第 95 号 2014 年 11 ⽉ IFRS Developments 合同移⾏リソース・グループが収益 認識新基準に関する論点を議論 重要ポイント • TRG メンバーは収益認識新基準に関する 5 つの実務適⽤上の論点について議論した。 しかしそのうちの 2 つの論点、知的財産のライセンス、及び財⼜はサービスが契約 の観点から区別できるか否かについては⾒解が分かれた。 • 両審議会は TRG の議論を参考に、すべての企業が IFRS 第 15 号を⾸尾⼀貫して適 ⽤できるよう新たな適⽤ガイダンスが必要であるかどうかを判断することになる。 • 両審議会は、TRG が 2014 年 7 ⽉に議論した最初の 4 つの論点に関するアップデ ートの中で、無形の財やサービスを含む取決めにおいて、⾃らが本⼈か代理⼈かを 判断する際の適⽤ガイダンスを改善することができるかどうか、スタッフが調査を 進めていると述べた。 • 知的財産のライセンス、 及び財⼜はサービスが 契約の観点から区別で きるか否かの判断に関 し、⾒解が分かれる 概要 2014 年 10 ⽉に開催された収益認識新基準に関する合同移⾏リソース・グループ (TRG)の第 2 回⽬の会議で、TRG メンバーは IFRS 第 15 号「顧客との契約から⽣ じる収益」に関し、関係者が提起した収益認識新基準に関する 5 つの実務適⽤上の 論点について議論した。そのうちの 2 つの論点、すなわち知的財産(IP)のライセ ンス、及び財⼜はサービスが契約の観点から区別できるか否かの判断については、 メンバーの⾒解はさまざま⼊り混じったものとなった。 TRG はまた、どのような場合に追加の財⼜はサービスに対する顧客の選択権は「重 要な権利」を表すのか、契約資産と契約負債の表⽰、さらには強制可能な権利と契 約の解約についても議論した。国際会計基準審議会(IASB)と⽶国財務会計審議会 (FASB)(以下、両審議会)は TRG の議論を参考に、関係者が提起した実務適⽤上の 論点に関し、さらなる適⽤ガイダンスが必要であるかどうかを判断することになる。 当該会議において、ジェームズ・クローカーFASB 副議⻑は、FASB は US GAAP に 基づく作成者に対して、収益認識新基準の発効⽇を延期することを提案すべきか否 かを検討しており、この点についてさまざまな利害関係者と議論する予定であると 述べた。同副議⻑は、FASB は 2015 年第 2 四半期の早い段階で発効⽇の延期に関 する提案を⾏うかどうかを決定することになると考えている。 IASB は、IFRS に基づく作成者に対する新基準の発効⽇に関し、何らコメントして いない。しかし、FASB はアウトリーチの結果を IASB と共有する予定である。 議論の中⼼となった論点 知的財産のライセンス TRG は知的財産のライセンスに関連するいくつかの論点について議論した。IFRS 第 15 号には、知的財産のライセンスが⼀時点で、⼜は⼀定期間にわたり顧客に移転され るのかを判断するための要件が定められている。TRG はまず、収益認識の時期に影響 を及ぼす当該適⽤ガイダンスは区別できるライセンスにのみ適⽤されるのか、あるい はライセンスが他の財⼜はサービスと⼀体として処理される(すなわち、ライセンス が独⽴した履⾏義務ではない)場合にも適⽤されるのかについて議論した。TRG メン バーは、両審議会が当該新基準の結論の根拠で、ライセンスが他の財⼜はサービスと の組合せにおいて「主要な⼜は⼤部分を占める要素」である場合には、当該ライセン スに関する要件を適⽤することは許容されると述べられていることに着⽬した。しか し TRG メンバーは、ライセンスが主要な⼜は⼤部分を占める要素であることが明らか でない場合、当該要件を適⽤すべきか否かは明確ではないとコメントした。 TRG はまた、(ライセンス契約の⼀部ではない)企業の活動が「顧客が権利を有する 知的財産に著しい影響を及ぼす1」のかどうかを検討することを求める規定の意味につ いても議論した。