1・2 January・February 2017 ポリオ∼世界の状況と、国内での対策 UPDATE 野生型ポリオの発生状況 ワクチン由来ポリオと対策 流行国:アフガニスタン、パキスタン、 ナイジェリア 経口生ポリオワクチン (OPV[セービン株])の普及は、野生型 ポリオの流行抑制に大きく貢献してきました。 しかし一方で、 ワクチン由来ポリオウイルス (VDPV)によるポリオ流行の発生 が毎年世界各地で報告されており、ポリオ根絶の最終段階に おけるポリオ流行のリスク要因となっています。 野生型ポリオは、 アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリアの 3か国から34例報告されています(2016/12/7時点)。 ナイジェリアでは、昨年2年ぶりに野生型ポリオが報告されて おり (2016/12/7時点4例)、以前同国で検出されていた野生 株が、その後検出されないままに伝播し続けていたことが示 唆されています。 これら流行国では、一部地域で依然として治安が不安定なため、 予防接種活動が妨げられることが問題となっています。 ポリオ流行国 アフガニスタン ナイジェリア パキスタン 年別VDPVによるポリオ症例報告状況 (例) 80 The Global Polio Eradication Initiative 2016/12/6時点データより作図 60 60 67 71 66 ■1型 56 40 ■2型 32 20 ■3型 3 0 ʼ10 ʼ11 ʼ12 ʼ13 ʼ14 ʼ15 2016(年) 12/6時点 近年、2型VDPVが多発しているため、3価OPVから2型を除く2価OPV への世界的な切り替えが2016年前半を目処に進められていました。 2016年(12/7時点) 1型 3か国 34例 原因はおもに2型VDPV 野生型ポリオウイルス1.2.3型 のうち、現 在でも確 認されて いるのは、1型のみ。 New! Check! 2016年5月中旬までに全世界で3価OPV使用停止 を完了。 (155の国と地域にて、WHO報告) 入国者が 増加しています 国内での対策∼輸入、流行を防ぐために わが国は、高いワクチン予防接種実施率を維持しているため、ポリオ患者の発生、ポリオウイルス伝播のリスクは 低いと想定されます。 しかし、近年国内への外国人入国者数は急激に増加し、平成27年には約2000万人と過去最 高となっています。ポリオウイルスの輸入や流行を防ぐために今後も対策を続けることが求められています。 監視体制 予防接種 ・5歳未満におけるポリオワクチンの接種率及び1型.2型 に対する抗体保有率は概ね95%以上(2013∼14年度)。 IPV導入後、3型に対する抗体保有率も上昇している。 ・不活化ポリオワクチン4回接種後の抗体価持続性の検証 が必要とされている。 バイオリスク管理 WHOでは、ポリオ根絶に向けた最終的な取り組みとして、加盟 各国に不必要なポリオウイルスの廃棄及びポリオウイルスを保 有している施設リストの提出等を求めている。 これを受けて国 内でも、ポリオウイルスの適正な管理に最低限必要と考えられ るポリオウイルス保有施設等について検討が進められている。 2類感染症に分類(感染症法) ・診断した医師は無症状病原体保有者(ワクチン株1型・ 3型を除く)、ワクチン関連麻痺(VAPP)、ワクチン接種 者からの二次感染症例を含むすべての患者を届出なけ ればならない。 環 境 調 査 ポリオウイルスの伝播のリスクを最小限に IPVは腸管でのウイルス増殖を抑制しうる十分な粘膜免疫を誘 導しないため、 ウイルス (野生型、 ワクチン由来)の輸入・伝播に ついては今後も監視を続ける必要がある。 医 師 の 届 出 定 期 接 種 不活化ポリオワクチン (IPV)の高い接種率を維持 環境水調査を実施 ・輸入が想定されるポリオウイルスについて、流入下水を検 査材料として効率よく監視。 ・2014年10月に採水した下水濃縮物からはワクチン株3型 (Sabin 3)が分離されている。 出典:The Global Polio Eradication Initiative, 厚労省 FORTH, IASR Vol. 37 2016年2月号, CDC MMWR 2016 Vol.65 No.35, 法務省 平成27年における外国人入国者数及び日本人 出国者数について, 第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 資料4-1, 2016年6月10日 第17回厚生労働科学審議会感染症部会資料5, 平成28年11月7日 健感発1107第1号 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について (一部改正) 企画編集:一般財団法人 阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp) 発行:一般財団法人 阪大微生物病研究会/田辺三菱製薬株式会社 5BI-459A16Ⅻ045 ▲上記本文中の内容に関するお問い合わせは、お受けしておりません (審)
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