中国:石油・天然ガス関連13 次五か年計画の概要と当面の需給、対外

更新日:2017/2/26
調査部 竹原 美佳
中国:石油・天然ガス関連 13 次五か年計画の概要と当面の需給、対外投資の展望
 中国政府(国家発展改革委員会)は 2016 年 12 月から 2017 年 1 月にかけてエネルギーおよびエネ
ルギー源別の 13 次五か年計画(以下、「13・5 計画」)を相次いで発表した。エネルギー「13・5 計画」
は前回の五か年計画と同様に消費総量の抑制、効率の向上、低炭素化を図りつつ自給率を維持す
ることを目指している。石油と天然ガスの消費は石炭と非化石エネルギーによる。特に天然ガスは
石炭や石油からの転換次第である。
 石油「13・5 計画」のポイントは国内探鉱開発、供給の安定、輸送・貯蔵インフラ(備蓄)の整備、石油
からの燃料転換、技術開発・装備の国産化である。供給の安定については成熟油田の生産減退ペ
ースを抑制、西部陸上や深海開発加速により生産維持を図る計画だが、低油価による生産維持、増
産のための投資抑制の影響からの脱却には一定の時間を要する。基本的には中東からの輸入が
増加すると思われるが 17 年は OPEC の減産により中東のシェアは低下する可能性がある。
 天然ガス「13・5 計画」のポイントは国内探鉱開発、供給増加、ガス貯蔵、ピーク調整設備等のインフ
ラ整備、市場化、高効率利用(石炭からの燃料転換)。天然ガスは需要、供給ともに石油に比べ高い
伸び。しかし需要、生産、輸入ガス供給のいずれも不確実性あり。輸入ガス契約量は LNG とパイプ
ライン計 140BCM だが、輸入量は契約量を下回る可能性がある。長期的にはロシア・中央アジアか
らの輸入が増加する見通しである。
 国有石油企業の対外投資は低油価、汚職取り締まり等の影響で抑制的だが、非国有石油企業によ
る対外投資が活発である。政府の対外投資・運用に対する厳しい姿勢と資本流出規制が対外投資
に影響を及ぼす可能性がある。国有石油企業はコスト削減、既往投資案件の手当を優先しつつ選
択的に投資を行う姿勢である。
中国政府(国家発展改革委員会)は 2016 年 12 月から 2017 年 1 月にかけてエネルギーならびにエネ
ルギー源別の13次五か年計画(以下、「13・5計画」)を相次いで発表した。エネルギー全体と石炭、電力、
石油と天然ガス、再生可能エネルギーについてそれぞれ発表されている。天然ガスについては別途シ
ェールガスと炭層ガス(CBM・CMM)の五か年計画も発表されている。基本的に計画は 12 次五か年計画
(以下「12・5計画」)期間(2011~2015年)の実績(成果と課題)と「13・5計画」の重点項目(目標)で構成さ
れている。なお五か年計画は必達目標である拘束性指標と政策の実施により到達すると思われる予期
性(予測性)指標があるが、石油と天然ガスの「13・5」計画は天然ガスの地下貯蔵能力増強目標を除き予
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
測性指標である。今回のエネルギーならびにエネルギー源別の「13・5 計画」は経済成長の伸びが減速
しエネルギー需要の伸びも落ち着いた中国が供給確保から低炭素化に大きく舵を切り、高効率、スマー
トシステム、エネルギー消費、供給、技術革命、「混合所有制経済」(国有企業の独占打破、異業種の産
業への投資奨励)政策に基づく公平なアクセス、国際協力、サービス向上など多岐に亘る施策を示した
興味深い内容である。本稿ではエネルギー「13・5 計画」と石油と天然ガスの「13・5 計画」のうち、特に石
油と天然ガスの需給と対外投資に関連した部分に焦点を絞り、足元の状況を見ながら計画の実現性や
今後の展望について考察を行った。
1.エネルギー「13・5 計画」のポイント
エネルギー「13・5 計画」は前回の五か年計画と同様に“消費総量の抑制”、“効率の向上” 、“低炭素
化”(石炭消費を抑制し、原子力と再生可能エネルギー<以下、非化石エネルギー>および天然ガスの消
費を拡大する)を図りつつ、エネルギー自給率 80%を維持することを目指している。
消費総量の抑制についてはエネルギー消費を 2020 年時点で 35 億石油換算トン(以下、toe)に抑制
(年平均成長率 2.5%程度)とする目標が設定されている(図1)。効率向上については GDP 単位(1 万元
創出)あたりのエネルギー消費を 2015 年比 15%削減する目標や発電における石炭消費の削減、送電ロ
スを抑制する目標が設定されている。低炭素化については石炭の 1 次エネルギー消費に占める比率を
2015 年の 64%から 58%以下に、非化石エネルギーの比率を同じく 12%から 15%以上とする拘束性指標が
設定されている。天然ガスは予測性指標だがエネルギー「13・5」では 2015 年の 6%から 2020 年に 10%に
増加させる政策となっている。しかし天然ガス「13・5 計画」では 2020 年の指標が 8.5~10%に下方修正さ
