試料の分析を行った。その結果、過去 7,500 年間の有機質のシルト層や粘土層を主体と
した堆積物中に、砂層や礫層が繰り返し挟在していることが確認された。これらの砂礫層
には下部を侵食し、平行葉理構造が認められるものがあり、 突発的に発生した流水によっ
て堆積したと考えられる。これらの特徴は、2011 年東北地方太平洋沖地震に伴う津波によ
って太平洋沿岸に堆積した津波堆積物と類似する。津波堆積物が関東地震によるものであ
れば、堆積環境やその後の剥削によっては保存されない可能性があるものの、関東沿岸の
広域にわたって津波堆積物が分布すると期待される。そこで相模湾沿岸に位置する神奈川
県大磯町池田公園においてボーリング掘削調査を実施した。 その結果、古式土師器(5~6
世紀)が出土した深度 3 m よりも浅部にイベント性砂層が認められた。これらが、津波堆
積物であるかについては今後、慎重かつ詳細に検討する必要がある。また 今後は津波堆積
物調査のみならず、地形学的調査によって明らかにされた関東地震の痕跡と対比すること
で、その信頼性が向上する可能性がある。
(d) 引用文献
1) Hirata, N. and Matsu’ura, M.: Maximum-likelihood estimation of hypocenter with origin time
eliminated using nonlinear inversion technique, Phys. Earth Planet. Inter., Vol.47, pp.50-61,
1987.
2) Hardebeck, J. L. and Shearer, P. M.: A new method for determining first-motion focal
mechanisms, Bull. Seism. Soc. Am., Vol.92, pp.2264-2276, 2002.
3) 宇津徳治: 1885 年~1925 年の日本の地震活動, 地震研究所彙報, Vol.54, pp.253-308, 1979.
4) 宇津徳治: 1885 年~1925 年の日本の地震活動(訂正と補遺), 地震研究所彙報, Vol.57,
pp.111-117, 1982.
5) 宇津徳治: 関東・中部地方およびその周辺の地震活動(1904 年~1925 年), 地震研究所
彙報, Vol.56, pp.111-137, 1981.
6) 酒 井 慎 一 , 平 田 直 : 首 都 圏 地 震 観 測 網 の 設 置 計 画 , 地 震 研 究 所 彙 報 , Vol.84, pp.57-69,
2009.
7) 笠原敬司, 酒井慎一, 森田裕一, 平田直, 鶴岡弘, 中川茂樹, 楠城一嘉, 小原一成: 首都
圏地震観測網(MeSO-net)の展開, 地震研究所彙報, Vol.84, pp.71-88, 2009.
98
8) 浜松音蔵: 気象官署における地震計観測の履歴表, 地震第 2 輯, Vol.19, pp.286-305,
1966.
9) 野口和子, 山中佳子, 田辺由美子, 岩田孝行: 歴史地震記象データを Web で検索す
る, 東京大学地震研究所技術研究報告, Vol.7, pp.64-71, 2001.
10) 松村正三, 関東東海地殻活動観測研究グループ: 関東・東海地域における最近 20
年間の地震観測結果(発震機構解)-特別研究「関東・東海地域における地震活動
に 関 す る 研 究 」 観 測 成 果 の ま と め ( そ の 4) - , 防 災 科 学 技 術 研 究 所 研 究 資 料 ,
Vol.224, pp.1-80, 2002.
11) Ishibe, T., Tsuruoka, H., Satake, K. and Nakatani, M.: A Focal Mechanism Solution
Catalog of Earthquakes (M ≥ 2.0) in and around the Japanese Islands for 1985-1998, Bull.
Seism. Soc. Am., Vol.104, doi: 10.1785/0120130278, 2014.
12) 石垣祐三, 高木朗充: 気象庁震度データベースの整備及び活用例について, 験震時
報, Vol.63, pp.75-92, 2000.
13) 石垣祐三: 明治・大正時代の震度観測について‐震度データベースの遡及‐, 験震
時報, Vol.70, pp.29-49, 2007.
14) 宇津徳治: 日本付近の M6.0 以上の地震及び被害地震の震度分布図(1901 年~1926
年), 東京大学地震研究所, 242 pp, 1989.
15) 石橋克彦, 古代中世地震史料検討会: [古代・中世]地震・噴火史料データベース , 歴
史地震, Vol.26, pp.86, 2011.
