浜銀総合研究所 調査部 2017年3月1日 調 査 速 報 副主任研究員 遠藤 裕基 045-225-2375 [email protected] 法人企業統計(2016年10~12月期) 企業業績は5四半期ぶりの増収増益に 要 約 2016年10~12月期は5四半期ぶりの増収増益に。資源価格上昇の恩恵を受けた業種で利益が改善。 同期の設備投資も前年比+3.8%と再び増加。 3月8日に公表されるGDP2次速報の設備投資は1次速報から上方修正の見込み。 1.2016 年 10~12 月期は売上高が5四半期ぶりに増加 財務省の「法人企業統計調査」によると、2016 年 10~12 月期の全産業ベース(金融業・保険業を除く、以 下本稿では金融業・保険業を除いた計数に基づいて記載)の売上高は前年比+2.0%と5四半期ぶりの増収 となった(図表1) 。また、同期の経常利益も同+16.9%と2四半期連続で前年を上回った(図表2) 。な お、2016 年 10~12 月期の経常利益の水準は、四半期ベースでのデータが公表されている 1954 年4~6月 期以降で最も高い水準となっている。 2016 年 10~12 月期の売上高を製造・非製造の別にみると、製造業(前年比-0.1%)が小幅な減収とな った一方で、非製造業(同+2.8%)は5四半期ぶりの増収となった。他方で、経常利益をみると、製造業 が前年比+25.4%と6四半期ぶりの増益に転じ、非製造業も同+12.5%と2四半期連続で前年水準を上回っ た。なお、2016 年7~9月期の利益を大きく押し上げた特殊要因(純粋持ち株会社の大幅増益、7~9月 期:前年比+858.9%→10~12 月期:同+65.6%)は、10~12 月期も利益の押し上げ要因となっているもの の、その伸び率自体は鈍化している。 図表1 売上高は5四半期ぶりの増収 前年比、% 図表2 製造業、非製造業ともに増益 前年比、% 売上高 2016年10~12月期 全産業 前年比+2.0% 製造業 同 -0.1% 非製造業 同 +2.8% 6 4 経常利益 60 2016年10~12月期 全産業 前年比+16.9% 製造業 同 +25.4% 非製造業 同 +12.5% 50 40 2 30 非製造業 0 20 -2 10 非製造業 0 -4 製造業 -10 -6 全産業 -20 全産業 製造業 -30 -8 2013年 2014 2015 2016 2013年 2014 2015 2016 (注)金融業・保険業を除くベース。 (財務省「法人企業統計」) (注)金融業・保険業を除くベース。 (財務省「法人企業統計」) 次に、季節調整値でみると、2016 年 10~12 月期の売上高は全産業ベースで前期比+1.5%と2四半期連 続で増加した。製造・非製造の別にみると、製造業(同+1.8%) 、非製造業(同+1.4%)ともに増加となっ た。また、経常利益も全産業ベースで前期比+5.2%と3四半期連続で増加した。製造業の経常利益が同 +17.0%と3四半期連続で増加したほか、非製造業も同+0.1%と小幅ながら3四半期連続で増加した。 1 浜 銀 総 研 調 査 速 報 2.資源価格上昇の恩恵を受けた業種で利益の改善が進む 2016 年 10~12 月期の売上高と経常利益を業種ごとにみたのが図表3である。製造業では、資源価格上 昇の恩恵を受けた業種で利益の改善が進んだことが分かる。例えば、化学(売上高:前年比+1.9%、経常 利益:前年比+29.9%)や金属製品(同+1.8%、同+27.9%)が増収増益となったほか、減収ながらも鉄鋼 (同-5.9%、同+35.5%)や非鉄金属(同-2.0%、同+37.1%)も増益となった。その他では、情報通信機 械(同-5.9%、同+123.2%)の増益率が目立った。 非製造業でも、資源価格の上昇を受けて商社などを含む卸売業(売上高:前年比+1.9%、経常利益:前 年比+41.0%)が増収増益となった。また、生活関連サービス業、娯楽業(同+3.6%、同+18.8%)や学術 研究、専門・技術サービス業(同+24.4%、同+43.9%)なども増収増益となった。 