熱力学基礎 Thermodynamics 2016 (第11回) 12月26日(月) メールアドレス:kozka@.kumamoto-u.ac.jp HPアドレス : http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/ process/ Thermo/home.html 多相平衡と相律 応用 G=H-TS これまでは純物質を対象にしていたが,マテリアル工学の分野では対象は合金であったり,不純物が混 ざったりと成分量が変数として加わる場合が多い。示強性変数の温度と圧力を一定という条件ではGの大 小比較で問題ないが,成分量(濃度)が変化する場合,等温,等圧でも濃度変化(例えばモル濃度変 化)によるエネルギーミニマム(極小値)を考える必要がある。 π相,成分1,2,•, i, •,m •••••• p相,成分1,2,•, i, •,m •••••• β相,成分1,2,•, i, •,m α相,成分1,2,•, i, •,m 理解を容易にするために,2つ € の成分,2つの相で考える。 H S Q. W 不可逆 1st 2nd 気相,液相等の相が複数存在していて,それぞれの相が複数の成分で構 成されている(一般的に相の数をπ,成分の数をmとする) G = f (T,P,n1 ,n 2 ,n i ,n m ) m dG = −SdT + VdP + ∑ µi dn i 全微分 各相のGibbsの自由エネルギーGは温度,圧力, さらに各成分量の関数として表される。 ∂G µi = ∂n i T ,P,n1 化学ポテンシャル: 等温,等圧で m すべての相で 物質量(モル数)が変化するこ dG = dG = µi dn i € とによる自由エネルギーの i=1 変化を示す微分係数 π m 第二法則を適用 dG < 0 α 1 α 1 α α ∑ β € 平衡状態すなわち可逆的な状態であれば, dG = β β β µ dn + µ2 dn 2 + µ1 dn1 + µ2 dn 2 < 0 α 1 β α 1 α 2 i=1 m π ∑∑µ p i dn i p p=1 i=1 ∑∑µ p i p dn i = 0 p=1 i=1 α 2 β €(µ − µ1 )dn + (µ €− µ2 )dn < 0 平衡状態(可逆状態) dG = 0 2つの相のみで系としては閉じていると€ α β α β α β α β dn1 = −dn1 , dn 2 = −dn 2 µ1 = µ1 , µ2 = µ2 すれば,各成分の総量は変化しない € α β p π € µ = µ =, = µ =, = µ , i =1,2,,m € 一般化して 多成分,多相平衡では i 各相の化学ポテンシャルが等しい i i i € この多相平衡の条件から,相の間に成立する重要な関係が導かれる € € 増加する独立変数の数 π個の相の中でm個の成分が増えたことによって,独立変数の数は温度T,圧力Pの2つに加えて (m −1)π m πだけ増加することになる。しかし成分濃度で考えれば,最後の1つは独立に決められない。 € さらに多相平衡の式はπ個の相の間でπ-1個の関 係を示しており,各成分を考えれば,等式の数は (π −1)m よって独立変数の数 (自由度f)は f =2−π + m € € 混合のエントロピーにより他成分が 混ざるほど,Gが低下する。 € 混合のエンタルピーは混ざらない 場合は高くなる。結果として下の 図のような曲線になる 詳細は「状態図と熱力学」 € ΔS = −x A Rln x A − x B Rln x B 2 1 0 0 € 0.5 € 低温で上昇 A G曲線の接戦の傾き は化学ポテンシャル を表しており,2つ あ のG曲線の共通接戦 い は2つの相がXα, Xβの組成で共存で Xα X 2 X β きる。 X2ではα相のあよりも両相共存のいの方 がGが小さいのでα相とβ相が共存する 自由エネルギーG X1ではα相の方がβ相よりもGが小さいので α相が安定に出現する(平衡相はα) X3ではβ相の方がα相よりもGが小さいので β相が安定に出現する(平衡相はβ) X2ではα相の方がβ相よりもGが小さいので α相が安定に出現するのだろうか? モル分率 共晶合金(A-B) 配布資料4 € € 共晶組織 の一例 X3 B いいや違う 溶質成分がそれぞ れの相で異なるよ β相 うに配分した組織 各相が交互になっ ている。 α相 € ラメラ組織 化学ポテンシャルが等しいというだけで は共通接戦とはならないが.Gミニマム € を考える。 包晶合金 € € α相とβ相が共存する TM B T MA 共晶合金 TM A 温度T X1 X 2 € 問題27 右の図に示すような包晶合金について,相律を考察 した上で,T1, T2, TP, T3, T4 の各温度における,自由エネ ルギーGを示し,各相が安定する組成範囲を示して下さい。 A 液相L L+β L+α € €β α B モル分率 ここで全濃度に渡って混合を考えことは難しいので,成分濃度によって出現 する相が異なると考える。右上の図は1つの相に対してのもので,相が異な れば,下の破線のように2つの別の曲線になる と考える。 A 定義式から明らか なように,より低 温でGは大きい値 をとる。固体と液 体で比較すれば液 相の方が早く上昇 する GA 1 モル分率 GB 共晶濃度 Tp T3 T4 α+β Ce 温度T G = H − TS 3 € 自由エネルギーG 純物質でない場合,いくつもの成分 が混ざるとエントロピーが増加する エントロピー(J/K) 問題26 前回学習した純物質の状態量について,各相,境界線,3重点の自由度を考えよう。 合金の相平衡 Gibbsの相律 € € B € A 液相L L+α T1 T2 α €L+β α+β € β TM B B Cp 包晶濃度 €
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