16) 金子浩之: 宇佐美遺跡検出の津波堆積物と明応四年地震・津波の再評価, 伊東の今・昔
-, 伊東市史研究, Vol.10, pp.102-124, 2012.
17) 石橋克彦: 1293 年永仁鎌倉地震と相模トラフ巨大地震の再来間隔, 地震学会 1991 年秋
季大会講演予稿集, pp.251, 1991.
18) Shimazaki, K., Kim, H., Chiba, T. and Satake, K.: Geological Evidence of Recurrent Great
Kanto Earthquakes at the Miura Peninsula, Japan, J. Geophys. Res., Vol.116, B12408,
doi:10.1029/2011JB008639, 2011.
19) 地震調査委員会: 相模トラフ沿いの地震活動の長期評価, 31pp, 2004.
20) Bronk Ramsey, C.: Bayesian analysis of radiocarbon dates, Radiocarbon, Vol.51, pp.337–360,
2009.
21) Reimer, P.J., Bard, E., Bayliss, A., Beck, J.W., Blackwell, P.G., Bronk Ramsey, C., Buck, C.E.,
Cheng, H., Edwards, R.L., Friedrich, M., Grootes, P.M., Guilderson, T.P., Haflidason, H.,
Hajdas, I., Hatté, C., Heaton, T.J., Hoffmann, D.L., Hogg, A.G., Hughen, K.A., Kaiser, K.F.,
Kromer, B., Manning, S.W., Niu, M., Reimer, R.W., Richards, D.A., Scott, E.M., Southon,
J.R., Staff, R.A., Turney, C.S.M. and van der Plicht, J.: IntCal13 and Marine13 Radiocarbon
Age Calibration Curves 0–50,000 Years cal BP, Radiocarbon, 55(4), pp. 1869-1887, 2013.
22) 宇佐美龍夫: 「最新版・日本被害地震総覧・416-2001」, 東京大学出版会, 605pp, 2003.
99
(e) 学会等発表実績
学会等における口頭・ポスター発表
発表成果(発表題目、口
発表者氏名
発表場所
頭・ポスター発表の別)
発表時期
(学会等名)
国際・国
内の別
Contribution of Coulomb
Ishibe, T.,
日本地球惑星科学
2013 年 5 月 21
stress changes by the 2011
K. Satake,
連合2013年大会
日
Tohoku-oki earthquake on
S. Sakai,
(千葉市)
seismicity rate change in
K. Shimazaki,
the Kanto region(口頭)
H. Tsuruoka,
国内
S. Nakagawa,
and N. Hirata
三浦半島江奈湾におけ
千葉 崇・
日本地球惑星科学
2013 年 5 月 24
る 過 去 4000 年 間 の 沿 岸
石辺岳男・
連合2013年大会
日
環境変動と関東地震に
佐竹健治・
(千葉市)
よる津波堆積物(口頭)
島崎邦彦・
国内
須貝俊彦・
西山昭仁・
原田智也・
今井健太郎・
行谷佑一・
上野俊洋
Abrupt
changes
in
Ishibe, T.,
Asia
seismicity rate in Tokyo
K. Satake,
Geosciences Society
Metropolitan area due to
S. Sakai,
2013 Annual Meeting
the
Stress
K. Shimazaki,
(オーストラリア、ブリ
changes imparted by the
H. Tsuruoka,
スベン)
2011
S. Nakagawa,
Coulomb
Tohoku-oki
Oceania
earthquake(ポスター)
and N. Hirata
Toward the construction of
Ishibe, T. and
Asia
paleo- and historical large
K. Satake
Geosciences Society
Oceania
earthquake catalog around
2013 Annual Meeting
Tokyo Metropolitan area
(オーストラリア、ブリ
(口頭)
スベン)
2013 年 6 月 27
日
2013 年 6 月 26
Chiba, T.,
International
2013 年 9 月 25
environmental
T. Ishibe,
Tsunami Symposium
-28日
changes associated with
K. Satake,
(ITS2013)
Kanto earthquakes during
K. Shimazaki,
(Gocek、トルコ)
the last 4000 years in Ena
T. Sugai,
bay,
A.
