【 LED光源 】 照明用LED ● 一般照明用LEDの市場動向 (松本 達彦) ● 一般照明用LEDの製品展開と技術 (松岡 智巳 、百々 征貴) ● SSTV用LED演出照明用機器の市場動向と製品展開 (アウトドア除く) (佐々木光一) 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED 一般照明用LEDの市場動向 松本 達彦(ウシオライティング) 1. はじめに ぼ占められるといった状況にあった。 しかしこの展示会まで、LED照明は既存光源よりも 2008年まで、LEDはチップ性能や効率、コスト面で、 価格が高いにもかかわらず、性能に関してはあまり問わ まだ既存照明に対抗する光源になりうるものではなく、 れることがなく、「LEDであればいい」というユーザの希 装飾用などの一部照明用途に限られて使用されてい 望を満たすだけの製品であったことから、使用環境など た。 しかし、同年、省エネ法の改正案が国会に提出され とのマッチングが不十分であり、不具合が多発するとい たあたりから、その施行を視野に入れ、照明における省 う事態までも発生、安全性を求める声が高まった。 エネ対策の切り札として、各社からLED製品の市場投 入がされだした。 当時は、各社の製品投入スピードが早く、規格の統一 が追いついていなかったが、まずLED電球について、 同年、コンビニエンスストアであるローソンが新店舗 2012年7月に、ようやく規格化されることとなった。直 の全照明をLED化したことにより、店舗照明ではLED 管蛍光灯形LEDにおいては、まだ規格が曖昧な部分も 照明の動きが加速し、2009年には、各社製品が実売 あるが、日本電球工業会によって規格が示されたこと 7,000円から8,000円で販売されていたLED電球につ から、今後は光の質が問われていくことになる。 いて、シャープが実売3,000円台という約1/2の価格で 市場参入をしたことから、一気にLEDが注目されること となった。 4. 今後の動向 今後のLED照明に求められるものは、 2. LED化の流れ 2009年9月、民主党が初めて与党となって発足した ①さらなる照度アップ ②演色性能の向上 ③シングル・コア化 鳩山首相が、12月に打ちだした 『新成長戦略基本方針』 ④色バラツキの低減 で、LED照明を照明産業成長の柱と位置づけ、LEDの普 ⑤ITとの融合およびそれにともなう低コスト化 及および国際標準化を政府として推進した。 といえる。 その後、住宅向け製品の価格が引きさげられるととも ①に関しては、たとえばミラー付ハロゲンランプで に、 エコポイント制度が導入されたことで、LED照明の は、 現状の明るさが40Wに相当し、ハロゲンランプのメ 需要は急激に増加していったが、エコポイントが終了す イン市場である65Wの代替としては照度が不足してい るとともに減少傾向に転じることとなった。しかし、 る。 一部メーカが65W相当ということでLED電球を販売 2011年3月11日に発生した東日本大震災を契機に、日 しているが、過度に電力を使うことから電源部分の温度 本全体があらためて、省エネを強く意識するようにな があがり、使用器具によっては短寿命などの不具合が り、 LED需要が一気に加速した。 発生している。また、照度アップとともに、電源の性能向 上についてもメーカとして取り組まなければならない。 3. 規格化の推進 2011年3月11日は、日本最大の照明展示会であるラ イティングフェアの最終日であり、展示もLED照明でほ 74 LED光 源 ②に対して、現在、LED照明は平均演色評価数70∼ 80の製品が多いことから、今後は被照射物の商品価値 向上や、空間の質向上を狙うために、90以上が望まれる ことになりそうである。 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED ③では、これまでのLED照明が、複数のLED(マルチ・ コア)を搭載し、その光を集めることで照度アップと効率 のいい放熱を達成させてきた。しかしながら、マルチ・コ アにすると被照射物の影が複数発生し、グレアレス対応 器具に装着すると光が歪んでしまうことから、できるだ け既存電球に近いシングル・コア化が望まれている。 ④に関して、少し前まではLEDの色に関するばらつき は仕方ないという認識であったが、最近では、当然なが ら、色のバラツキについては既存光源と同様、できるだ け少ない製品が求められる。現在、選別によるバラツキ の低減をLEDメーカが実施しているものの、コストアッ プ要因にもなっていることから、製造工程でのつくりこ みに求められることが大である。 図1. 調光対応、ユニバーサル器具でも美しい光を放つ 「LEDIU LED電球ダイクロハロゲン形 JDRφ50タイプ」 調光対応 シングル・コア ⑤は、LED照明を光の質重視へと転換させ、それ付加 価値にするためのものである。LED照明は、蛍光灯に比 べるとまだまだ省エネといえないことから、センサ、コ ントローラといったIT機器と組み合わせ、他の光源には ないLEDの潜在能力といえる調光、調色性能を発揮さ せることで、さらなる省エネと光の質向上を図り、その 価値を創造する。また、センサ、コントローラに加え、こ れらをつなぐ制御・通信システムや端末も重要なファク タであることから、最終的には求められる光の色、質を 自在にコントロールするシステムとして提案できるこ とが求められる。 当社では、繊細かつ複雑なコントロールが求められ る舞台照明で多く使われているDMX制御を採用した、 インテリジェンスLED照明システム 『Lmiα』 を提案、照 明システムビジネスを深耕させていく計画である。 図2. JDRφ70ハロゲンランプと同等の明るさ(75W相当)、サイズ、 光の質を実現した「LEDIU LED電球 ダイクロハロゲン形 JDR φ70タイプ」 図3. インテリジェンスLED照明システム「Lmiα」(ベース照明) L E D 光源 75 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED 一般照明用LEDの製品展開と技術 松岡 智巳、百々 征貴 (ウシオライティング) 1. はじめに あった、環境に優しい光を選択し、「必要な光を、必要なと きに、必要なだけ」 使用することを提案するものである。 一般照明におけるLED化は、省エネ、環境負荷低減と この発想から生まれたのが、「 LED products to いった時流に加え、東日本震災による節電意識の高ま Integrate USHIO s advanced technologies」 を略し りから、白熱電球をLEDに置き換える動きとして、ここ た「LEDIU(レデュ−)」で、当社におけるLED事業の総称 最近、顕著になってきている。 であるとともに、当社が品質保証する、先進テクノロ 特に、ミラー付きハロゲンランプは、当社製品が市場 の約1/2を占めていることから、ハロゲンランプ代替 ジーの粋を集めたLED製品群に対する総称と定義して いる。 LED電球を提供することは、ある意味、必然であるとも いえる。 そこで、ハロゲンランプだけでなく、メタルハライド ランプ、セラミックメタルハライドランプなどで培った 技術をベースに、LED製品の開発を進めている。 3. LEDIU LED電球 現在、「LEDフィラメント電球Let(レット)」、「ミニレフ ランプ形」、「ダイクロハロゲン形」の3シリーズがあり、 以下、「ダイクロハロゲン形」を中心に、製品と技術につ 2. LED製品コンセプト 拡張スピードが加速するLED照明市場、飛躍的な進 いて紹介する。 (1)JDR φ50タイプ 化を遂げるLED技術を目の当たりにし、当社としても開 ミラー付きハロゲンランプについて国内トップシェ 発スピードをアップさせるとともに、他社と差別化を アを占める当社は、真の意味でハロゲンランプ代替とな 図った製品の開発を推し進めることが重要である。 るLED電球の開発、製品化を1つの責務と考え、これら そこで、 コンセプトを具現化させるべく、構成部品をはじめ、性 ①既存製品と高い互換性をもつ 能、品質にいたる、すべてにこだわりをもったLED電球 ②光は変えない として製品化したものである。 ③光のJust in Time をコンセプトに、技術開発を行っている。 ①については、特にハロゲンランプ代替LED電球が 抱えている、明るくするには放熱対策で既存製品よりサ イズが大きくなる、あるいはサイズを優先させると搭載 するLEDが制約され十分な光量を出せないといった問 題を解消する。 ②については、長年慣れ親しんできたイメージ、光源 特性や光の質を忠実に継承しつつ、ユーザが求める明 るさ、光の質、性能、形状を満たす。 ③については、LEDを含むすべての光源から、TPOに 76 LED光 源 ユーザが求める明るさ、光の質、性能、形状を満たし、 省エネで環境に優しく、既存のインフラで使用すること ができる。 【主な特長】 ●JDRφ50ハロゲン40W(中角タイプ)相当の明るさ*1 高輝度LEDとレンズとの組み合わせにより、6Wの消 費電力ながら、最大光度 1600cd)の明るさを実現した。 ●高い放熱性、コンパクト・軽量化、「モレ光」 放熱性能を追求し、設計に工夫をしたラインスリット 形放熱フィンが特長のアルミボディは、その優れた放 熱性により、ランプのコンパクト化、軽量化を実現、サイ 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED 1800 ズはハロゲンランプとほぼ同等にした。また、LEDが発 光度(cd) 1600 1400 する光をムダなく利用、レンズで集光される以外の光は 1200 背面のスリットから放つことで、ハロゲンランプのダイ 1000 クロイックミラーから後部に出る「モレ光」を再現する 800 ことができた。 600 ●電源によるノイズ 400 電源から発せられるノイズなどの試験を徹底して行 200 -40 -30 -20 -10 0 0 10 20 30 40 角度(°) LDR100V6WLM/5/E11 うとともに、CICPR11、CISPR22に準拠させた。 【主な用途】 JDR110V40WLM/K(100V入力時) ・ 一般照明、商業施設・店舗・商品展示用スポット照明 ・ ベース照明 など 図1. 配光特性比較 ( LED電球とハロゲンランプ) (2)JDRφ50タイプ 調光対応シングルコア JDRφ50タイプ発売後、市場から、さまざまな照明用器 具に対応する製品バリエーションの拡充が求められた。 なかでも、天井面を美しく、スッキリと仕上げること 図2. LED電球の照射面(左)とハロゲンランプの照射面 モレ光 (LED電球) モレ光 (ハロゲンランプ) 図3. 熱発生比較(雰囲気温度30℃における比較) 図5. 光学シミュレーション(光線追跡本数:100本) 照射面温度(℃) 100 90 LDR100V6WLM/5/E11 80 JDR110V40LM/K(100V入力時) 70 60 50 40 30 20 50 100 150 200 250 300 350 400 450 照射距離(mm) 図4. 照射距離と照射面温度の相関(LED電球とハロゲンランプ) L E D 光源 77 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED ができる「ユニバーサル器具」などにおいては、器具の ランプ用調光器具でも、美しい光をスムーズに連続調 内側で一部、電球の光が遮られることから、複数のLED 光させることが可能である。また、電源レイアウトを最 チップを搭載したLED電球では、配光が変わってしま 適化、必要とされる性能を維持したままダウンサイズさ う、 被照射物に複数の影がでるといった課題があった。 せた電源を新たに開発、搭載したことで、コンパクト化 「調光対応 シングルコア」は、これを解消すべく、搭載 するLEDを集積タイプのもの1つ(シングルコア)にした を図った。 【主な用途】 うえ、光学シミュレーション技術を駆使することによっ ・ 一般照明、商業施設・店舗・商品展示用スポット照明 てムダな光をなくす開発をすすめ、ユニバーサル器具 ・ ベース照明 など でも美しい光を放つLED電球として製品化した。 【主な特長】 (3)JDRφ70タイプ ●多重影のない輪郭が美しいグラデーション シングルコアに適したレンズ設計を行ったことで、照 射面が正円に近い光にすることができた。その結果、「ユ 世間ではLED化に拍車がかかり、現在、JDRφ50ハロ ゲンランプについては、当社を含む各社から代替の LED電球が数多く上市されている。 