図表3 業種別にみた売上高と経常利益 (製造業) (非製造業) 経常利益、前年比、% 140 経常利益、前年比、% 80 増収増益 増収増益 情報通信機械 鉱業、採石業、砂利採取 120 60 100 学術研究、専門・技術サービス業 80 卸売 40 60 生産用機械 印刷・同関連 生活関連サービス業、娯楽業 20 繊維 40 非鉄金属 その他の製造業 鉄鋼 化学 窯業・土石製品 20 0 食料品 農林水産 電気機械 パルプ・紙・紙加工品 0 不動産業、物品賃貸 小売 金属製品 製造業 業務用機械 非製造業 建設 情報通信 運輸、郵便 宿泊業、飲食サービス業 輸送用機械 -20 -20 はん用機械 電気 減収減益 減収減益 -40 -40 -20 -15 -10 -5 0 (財務省「法人企業統計」) 5 10 15 -20 売上高、前年比、% -15 -10 -5 (財務省「法人企業統計」) 0 5 10 15 20 25 30 売上高、前年比、% 3.2016 年 10~12 月期のGDPベースの設備投資は上方修正される見込み 2016 年 10~12 月期の設備投資(ソフトウェアを含む)は、全産業ベースで前年比+3.8%となり再び前 年水準を上回った(図表4) 。製造・非製造の別にみると、製造業が同+7.4%と増加に転じ、非製造業も同 +1.9%と3四半期ぶりに増加した。 次に、季節調整値でみると、2016 年 10~12 月期の全産業ベースの設備投資(ソフトウェアを除く)は 前期比+3.5%と増加に転じた(図表5) 。製造・非製造の別でみると、製造業が同+7.4%と再び増加し、非 製造業も同+1.3%と2四半期連続で増加した。 2 浜 銀 総 研 調 査 速 報 図表4 設備投資が前年比プラスに 前年比、% 図表5 法人企業統計とGDPの設備投資 設備投資(ソフトウェアを含む) 15 季調済、前期比、% 製造業 10 設備投資 法人企業統計ベース (ソフトウェアを除く) 6 全産業 4 5 GDPベース (名目) 2 0 2016年10~12月期 全産業 前年比 +3.8% 製造業 同 +7.4% 非製造業 同 +1.9% -5 0 非製造業 -2 -10 2013年 2014 2015 2016 2013年 (注)金融業・保険業を除くベース。 (財務省「法人企業統計」) 2014 2015 2016 (注)法人企業統計ベースの設備投資は金融業・保険業を除く。 (財務省「法人企業統計」) 2016 年 10~12 月期のGDP(国内総生産)ベースの名目設備投資(一次速報値)は前期比+0.9%であ った。今回発表の法人企業統計ベースの設備投資の伸び率(前期比+3.5%)はGDPベースの設備投資の 伸び率を大幅に上回っているため、3月8日に公表されるGDP2次速報において設備投資の伸びが上方 修正されると予想される。 なお、設備投資・キャッシュフロー比率(=設備投資÷キャッシュフロー、当社による季節調整値)を 計算すると、 2016 年 10~12 月期は全産業ベースで 56.4%と前期 (56.1%) から小幅に上昇した (図表6) 。 こ れは、分母のキャッシュフロー(前期比+2.9%)以上に分子の設備投資(同+3.5%)が増加したためであ る。なお、製造・非製造の別に設備投資・キャッシュフロー比率をみると、製造業(59.9%→59.3%)が 低下する一方で、非製造業(54.1%→54.8%)は上昇した。 図表6 設備投資・キャッシュフロー比率は小幅上昇 設備投資・キャッシュフロー比率 (=設備投資÷キャッシュフロー) %、季調済 75 70 製造業 65 60 55 全産業 50 非製造業 45 2011年 2012 2013 2014 2015 2016 (注)金融業・保険業を除くベース。設備投資はソフトウェアを除く。減価償却費の季節調整は当社で施した。 キャッシュフロー=減価償却費+経常利益×0.5。 (財務省「法人企業統計」より当社作成) 本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜 銀総合研究所・調査部が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。 3 浜 銀 総 研
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