coastal
deposits
Miura
Peninsula,
100
国際
日
and
Tsunami
国際
国際
Japan
Nishiyama,
T. Harada,
K. Imai,
Y. Namegaya,
and T. Ueno
国立大学観測網地震カ
石辺岳男・
第 4回 研 究 集 会 "地
2013 年 7 月 11
タ ロ グ (JUNEC)の 初 動 を
鶴岡
震活動の評価に基
-12日
用いたメカニズム解の
佐竹健治
弘・
推定とその特徴(口頭)
国内
づく地震発生予測
システム - 東北地
方太平洋沖地震前
後の地震発生予測"(文京区)
Seismicity rate increase in
Ishibe T.,
The 8 th International
2013 年 8 月 12
the
S. Sakai,
Workshop
日
area following
K. Shimazaki,
Statistical
the 2011 off the Pacific
K. Satake,
Seismology
coast
Tohoku
H. Tsuruoka,
to
S. Nakagawa,
Tokyo
earthquake
Metropolitan
of
due
the
Coulomb
on
国際
(北京、中国)
and N. Hirata
stress increase(口頭:招
待講演)
1885 年 以 降 に 関 東 及 び
石辺岳男・
第 30 回 歴 史 地 震 研
2013 年 9 月 16
その周辺で発生した中
村岸
究会大会
日
~大地震の類型化(その
佐竹健治
(秋田市)
千葉県睦沢町における
村岸
第 30 回 歴 史 地 震 研
2013 年 9 月 16
関東大震災の影響
佐竹健治
究会大会
日
純・
国内
1) -初期微動継続時間
と初動の整理-
(ポスター)
純・
(口頭)
国内
(秋田市)
伊豆半島東岸伊東市に
藤原
おける津波堆積物の掘
治・
第 30 回 歴 史 地 震 研
2013 年 9 月 16
石辺岳男・
究会大会
日
削調査
千葉
(秋田市)
(口頭)
佐竹健治・
崇・
国内
金子浩之・
市川清士
元 禄 地 震 津 波 (1703)の 大
都司嘉宣
第 30 回 歴 史 地 震 研
2013 年 9 月 16
名領被害記録を完全に
究会大会
日
読み解けばどうなる?
(秋田市)
101
国内
(口頭)
関東地方における S-P 時
石辺岳男・
日 本 地 震 学 会 2013
2013 年 10 月 7
間と初動の分布(ポスタ
佐竹健治・
年秋季大会
-9日
ー)
村岸 純・
(横浜市)
国内
鶴岡 弘・
中川茂樹・
酒井慎一・
平田 直
史料に記された 1703 年
村岸
純・
元禄関東地震津波によ
佐竹健治
る砂の流入(口頭)
日 本 地 震 学 会 2013
2013 年 10 月 7
年秋季大会
-9日
国内
(横浜市)
1995 年 兵 庫 県 南 部 地 震
橋間昭徳・
日 本 地 震 学 会 2013
2013 年 10 月 7
後の 2013 年淡路島地震
石辺岳男
年秋季大会
-9日
周辺への粘弾性的応力
国内
(横浜市)
再配分(ポスター)
延宝 5 年(1677)房総沖
都司嘉宣
日 本 地 震 学 会 2013
2013 年 10 月 7
津波の経験は元禄 16 年
年秋季大会
-9日
(1703)関東地震の津波
(横浜市)
国内
死者を減らすのに役立
ったか?(口頭)
Toward the construction of
Ishibe T.,
VISES Workshop
2013 年 10 月
paleo- and historical large
J. Muragishi,
(ロサンゼルス)
16日
earthquake catalogs in and
K. Satake,
around
and N. Hirata
前近代歴史地震史
2013 年 11 月 4
被災地域に生じた生活
料研究会
日
環境の変化(口頭)
(新潟市)
the
Tokyo
国際
Metropolitan Area(口頭)
1703 年 元 禄 関 東 地 震 の
Increases
AGU
K. Satake,
2013
Metropolitan area after the
S. Sakai,
(サンフランシスコ)
2011 Tohoku Earthquake
K. Shimazaki,
(口頭)
H. Tsuruoka,
in
the
seismicity
純
Ishibe T.,
rate
in
村岸
Tokyo
fall
meeting
2013 年 12 月
国内
国際
9-13日
S. Nakagawa,
and N. Hirata
Reconstruction of paleo
Chiba, T.,
AGU
coastal environment and
T. Ishibe,
2013
tsunami deposits from the
K. Satake,
Kanto earthquakes in Ena
K. Shimazaki,
fall
meeting
(サンフランシスコ)
102
2013 年 12 月
9-13日
国際
bay,
Miura
Peninsula,
Japan(ポスター)
T. Sugai,
A.
