解答PDFダウンロード

名古屋大学(前期)【地理】解答例
問題Ⅰ
A
問1
旧河道。地形図内の一帯は、信濃川によって形成された氾濫原であり、「嘉木」や「天
野」にある集落は、旧河道の自然堤防上に形成されたものだと推察できる。氾濫原では
緩傾斜により河川が蛇行するため、Xの地点の河道が取り残され現在の河道が形成され
たものと考えられる。
問2
Yの集落は氾濫原の後背湿地である0m以下の低地部で浸水しやすい。一方、Z地点
は 1.6 メートルの水準点が見られる自然堤防上に形成された集落である。以上の点から、
Zの集落の方がYの集落よりも想定される浸水の深さは浅いと考えられる。
問3 ②
B
問4
高緯度ほど地球の公転によって夏と冬の太陽の照射角度の差が大きくなり、地表面で
の受熱量に差が生じるため。
問5
(dとe)
大陸の東岸にあるdは、季節風の影響で夏季は海洋の風下、冬季は大陸の風下に位置
することから、年較差は大きくなる。一方、大陸の西岸に位置するeは年間を通じて吹
き込む偏西風の影響を受け、年較差は小さくなる。
(hとg)
hは隔海度が高く比熱の大きな海洋の影響を受けにくい内陸に位置することから年較
差が大きい。一方、大陸の西岸に位置するgは隔海度が低く、海洋の影響を受けやすい
ので年較差が小さい。
問6 a-クアラルンプール
b-メキシコシティ
c-カイロ
d-東京
e-サンフランシスコ
f-モントリオール
g-ロンドン
h-イルクーツク
問7 エジプト、イギリス(順不同)
問題Ⅱ
問1 A-ウ
B-エ
C-サ
D-ケ
E-ア
問2
国の食糧管理会計の赤字と在庫米の減少を目的に米の生産量を抑制した政策で、稲作
農家に対して奨励金を出して水田を休耕にすることや、麦や豆、野菜など他の作物の作
付けを勧める転作を奨励した。さらに新規の開田禁止や政府買入限度の設定、自主流通
米制度の導入を行った。
問3
a
国内で自給可能であった米、野菜、魚介類を中心とした食生活から、パンや肉類など
を中心とする西洋風の食生活に転換したことで、4大穀物のうちの米の消費量が低下し、
パンの原料である小麦、家畜の飼料であるトウモロコシの輸入が増加したことが要因の
1つである。また、供給熱量ベースの総合食料自給率では畜産において飼料が国内産で
あれば製品も国内産となるため、その飼料が輸入で賄われていることも低下の要因とし
て挙げられる。
b
輸入量や食料価格が輸入相手国の天候や社会情勢などに左右され、食料供給が不安定
になる恐れがある。また、食料の輸入量に輸送距離を乗じて算出されるフードマイレー
ジの考え方では、食料の半分以上を輸入に頼る日本は世界的にも突出しており、輸送に
よる燃料の大量消費で環境への負荷が大きくなる。そこで、地域で生産された作物を地
域で消費するという地産地消の促進や農業生産基盤の強化が、フードマイレージ値を低
減させるものとして期待されている。
c
A アメリカ合衆国
B タイ
C カナダ
D 中国
E オーストラリア
問4 A-エ
B-コ
C-ア
D-カ
E-オ
問題Ⅲ
問1
(1)
公式な統計の職業分類に存在しない部門の経済活動のことで、露天商、靴磨き、路上
の職人や修理業者、廃品回収業者、日雇い労働者などがある。
(2)
電気や上下水道などのインフラが未整備の場所が多く、生活環境は劣悪である。また、
就業機会が十分でないため、ホームレスやストリートチルドレンが多く、密輸や麻薬取
引などの犯罪の温床になっている。
問2
(1) ドックランズ
(2)
再開発によって建設された高層住宅などに比較的所得の高い層の人々が流入し、市街
地が高級化する現象のこと。
(3)
ラ=デファンス地区は旧地区の建物群の老朽化とオフィスや商業地、住宅の需要の高
まりを受けて一掃型の再開発がなされており、超高層ビルが林立する現代的な景観を持
つ。一方、パリ都心部のマレ地区は歴史的・文化的な建造物の形態を残す保全型の再開
発がなされており、景観保護が図られている。
(4)
早くから都市化が進んだ先進国の大都市では、優れた環境や広い土地を求めて高所得
者や若年層が郊外に流出し、都心部では、人口の減少による税収の減少や高齢化、建物
の老朽化、貧困層・移民・外国人労働者の流入による治安の悪化などのインナーシティ
問題が見られるようになったから。
問3
(1) 6
(2)
一国の中で、人口が突出して多く、第 2 位の都市を大きく引き話している首位の都市
のこと。発展途上国の首都に見られることが多い。
(3)
a-サンティアゴ
b-ソウル
c-ジャカルタ
d-パリ
問題Ⅳ
問1
(1)
ハイサーグラフ a―E
特徴-日射量が大きいことから気温の日較差が大きいが、標高が上がるにつれて気温
が逓減するため、気温の年較差が小さい常春の気候を示す。
(2)
ハイサーグラフ c-A
f-C
理由-cは、亜熱帯高圧帯からの下降気流の影響を受けるとともに、沖合を流れる寒
流によって空気が冷やされ、上昇気流が生じにくいことから乾燥した気候となる。
fは、海から吹いてくる偏西風に対して、アンデス山脈の風下側に位置し、風上
側で雨を降らせた後の乾いた風が山を越えて吹くことから乾燥した気候となる。
(3)
ハイサーグラフ d-D
e-B
農業の特徴-dは地中海性気候を示し、夏に乾燥するため耐乾性の高いブドウの栽培
が盛んである。eは温暖湿潤気候を示し、肥沃な土壌と降水に恵まれるこ
とからトウモロコシなどを栽培する混合農業が見られる。
問2
Xは、広大な平野の中を流れるアマゾン川の河口部で、土砂の運搬量が比較的少ない
ことから、河口部が沈水してラッパ状の入り江であるエスチュアリーとなっている。Y
は、かつて氷河が見られた地域で、氷食により形成されたU字谷に海水が浸入してでき
た入り江であるフィヨルドとなっている。
問3
撮影年順 M→L→N
1989 年の画像Lでは幹線道路から縞状に進入路が形成され伐採が進んだ。これはダ
ム造成や鉱物資源採掘による乱開発が原因として挙げられる。また 2008 年の画像Nで
は更なる熱帯林の減少が進んだ。アメリカ合衆国などの穀物メジャーなどのアグリビジ
ネス企業がこの地に進出し、肉牛飼育や大豆栽培を大規模に行っていることや、バイオ
燃料への需要の高まりからのトウモロコシ農場の造成が原因として挙げられる。
問4
ブラジルでは、コーヒーや鉄鉱石に頼るモノカルチャー経済からの脱却と経済発展を
目指し、外国資本を積極的に導入して工業化と農産物の多品種化を進めたことで、現在
は自動車や航空機など工業製品および植物性油脂の輸出国となった。しかし、借り入れ
資金の返済計画を考慮せずに経済政策が行われてきたために対外債務が累積し、財政に
大きな影響を与えている。