れている。ちなみに中国政府は 2016 年に提出した INDC(約束草案)において 2030 年前後に石炭消費
をピークアウトさせ、2030 年に非化石エネルギーの比率を 20%程度とする目標を設定している。これらの
目標から石油と天然ガスの消費は石炭と非化石エネルギーにより決まり、特に天然ガスの消費は石炭や
石油からの転換次第であることが読み取れる。
低炭素化に関連し、発電設備構成の目標をみると発電設備容量を 2015 年の 15.3 億 kW から 2020 年
までに4.7億kW増強し20億kWとする計画である。そのうち非化石エネルギーの比率を15年の35%(5.3
億 kW)から 2020 年までに 39%(8 億 kW)、天然ガス火力の比率を同 5%(7000 万 kW)から 6%(1.1 億 kW)
に拡大する目標が設定されている(図 2)。発電設備容量増強の 6 割を非化石エネルギーと天然ガスが
占めることになるが予測性指標である。石炭火力は 2 億 kW の増強計画となっているが認可済みの石炭
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
火力がその倍以上ある模様である。また発電電力量は総量のみ(15 年の 5.7 兆 kWh から 20 年までに
6.8~7.2 兆kWh)で電源別の目標設定はない。中国電力企業連合会によると 2015 年の発電電力量に占
める非化石エネルギーの比率は 26.3%、ガス火力は 2.9%であり、石炭火力の比率が 67.9%と太宗を占め
ている。少なくとも現在の状況からガス火力の役割がピーク調整以上になることは当面考えにくい。
図 1:エネルギー「13・5 計画」における主要目標と 2020 年の消費構成目標
図 2:エネルギー「13・5 計画」における発電設備と発電電力量目標
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2.石油「13・5 計画」のポイントならびに実現性、今後の展望についての考察
石油「13・5」計画では国内の探鉱開発強化による原油生産400 万b/d の維持、中露原油パイプライン 2
期など輸入パイプラインを含む輸送インフラの整備、国家石油備蓄の構築(基地の政府管理強化、2 期・
3 期の建設、国家石油製品備蓄構築を含む法整備など)により供給の安定を図ることを目指している(図
3)。また今回の計画では石油から他のエネルギーへの転換(工業用重油ボイラーの天然ガス・電化、天
然ガス自動車、船舶燃料(バンカリング)、電気自動車など公共輸送部門の燃料転換)を進めることが示
された。技術開発と装備の国産化については深海、深層、非在来型油ガス開発技術、石油工程設備の
国産化について示された。
「石油 13・5 計画」に基づき作成
*1in-place:BP 統計による確認可採埋蔵量(2015 年)は 185 億 bbl
*2 輸入比率:見かけ消費量、純輸入量に基づき計算
図 3:石油「13・5 計画」の主要目標
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(1)低油価による投資縮小で 2016 年の原油生産は急減
国内の探鉱開発強化による生産の維持について足元は厳しい状況である。2016 年の国内原油生産
量は前年比 7%減(約 30 万 b/d 減)の 398 万 b/d で 2010 年以降初めて 400 万 b/d を下回った。中国の
原油生産の 8 割は陸上で行われており、さらにその 5 割は東部陸上が占めるが、生産減少の 6 割強を
東部の成熟油田が占めていた(図 4)。東部成熟油田の操業者である CNPC や SINOPEC は大慶や勝利
油田など 1960 年頃から生産を行っている成熟油田について経済性の低い油井の操業を停止する計画
的な減産を実施した。2016 年 3 月に SINOPEC の CEO は勝利油田について 50 ドル/bbl でも一部油
井は赤字であるとし、経済性の低い油井の操業を停止し 5%程度減産を行う計画を表明した。実際はそれ
を上回る約 10%超の減産となった。CNPC も大慶油田で同様の対応を行い 5%程度の減産となった。
図 4:中国主要産地別生産(2015 年)ならびに生産推移
(2)成熟油田減退抑制と西部陸上増産政策実現はそれほど容易ではない
石油「13・5 計画」では東部大慶、勝利等成熟油田の生産減退ペースを抑制(15 年の 210 万 b/d から
20 年に 170 万 b/d)し、西部長慶油田等の増産(15 年の 120 万 b/d から 20 年の 140 万 b/d)を図る。さ
らに海洋は渤海や南シナ海等の生産減退ペースを抑制(15 年の 100 万 b/d から 20 年に 90 万 b/d)す
ることで生産量 400 万 b/d の維持を図る計画だが、成熟油田減退の抑制と西部陸上油田の増産はそれ
ほど容易ではないと思われる。国有石油企業 3 社の上流投資は 2014~16 年で 4 割減少しており、国内