Nishiyama,
T. Harada,
K. Imai,
Y. Namegaya,
and T. Ueno
学会誌・雑誌等における論文掲載
掲載論文(論文題目)
発表者氏名
発表場所
発表時期
(雑誌等名)
国際・国
内の別
2014年3月
国際
2014年3月
国際
災害・復興と資料
2014年3月
国内
資料学研究
2014年3月
国内
A Focal Mechanism
Ishibe, T.,
Bulletin
of
the
Solution Catalog of
H. Tsuruoka,
Seismological
Earthquakes (M ≥ 2.0) in
K. Satake,
Society of America
and around the Japanese
and
Islands for 1985-1998
Nakatani
Tsunami Heights along the
Tsuji, Y., K.
Pure
Pacific Coast of Northern
Satake,
T.
Geophysics
Honshu Recorded from the
Ishibe,
T.
2011 Tohoku and Previous
Harada,
A.
Great Earthquakes
Nishiyama,
M.
and
and
Applied
S.
Kusumoto
1703 年元禄関東地震の
村岸
純
被災地域に生じた生活
環境の変化
1703年元禄地震におけ
矢田俊文
る相模国足柄郡・駿河国
駿東郡御厨・伊豆国東岸
地域の被害数
マスコミ等における報道・掲載
なし
(f) 特許出願,ソフトウエア開発,仕様・標準等の策定
1)特許出願
なし
103
2)ソフトウエア開発
なし
3) 仕様・標準等の策定
なし
(3) 平成26年度業務計画案
前年度に引き続き、課題(1)a と連携して中小地震の震源・発震機構解の決定を行う。
収集された計器観測記録・震度データに基づき、南関東において 1885 年以降に発生した大
地震の震源や発震機構解の推定、類型化を実施する。 南関東で過去に発生した大地震に関
する古地震記録の収集ならびにデジタルデータ化(校正・校訂作業)を継続する。これに
基づき 1703 年元禄関東地震、1855 年安政江戸地震等の歴史地震の地震像を検討する。前
年度に引き続き、津波堆積物や離水段丘面等の地形・地質学的調査、液状化痕や歴史資料
の再検討に基づき、関東地震の履歴解明を進める。業務の円滑な遂行ならびに他課題との
連携のため、検討会を開催する。
104
表 1 18-19 世紀に関東地方において発生した歴史地震に関する既刊地震史料集の頁数。
1)1706 年 10 月 21 日(宝永三年九月十五日)の江戸地震
『新収日本地震史料』(続補遺)
266
0.2
史料集
頁範囲
頁数
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
127
0.1
『増訂大日本地震史料』(第二巻)
97-98
0.7
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
193
0.1
『新収日本地震史料』(第三巻)
42-45
2.8
『新収日本地震史料』(補遺)
321-323
1.9
『新収日本地震史料』(続補遺)
156-157
1.0
史料集
頁範囲
頁数
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
90
0.3
『新収日本地震史料』(第三巻)
708-709
1.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
136
0.1
『新収日本地震史料』(補遺)
516
0.3
『日本の歴史地震史料』(拾遺四ノ上)
85
0.3
『新収日本地震史料』(続補遺)
327
0.8
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
108-109
0.3
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
134-135
0.3
『日本の歴史地震史料』(拾遺別巻)
960
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺四ノ上)
231
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
207-208
0.4
計:2.3 頁
6)1767 年 10 月 22 日(明和四年九月三十日)の江戸地震
計:7.4 頁
2)1710 年 9 月 15 日(宝永七年八月二十二日)の磐城地震
史料集
頁範囲
頁数
『増訂大日本地震史料』(第二巻)
261
0.2
『新収日本地震史料』(第三巻)
91-93
2.1
『新収日本地震史料』(補遺)
331
0.4
史料集
頁範囲
頁数
『新収日本地震史料』(続補遺)
166-167
1.4
『新収日本地震史料』(第三巻)
714
0.5
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
94-95
0.2
『新収日本地震史料』(補遺)
518
0.2
『新収日本地震史料』(続補遺)
331
0.1
計:3.2 頁
7)1768 年 7 月 19 日(明和五年六月六日)の箱根地震
計:4.3 頁
3)1725 年 5 月 29 日(享保十年四月十八日)の日光地震
計:0.8 頁
史料集
頁範囲
頁数
8)1782 年 8 月 23 日(天明二年七月十五日)の小田原地震
『増訂大日本地震史料』(第二巻)
310-311
0.5
史料集
頁範囲
頁数
『新収日本地震史料』(第三巻)
215-216
0.9
『増訂大日本地震史料』(第二巻)
555-558
3.0
『新収日本地震史料』(補遺)
369
0.5
『新収日本地震史料』(第三巻)
843-864
20.5
