400MHz級制御プロセッサ ARM Cortex

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400MHz 級制御プロセッサ
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ARM Cortex-M7 初体験
最終回
第 6 回 ついに 400MHz 動作のワンチップ・フラッシュ・マイコン STM32H7 誕生! おいで!
向こうが性能を
出せそうだな
STM32
F4
STM32
H7
STM32
F7
図 1 ついに 400MHz で動作するワンチップ・フラッシュ・マイ
コンが誕生した…名前は STM32H7 という
従来のフラッシュ・マイコン(最高 200MHz くらい)と制御用プロセッサ
(400MHz 級でフラッシュなし)の世界をうちやぶる新世代マイコンのイ
メージ
ついに 400MHz で動作するワンチップ・
フラッシュ・マイコン誕生…STM32H7
● 従来マイコンの 2 倍は高性能
400MHz 級 プ ロ セ ッ サ と 呼 ば れ る こ と も あ る
Cortex-M7 ですが,ついに実際に 400MHz で動作する
Cortex-M7 を搭載する製品 STM32H7 が発表されまし
た.筆者は,ARM が国内で開催したイベント ARM
Tech Symposia 2016 で ST マイクロエレクトロニクス
(以下 ST マイクロ)の STM32H7 のプレゼンテーショ
ンを聞いて感動してしまいました.
STM32H7の
“H”
は,橋をイメージしているそうです(13).
これは,STM32H7 が,旧世代のマイコン(STM32F
シリーズ)と新世代のマイコンを橋渡しする「神って
る」製品という位置づけです(図 1).
STM32H7 の 400MHz 動 作 時 の 性 能 は,2010
CoreMark,856DMIPS で,名ばかりのハイエンド・
マイコンでは追いつけない高性能です.しかし冷静に
見てみると,MHz 当たりの性能は従来(218MHz 動作)
の STM32F7 と同じです 注 1.MHz 当たりの性能を落
とさず,動作周波数を約 2 倍に引き上げたことがすご
いといえます.なお,これは内蔵フラッシュ・メモリ
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中森 章
上でプログラムを実行したときの性能です.内蔵フ
ラッシュ・メモリを 0 ウェイトでアクセスできないと,
この性能は出せません.
● フラッシュ・メモリ・アクセスの高速化が実
現のキモ
STM32F7 では内蔵フラッシュ・メモリを 0 ウェイ
トでアクセスするための,ART アクセラレータとい
うフラッシュ専用のキャッシュを持っていましたが,
STM32H7 では ART アクセラレータは削除されまし
た.これは,ART アクセラレータを内蔵するのが困
難になったわけではなく,ART アクセラレータを内
蔵する必要がなくなったからです.つまり,ART ア
クセラレータなしでも,内蔵フラッシュ・メモリを 0
ウェイトでアクセスできるようになりました.この点
が STM32H7 の最大の特徴です.これについては後述
します.なお,ART アクセラレータの詳細について
知りたい場合は本連載の第 5 回(2017 年 3 月号)を参照
できます.
400MHz 動作の使い道
● その 1:基本的な信号処理
いわゆる「マイコン」で 400MHz 動作を達成したの
は世界初ではないでしょうか?高速マイコンをうたう
ルネサス エレクトロニクス(以下ルネサス)でも,フ
ラグシップの RH850 は 320MHz 動作にとどまってい
ます(2016 年 12 月時点).同じくルネサスの RX マイ
コンも 320MHz 動作を 1 つのマイルストーンとしてい
る節があり,400MHz 動作というのは異次元の世界の
ような気がします.速ければ速いに越したことはあり
ませんが,問題は 400MHz で何ができるかということ
です.
注 1:ARMによるCortex-M7の公称性能は,5.04CoreMark/MHz,
2.14DMIPS/MHzなので,400MHz動作では2016 CoreMark,
856DMIPSとなる.STM32H7ではCoreMarkの性能がほん
の少し異なるが,この理由は定かではない.
第 1 回 最新 ARM Cortex-M7 コア入門(2016 年 11 月号)
第 2 回 高性能リアルタイム向け Cortex-M7 の演算性能(2016 年 12 月号)
第 3 回 ハードもソフトも至れり尽せり…Cortex-M7 搭載 STM32F7 初体験(2017 年 1 月号)
2017 年 4 月号