ニバーサル器具」で使用しても設計どおりの配光が得 しかし、JDRφ50ハロゲンランプ以上の明るさを放 られるので、輪郭の美しい光を提供することができる。 つことのできるLED代替ランプはまだ数少なく、しかも また、シングルコアであることから、被照射物の影が多 十分な光量がまだ出せていない状況にあることから、 重になることもない。 培ってきた、LED、光学設計、放熱、電源設計にかかわる ●スムーズな調光をコンパクトボディで実現 技術を投入し、JDRφ70タイプを完成させた。 調光に対応する設計を行ったことで、既存のハロゲン JDRφ70ハロゲンランプと同等の明るさ(75W相当)*2、 サイズ、光の質を再現したことで、スポット照明の代替 にとどまることなく、ベース照明用としてハロゲンラン プと取り換えても違和感のないイメージ、雰囲気、演出 効果を提供することができる。 【主な特長】 ●業界最高水準の明るさ*3 6個の高輝度LEDを最適配置させ、レンズと組み合わ せたことで、最大光度3900cdを達成した。 シングルコア 一般的なLED電球 図6. ユニバーサル器具での照射面 4500 LEDIU LED電球JDRφ70タイプ 4000 JDRφ70ハロゲンランプ75W (中角タイプ/AC100V換算時) 3500 光度(cd) 3000 2500 2000 1500 1000 500 -90 -70 -50 -30 -10 0 10 ビームの開き(°) 図7. シングルコアによる影 78 LED光 源 図8. 配光特性比較 30 50 70 90 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED ●フラットな光、輪郭が美しいグラデーションのある光 6つのLEDによる光を最適制御する、独自の3D光学 4. 今後の方向性 シミュレーション、レンズ設計、光学技術により、ハロゲ 今後、特に一般照明用白熱電球のリプレイス需要が ンランプの配光を再現、ムラのないフラットな光、輪郭 さらに高まると考えられることから、単なるLED化にと の美しいグラデーションのある光とした。 どまることなく、付加価値として、白熱電球が発する温 ●コンパクトなボディ かい光色をはじめとする質やイメージ、光源特性を忠実 放熱性に優れたラインスリット形放熱フィンと、レイ アウトを最適化した電源により、ランプのコンパクト 化、 軽量化を実現、サイズをJDRφ70ハロゲンランプと ほぼ同等にした。 【主な用途】 ・ 一般照明、商業施設・店舗用ベース照明 ・ 一般照明、商業施設・店舗・商品展示用スポット照明 など 図9. 光学シミュレーション(光線追跡本数:120本) に再現するとともに、一般照明に求められる明るさを満 たす製品の開発を、引き続き進めていく。 また、LED素子の高効率化にともない、メタルハライ ドランプ、蛍光灯といった高効率光源の代替もLEDで 実現可能なレベルになってきているので、これを意識し た製品開発も手がけていく。 *1:当社ハロゲンランプJDRφ50 40W(標準タイプ)との比較(当社調べ) *2:当社ハロゲンランプJDRφ70 75W中角の100V換算値との比較(当社調べ) *3:当社調べ(2012年1月12日現在) 図11. シミュレーションによってハロゲンランプの配光を再現した 照射光 図10. LED電球の照射面(左)とハロゲンランプの照射面 L E D 光源 79 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED SSTV用LED演出照明用機器の市場動向と 製品展開(アウトドア除く) 佐々木 光一(ウシオライティング) 1. はじめに 2. 市場動向 当社は、光源、産業機器に映像照明機器を加えた3つ のビジネスドメインで事業展開を行っている。 映像照明機器については「映像照明事業部」が主管 し、 自社で生産するフォロースポットライト、USHIOグ 演出照明用機器は、SSTV(Stage,Studio,TV Station) をはじめとするエンタテインメント分野だけでなく、ホ テルや施設のバンケット・ウエディング会場、店舗、 ショールーム、商業施設などでも使用されている。 