企業がライセンスから⽣じる収益は⼀定期間にわたり認識されると 結論付けるには、これらの活動は知的財産の形態及び(⼜は)機能を変化させるもの でなければならないのか、あるいは知的財産の価値のみを変化させるものであれば良 いのであろうか? この区別は重要である。というのも、知的財産に重要な影響を与える活動を企業が実 施するかどうかが、知的財産のライセンスが⼀時点(すなわち、ライセンスの使⽤権)、 ⼜は⼀定期間にわたり(すなわち、ライセンスへのアクセス権)認識されるのかを判 断する上で⾮常に重要となるからである。当該判断をどのように⾏うべきかに関する TRG メンバーの⾒解はさまざま⼊り混じったものであった。 TRG メンバーは、IFRS 第 15 号には明確なガイダンスが設けられていないため、現在 の IFRS 第 15 号の⽂⾔とその設例に従ったとしても、同⼀の事実と状況を評価した場 合、⼗⼈⼗⾊の異なる結論が導きだされる可能性があると述べた。しかし両審議会の ⼀部のメンバーは、企業の活動から⽣じる知的財産の価値の変動を評価することは、 両審議会のもともとの意図に合致する考え⽅であると述べた。 TRG はまた、契約上、その使⽤の⽅法に関し⼀定の制限が課せられるライセンスはど のように評価されるべきかについても議論した。たとえば、あるメディア・エンター テインメント企業が、4 年間にわたり特定の休⽇向けの特番を放映する権利を顧客に ライセンスするが、当該番組はその特定の休⽇にのみ放映が認められるとする。 TRG メンバーは、そうした取決めが以下のいずれを表すのかを判断することができな かった。 • 4 年間のライセンス期間にわたり認識される単⼀の履⾏義務 • ライセンスの⽀配が顧客に移転された⼀時点で充⾜される単⼀の履⾏義務 • ライセンスされた番組が放映された時点でそれぞれが認識される 4 つの独⽴した履 ⾏義務 1 2 IFRS 15.B57 合同移⾏リソース・グループが収益認識新基準に関する論点を議論 弊社のコメント TRG はこれまで 2 度にわたり知的財産のライセンスに係る収益認識について議論し てきた。当該論点については常に意⾒が分かれる問題が頻出している以上、関係者 が IFRS 第 15 号の規定を⾸尾⼀貫して適⽤できるように、両審議会が新たな適⽤ガ イダンスを提供することを弊社は期待している。 契約の観点からの区別可能性 IFRS 第 15 号は、財⼜はサービス(あるいは財及びサービスの組合せ)が区別できる か否かを判断するために 2 段階による評価プロセスを定めている。まず 1 つ⽬のステ ップでは、財⼜はサービスがそもそも区別されうるのか、次に 2 つ⽬のステップでは、 財⼜はサービスが契約の観点から⾒た場合に区別できるのか(すなわち、契約におけ る他の約束から区分可能か)を判断する。IFRS 第 15 号では、2 つ⽬のステップにお ける企業の判断に資するように、3 つの指標が提供されている。TRG での議論の多く は、「財⼜はサービスが、契約に含まれる他の財⼜はサービスに著しく依存していな い、⼜は密接な相互関係がない2」という 3 番⽬の指標をどのように解釈すべきかに関 するものであった。 TRG は、財⼜はサービスが契約の観点から区別できるかどうかを判断する際に、個別 の事実関係(たとえば、複雑かつ/⼜はカスタマイズされたデザイン、学習曲線に関す るコスト)が決定要因に成り得るかについて議論した。TRG のメンバーは、それぞれ の要因のうち、個別にどれをどの程度重んじるべきかについてはメンバー間で意⾒の ばらつきが⾒られたものの、すべての事実と状況を考慮しなければならないという点 では全員の意⾒が⼀致した。 TRG メンバーは、当該規定がさらに明確化されない限り、実務におけるばらつきは避 けられないであろうとコメントした。 議論されたその他の論点 追加的な財⼜はサービスに対する顧客の選択権 TRG は、どのような場合に追加的な財⼜はサービスに対する顧客の選択権(たとえば、 将来の販売に向けたインセンティブ、ロイヤルティ・プログラム、更新オプションな ど)が履⾏義務を⽣じさせることになる「重要な権利」を表すのかを判断するための 規定について議論した。