ESDESD-J 全国ミーティング 全国ミーティング 2013 in 岡山 岡山市の ◆岡山市 の取り組みの紹介 原明子氏 岡山市 ESD 世界会議推進局 原明子 氏 しおり氏 岡山市立中央公民館 指導係主任 重森しおり 氏 2013 年 6 月 15 日 (土) 京山地区 ESD サポーター 井上紘貴氏 ■ 原 明子氏 岡山市 ESD 世界会議推進局の原明子と申します。 先月、国際的な人材、グローバル人材を育てたいという高校生のインターキッズ(民間の団体) で、90 分間の ESD のワークショップを行いました。その高校生の感想文です。 「ESD とは自分のことだけでなく、世界中のことも考えるということなんだと思った。 」 ・・・ 「自 分の夢が社会のさまざまなことと繋がっているように、世界は全てのものごとで繋がっている。 だから今みたいに豊かさが偏っている状態では社会が成り立たなくなるかもしれない。だからこ そ、たまに地球を外から見るような、宇宙飛行士のような目線で物事を考えなければいけないな と思った。 」 岡山市では市役所が事務局となって ESD を推進して今年で 9 年目になります。今は職員が沢山 いますが、最初は一人で 6 年ほどやっていました。今日は進める仕組みと多彩な活動ということ でお話しますが、まずはその経緯を報告します。 まず自己紹介をしますと、私はもともとは日本ユニセフ協会で働いていて、世界の途上国の子 どもたちの問題に関っていました。9 年前に岡山市役所で ESD の仕事があると聞いて応募しまし たが、最初は自然保護のことも生き物のことも知りませんでした。 仕事を始めて 2 週間後くらいに、カスミサンショウウオを保護している高校の理科室に行きま した。にゅるにゅるの卵がいっぱいトレイにあって、女子高生たちが生まれたカスミサンショウ ウオの口にピンセットでえさをにあげていました。私はにゅるにゅるの生き物が苦手だったので 「大丈夫?気持ち悪くない??」と聞きました。するとそれを見た先生に「そんなこと言う人間 に ESD をやる資格はない!」とものすごく怒られました。私はショックで落ち込みましたが、深 く考えこんだ挙句、 「ハッ!」と思いました。私は子どもの頃から人間については外見や人種など で差別は許せないと思っていたのに、人間以外の生き物については平気で「気持ち悪い」とか言 っていたのです。自分の世界や価値観がいかに狭いかを感じ、地球とか宇宙とか生き物とかもっ と大きな枠組みで考えていかなければだめだ、ということを痛感しました。 こういう根源的な自分の価値観を揺らがせてくれる豊かな ESD があるからこそ、 もう 9 年もや っていますが、そこには深い学びがあります。 岡山市で ESD の推進をやって思うのは、 「しくみ」と「人」両方が必要だということです。 「人」 というのはコーディネーターといっても良いと思いますが、コーディネーターだけが頑張っても ダメで、コーディネーターを支える、活かす仕組みが必要ということを非常に感じています。で 作 使 多分ここにいらっしゃる皆さんも、さっき川嶋さんが仰っていた「潜在的 ESD コーディネーター」 だと思います。何らかの組織に属していらっしゃって、その組織の中で、皆さんが目覚めて ESD も、その仕組みは新しく る必要はないと思います。仕組みはどこにでもあるものを えばいい。 1 素質をピカピカと発揮したら、皆さんが属している組織の資源や、その仕組 コーディネーターの 部使えるツールになると思います。 みが全 では、人はどういうときに ESD コーディネーターになれるかについて、私は「根源的な問いを 例 パ をくっつけようとしてもくっつきませんが、例えば同じ「命」とか「その命が安全に生きていく 環境ってどういう環境なのか?」というような問いを持てば、その途上国の子どもとカスミサン ショウウオも非常に危うい境遇に置かれていることから、彼らが活き活きと生きられるような社 会をつくる、という同じ目標を立てることできるという風に「根源的な問いを持つ」ことが大事 なポイントだと思います。 繋がった瞬間にそのことが楽しく思え、物凄くうれしく感じます。嬉しいと同時に、自分が成 長できたと実感できます。この仕事が辞められないのは、人を繋げる楽しさの他に、「これ」と「こ れ」とがつながった時に、一つ脱皮する、一つ上の気づきに至るみたいなところがあるからで、 ESD のコーディネートや ESD にもそうした喜びがあると私は思います。 