新規坑井掘削は 2015 年に 25%減少している。近年増産傾向にあった西部長慶油田の掘削も 18%減少し
ている(図 5)。
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図 5:石油「13・5」計画における生産維持の地域別目標と国有石油企業 3 社の新規坑井掘削数、長慶油田の生産、開発
井掘削数推移
CNOOC Ltd が 17 年 2 月に発表した 2017 年の戦略において国外事業を含む 17 年の上流投資額を
600 億~700 億人民元(87 億~102 億ドル)としており投資額は 15 年水準に回復する(図 6)。しかし同社
は2017年の生産目標を16年比3~5%減の450~460百万boe(1.23~1.26MMboed)に引き下げた。2017
年以降国有石油企業の投資が上向いていったとしても 400 万b/d の維持はともかく 2015 年の 430 万b/d
に増やすことは新規油田発見でも続かなければ考えにくい。
図 6 CNOOC Ltd の投資額推移 (出所:CNOOC Ltd 2017 strategy Preview)
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(3)政府の見通し通り原油輸入の伸びは鈍化するのか?
前回の 2010~15 年の原油純輸入量の伸びは年平均 6.9%で 15 年の原油純輸入は 6.6 百万 b/d であ
ったが今回の石油「13・5」計画では予測性指標だが原油純輸入量が年平均 3.21%増に半減し 2020 年に
7.8 百万 b/d となる(表 1)。しかし 2016 年の原油純輸入量は地方製油所(ティーポット)を含む製油所の
精製処理量増加などにより前年比 13%増の 754 万 b/d であった。原油純輸入の伸びの鈍化ペースにつ
いて業界関係者は懐疑的な見方を示している。CNPC 経済技術研究院(ETRI)は 17 年 1 月に「2016 国
内外石油ガス産業発展報告」を公表した。ETRI は 2017 年の同国石油製品生産量を前年比4.3%増とした。
CNPC の予測に基づき 2017 年の原油輸入を試算すると政府の 19 年見通しに達する結果となる。一方
ETRI はガソリン、軽油、ジェット燃料の需要の伸びを同 2%増(約 20 万 b/d 増)と予測しており石油需要
(実需)の伸びは鈍化していく見通しを示している。実需の伸びが鈍化する一方で処理能力増強は続い
ており、原油輸入の増加は政府見通しを上回ると思われる。
表 1:石油「13・5 計画」における生産、見かけ消費、純輸入
2010年
(実績)
原油生産量
100万b/d
石油見かけ消費量 百万b/d
原油純輸入量
百万b/d
2015年
(実績)
4.1
8.8
4.9
4.3
11.2
6.6
年平均成 年平均成
長率
長率
11→15年 16→20年
4.0<
1.1%
12.0
4.8%
1.5%
7.8
6.9%
3.2%
2020年
(目標)
石油「13・5 計画」に基づき作成
(4)輸入原油は今後どこから調達? ~注目はサウジアラビア、ロシア、ブラジル~
輸入原油の増加分はどこから調達するのか。近年中国の原油の上位輸入相手国 6 カ国(サウジアラビ
ア、アンゴラ、オマーン、ロシア、イラク、イラン)の顔ぶれは変わらないが、ここ数年のトレンドとしてサウ
ジとロシアが対照的な動きを見せている(図 7)。サウジアラビアは 1998 年に中国と供給拡大で合意し、
その後 2002 年から 15 年までシェア 1 位を維持していた。しかし 2013 年の 19%から 16 年 13%と 2014 年
以降シェアが落ちている。逆にロシアは 2013 年の 9%から 16 年の 14%と 2014 年以降シェアを伸ばし、
2016 年にはサウジアラビアを上回り初の 1 位を獲得した。
中東からの輸入総量は増加しており、基本的に供給余力のある中東からの調達が増加すると思われ
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
るが、ロシアや南米からの輸入増加で中東からの輸入シェアは 2015 年の 51%から 49%へと若干低下して
いる。2017 年は OPEC 減産合意によりサウジアラビアが中国向けの原油供給を削減しているとの情報も
あり中東からの輸入シェアはさらに低下する可能性がある。
中国の主要国からの原油輸入(2015・16年)
UAE
3%
その他
17%
ロシア
14%
クウェート
4%
サウジアラビア
13%
ブラジル
5%
ベネズエラ
5%
0
イラン
8%
アンゴラ
12%
オマーン
9%
イラク
10%
20
40
60
80
100
120
ロシア
サウジアラビア
アンゴラ
イラク
オマーン
イラン
ベネズエラ
ブラジル
クウェート
UAE
その他
2015年
2016年