そこでは、「重要な権利」についての評価は現在の取引に関 してのみ⾏われるのか、あるいは同⼀の顧客との過去及び将来の取引に関しても考慮 するのかが議論された。TRG メンバーは、顧客は(ロイヤルティ・プログラムなどの) プログラムにおいて(ポイントなどの)インセンティブを貯めることができるという 事実も、こうした選択権が「重要な権利」を表すのかどうかを判断する上で考慮しな ければならないとコメントした。TRG は、当該評価は現在の取引に関してのみ⾏われ るべきではないと考えている。さらに TRG メンバーは、当該評価にあたり定性的及び 定量的要因の両⽅を検討しなければならないということに合意した。 2 IFRS 15.29(c) 合同移⾏リソース・グループが収益認識新基準に関する論点を議論 3 契約資産及び契約負債 TRG メンバーの意⾒は、契約資産と契約負債は履⾏義務レベルではなく、契約レベル で判断すべきであるという点で⼀致した。このことは、企業が契約に含まれる各履⾏ 義務ごとに資産⼜は負債を個別に認識するのではなく、それらを単⼀の契約資産⼜は 契約負債に集約しなければならないことを意味する。 TRG メンバーはまた、IFRS 第 15 号に従って同⼀の顧客(⼜は当該顧客の関連当事者) との複数の契約を結合しなければならない場合、これら契約に係る契約資産⼜は契約 負債もまとめる(すなわち純額表⽰)ことになるという点で合意した。しかし、TRG メンバーは、すでに IFRS 第 15 号への対応を進めている⼀部の企業では当該分析を⾏ うことは実務上困難である可能性があることを認識している。というのも、そうした 企業のシステムでは通常、IFRS 第 15 号の認識及び測定に関する規定に準拠するため に、履⾏義務レベルでデータが収集されているからである。 TRG はまた、契約資産及び契約負債を、同じ契約に関係する他の貸借対照表項⽬(た とえば売掛⾦)と相殺するのか、及び(⼜は)関連性のない契約から⽣じる契約資産 及び契約負債と相殺するのかについても議論した。TRG メンバーは、IFRS 第 15 号は 相殺に関する規定は定めておらず、企業は他の IFRS の規定に従い相殺することが適切 かどうかを判断する必要があるという点に同意した。 契約の強制可能性及び解約条項 TRG は、契約期間を決定する際に契約に含まれる解約条項をどのように評価すべきか について議論した。たとえば、契約期間が明⽰されている契約が、いずれの当事者か らもいつでも無償で解約できるとしたら、この取決めは毎⽉更新される⽉次の契約と して扱われることになるのであろうか。また、契約に解約違約⾦の定めがある場合、 その契約期間は契約上明記されている全期間と等しくなる(⼜は解約違約⾦の⽀払い を⾏う必要がなくなるまでの期間)と考えるべきかについても議論された。 最終的に、TRG メンバーが、この論点に関するスタッフの論点整理ペーパーに含まれ る設例で⽰された結論に反対することはなかった。しかしある TRG メンバーは、解約 違約⾦の存在が契約期間の決定的な指標であるとみなされるためには実態を伴ってい る必要があるとコメントした。別の TRG メンバーは、特に⽉次のサービス契約ととも に設備を販売する企業など、⼀部の企業にとっては契約期間の判断は難しくなるとコ メントした。 4 合同移⾏リソース・グループが収益認識新基準に関する論点を議論 2014 年 7 ⽉に TRG で議論された論点に関するアップデート 両審議会はスタッフに対し、無形の財やサービスを含む取決めに関し、⾃らが本⼈か 代理⼈かを判断する際の適⽤ガイダンスを改善することができるかどうかを調査する ように指⽰した。なお、減損テストに関する両審議会の意図を明確化するための修正 の可能性を除き、TRG が以前に議論した他の 2 つの論点(すなわち、顧客に請求され る⾦額の総額⼜は純額のいずれを収益とするのか、及び資産化された契約コストの減 損テスト)については、今後特段の対応は予定されていない。 