ここから岡山市の取り組みです。岡山市は人口 70 万人の政令指定都市ですが、市街地から車で 15 分も走れば周りは田んぼで、市域の約8割は農地、山林です。台風はよけて通る、地震は殆ど ない、洪水も殆ど起きない、およそ災害にはあまり縁がないそんな土地柄です。そして、食べ物 は美味しいし、良いものもいっぱいあります。 そんな岡山で来年世界会議が開催されます。それを受けて、市民に ESD を広めるために急きょ、 広報誌「ESD 特集号」を第一部、第二部を岡山市の広報課が作成して、28 万世帯に配布しまし た。その中で募集したキャッチフレーズも決まりました。 「次世代に学んで引き継ぐこの地球」と いう標準語バージョン、 「ええ地球(ほし)にしょうでぇー」という岡山弁バージョン、この 2 つ が岡山市 ESD のキャッチフレーズです。 岡山市では、これまでいろんなことをやってきました。子供向けのイベント「おもしろ科学ラ ボ~エネルギーってなあに?」のほか、各地の成人式に若手職員が出掛けていき、模造紙を広げ て「皆さん、ESD を知ってますか?」とアンケートして、ESD を知っているか、生物多様性を 知っているか、AKB を知っているか、印をつけてもらいました。ご覧の通り、まだまだ ESD を 知っている人は少ないのが現状です。生物多様性は COP10 が開催されましたから、そこそこ皆 さん知っているようでした。皆さんの自治体でこれをやったら、どんな結果になるのでしょうか? また、未来のある若者に ESD を知ってもらいたい、ということで若い人向けに、ESD 的な生き 方をしているステキな女子を「サステナガール」と名付けて、 「サステナガールズトーク」という トークセッションを開催しました。これは好評でした。今どきの女子が持続可能な社会とライフ スタイルについて語るというコンセプトでのちに四国 EPO も引き続いて実施しました。 ソーシャルデザイン、社会を変えるデザインのワークショップも開催しましたが、このときも 若者が多数参加してくれました。環境省の ESD 全国学びあいフォーラムも岡山で開催したほか、 文部科学省とのパートナーシップで「ユネスコスクール運動を支える地域づくり全国フォーラム」 も開催しました。全国の方がこういう会議をきっかけに岡山に来てくださって、それぞれ交流を 持つこと」が大事ではないかと思います。 えばネ ールの子どもとカスミサンショウウオの卵 されています。 アジア青年未来プロジェクト」という、青年向けのイベ ントも開催しました。また、 「ESD カフェ」と名付けた対話の場を設けて、持続可能社会づくり それ以外にも、市民団体との協働で「 2 テ マ 毎 定例カフェを開催しています。それ以外にも、いろんな場所で開催してお り、今年からそれぞれの公民館でも ESD カフェを始めています。 「3.11 の後に新しい生き方を考 える」ということをテーマに、若者向けのお洒落なカフェでダイアローグカフェも開き、他にも 市内のあちこちで開催しています。 また岡山市の図書館が協力してくださり、岡山市立中央図書館で ESD に関するコーナーが設置 されています。図書館が ESD 関連の書籍を購入し、かつすべての分館にも ESD コーナーを設置 することになっています。これがまさに「組織力を生かす」ことだと思います。岡山市役所が事 務局となって ESD を推進しているのであれば、公民館はもちろん、図書館や里山センターや各出 先機関など、今あるルートに道を通すと、どんどん ESD の輪が広がっていくと思います。 仕組みをつくっていくと同時に、各地域での ESD 活動も支援する取り組みも行なっています。 岡山では地域に根差した活動を育てていきたいし、そうした活動が自然発生的に大きくなってほ しい、と思っています。今日は 4 つの活動を紹介していきます。高島と京山については明日の分 科会で行かれるみなさんもいらっしゃると思うので、簡単に説明したいと思います。 竹枝地区は小学校の児童が 28 人しかいない過疎の小学校区で、統廃合の危機にあります。その 一方で自然が豊かな地域でもあります。地元の方々が学校は地域の「心のふるさと」だから、学 校だけは潰したくないという思いから、毎月この小学校区の子ども限定で、自然遊びを行なって います。「竹枝を思う会」がやっている自然学校は、 「大きくなって地域から出て行っても、思い 出してまた必ず戻ってきたい、と思えるような自然体験をたっぷりさせたい」を目標にされてい ます。