『新収日本地震史料』(続補遺)
196-197
0.1
『新収日本地震史料』(補遺)
547-553
6.7
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
100-101
0.3
『新収日本地震史料』(続補遺)
380-383
3.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
158-162
4.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺別巻)
962
0.2
計:2.3 頁
4)1755 年 4 月 21 日(宝暦五年三月十日)の日光地震
史料集
頁範囲
頁数
『日本の歴史地震史料』(拾遺二)
121
0.1
『増訂大日本地震史料』(第二巻)
396-398
2.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
172-173
0.7
『新収日本地震史料』(第三巻)
571-572
0.3
『日本の歴史地震史料』(拾遺四ノ上)
267-271
3.6
『新収日本地震史料』(補遺)
477-478
0.4
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
226-238
12.6
『新収日本地震史料』(続補遺)
262
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
162
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺四ノ上)
220
0.2
計:54.6 頁
9)1786 年 3 月 23 日(天明六年二月二十四日)の箱根地震
計:3.4 頁
5)1756 年 2 月 20 日(宝暦六年一月二十一日)の銚子地震
史料集
頁範囲
頁数
『増訂大日本地震史料』(第二巻)
400
0.2
『新収日本地震史料』(第三巻)
574
0.4
『新収日本地震史料』(補遺)
480-481
1.3
史料集
頁範囲
頁数
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
4-5
0.4
『新収日本地震史料』(第三巻)
884
0.4
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
165
0.3
計:1.1 頁
10)1791 年 1 月 1 日(寛政二年十一月二十七日)の川越・蕨地震
史料集
105
頁範囲
頁数
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
11-12
0.3
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
『新収日本地震史料』(第四巻)
14-16
1.5
『新収日本地震史料』(補遺)
582-583
1.6
『新収日本地震史料』(続補遺)
394-395
1.3
史料集
頁範囲
頁数
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
170
0.4
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
447
0.4
『日本の歴史地震史料』(拾遺別巻)
963
0.1
『新収日本地震史料』(第四巻)
795-801
5.4
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
177
0.1
『新収日本地震史料』(補遺)
886-887
1.0
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
242
0.4
『新収日本地震史料』(続補遺)
654-656
2.2
計:5.7 頁
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
278
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺別巻)
1004
0.1
427
0.1
計:1.3 頁
15)1843 年 3 月 9 日(天保十四年二月九日)の足柄・御殿場地震
11)1801 年 5 月 27 日(享和元年四月十五日)の上総地震
史料集
頁範囲
頁数
『日本の歴史地震史料』(拾遺二)
223
0.2
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
135
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
305
0.2
『新収日本地震史料』(第四巻)
123
0.4
『日本の歴史地震史料』(拾遺四ノ上)
435-436
0.2
『新収日本地震史料』(補遺)
617
0.4
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
431
0.1
『新収日本地震史料』(続補遺)
442
0.3
『日本の歴史地震史料』(拾遺二)
140
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
191
0.5
史料集
頁範囲
頁数
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
305-306
0.6
『日本地震史料』
684
0.4
『新収日本地震史料』(第五巻)
258-261
3.3
『新収日本地震史料』(補遺)
1015-1016
1.5
計:9.9 頁
16)1856 年 11 月 4 日(安政三年十月七日)の立川・所沢地震
計:2.5 頁
12)1817 年 12 月 12 日(文化十四年十一月五日)の箱根地震
史料集
頁範囲
頁数
『新収日本地震史料』(続補遺)
758-759