図 7:中国の原油輸入主要相手先(2016 年)と原油輸入増減(2015・2016 年)
ロシアからの原油はいわゆる Loan for Oil(2009 年の国家開発銀行によるロシア国営 Rosneft と
Transneft への融資による ESPO 原油パイプライン大慶支線<輸送能力 30 万 b/d >の開通と Rosneft と
CNPC および SINOPEC の原油長期売買契約)により 2014 年以降拡大していた(図 8)。ESPO 原油は大
慶支線の他に Kozmino 港からのタンカーによる調達も行っており、2016 年は Kozmino 港出荷原油の約7
割(約 44 万 b/d)が中国向けであった。2016 年は山東省に位置する地方製油所(ティーポット)による調
達の増加で輸入が前年比 20 万 b/d 伸び 105 万 b/d となった。
大慶支線は現在並走する第 2 ラインを建設中であり、2018 年に稼働開始後輸送能力は 60 万 b/d に
増加する。さらに Rosneft が 2013 年に CNPC と締結したカザフスタン経由の輸出契約は増強(2013~18
年末の 14 万 b/d を 2017~23 年末 20 万 b/d)される。ただしティーポットの原油輸入量の減少あるいは
調達の多様化によりロシアからの調達は 2016 年がピークとなる可能性がある。ティーポットが多数位置
する山東省の港湾・輸送・貯蔵インフラの不足や輸送コストの低さからロシア原油が選好されていたが、
ティーポットは調達の多角化や港湾インフラ整備を進めておりロシアからの輸入はこれ以上拡大しない
かもしれない。
ブラジルからの原油輸入はロシア同様 2009 年の Loan for Oil(国家開発銀行から Petrobras への融資
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140
および Petrobras と SINOPEC の長期契約)に加えティーポットによる調達増加で 2016 年は前年比 9 万
b/d 増加の 38 万 b/d であった(図 9)。ティーポット原油輸入の 3 割はベネズエラ、ブラジル、コロンビア
など南米地域からである。2016 年 2 月に新たな Loan for Oil 契約(国家開発銀行から Petrobras への融
資 50 億ドルならびに SINOPEC、CNPC、振華(Zhenhua)の 3 社で 10 年間 10 万 b/d の売買契約)を締
結したことで今後ブラジルからの調達はさらに増加する可能性がある。
図 8:ロシアからの原油調達(長期売買契約と輸入実績)
図 9:ブラジルからの原油調達(長期売買契約と輸入実績)
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(5)石油需要に影響をもたらす要因
石油需要に影響をもたらす要因として経済、地方製油所(ティーポット)の動向と精製能力の過剰、小
型車(1,600cc 以下)取得税減税延長、国家石油備蓄構築による備蓄積み増し、石油からの燃料転換な
どが考えられる。
2016 年の GDP 成長率は 6.7%であった。中国は所得倍増を目指し 2020 年まで GDP 成長率 6.5%を維
持する目標を設定している一方工業からサービス産業への構造改革を進めている。セクター別の GDP
貢献率を見ると三次産業は 2014 年に二次産業を上回り一定の進展を見せている(図 10)。しかし 2017
年は秋に 5 年に一度の共産党大会が開催され最高指導部が交替するいわば人事の年であり構造改革
より景気対策に傾きエネルギー需要上昇につながる可能性がある。一方 2020 年までを見ると金融リスク
(不良債権比率上昇による銀行の貸し渋り、経済活動の減速)によりエネルギー需要の伸びが一層鈍化
する可能性がある。
セクター別GDP貢献率(2006~2015年、%)
16.0%
14.0%
14.2%
12.7%
12.0%
10.0%
5.8%
6.7%
8.0%
9.6%
4.5%
6.0%
4.0%
6.3%
7.1%
2.0%
10.6%
9.2%
4.2%
4.1%
4.7%
4.8%
2008
2009
6.1%
9.5%
7.7%
7.7%
7.3%
6.9%
6.7%
3.5%
3.7%
3.5%
3.7%
3.5%
3.8%
3.7%
3.4%
2.8%
2.7%
2012
2013
2014
2015
2016
4.2%
4.9%
0.0%
2006
2007
一次産業
2010
2011
二次産業
三次産業
GDP
図 10:セクター別 GDP 貢献率 (国家統計局に基づき作成)
2016 年は原油生産の減少というよりは精製処理能力の増強、地方製油所(ティーポット)の原油輸入・
稼働率増加で原油純輸入が前年比 13%増(89 万 b/d 増)の 754 万 b/d に増加した(図 11)。一方で余剰
の石油製品のシンガポール市場他への輸出が増加している。石油製品の純輸出は前年比 23 万 b/d 増