ループであるCHRISTIE DIGITAL SYSTEMSのプロ なかでも、演出照明に欠くことのできないLEDムービ ジェクタをはじめ、High End Systems社(アメリカ)、 ングライトについて、国内市場を見てみると、当社取り DTS社(イタリア)、SILVER STAR(中国)といった2社1 扱い機器をはじめ、海外メーカであるMartin社(デン ブランドの演出照明用機器を取り扱う。 マーク)、ROBE社(チェコ共和国)などの機器が、シェア 特に演出照明用ビジネスにおいては、光源からシス を伸ばさんとしのぎをけずっている。 テムまでを一貫して取り扱う独自のビジネスモデルに フォロースポットライトについては、Xebex ブランド 加え、きめ細かなメンテナンスサービス、演出・ソフト・ で販売している当社製のものが業界では定番となり、 コンテンツを中心とするソリューションビジネスを拡 特にクセノンランプを光源とする「SUPERSOL」は、「ピ 大し、トータルソリューションプロバイダとしての地位 ンスポ」の愛称でユーザに浸透、国内市場の90%以上を を確立している。 占めるまでになっている。 ▲ LED ムービングライト trackspot Bolt (High End Systems) ▲ LED ムービングライト NICK WASH 600(DTS) 図1. ウシオライティングが取り扱う演出照明用機器の一例 80 LED光 源 ▲ LED ムービングライト INDIGO300(SILVER STAR) ▲ クセノンフォロースポットライト (2kW タイプ ) 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED (1)LED化の流れ 演出照明用機器では、ランプ出力、効率、演色性と 京都に本社を置くLEDメーカであるシーシーエス株式 会社と事業提携することによって実現した。 いった観点から、これまでは主にメタルハライドランプ 一般照明と同様に、光の質、イメージはもちろん、性 が使用され、まだ既存機器に対抗するまでのパフォー 能、 品質にいたる、すべてにこだわりをもち開発に着手、 マンスを発揮するにいたらないLED光源搭載機器は、 真の意味で既存光源の代替といえるLEDスポットライ スポット的な使用にとどまっていた。 ト「Cool Spot LED」を完成させたので、以下にその技 しかし、2009年にMa r t i n 社からリリースされた 術と併せ、製品展開の一例として紹介する。 「MAC301 WASH」 というLEDムービングライト(ウ オッシュライト)が、これまでの概念を払拭するまでの 性能を発揮、この頃から徐々に、各社がLED製品を市場 投入するようになった。 特に国内では、省エネ法の改正、地球温暖化対策とし てのCO2排出抑制といった動きに加え、2011年3月11日 (1)製品コンセプト これまで、ホテルやホール、施設のバンケット・ウエ ディング会場、店舗、ショールーム、商業施設、博物館な どの多くは、演出照明用として既存光源搭載のスポット ライトを使用している。 の東日本大震災が影響し、演出照明における省エネ、節 最近では、スポットライトについても、節電、省エネに 電の切り札となるLED需要が一気に加速、性能面で優 貢献すべくLEDの普及がすすんでいるものの、ユーザ れた製品が販売を伸ばした。 が求める光の質や色、性能、サイズを備えた製品にはい たっていないという声がある。 (2)LEDのメリット 省エネ、節電はもちろんのこと、カラーミックスが簡 単である、光に熱をほとんど含まないので施設の空調 そこで、「被照射物の色彩を、鮮明かつ忠実に再現す る」ことをコンセプトに、平均演色評価数の高いLEDス ポットライト開発をはじめた。 使用をセーブできるといったメリットは、これまでの既 存光源を使用した機器にはなく、その可能性を拓くもの といえる。 (2)Cool Spot LED 「Cool Spot LED」は、平均演色評価数(Ra)97を達成 光の質や、 明るさがまだ足りない、 といった課題は残 した 自然光LED*1 スポットライトで、肌、衣服、花、食 されているものの、LED技術が日進月歩で進むなか、メ 品をはじめとする被照射物の色彩を、鮮明かつ忠実に リットがそれらを補ってあまりあるものになる時代は 再現することができる。 