ベルカセム タテム 無秩序の調和 ベルカセム タテム

ベルカセム タテム
無秩序の調和
ベルカセム タテムの“筆跡”は、すぐに見分けがつく。貪欲で飽きることをしら
ないその画法は、見る者を寛容そのものへと誘う。
ベルベル出身の彼は、日常と人、その不完全さから、インスピレーションを得、
絵画と彫刻に再現する。「人は頭の中が壊れている。毎日のように、深い亀裂や
傷を負って生きている。苦痛や不安が、笑いのなかに一時の棲家を見つけても、
ふとしたことに心の痛みは疼く。ささいなこと、とてつもない苦しみで人はでき
ている。一瞬ごとに再構築し、人は他人との絆を強くする。たとえそれが不完全
だとしても再構築されることで、生きていける。日常に根ざしていたいという思
いから、つかのまの至福の美が生まれる。私はその瞬間をとらえたい。逃げる瞬
間を不動にする...このパラドックスが私の創造性を苦しめつつ、適切の極限
まで想像力をかきたてる。」 ベルカセム タテムは、このぎりぎりのところで
自らの無謀と戯れる。よけいな一本の線、折れた腕が、形をかえ、作品を意味あ
るものにする。「間違いを直し、手を加えたりしない。インスピレーションにな
るので、そのまま作品のなかで審美的かつバランスよく使う。」
アーティストの人となりは、立派な履歴書や無味乾燥な資料よりも作品に表われ
るという。ベルカセム タテムは、多彩で豊かな経歴の持ち主だ。1948年、ア
ルジェリアの陶器と織物職人の家に生まれる。若くしてフランスに渡り、パリに
拠点を構える。
アーティストの希望で、作品は少数に限られている。これまでパリ(Galerie
Causans・セーヌ通り、Espace Culturel Zénobie,
Atelier Gustave, ACB,
Espace Culturel du Théâtre de la Passementerie…など)だけでなく、フランス
国内(アヴィニョン、レ・ザンデリ、トゥルーズ)で催した展覧会では、毎回幅
広い客層から、絶対的な称賛を得ている。2003年には、フランス財団と協賛、
アルジェリア地震被災者のための募金に協力した。その際、アーティストのオリ
ジナルリトグラフ4点がArt Estampesより制作された。
ファビエンヌ ドゥラクロワ