先日とても嬉しいことがありました。私は岡山大で ESD の授業も担当していますが、2 回 生のある学生が、応募してくれました。どうしてこの授業をとったのかと聞いたところ、 「私は竹 枝小学校の卒業生です。竹枝では自然体験を沢山させてもらいそれが自分にとって大変良かった。 いろんなフィールドに出たいと思っていたところ、“ESD”という名前がついていたからこの実習 に応募した」と答えてくれて、とても嬉しかったです。 また、高度経済成長期に断ち切られてしまった地域の知恵、自然とともに生きる知恵を、おじ いちゃんおばあちゃんたち世代から若い世代に伝えたいという想いがあり、ふるさと遊びや自然 の中で生きる知恵を書き留めて伝承する活動もあります。 それから、何となく魚が減ってきた、という地域の方々の素朴な実感を科学的に実証するため、 岡山理科大学の学生さんに協力してもらい、毎年かいぼりをして確かめています。かつては 1 年 に 1 度大水があって、川の石が流されていたのが、ダムができて流れが穏やかになってからそう いうことは起きなくなって生物多様性が減ってしまいました。でもそういう実感はあっても、確 証はありませんでした。そこでみんなで川の石をひっくり返して底を見ることでアカザという珍 しい魚が減ってきている、ということを岡山理科大学の協力で継続的に記録し、科学的に立証し を ー にして、 月 ました。 続いて藤田地区ですがここは稲作のために干拓で造られた地域です。しかし、農業の持続可能 性が危ぶまれている今の日本この社会において、どのようにして持続可能な地域、未来にしてい くかを 3 つの小学校、中学校、高校と連携して活動しています。これも岡山大学の協力を得なが ら行なっている活動です。 島 区 泳ぐ仏像」と呼ばれる天然記念物、アユモドキの保護をめぐる利害対決があり ました。それが子どもたちの未来のためだったら、利害を超えて話し合う、といった ESD 活動が 高 学 では「 3 わ 京山公民館では、池田さんが中心となって、岡山では一番早くから ESD をされています。最後 に京山学区で ESD 活動を 10 年以上行なってきてどんな人が育ったのか、というのを井上さんに 話していただきます。井上さんは大学生の頃から ESD に関わっていらっしゃいますが、どういう 風に変わったのかをお話ししていただきます。 行な れています。 ■ 井上紘貴氏 皆さんこんにちは。今日この ESD-J 全国ミーティングでスタッフをしています、井上と申しま す。僕は 2005 年に岡山大学の環境理工学部に入学しまして、そのときから池田さん率いる京山 地区の KEEP、京山地区 ESD 環境プロジェクトにずっと関わってきています。最初は KEEP だ けに参加していましたが、KEEP に参加することで地域の魅力を知ったり、地域の皆様と仲良く なれたり、地域の方々、特に小中学生からいろいろ学ぶべきところも沢山ありました。 地域の方々と繋がったことによって、KEEP だけでなく、現在 U-STREAM で映像を配信され ている「ムービー京山」の皆さんのお手伝いをしたり、京山公民館でボランティア活動に参加し たり、学生時代は公民館に深く関わりました。 僕が京山地区の ESD に関わって学んだことですが、教育とは、先生から子どもたちへ教えるよ うな一方的な流れだけではなくて、教える立場、教えられる立場を超えて双方向に学びあえると いったことを学びました。 続可能な地域」とは何が大事か、僕なりに思うのが「地域への愛着」、あるいは「地 元に住む人が元気であること」、これが一番大事ではないかと感じるようになりました。以上です。 あと、「持 ありがとうございました。 ■ 重森しおり 重森しおり氏 しおり氏 央公民館で働いています、重森と申します。 先ほど原さんの方からも紹介がありましたが、岡山市内には中学校区に一つ公民館が設置され ています。私は公民館で働くようになって 6 年目になります。 公民館というのは皆さんご存じだと思いますが、学校や図書館や博物館などと同じような教育 施設の一つとなっています。皆さんの自治体にも公民館はあると思いますが、運営の仕方はそれ ぞれの自治体によって違いますが、地元の方が管理運営しているような所もあれば、指定管理者 制度で運営しているような所もあります。 岡山市では行政が設置・運営していて、職員は館長と夜間の職員も含めて概ね4名常駐するよ うになっています。