– 10 –
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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の約 42 万 b/d であった。
2017 年はティーポットへの引き締めが行われ輸入ペースが若干鈍る可能性がある。中国の原油輸入、
石油製品輸出はライセンス・割当制である。ティーポットは 2015 年までは輸入原油使用権および原油輸
入ライセンスを保有しておらず、輸入原油の使用は限定的で製油所の稼働率も 3 割程度にとどまってい
た。ティーポットは原油の調達が思うようにできないため、硫黄分の高い重油を調達し、二次処理により
軽油などを生産していたが、小規模な精製設備による非効率な操業と環境負荷の高い製品の生産が問
題となっていた。
中国政府は国有石油企業の独占打破、環境負荷の軽減、エネルギー利用効率の向上の観点から、
2015 年に国家の基準に満たない 4 万 b/d 以下の精製設備の淘汰と、国家基準(国 5)に合致するガソリ
ンや軽油を生産することなどを条件にティーポットに対する輸入原油使用権および原油輸入ライセンス
の付与を拡大した。2016 年には約 20 社が 150 万 b/d の輸入原油使用権を取得、中国の原油輸入の 2
割に相当する 140 万b/d を輸入した。ティーポットの稼働率はそれまでの 3 割から 5 割以上に上昇した。
しかし供給過剰による石油製品輸出の増加やティーポットの脱税や法令順守違反が取沙汰される中、テ
ィーポットの輸入原油使用権は通年から四半期毎に制限され 2017 年 1-3 月は 2016 年の 148 万 b/d を
大幅に下回る 92 万 b/d のみが付与された。
中国の石油需給推移(13年1月~16年12月、万トン/月)
原油生産
原油純輸入
石油製品純輸出入
2社精製処理量
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
-200
1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月
図 11:中国の石油需給推移 (海関統計に基づき作成)
– 11 –
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
中国自動車工業協会(CAAM)によると 2016 年の自動車販売台数は 15%増の 2438 万台であった。中
国の自動車販売は大気汚染や交通渋滞対策によるナンバープレート抽選などの新車購入規制により伸
びが落ちていたが 2015 年 10 月に導入された小型車(1,600cc 以下)取得税減税(2016 年末まで取得税
を 10%から 5%に引き下げ)により販売が伸びた。この減税策は減税幅を半減(取得税を 5%から 7.5%)させ
た上で 2017 年末まで延長することが決まった。2017 年1 月の自動車販売は旧正月ならびに小型車取得
税減税の影響で 0.2%増にとどまったとされたが石油需要への影響については SUV の販売が引き続き堅
調であれば限定的ではないかと思われる(図 12)。
図 12:車種別自動車販売比率(2016 年)、販売増減推移(2012~16 年)、CAAM に基づき作成
国家石油備蓄構築による備蓄積み増しのペースも石油需給に影響を与える。2016 年 9 月に国家統計
局は中国の国家原油備蓄量は今年初めの段階で 3,197 万トン(2.3 億バレル)に達したと発表した。これ
は 2015 年の原油純輸入量の 35 日分に相当する。国家統計局によると舟山、鎮海、大連、黄島、独山子、
蘭州、天津など 8 カ所の国家石油備蓄基地(備蓄能力は 2,860 万立方メートル)の他一部民間の施設も
利用している模様である。また 2016 年 5 月 31 日には国家能源局(NEA)が国家石油備蓄条例案を公開
した。原油精製、製品卸売、原油輸出入従事企業を対象に原油、石油製品(ガソリン、軽油、ジェット燃料
等)の備蓄を課す内容である。2 期・3 期備蓄基地の建設や国家石油製品備蓄構築を含む法整備が進展
すれば一定の備蓄用の需要が生じることになる。
石油からの燃料転換計画については天然ガス「13・5計画」において天然ガス自動車(NGVs)を2020年
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
までに 1000 万台に増やし NGV 向けのガス充填ステーション 1.2 万か所、バンカリング向け充填ステーシ
ョン 200 か所を設置する計画とある。また工業・情報部の「自動車産業中長期発展計画」によると 2020 年
までに新エネルギー車(EV、プラグインハイブリッド)の年間生産台数を 200 万台(16 年の販売台数は
50.7 万台)とし 25年までに自動車総販売台数に占める新エネルギー車の割合を 20%以上にする目標を