1.2
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
206
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
298
0.2
『新収日本地震史料』(第四巻)
358-359
1.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺別巻)
1011
0.1
『新収日本地震史料』(補遺)
672
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺四ノ下)
1504
0.3
『新収日本地震史料』(続補遺)
490
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺五ノ上)
495
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺)
216
0.1
『日本の歴史地震史料』(拾遺別巻)
987
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
199
0.1
計:6.7 頁
17)1859 年 1 月 11 日(安政五年十二月八日)の岩槻地震
計:2.1 頁
13)1831 年 3 月 26 日(天保二年二月十三日)の江戸地震
史料集
頁範囲
頁数
『日本地震史料』
736
0.3
『新収日本地震史料』(第五巻)
398
0.8
『新収日本地震史料』(補遺)
1097
0.2
史料集
頁範囲
頁数
『新収日本地震史料』(続補遺)
797
0.5
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
384
0.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺二)
494
0.1
『新収日本地震史料』(第四巻)
577-578
1.2
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
637
0.2
『新収日本地震史料』(補遺)
755
0.2
計:2.1 頁
『日本の歴史地震史料』(拾遺三)
290
0.1
合計 111.4 頁
計:1.7 頁
14)1836 年 3 月 31 日(天保七年二月十五日)の伊豆新島地震
史料集
頁範囲
頁数
『増訂大日本地震史料』(第三巻)
421
0.1
『新収日本地震史料』(第四巻)
728-729
0.7
『新収日本地震史料』(補遺)
843-844
0.4
106
図 1
(a) (左)MeSO-net を用いて推定された地震の震源分布(2011 年 11 月 2 日~2012
年 6 月 5 日)ならびに、(右)発震機構解。色は震源の深さを表す。(b)(左)T 軸、(右)
P 軸の分布。
107
図2
決定された発震機構解(左)ならびに acceptable な発震機構解(右)の例。●は初動
が押し、○は引きの観測点を表す。押しの領域の色は震源の深さを表す。A ランクから C
ランクに向かって推定精度は低くなる。
108
図 3
(a) 宇都宮(左上)、東京(右上)、銚子(左下)、前橋(右下)の気象庁観測点にお
ける S-P 時間ならびに初動(赤;上方動、青;下方動)の分布。星印はそれぞれの観測点
の位置を表す。(b) 柏(E.KW8H)、本郷(E.YYIM;弥生)、横須賀(E.KH2M;第二海堡)、
ならびに鎌倉震研(E.SYOM)と対比される MeSO-net 観測点における S-P 時間と初動の分
布。
109
図4
(a) 統合された発震機構解の分布。(b) 関東ならびにその周辺域(図(a)の白矩形領域)
における 1 年あたりの発震機構解数(棒グラフ;左軸)ならびに累積頻度曲線(実線;右
軸)。(c) 関東ならびにその周辺域における発震機構解が推定された地震の規模別頻度分布。
図5
明治・大正期に発生した地震の震度分布図の例(左;1906 年 2 月 24 日の地震(M6.4)、
中央;1918 年 6 月 26 日の地震(M6.3)、右;1924 年 1 月 15 日の地震(丹沢地震;M7.3))。
110
図 6
10 観測点以上で震度報告が残されている地震の(a)M-T ダイアグラム、ならびに
(b)震度報告数。
図7
収集された波形記録の例(1894 年 10 月 7 日の地震)。
111
図8
江戸時代に関東及びその周辺域で発生し、今年度までにデジタルデータ化を実施し
た 37 の地震(白丸:平成 24 年度、白星印:平成 25 年度、黒星印:首都直下地震防災・減
災特別プロジェクトによる、但し 1855(安政二)年江戸地震は一部に限る)。マグニチュ
ードは宇佐美(2003) 22 ) に基づく。
112
図9
マーカー引きされた 1703 年元禄地震に関する歴史資料の一部(宇佐美龍夫編「日本
の歴史地震史料」拾遺四ノ上に加筆)。
図 10
校訂作業の一例(1703 年元禄地震に関する歴史資料『楽只堂年録』の一部抜粋)。
113
(a)
(b)
図 11
(a)『楽只堂年録』(公益財団法人郡山城史跡・柳沢文庫保存会所蔵)、(b)『元禄
年中大地震大火事記』(徳島県立図書館蔵)の複写の一部。
114
(a)
(b)
(c)
図 12
(a)掘削位置図。(b)静岡県伊東市(宇佐美地区)におけるコア試料の 柱状図、
採取された木片の放射性炭素年代(暦年較正年代 2σ範囲)。
(c)コア写真の一部(USM-2、
300~330 cm)。
115
(a)
(b)
図 13
(a) 神奈川県大磯町池田公園における(左)オールコアボーリング掘削、
(右)自走
型打撃式土壌サンプラー(ロングフェース、ウインチ内臓)を用いた定方位簡易ボーリン
グ掘削風景。(b)地質試料(OIS-1’コアの 1~2 m 部分;左)とその一部拡大写真(右)。
116
図 14
静岡県伊東市における検討会・打ち合わせ・巡検の様子。
117