「井上円了哲学塾を受講して」 塾生登録番号 7700160005 東洋大学法学部法律学科 杉山 瑛菜 まず、私がこの井上円了塾に入塾しようと思ったきっかけは、自ら主体的に行動・発言 できるようになりたいと思ったことからだ。 そもそも、なぜ今まで思うように行動・発言できなかったのか考えると、意見を述べる ということにあたって、ディベートの場の発言が、個々人の人格を傷つけると考えていた からだ。つまり、話し合いというのは常に衝突の連続であると思い、また、それを恐れて いた。しかし、そうではないと知ったときから、その恐怖を崩す機会がほしいと考えてい た。そんなとき出会ったのがこの円了塾だ。 そして、この塾では円了先生の学んだ哲学に限らず、幅広い分野を取り扱っていること にも魅力を感じた。大学は専門分野にたくさんの時間を割くため、どうしても視野が狭く なりがちになると考えていたため、広い視野やもっと多くの物事を考えたいという単純な 好奇心もあり、円了塾に応募した。 まず、毎回の授業に関して、小グループで意見をまとめたり、議論したりするのは、自 分の気づかないところや相手の目の付け所などが知れてとても有意義な時間であった。そ れと同時に、毎回自分の視野の狭さや知識の少なさを実感する場となった。また、私は好 奇心があるものの、探求の仕方に落ち度があることため、学習しても身につくのが遅いと いう原因を理解することが出来た。 ここからは、各セクションで学んだことを述べる。 「哲学教育分野」でのディスカッションでは、井上円了先生の考えた哲学やその経緯を学 び、そこから円了先生の生き方や思考を分析した。そこから考えた私の円了先生像は、人 生の向上を目指し特定の何かになろうとしたのではなく、ただ自ら疑問に思い、感じたこ とを問いただしていくことが彼の生きる意味と価値を生み出していたというものであった。 具体的には迷信打破のための妖怪研究会設立や欧米視察など、ただ 1 つの道をつき進むだ けではなく、広い視野を持ちながら自分がしたいように学び、それらを生かすことを重視 していた。基軸を持つことは自分のために、しかしそれは、誰かのためにもなる行動であ るというわけであろうか。また、宗教の必要性として「一国の独立を維持するのに最も必 要なもの」は『言語』と『歴史』と『宗教』であるとし、日本には様々な宗教があり、統 一ではないが、日本人としての精神や思想が日本を永く日本国にしていると考えていたこ とから、統一でないことが魅力であると肯定的に捉えていた。 「プレゼンテーション、ディスカッション能力の向上」では、議論を通して自分のあり 方を考えさせられた。第 4 回では、プレゼン内容とそこからの派生を複数あげ、それらを 順に並べ、関連付けることで、説得力を持たせる発表の構造を作った。重点を置くべき点 は「①伝えたいことは明確にする」 「②論証となる素材収集が十分である」「③適切な分量 配分」 「④コース(発表する順)デザインがしっかりしている」「⑤言うべきことが言えた か」 「⑥相手に十分伝わったか」の 6 点に注目して問題解決に取り組んだ。 第 5 回では、リーダーシップ、リーダーとは何かについて考えた。私が考えるリーダー シップは『心の広さ』、 『母親のように親しみやすさ』、『先読みと集約(判断力と決断力)』 を具えている人物が該当し、また、リーダーとしての存在を発揮するのは『短所と長所を 見抜く』、『コミュニケーション能力』、『多角的情報』、『傾聴能力』の優れた人物であると 思われる。以上のことを踏まえつつ、交渉においては、合意に達するために行う相互コミ ュニケーション(互いに利益がなければ駄目)の場を最低条件で収めようとせず、もし困 難な問題が生じた場合はすぐさま解決しようとするのではなく、後回しにすることも選択 肢の中に入れておくことが大切である。これを実現するには、自由かつ積極的に意見が出 せる場をつくることが必須であろう。この環境をつくるのもまた、リーダーシップである 17 と考えられる。 「世界、特にアジアと連帯するという意識を持つこと」では、3 回の講義の内 2 回、学外 講師の方からお話をうかがった。仕事内容をはじめ、その仕事を進めるにあたり意識して いることや取り組み方を学ぶことで、講師の方々の生き方を学習した。そこから、人生の さまざまな道を見た。生き方が誰かとかぶることはないと改めて実感させられ、自分に自 信を持つことが少し出来た。それは、否定しながら生きるのはつらいと実感したからだ。 国際社会への対応力の向上は社会の現状やその対応例を見ていった。面白かったのは、 第 11 回のジムの支配人候補者 4 人のうち誰を採用するかを話し合った回だ。特にグループ によって採用した人物が異なったことに驚いた。それは、どの班も自分と同じ人物を採用 すると思っていたからだ。何に重点を置くか、何を選考基準にするか、どのように短所を フォローするかなど、各班の意見が興味深かった。また、自分の考えをこの回が一番明確 にもてたことやどうしてこの人物を採用したかなどの理由がはっきりと発言できたことが 印象に残っている。 (ここでの発言とは誰かの意見に対抗したり、賛成したりするのをファ シリテーターから質問を投げかけられてから答えたり、自分ばかりが話すのではなく、か つ、会話を途中で切らない程度の相槌をさす。) 私がここでこの回にふれたのにはもう 1 つ理由があるからだ。それは、私が東京国税局 での説明会に参加したとき、各テーブルで課題を解決するグループワークがあった。私の グループは男女混合、年齢も幅広く、何より、私がまったく慣れなれていない状況の初対 面の人たちと話し合うグループワークであった。やはり、緊張はしたが、円了塾で学んだ ことを活かしたいと思い、思い切って『何か気づいた点はありますか?』と発言してみた。 一人ひとり尋ねると自分なりの意見を発言してくれたものの、それに反応するのが私だけ で活発な話し合いを進めることが出来なかった。私の質問の仕方が悪かったのか、皆さん が話し合いの意味を理解していなかったのかはわからないが、私の中で、工夫できるとこ ろはあったと思う。たとえば、いきなり質問ではなく、軽く自己紹介をし、他人から知り 合い程度の関係になればもう少し話しやすかったのではないかと思う。加えて、ファシリ テーターとなる人物はまず、自分の意見を持ってなければならないと感じた。実を言うと、 この話し合いにおいて、私は自分の意見が見つかっていなかった。しかしそのような状況 で始めてしまったがために、うまくコミュニケーションが取れなかったのだと感じた。な ぜなら、相手の意見を聞くには、まず自分の意見を言うべきだとこれまでの円了塾の学習 を振り返って思い直したからだ。 以上のことから、私は話し合いという概念を自分の中で処理することが出来、また、話 し合いの方法や進め方を学習することが出来た一方、まだ議論の場に立ち合う経験も不足 しているため、国税局での経験から反省点を見直していきたい。 円了塾での学習で、回数を重ねるごとに、私は自分を高めていくためにも積極的に物事 にチャレンジしようという思考になった。さらに、幅広い分野を学習したことで、相手の 意見を素直に受け入れようとする気持ちを持つことが出来た。ここでの経験は私を大きく 成長させたであろう。 以上、 18
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