設定しておりこれらの政策も石油需要に中長期的に影響を与える。
3.天然ガス「13・5 計画」のポイントならびに実現性、今後の展望についての考察
天然ガス「13・5」計画では石油よりも国内探鉱開発の強化による供給増加(陸上と海洋、在来と非在来
型を共に開発)を重視する政策が示された(図 13)。また中央アジアからの 4 本目の天然ガスパイプライ
ンであるラインD、中露天然ガスパイプライン東ルートなど内外40,000kmの増設やガス貯蔵、ピーク調整
など輸送・貯蔵インフラの整備による供給安定を図る計画が示された。また石油・天然ガス「13・5計画」は
基本的に予測性指標だが欧米に比べ遅れている天然ガス地下貯蔵のワーキングガスについてが唯一
拘束性指標として 2020 年までに 93BCM 増強の 148BCM とする目標が示された。一方LNG 受入基地は
平均稼働率 6 割という現状から増強目標は設定されず、上海周辺の東部から広東周辺の南部沿海地域
の既存の受入基地の拡張を優先し新設は適宜建設するとある。また今回は石炭や石油からの燃料転換
として石炭ボイラーからの転換や交通輸送分野の石油燃料転換が示された。
図 13:天然ガス「13・5」計画の主要目標
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(1)天然ガスは石炭、石油からの燃料転換政策による増産
2016 年の天然ガス生産は前年比8%増(10BCM 増)の 140BCM であった。低油価で上流投資が減少し、
計画的な減産を行った石油と異なり、天然ガスは生産・消費拡大政策の下石油に比べ順調に伸びてい
る。天然ガスも石油と同様に生産の 8 割は陸上だが、西部の四川、長慶、タリムと海洋が四大生産地域と
され生産の 7 割を占める(図 14)。2016 年はシェールガスの生産が特に伸び(15 年の 4.5 から 2.5BCM
増)、1 年遅れで政府の生産目標 6.5BCM を達成した。
図 14:天然ガスの地域別生産
(2)天然ガス需給の不確実性
天然ガスの消費の伸びは天然ガス卸価格値下げに伴う価格競争力回復、石炭抑制政策に伴う「煤改
気」(石炭から天然ガスへの転換)の進展により 2015 年の低迷(2%)から一転 12%増の 207BCM まで伸び
た(図 15)。2016 年 2 月の国務院の「石炭産業の過剰生産能力解消と脱苦境並びに発展実現に関する
意見」 により小規模(非効率)・違法な炭鉱の淘汰や「276 規定」(炭鉱の年間操業日数を 276 日以下とし、
法定祝祭日と日曜は生産停止)が導入されたことで石炭の生産が落ち、代替燃料である天然ガスの需要
が刺激された。天然ガス純輸入は 13%増の 74BCM で輸入比率は 34%に上昇した。
しかし天然ガスは需要、国産天然ガス供給、輸入ガス供給のいずれも不確実性がある。表 2 は天然ガ
ス「13・5 計画」の目標から生産、見かけ消費、純輸入を抽出したものだが、同計画では消費と輸入の
2020年見通しは示されていない。しかし1次エネルギー消費に占める比率が 8.3~10%と設定されている
ので見かけ消費量を 262~315BCM、そこから生産をひいて純輸入量を 52~105BCM と算出した。
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CNPC 経済技術研究院(ETRI)は 17 年 1 月に「2016 国内外石油ガス産業発展報告」において 2017
年の天然ガス消費を前年比5.9%増の 216BCM、2020 年の需要(ベースシナリオ)を年8%増の 280BCM と
予測している。ETRI はまた都市ガス需要は二桁の成長を維持しており、発電も着実に増加している。工
業用燃料も有望だが政府目標達成には政策的支援と行政指導の強化が必要と指摘している。
表 2:天然ガス「13・5 計画」の目標における生産、見かけ消費、純輸入目標
天然ガス生産量
天然ガス輸入量
天然ガス見かけ消費量
天然ガスの1次エネルギーに占
める比率
BCM/y
BCM/y
BCM/y
2010年
(実績)
95
17
108
2015年
(実績)
135
61
193
52~105
262~315
4
6
8.3~10
%
2020年
(目標)
210
天然ガス「13・5 計画」に基づき作成、輸入量・消費量は 1 次エネルギーに占める消費の比率 8.3~10%で試算
30%
2,400
25%
1,900
20%
1,400
15%
900
10%
400
(100) 2006年
(億m3/年)
5%
2008年
国産ガス
2010年
LNG
2012年
輸入パイプラインガス
2014年
輸出
2016年
0%
消費成長(%)
図 15:天然ガス需給推移(2006 年~2016 年) 新華社 China OGP、China LNG Weekly 他に基づき作成
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(3)天然ガス(非在来含む)の増産は容易ではない