もともと公民館では地域の課題や自分の暮らしの中での悩み事を解決するた めの事業を行なってきました。そういったテーマ別の様々な課題について講座をして、地域とい うものをベースにして、そこに関心のある人たちだけでなくて、ない人たちにも広げていく、と いうような取り組みをしてきました。人をつなげていくところが公民館職員の腕の見せ所で、関 心がある人と、関心がないけど地域で町内会活動している人とを繋げたり、団体と団体とを繋げ たり、団体と取り組みとを繋げたり、といったことをこれまで行なってきました。 「繋げる」ということはただ単に人と人とを紹介しあうのではありません。一つ事例を紹介し みなさんこんにちは。岡山市の中 4 総合的な学習の授業というのが学校で行なわれていますが、授業の中で余暇活動を通し て地域の方と交流する授業を考えているんです、と地域内の学校から公民館に依頼がありました。 生徒たちが主体となるようにと話し合って、公民館のクラブ生と一緒にエーデルワイスを演奏す ることにしましたが、授業の当日に実際にやりましょう、となると授業としてはうまくいかなか った、というのがクラブ生たちの思いとして残りました。そのことでクラブ生は「若い子は分か らんわ。 」というのではなくて、そこで「どうやったらうまくいくか?」ということを学校や生徒 たちと何度も何度も話し合って、 「AKB の歌ならものすごく楽しい!」と言われて、AKB の「ヘ ビーローテーション」を演奏することにしました。 でも、公民館のクラブ生は比較的高齢な方が多く、60 代 70 代の方々ばかりなので、逆にその 曲を知らないし、テンポは速いし、難しいという声もありましたが、子どもたちと一緒に演奏す るために頑張ろう、ということで一所懸命練習を重ねて楽しい授業ができました。 この取り組みは授業としては終わ りましたが、今でもクラブの時間には、どこからともなく AKB の「ヘビーローテーション」が聞こえてきます。 このことできっと生徒とクラブ生には何か気持ちが芽生えたのだろうと思います。このことで 例えば、地域のスーパーでもし出会ったらきっと自然に挨拶するでしょうし、その人がもし困っ ていたら、何も言わずにそっと手を差し伸べる、そんな関係性ができたのではないかと思ってい ます。こうした公民館での学びや実践というものが地域に広がるように、公民館職員がコーディ ますと、 ネートを今までしてきました。 域 ベ 取 公 館 広 岡山市では、地 を ースに り組んできた 民 の活動と、 いネットワークで活動されて ド 面 広 っていると思います。地域の課題を地域だけで終わらせないことと、これまで公民館で実施して きた、環境や高齢者、健康づくりなど、テーマごとに分かれていた講座や事業などを関連づけた 取り組みにしていく、繋ぎ合わせていくことで、その中でそれぞれ活躍している人を繋げたり、 地域の活動に属していない個人が気軽に参加できるようになったり、というような対話の場もつ くることで、公民館では ESD を進めてきています。 こういった ESD の取り組みと公民館の活動として、体制づくりと仲間づくり、この両方がリン クするように、これからは公民館職員としてコーディネートしていくことが求められているのか いる NPO や NGO とも繋がることで、ESD というものをキーワー にして、 的な がりにな な、と感じています。 島公民館と岡西公民館と京山公民館、この 3 つの公民館が分科会の会場になっていて、 具体的にそこで取り組んでいるものをまさにテーマとしていただきました。私がここで話をする よりは、それぞれ皆さんの目で現場を見ていただけたらと思います。公民館や地域で ESD 活動を している住民の方々も、分科会に沢山参加してくださることになっていますので、その人たちが つくる公民館での活動や地域というものをたくさん堪能していただければと思います。 「地元学」でいうと、皆さんは「風の人」だと思います。今日は暑くてジメジメしていますが、 明日はこのジメジメした暑さから、フッと軽くなるような清々しい風をそれぞれの公民館やそれ ぞれの地域に降り注いでいただけることを期待しています。 長くなりましたが、公民館の紹介をさせていただきました。ありがとうございました。 明日は高 5
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