無償資金協力 案件概要書 2017 年 2 月 28 日 1.基本情報 (1) 国名:パキスタン・イスラム共和国 (2) プロジェクトサイト/対象地域名 パンジャブ州ムルタン地域 (3) 案件名:ムルタン気象レーダー整備計画 (The Project for Installation of Weather Surveillance Radar at Multan in the Islamic Republic of Pakistan) (4) 事業の要約: 本事業は、パキスタン中部のパンジャブ州ムルタンにおいて、新規気象レーダーシ ステムを設置するとともに、気象予報解析機材や情報通信機器を導入することにより、 パキスタン気象局の気象観測能力の向上を図り、もって同国における自然災害による 被害の軽減を通じた人間の安全保障の確保と社会基盤の改善に寄与することを目的 とする。 2.事業の背景と必要性 (1) 本事業を実施する外交的意義 パキスタンは、世界第 6 位の人口を有し、アジアと中東の接点に位置し地政学的重 要性を有するとともに、テロ撲滅に向けた国際社会の取組において、重要な役割を担 う同国の安定的な発展は、アフガニスタンを始めとする周辺地域、ひいては国際社会 全体の平和と安定にとっても極めて重要である。 パキスタンにおいては 2010 年、2011 年、2012 年に大規模な洪水被害が発生して おり、防災は同国の安定的発展に重要であり、また、自然災害対策を重視するパキス タン政府は同分野における我が国の協力を高く評価している。 (2) 当該国における防災セクターの開発の現状・課題及び本事業の位置付け パキスタンは、洪水、地震、土砂災害、サイクロン等自然災害により常襲的に被害 を受けてきた国である。パキスタン政府は、2005 年 10 月に発生した北部大地震を契 機として、従来の事後対応、個別対応中心の災害対策を基本から見直し、予防・被害 軽減、災害横断的対応に軸を置いた防災体制強化に向けて取組を実施している。この ような状況の中で、予警報システムについて、気象レーダー、気象・雨量観測所等の 施設・機材の整備及び気象局の気象観測・予報能力の更なる強化が必要となっている。 2013 年に承認された「国家防災計画」では、洪水被害を含む自然災害による人的、 社会的、経済的損失を最小化するため予警報システム強化が提言されており、本事業 は同計画に基づき、この目標達成に貢献するものとして位置付けられている。 近年、パキスタン中部に位置するパンジャブ州では、州東部で大雨による洪水が頻 繁に発生し、州西部では土石流の被害が多発しており、当該地域の気象データ収集が 重要となっている。現在、無償資金協力「中期気象予報センター設立及び気象予報シ ステム強化計画」及び「カラチ気象観測用レーダー設置計画」により整備中のイスラ マバード及びカラチの気象レーダーは、同地域の大半が観測範囲外になるため、新た な気象レーダーの設置が必要である。本事業は、気象観測の空白地帯であるムルタン にて、新たに気象レーダー及び関連機材を設置することで、精度の高い気象観測と予 測情報の安定的な提供を可能とし、当該地域の気象災害による被害の軽減を図るもの である。 (3) 防災セクターに対する我が国の協力方針等と本事業の位置付け 対パキスタン・イスラム共和国国別援助方針(2012 年 4 月) における重点目標に は、 「頻発する自然災害に対する防災能力の強化につながる支援を実施する。」と定め られ、本事業は同方針に合致する。 (4) 他の援助機関の対応 予警報システム強化を目的とする UNESCO、アジア開発銀行等のドナーの事業が 以下のとおり展開されているが、本件との重複は無い。 ・ 「パキスタン国 津波予警報システム強化プロジェクト(Strengthening Tsunami Early Warning System in Pakistan)」(2008 年–2009 年)(UNESCO) ・ 「ラホール、マングラにおける気象レーダー設置計画(The National Flood Protection Plan III)」(1998 年-2007 年)(アジア開発銀行) (5) 本事業を実施する開発政策上の意義 本事業は同国の開発政策及び我が国の協力方針に合致し、自然災害による被害の軽 減を通じ人間の安全保障の確保と社会基盤の改善に資するものであり、SDGs ゴール 11 に貢献すると考えられる。また、パキスタンでは洪水や土石流等が頻繁に発生す るため、人間の安全保障の観点から、自然災害など個人の尊厳、生命、生活に対する 脅威への対応が必要。 3.事業概要 (1) 事業概要 ① 事業の目的 本事業は、パキスタン中部のパンジャブ州ムルタンにおいて、新規気象レーダーシ ステムを設置するとともに、気象予報解析機材や情報通信機器を導入することにより、 パキスタン気象局の気象観測能力の向上を図り、もって同国における自然災害による 被害の軽減を通じた人間の安全保障の確保と社会基盤の改善に寄与することを目的 とする。 ② 事業内容 ア)施設、機材等の内容 以下のとおり。協力準備調査で詳細確認する。 【施設】気象レーダー塔の建設 【機材】気象レーダー関係機材 イ)コンサルティング・サービス/ソフトコンポーネントの内容 以下のとおり。協力準備調査で詳細確認する。 詳細設計、施工・調達監理、ソフトコンポーネント(機材の運営・維持管理にかか る研修) ウ)調達・施工方法 協力準備調査にて確認する。 ③ 他の JICA 事業との関係 ・無償資金協力「中期気象予報センター設立及び気象予報システム強化計画」(2014 年-2019 年) 共通の気象観測・データ通信ネットワークによる情報共有で精度の高い気象予報が 可能となる。 ・国際機関連携無償「第二次洪水警報及び管理能力強化計画」(2015 年-2017 年) 洪水予測モデル精緻化のため、本事業により収集される気象データの活用が見込ま れる。 (2) 事業実施体制 ① 事 業 実 施 機 関 / 実 施 体 制 : パ キ ス タ ン 気 象 局 (Pakistan Meteorological Department: PMD) ② 他機関との連携・役割分担:当該施設、機材はムルタン空港内に設置され、また 航空気象の観点から同空港に気象データを提供するため、空港局とも連携が必要。 ③ 運営/維持管理体制:PMD が運営/維持管理を担う。PMD は過去に日本の支援 で整備された気象レーダーを運営、維持管理してきた経験があり、維持管理にかか る予算措置にも対応してきており、本事業についても同様の体制が想定されるが、 詳細については協力準備調査で確認する。 (3) 環境社会配慮 ① カテゴリ分類 □A □B ■C □FI ② カテゴリ分類の根拠: 本事業は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010 年 4 月公布)上、 環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため。 (4) 横断的事項 本事業は、気象情報を提供することで、気候変動リスクが増大した時にも、自然災 害による被害の軽減につながるため、気候変動対策(適応策)に位置付けられる。詳 細は協力準備調査にて確認する。 (5) ジェンダー分類 ジェンダー対象外案件 (6) その他特記事項 特になし。 4. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用 過去のバングラデシュ人民共和国向け「モウルビバザール気象レーダー設置計画」 の事業評価結果等では、先方政府関係機関が複数に跨り、機材を運用・維持管理する 能力に格差があったため、調査時に各機関の体制、能力の分析をすべきとの教訓が得 られた。このため、本事業では調査段階で関係機関を把握して、各機関の実態に合わ せた研修、マニュアル作成等のソフトコンポーネントを計画、提案する予定。なお、 パキスタンにおいては、過去に調達した気象レーダーは適切に運営・維持管理されて おり、本事業でも十分な人員体制の下で運営・維持管理されることが期待される。 以 [別添資料]地図 上
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