国産ガスの増産目標達成に不確実性がある。前回五か年計画時の目標はいずれも未達であった。長
期契約の制約がある輸入ガス(LNG)の調達や増産目標のあるシェールガスの開発を優先し在来型の投
資を抑えている状況がある。2015 年の目標は 1 年遅れで達成したがシェールガスの 2020 年の目標達成
については容易ではない。現在シェールガス主力生産地域である Sinopec の重慶涪陵(Fuling)鉱区は 1
期の生産能力(5BCM/y)の構築を終え、現在 2 期 17BCM/y の開発中だが、1 期に比べ地質難易度が
上昇しているという。他の鉱区開発も難航しており、外資も BP を除き出て行ってしまった。政府はシェー
ルガス、CBM の 2020 年供給見通しを下方修正したが、2020 年の国産天然ガス供給は政府見通しを下
回る可能性がある。
表 3:天然ガス「13・5 計画」の目標における生産目標
2015年
(目標)
在来型(タイトサンドガスを含
む)生産
シェールガス生産
CBM・CMM利用
計
2015年
(実績)
2015年目標
未達
2020年
(目標)
BCM/y
139
125
-14
157
BCM/y
BCM/y
7
10
156
5
9
138
-2
-1
-17
30
16
203
天然ガス「13・5 計画」に基づき作成
(4)輸入天然ガスは今後どこから調達? ~長期的にはロシア・中央アジア~
2016 年の天然ガス純輸入は 13%増の 74BCM で、トルクメニスタンが最大の輸入相手先で輸入の 40%
を占めている。LNG は天然ガス輸入の 48%、約2,600 万tであった。LNG は長期契約を締結している豪州
からの輸入が最大で全体の 20%を占めている(図 16)。
LNG の長期売買契約は 2020 年に約 4,100 万t(55BCM)に達する見通しだが契約を抱え過ぎて足元
の輸入実績は長期契約を下回っている。パイプラインの長期売買契約は 2020 年に約 85BCM に達する
見通しだが、産ガス側の開発の遅れや国内需要の増加などで長期契約を下回る供給となっている。輸
送インフラ整備の状況から長期的にはロシア・中央アジアからの輸入が増加の見通しだが、当面輸入量
が長期契約を下回る状況が LNG・パイプラインともに続きそうである。
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パプアニューギニア
4%
その他LNG
3%
豪州
22%
トルクメニスタ
ン
40%
カタール
9%
インドネシア
5%
マレーシア
5%
ミャンマー
5%
ウ
ズ
ベ
キ
ス
カザフス タ
タン ン
1% 6%
図 16:天然ガスの国別輸入(2016 年) China LNG Weekly 他に基づき作成
(5)天然ガス需要に影響をもたらす要因
天然ガスに影響をもたらす要因として経済、石炭や石油からの燃料転換などが考えられる。天然ガス
は消費のうち製造業が 4 割、発電・熱供給が 2 割、家庭向けが 2 割を占め石油に比べより産業活動の影
響を受ける。3-(2)で示した石炭の操業規制は 2016 年下期に需要ひっ迫を受け緩和されたが 2017 年に
入り再び導入される見通しである。政策が猫の目のように変化しており天然ガスの需要はそれに左右さ
れることになる
4.石油・天然ガス「13・5 計画」における対外投資のポイント、現状と今後の展望についての考察
対外投資についてエネルギーと金融分野の協力を進め、企業の対外進出のレベルの向上を図ること、
ロシア・中央アジア、中東、アフリカ、米州、アジア太平洋地域における油ガス協力事業を向上あるいは
推進すること、中国に優位性のある設備、技術、標準、サービスの対外投資を拡大。一帯一路沿線国と
のインフラ設備の相互接続を図ること、“グローバルエネルギーガバナンス”(全球能源治理)への積極
的な参加、原油先物市場の建設、IEA、エネルギー憲章条約等の国際組織との協力を通じ 2 国間あるい
は多国間のエネルギー協力を進め、発言権を得るとあるが具体的な数値目標は示されていない。
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(1)対外投資の現状
中国国有石油企業(NOCs)の国外資産・企業 M&A は 2009~2013 年の急拡大から 2014 年以降は鈍
化している(図 17)。主な要因は低油価、汚職取り締まりにある。当面国有石油企業は保有資産の管理と
入札への参加等に注力するものと思われる。Sinopec(Addax)は Repsol に対して、買収した Talisman との
北海事業で 55 億ドルの賠償請求を行うなど買収後トラブルに見舞われている事例もあるが国有石油企
業 3 社に保有対外資産整理・売却の動きは現在のところ見られない。ただし Sinochem は保有資産の見
直しのため 2010 年にノルウェーStatoil から 30.7 億ドルで買収したブラジル Peregrino 油田の権益 40%
