作品解説 - ニシムラマホ

つなぐ・つながる
~アートで楽しむ笠寺~
作品解説
各作品の解説や見どころをご紹介しています。
お持ちになって会場をおまわりください。
お帰りの際ご返却ください。
笠 寺 商 店 街 「 玉照姫伝説」壁画
笠 寺 観 音 商 店 街 には、地域に伝わる縁結び伝説「玉照姫伝説」をつたえる壁画が描か れ て い ま
す 。 こ れ は 2 0 1 0 年冬に愛知県の商店街景観向上業務として、女性作家6名により 約 2 ヶ 月 間
か け て 制 作 さ れ ました。一部、店舗の取り壊しとともに無くなった絵もありますが、 現 在 も ご
覧 い た だ く こ と ができます。
こ れ を き っ か け として、商店街と作家、また作家同士の縁がつづいており、今回のイ ベ ン ト 開
催 へ の 契 機 と な っています。
【 作 家 】 朝 倉 佳 代・きすけ・ニシムラマホ・タキナオ・春駒・森みかる
①時計・ 宝 石 ・ メ ガ ネ の ナ イ ト ウ
② と べ 工 房 ( 移転)
④笠寺薬 局
⑤ 笠 寺 郵 便 局向かい
①
②
③
④⑤
⑥
③旧ユニー跡(取り壊し)
⑥笠寺郵便局
資料
玉照姫伝説とは
天平5年のこと、呼続の浜に一本の霊木が流れつきました。妖しく輝くその木を畏れお
ののき、人々は近づくことができませんでしたが、善光という僧がその流木にありがた
い御姿をみて、観音様を彫り小松寺を立てました。
時が過ぎるにつれて荒廃し、観音像は風雨にさらされるようになります。その観音像に、
とおりがかるといつもお祈りする娘がいました。娘は、元々は豪族の生まれでしたが、
美しさゆえに不運に巻き込まれてしまい、鳴海の長者の召使いとして不遇な生活を送っ
ていました。
ある雨の日、ずぶ濡れになっている観音像を見かけた娘は、自分の被っていた笠をかぶ
せました。その後、たまたま関白藤原基経の息子である藤原兼平がやってきて娘の心優
しさに惹かれます。二人はその後、婚姻を結ぶこととなり、娘は玉照姫と呼ばれるよう
になりました。そうして二人の出会った思い出の地には、立派なお寺が建てられ、笠を
被った観音像が祀られました。
1階
笠寺壁画制作メンバー公開制作会場
2017 年2月4・5日に公開制作されました。
春駒・タキナオ (入口ガラスドローイング)
入口ガラスをキャンバスに、細胞をイメージしたマスキングテープの点(春駒)、ガラ
ス用クレパスで織りなすように描かれた色彩(タキナオ)。つなぎ、つながれ、やがて
室内にも。
朝倉佳代「波紋」 (編むインスタレーション)
一本の線が面になって表情をもつ“編む”という行為がとても好きです。 運命じゃな
い赤い糸も、編み込まれて面になれば物語が始まります。 笠寺が生んだ出会いがつな
がって、波紋のように広がっていく様を 一枚の布と一本の木を線にし、編むことで表
現しました。
ニシムラマホ「雨に唄えば」(傘ペイント)
笠寺のシャッターペイントで私が担当して描いた玉照姫伝説の背景のニョロニョロは、
現在・過去・未来、脈々と流れる人の縁でした。時としてそれは、人の世の荒波になっ
たり、玉照姫が藤原兼平と出逢う笠をかぶせるシーンでは雨になって降ってきました。
一方、ミュージカル作品にもなったアメリカのポピュラーソング「雨に唄えば」。
明るく軽快な新しい恋のウキウキを唄った歌。
案外そのシーンの BGM がこんな歌でもいいじゃないかと。この歌みたいに、雨の日も楽
しい傘があったらいいじゃないかと傘にペイントをしました。
2階
作品展会場
マップの番号とあわせてご覧ください。
1.月永進
「岐阜県山県市より」
岐阜県山県市北山
その地に根づいてきた事柄にふれ、見つめた大地の姿
2.