すぐそこまできている。 (3) 今後の動向 今後については、①出力アップ、②演色性の向上、③ 基板の熱処理、④低コスト化などが、さらなる普及のカ ギを握っているといえる。 これらはチップをはじめとする、今後のLEDロード マップを見るかぎり、クリアできるものと考えられるこ とから、輝度の高さ、色の鮮やかさ、豊富さ、幅の広い、き めの細かい演出効果を求めるこの業界においても、 LED化は抗いがたい時代の趨勢であり、当社は、ハー ド、 演出、ソフト、コンテンツを一貫して提供できるトー タルソリューションプロバイダとしての強みを活かし、 映像照明ビジネスを深耕させていく。 3. 製品展開 当社では昨年、演出照明用スポットライトのLED化を、 図2. Cool Spot LED L E D 光源 81 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED 太陽光 自然光LEDとは、太陽光のように自然な色を再現す 自然光LED ることができるLEDで、フリップチップ実装した紫LED と、赤、緑、青の蛍光体を組み合わせ、さらに封止方法を 白色LED 最適化したことで発光効率を向上させている。また、 シ ミュレーションを重ねてパッケージの材料特性および、 リフレクタ形状を最適化することで、光の取り出し効率 を高めた。この結果、色の分離、バラツキを抑えるととも に、 極めて高い演色性能と色の再現性、発光色の均一性 を発揮することができる。 この自然光LEDを18個、いかに基板上で最適配置さ せ、 併せて調光対応、電源マッチングを図り、スポットラ イトとして完成させるために、これまで培ってきた当社 400 500 600 700 図4. 光源ごとの分光分布比較 ● 自然光LEDの演色評価数(4000K 実測値) の技術を惜しみなく投入したことで、きれいな配光を実 100 現、人の肌、衣服、服飾品、食品、生花、展示物など、それ 80 ぞれがもつ独特な色彩を鮮明かつ忠実に再現する。 60 40 (3)主な特長 ●一般的なハロゲンランプ(250W)を使用したスポット ライト相当の明るさ*2 20 0 27Wの消費電力ながら、距離1mでの中心照度2300lx の明るさを実現した。 ● 一般的な白色LEDの演色評価数(5000K 実測値) ●設置場所や被照射物へのダメージを低減 100 光に赤外線(熱線)をほとんど含まないというLEDの 特性を活かし、天井高の低いホールや小規模宴会場に おいては、照明による使用場所の温度上昇を抑え、熱対 80 60 策に威力を発揮する。また、被照射物の色あせや変色の 40 原因となる波長の紫外線も同様である。 20 ●導入、設置の簡易化を実現 0 一般的な2線式位相制御方式の調光器による調光制 御が可能で、既存の調光回路に接続したライティングダ 図5. 自然光LEDと一般白色LEDの演色評価数 ビ ー ム 角 24° (1/2 ビーム角) 1m 2m 3m 4m CoolSpotLED 2300 575 256 144 一般的な250W ハロゲン投光器 2400 600 300 150 (単位:lx) 図3. 中心照度比較 82 LED光 源 波長 [nm] 光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集号第一回〉 2012年3月発行 照明用LED クトにて使用できる設計になっていることから導入が 簡単、加えて手軽に設置することができる。 4. 今後の方向性 LED演出照明機器についても、今後、需要がさらに高 まると考えられることから、最新のLEDと、これまで積 み重ねてきた独自の技術を組み合わせ、高出力、高演色 性、既存光源のもつ光の質やイメージ再現といった付 加価値の高い製品開発を、引き続き進めていく。 また、特にユーザから要望の多い、フォロースポット ライトのLED化も進めていく。 *1:自然光LEDは、シーシーエス株式会社のオリジナルLED *2:当社調べ 図6. 照射イメージ L E D 光源 83
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