の売却を検討している模様である。
図 17:中国国有石油企業対外投資のトレンド
対照的に非国有石油企業による対外投資は表 4 に示した通り活発である。2016 年 3 月にファンド系の
Geo –Jade はカナダ企業 Bankers Petroleum を 5.75 億ドルで買収した。民間都市ガス会社の ENN(新億)
は 2016 年 3 月に豪 Santos 株式 11.7%を 7.5 億ドルで取得し筆頭株主となった。同社にとり初の上流への
進出である。またファンド系の CEFC(華信) は Kazmunaigaz 子会社 KMGI の株式 51%を保有している他
2016 年には台湾 CPC からチャド Permit H 鉱区権益 35%を取得し、2017 年 2 月にはアブダビから Adco
権益 4%を取得した。
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表 4:最近の主な対外投資(2016 年~2017 年 2 月)
参考①:中国華信能源有限公司(CEFC)概要
CEFC http://www.cefc.co/index.php
CEFC は中国10 大民間企業の 1社、2015年は Fortune世界トップ 500 社の 229位、売上418 億ドル(14
年は 349 位、売上 336 億ドル)。主要業務はエネルギーとファイナンス、民間企業として初めて原油備蓄
基地を建設。カザフスタン、アブダビ、チャドを重点地域として中央アジア、中東、アフリカの上流権益取
得を目指している。カザフスタンでは Kazmunaigaz 子会社 KMGI の株式 51%を保有している。
アブダビとは戦略的パートナーシップを締結。長期かつ安定的な石油権益を取得し油ガスプロジェク
トの開発を行い、備蓄・原油貿易分野において協力する。チャドでは 2015 年 12 月に台湾 CPC から 3 鉱
区(Permit H)の権益 35%を取得。権益生産原油の他 10 万 b/d の原油販売権を保有している。
(2)対外投資(石油・天然ガス)に影響をもたらす要因
対外投資に影響をもたらす要因として政府の対外投資・運用に対する厳しい姿勢と資本流出規制があ
げられる。石油「13・5 計画」の「12・5 計画」の実績(成果と課題)において政府は「国有石油企業は社会
の安定のため余剰人員を抱えている。経営コストがメジャーなどと比べ相対的に高く、経営力についても
差異がある。海外投資は急速に成長したがリスクコントロール、収益力が下がっている」と指摘している。
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また CNPC と CEFC のアブダビ Adco 権益を巡る交渉は当初 1 月に調印予定のところ土壇場で暗礁
に乗り上げ調印が 1 か月以上遅れたことについて真相は不明だが最近の資本流出規制や海外投資の
運用に対する政府の厳しい姿勢が影響しているのではないかと思われる。
米国の金利上昇などで中国は資本流出圧力に直面しており当局は様々な資本規制策を講じている模
様である。Wall Street Journal によると中国商務部などは 100 億ドル(約 1 兆 1300 億円)以上の海外買収
案件や、国営企業による10億ドル以上の海外不動産取引に加え、国内企業が自社の中核事業と無関係
の海外企業に 10 億ドル以上投資する場合に「厳格な取り締まり」を実施する意向である。中国の人民元
対ドルレートは 2017 年も下落が続くと予想されており、今後も国有石油企業の対外投資に影を落としそう
である。
また国有石油企業は低油価の中コスト削減、既往投資案件の手当を優先しなければならず。2009~13
年のような M&A ラッシュの再来は考えにくいが CNOOC が 2016 年 12 月にメキシコ深海入札(ラウンド
1.4)で有望とされる Perdido 褶曲帯(Fold Belt)に位置する Block1、4 落札したように油価上昇局面におい
て選択的に投資を行って行くのではないかと思われる。
主な参考資料
エネルギー13 次五か年計画http://www.ndrc.gov.cn/zcfb/zcfbghwb/201701/W020170117350627940556.pdf
石油 13 次五か年計画http://www.ndrc.gov.cn/zcfb/zcfbghwb/201701/W020170119368974467126.pdf
天然ガス 13 次五か年計画http://www.ndrc.gov.cn/zcfb/zcfbghwb/201701/W020170119368974618068.pdf
電力 13 次五か年計画 http://www.ndrc.gov.cn/zcfb/zcfbghwb/201612/P020161222570036010274.pdf
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