しかし、顧客に請求される⾦額の総額⼜は純額のいずれを収益として認識すべきかに 関する議論をまとめるに当たって、両審議会はTRG メンバーが指摘した点に⾔及した。 具体的には、収益認識新基準を適⽤するに際し、企業は、税⾦が企業に課せられるの か、あるいは顧客に課せられるのかを判断するために、企業が営業活動を⾏っている 国や地域において顧客に請求される税⾦の性質を検討する必要があるという TRG メン バーの指摘に着⽬したのである。現⾏ US GAAP では、売上及び顧客から回収する税⾦ の表⽰に関し会計⽅針の選択が認められている。その結果、⼀部の US GAAP に基づく 作成者にとって、収益認識新基準の適⽤により、多くの新たな作業が必要となる可能 性がある。ある TRG メンバーは、この規定の適⽤が企業にとって容易となるように、 現⾏ US GAAP と同様の規定を追加することを両審議会が検討する可能性について質問 した。 両審議会は、10 ⽉に開催される TRG の会議におけるその他のライセンスに係る論点 についての議論を考慮後に、知的財産のライセンスから⽣じる売上及び使⽤に基づき 算定されるロイヤルティに関し、アップデートを提供する予定である。 次のステップ 両審議会は、2015 年 1 ⽉ 26 ⽇に開催される次回の TRG 会議より前に、今回の会議 で議論された 5 つの新たな論点について、検討状況に関するアップデートを報告する 予定である。当該アップデートにおいて、それぞれの論点を再検討するか否かの決定 も⽰される。IASB ⼜は FASB のウェブサイトでは、これまでに提出された論点の記録 を閲覧するとともに、TRG が議論すべき論点を提出することができる。 合同移⾏リソース・グループが収益認識新基準に関する論点を議論 5 EY|Assurance| Tax |Transactions |Advisory EYについて EYは、アシュアランス、税務、トランザ クションおよびアドバイザリーなどの分 野における世界的なリーダーです。私た ちの深い洞察と⾼品質なサービスは、世 界中の資本市場や経済活動に信頼をもた らします。私たちはさまざまなステーク ホルダーの期待に応えるチームを率いる リーダーを⽣み出していきます。そうす ることで、構成員、クライアント、そし て地域社会のために、より良い社会の構 築に貢献します。 EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グロ ーバル・リミテッドのグローバル・ネットワ ークであり、単体、もしくは複数のメンバー ファームを指し、各メンバーファームは法的 に独⽴した組織です。アーンスト・アンド・ ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の 保証有限責任会社であり、顧客サービスは提 供していません。詳しくは、ey.comをご覧く ださい。 新⽇本有限責任監査法⼈について 新⽇本有限責任監査法⼈は、EYメンバー ファームです。全国に拠点を持つ⽇本最 ⼤級の監査法⼈業界のリーダーです。監 査および保証業務をはじめ、各種財務ア ドバイザリーの分野で⾼品質なサービス を提供しています。EYグローバル・ネッ トワークを通じ、⽇本を取り巻く経済活 動の基盤に信頼をもたらし、より良い社 会の構築に貢献します。詳しくは、 www.shinnihon.or.jp をご覧ください。 EYのIFRS(国際財務報告基準) グループについて 国際財務報告基準(IFRS)への移⾏は、 財務報告における唯⼀最も重要な取り組 みであり、その影響は会計をはるかに超 え、財務報告の⽅法だけでなく、企業が 下すすべての重要な判断にも及びます。 私たちは、クライアントによりよいサー ビスを提供するため、世界的なリソース であるEYの構成員とナレッジの精錬に尽 ⼒しています。さらに、さまざまな業種 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