ニシムラマホ
「シェルブールの雨傘」
笠寺下見の雪の日に傘を飛ばされて、ふと、昔きいた「シェルブールの雨傘」の音楽を
思い出しました。縁結びの土地「笠寺」と、離れ離れになった恋人の心の移ろいを描く
ミュージカル映画の名作「シェルブールの雨傘」。絵にしてみたくなり、今回の展示用
に描き下ろしました。
状況が人の心を揺らがせ、現状は変わって行く。かつての記憶は懐かしく存在するよう
でいて、やはり過去にしかなかったりもする。
作品は心の移ろいを絵具に委ね、垂らし滲ませ重ねつづける手法で描きました。
映画のラストは、雪の日、偶然出会ったかつての恋人に「あなた、幸せ?」ときかれて、
「oui très bien(ウィ トレビアン)“ああ、幸せだよ”」とこたえるシーンで終わ
ります。
なんともいえない、色々な感情の込められたひとこと。そんな絵になりました。
笠寺の街並みの移ろいの中にも、様々な人間の心模様があったのだろうと、重ねあわせ
てみます。
3.鈴村由紀
「無題」
※ご自由にお触り下さい。
※釣り糸で固定しておりますのでお気を付け下さい。
※安全の為ベランダに出る人数は 3 名まででお願い致します。
4.小林広恵
「えにしのおこり」 映像 5 分 11 秒
このカーテンはその窓の向こうで語られる笠寺の物語をかすかに映しています。
あなたがその窓の向こうに行けば物語の中へ入ることもできるでしょう。
こちら、と向こう、を楽しんでみてください。
どうぞベランダに出てみてください。部屋の中からみると絵に入ったようにみえます。
5. 小林広恵 「呼吸をととのえて。」
6. 小林広恵 「忘れていく約束たち」
ティンパニーなど楽器を叩くマレットをつかって描き、そこから見えてくる風景を筆で
起こしています。
円形キャンバスはここではない世界を見ることのできる窓のようです。
7.春駒
「あなたを待っていました」
誰もいなくなった部屋に置かれた絵、静かに照らされるその姿、あなたにはどう見えま
すか。
この絵はこの場所が描かせてくれました。
使われなくなった場所が生かされ、人を繋いでいく。
そんな場所と絵を重ね、ずっと待っていたあなたが来てくれた、眠りと目覚めを表現し
ました。
8.ニシムラマホ 「“・ten”と“_chi”に帰る日」
人間の一生をテーマに描いた LIFE シリーズの最後です。
9. 鈴村由紀 「朽ちて行く木は強く座る。」
半分土に還っているもの水分を含んで以前の硬さを保ってないもの、海で削られた流木
達はそれ故いろんな 表情を見せてくれます。土から離れた彼らはやがて土に還ります。
※注意 固定しておりませんのでお手を触れないようお願いします。
10.ニシムラマホ
「“・ten”と“_chi”の隙間に」
人間の一生をテーマに描いた LIFE シリーズの最初です。
押入れ全体で、天と地の隙間に人が生まれ、街ができ、出来事が降り積もる構成になっ
ています。
11. ニシムラマホ
「LINK」
人間の一生をテーマに描いた LIFE シリーズの真ん中です。
人と人とのつながりを描いています。
12.天野入華 「Layer」
多種多様な場所で制作してきた、双葉のシリーズは、その場所と向き合い、その場に
在る何かを救いあげて 作品化するインスタレーション。今回は、建物と集う人達の記
憶や、私の受けた印象から、「層=layer」 というキーワードで制作した。
13. 天野入華 「The moment 02」
幾重にも重なる視点。 光の照らされ方で景色が変わること。 ある時ふと見つける日常
の中の美しさ。 それを見つけた時の気持ちの抑揚。
14.「いにしえへとつなぐ」
縄文、弥生時代頃にはここ笠寺に海岸線があったという。
笠寺公園内にある見晴台遺跡、そこにはかつての痕跡が残っている。
むかしの人々が見た景色はどのようなものだったのだろうか。
場所は違えど存在する海、常に私達の頭上にある空。それは今と同じに見えただろうか。
想像を旅するように、いにしえへとつなぐ。
15.月永進
「sora no kakera」
雲の姿を追った作品。
今回は 13 の作品の一部として配置。
16. 天野入華 「記憶をたどる」
“自分が普段向き合っている全てのものには表層があって、見えているものの向こう
には更に幾重にも重なっ た層がある”と私は思っている。「記憶」というものも、同
じ性質のものだと思っていて、ある時フッと遠 く幼い頃の出来事を思いだす。これは、
その体験を現す試み。
17.タキナオ 「journey」
作品の解体・再構築を繰り返しながら描いていく旅の記憶。
笠寺にのこる縁結び伝説。玉照姫さんと兼平公が出会ったのは雨の日でした。天井にの
こるかわいらしい雨粒の跡と、縄文時代の貝塚がのこるなど海がすぐそばにあったとい
うお話もヒントになり、水のイメージに結びついていき制作しました。
この作品は、以前の作品を解体して制作したものです。2015 年名古屋市 Gallery White
Cube 個展「うみのおと」にて海をイメージした作品を制作。その作品を用い、解体・
再構築しながら 2016 年岐阜県山県市北山で開催された「はじまるげな山県里帰り」に
て、北山に流れる川をモチーフにして、その美しい風景が感じさせる水の巡りの作品を
制作しました。
今回は、これらをさらに小さな粒子へと解体して制作し、また最近取り組んでいるライ
トドローという手法で制作した映像も合わせて展示しました。
私は、ひとつの素材を解体・再構築し制作するという行為をとおして、記憶や感情を遊
ばせています。色とりどりの丸い粒をパンチでくり抜いているとき、生まれた粒が夕日
や、いつか見た山県の神崎川の色に似たりもします。雨や蒸発してく水の粒のイメージ
で粒を縫いながら、ふと見えざる糸で紡がれていく縁のイメージに重なったりします。
丸い粒が自分にも思えます。そんなところに想像が飛ぶ瞬間がとてもたのしいです。大
きな摂理にふれているような感じがしてわくわくします。本当はいつも常にふれている
それらを認識し直す行為でもあるかもしれません。
18.せをはやみ 「棲-sei-」
いつからかそこに棲まうもの
静かに共生している体温
見ようとすればきっと壊れてしまう
あなたの想像するこの生き物はどんな姿をしていますか
※音のインスタレーションです。