吊荷作業時の安全管理と騒音対策について

吊荷作業時の安全管理と騒音対策について
発注者
新庄河川事務所
施工者
沼田建設株式会社
工事名
最上川中流毒沢地区堤防強化工事
発表者
○現場代理人
早坂
貴之
監理技術者
菅
真也
1.はじめに
本工事は、最上川中流毒沢地区において、堤防下部からの水の浸透による堤防背面の法面崩壊を防
ぐことを目的として、延長 L=117m の区間にハット型鋼矢板(L=10.0m w=900 ㎜)を打込み、止水を
行う工事です。
施工場所は強風が吹きやすく、10m の長さの鋼矢板を吊り上げることから風にあおられることによ
る吊荷の落下や吊荷と作業員の接触による災害の発生が懸念されました。また、近隣に民家があるこ
とから騒音に関しても対策が必要であることが考えられました。
以上の点について、当現場で実施した対策について紹介します。
2.吊荷作業時の災害防止について
施工箇所の堤防は、近隣住民の散歩コースとなっています。施工時に吊荷の落下等による災害を防
止するため、現場説明会の際に施工期間中は堤防上を全面通行止めとすることで了承していただき、
第三者災害を防止することに努めました。また、実際に作業を行う作業員への安全対策として、以下
のような対策を実施しました。
1)
玉掛け警報器の使用
吊荷作業時は、玉掛けを行う側と荷
を受ける側の作業が発生します。合図
1.000
488
者がお互いの状況を確認した上で合図
る受け側の作業員は吊荷が見えにくく、
施工箇所が狭いため動きが取りづらい
500
を行ったとしても、特に床掘箇所にい
法留コンクリート
コンクリート② KG4 H-1000 1.680
ことが原因で吊荷との接触による事故
が発生する危険性があると思われまし
床掘断面図
玉掛け警報器使用状況
た。そのため、特に荷を受ける側において、吊荷の接近を視覚のみではなく聴覚でも確認できるよう
に、スイッチを入れると吊荷の移動を知らせるアナウンスが出る玉掛け警報器の使用を実施しました。
玉掛けの際に機械のフック部分に玉掛け警報器を装着することで、吊荷の移動に伴う接近を知らせま
す。これによって、作業員と吊荷の接触による事故を未然に防ぐことができました。
2)
無線機の使用
吊荷作業は、クレーンのオペレーターと合図者が確認を取合うことが重要であり、お互いの目視だ
けでは不十分である可能性があります。そこで、1)と同様に視覚のみでなく聴覚によっても確認が取
れるように無線機を使用しました。お互いがどういった状況か、次に何をしたいのかの意思疎通を図
り、どちらか一方が先走った行動をしないように無線機を使用することで明確に相手に伝えることを
目的としました。
無線機本体
無線機装着状況
3)
ズレ止めの使用
鋼矢板を吊り上げる際に、矢板の形状として、ワイヤーの
引っ掛かりになる部分が無いため、ワイヤーを矢板にまわし
て吊り上げただけでは、どうしても抜け落ちてしまう危険性
があります。そのため、矢板に引っ掛かりの部分を設けるた
めに、ズレ止めの金具を取り付け、ワイヤーがそこから上に
ズレないように工夫しました。これによって、矢板がワイヤ
ーから抜け落ちることが無く、吊荷の落下による災害を防ぐ
ことができました。
4)
風速の確認について
ズレ止め金具
施工箇所の条件として、強風が吹きやすい場所であるという点がありました。吊荷作業では強風に
あおられて吊荷が落下したり、作業員と接触したりする危険性があります。よって、作業中は常に風
速を意識して施工する必要がありました。
安全管理基準として平均風速 10m/s を超える場合は作業を中断して様子をみるように決め、新規入
場時や安全訓練時に指導を行いました。作業中断の判断は、基本的には現場内に設置している吹流し
を目安に行いますが、吹流しの傾きでは見る人によって判断が違ってきてしまうこと、正確な風速が
わからないことがあるため、視覚的にはっきりと判断ができるように風速計での測定を行いました。
吹流しの状態を見た上で風速計による測定も併せて行い、吹流しの傾きと風速計の測定値の目安を作
業員に周知することでより安全に作業を行うことが出来ました。
風速計による測定
3.施工中の騒音について
1)
騒音の測定について
当現場は、近隣に民家や牛舎があることから、バイブロハンマによる矢板の打込み時に騒音が発生
することで、民家や牛舎に何らかの影響が出るのではないかということが懸念されました。特に事前
に牛舎に確認したところ、牛は音に敏感であり、騒音が牛へのストレスとなって母乳の出具合や餌の
食いつきが悪くなり、子牛の成育へ悪影響が出る可能性があるということ、牛舎付近を走行するトラ
ックなどの音が 60 ㏈程度であったので、その程度の音であれば問題ないということなどのお話をい
ただきました。そのため、定期的に騒音の測定を行うとともに、民家や牛舎へ影響がないことを確認
して施工を行いました。また、振動計による測定も同時に行い、影響がないことを確認しました。
騒音計
振動・騒音測定(施工個所付近)
振動計
性能上 47 ㏈以下は表示されない
振動・騒音測定(牛舎前
2)
施工箇所より直線距離約 200m)
騒音抑制対策
矢板の打込みには、騒音・振動対策型の機械を使用しましたが、バイブロハンマで矢板を打込む際
に矢板自身が振動することによって、矢板を直線で打込むために使用する定規に接触し、機械本体と
は別の部分で騒音が発生することが問題としてありました。定規を使用しないで直線的に矢板を打込
むことが不可能であることから、使用する定規にゴム板を装着することで、矢板と定規の接触の衝撃
を吸収させ、騒音の発生を抑制する工夫を行いました。
最低表示 47 ㏈
ゴム板装着状況
4.おわりに
現場での安全管理や事故防止対策は、工事を進めていくうえで最も重要な部分を占めていると思い
ます。工事は現在も施工中ですが、当社のスローガンである「安全先行」を念頭に置き、元請け業者
のみならず、下請け業者のみなさんの協力をいただきながら進めていきたいと思います。また、近隣
住民の皆様には公共工事に対するご理解とご協力をいただき感謝いたします。
最後に、様々な点においてご指導及び助言をいただいております大石田出張所と新庄河川事務所の
皆様方に感謝し、御礼を申し上げます。