JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 〒100-6432 東京都千代田区丸の内2丁目7番3号東京ビルディング プレスリリース 報道機関 各位 JPモルガン・アセット・マネジメント 57資産の期待リターン長期予想を発表 ~前例のない市場環境を15年予測~ [東京 2017年2月20日] JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(所在地:東京都千 代田区、社長:大越昇一)は、本日、57資産の長期見通しと期待 リ タ ー ン に つ い て の レ ポ ー ト 「Long-Term Capital Market Assumptions」(以下、LTCMAs)の日本版を公表しました。 LTCMAsは、J.P.モルガン・アセット・マネジメントが今後10~15 年のマクロ経済の見通しに基づき、50を超える資産クラスや戦 略について期待リターンや想定ボラティリティ、相関係数を算出 したものです。過去21年にわたって毎年公表されていた当レポ ートの英語版について、内外のお客様からご好評をいただき、 2017年版にて初めて日本版を発表しました。 57資産の期待リターンと相関係数を一覧できる LTCMAsでは、投資家のみなさまが今後の投資方針を検討し、ポートフォリオ運営を行うための一助となることを 目的として長期見通しを提供しています。当レポートの特徴は、具体的かつ透明性の高い形で、幅広い資産・戦 略の期待リターンを算出している点です。例えば、債券では金融政策の先行きを予想した上で、国債のみならず 海外クレジットや新興国を含む幅広い資産クラスの長期見通しを策定しています。また、株式でも、マクロ経済だ けでなく各国の企業業績の見通しをもとに、明快な算出プロセスで期待リターンを算出しています。加えて、為替 ヘッジ後の期待リターンや、オルタナティブ資産における新戦略など、多様化する運用手法にも柔軟に対応した 独自の見通しを提供しています。LTCMAsの発行にあたっては、J.P.モルガン・アセット・マネジメントの複数の部 門・地域で横断的に編成された40名以上の専門家チームが、マクロ経済、為替、資産クラス別見通しについて協 議を行い、総合的な長期見通しの策定を行っています。 一部資産クラスの今後10年~15年の期待リターン 2017年版のLTCMAsにおける今後10~15年の長期見通しの概 要は下記のとおりです。 GDP成長率見通しを下方修正 実質GDP成長率の見通しを下方修正し、先進国で0.25%、新興 国で0.50%引き下げました。これは、人口の高齢化と生産性の伸 び悩みによるものです。日本については実質GDP成長率の見通 しは据え置いたものの、インフレ目標達成には更なる時間を要す るという判断から、インフレ率見通しを引き下げています。その結 果、幅広い国で均衡金利水準(経済成長やインフレ率見通しに整 合的な短期金利水準)は低下しています。これに伴い、各資産クラ スの期待リターン見通しも同様に引き下げました。 日本国債 日本株式 先進国国債 1 (抜粋、年率) 2016年版 LTCMAsで の予想値 0.75% 5.75% 1.25% 2.50% 0.75% 1.50% 5.50% 6.75% 米国リート 米国不動産 5.00% 4.50% 5.25% 4.75% マクロ・ヘッジ・ファンド 2.75% 3.50% 5.25% 5.75% (日本除く・為替ヘッジなし) 先進国国債 (日本除く・為替ヘッジあり) 先進国株式 (日本除く) (為替ヘッジあり) 国債のリターンは現預金とほぼ同水準 低成長による低金利政策是正の長期化や均衡金利の低下によっ 2017年版 LTCMAsで の予想値 0.25% 4.75% グローバルインフラ 注: 2015年9月30日時点と2016年9月30日時点の比較。 JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 て、日本国債のリターンは短期金利のそれを下回ると考えられます。また、米国債についても期待リターンの水準 を引き下げ、結果として米短期金利と米国債のリターンの差はほぼゼロとなっています。総じて国債のリターンは 低調であり、債券市場の中では米投資適格債券、米ハイ・イールド社債などの社債投資が堅調と見ています。 株式の期待リターンも低下、オルタナティブ資産の重要性高まる 高バリュエーションと低成長により株式の期待リターンは幅広い国・地域で引き下げられています。また、均衡金 利の低下は、株式リスク・プレミアムの上昇につながり、株価のボラティリティを上昇させる要因となっています。一 方、オルタナティブ資産の中では、実物資産、特に米国不動産が堅調に推移する見込みです。 結果として、株式・債券の比率が6対4のポートフォリオの期待リターン(米ドルベース)は、0.75%程度低下してい ます。期待リターンを高めたいと考える投資家は、オルタナティブ資産についてより本格的に検討する、またはア クティブ運用やベンチマークに囚われない機動的な資産配分手法を検討する必要があると考えます。詳細は別 添のレポートをご参照ください。 J.P.モルガン・アセット・マネジメントは、資産運用会社の社会的使命として、今後もお客様の中長期の資産運用の 一助となる情報発信を継続的に行い、機関投資家や個人投資家のみなさまの資産形成、販売会社ならびに投資 信託市場の発展に貢献すべく尽力していきます。 *** JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社は、日本市場に最も早く進出した外資系資産運用会社のひとつです。日本の金融業界 の規制緩和と共に1987年に投資一任契約業務の認可取得、外資系資産運用会社の第一陣として、1990年に投資信託委託会社 を設立し、また公的年金基金の運用委託など業界の先駆けとなっています。投資家の多様化するニーズに対応すべく、株式、債 券、転換社債、オルタナティブ投資等、あらゆる資産クラスにおいて卓越した運用能力を発揮し、リーディングカンパニーならではの 資産運用サービスを提供します。 J.P.モルガン・アセット・マネジメントは、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーおよび世界の関連会社の資産運用ビジネスのブラ ンドです。国際的な資産運用の分野で140年以上にわたる実績があり、運用総資産残高約1兆7,719億米ドルを有する世界最大規 模の資産運用サービスグループです。世界30ヵ国以上にネットワークを持ち、日本ではJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 を通じて顧客にサービスを提供しています。詳細情報は www.jpmorganasset.co.jp にてご覧いただけます。 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPモルガン・チェース)は総資産2.5兆ドルを有する世界有数のグローバル総合金融サ ービス会社です。投資銀行業務、金融取引資金管理業務、資産運用業務、コマーシャル・バンキング業務、個人・中小企業向け金 融サービス業務において業界をリードしています。世界で展開する法人向け事業は「J.P.モルガン」、米国における個人向け事業は 「チェース」ブランドを用いて、世界有数の事業法人、機関投資家、政府系機関ならびに米国の個人のお客様に金融サービスを提 供しています。JPモルガン・チェースの株式(NY証取:JPM)はダウ・ジョーンズ工業株価平均の構成銘柄として採用されています。 日本におけるJ.P.モルガンの情報は www.jpmorgan.co.jp にてご覧いただけます。 数値は2016年9月末現在 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」という。)が作成したものです。本資料は投資に係る参考情報を提供することを 目的とし、特定の有価証券の勧誘を目的として作成したものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために 作成したものではありません。当社は信頼性が高いとみなす情報等に基づいて本資料を作成しておりますが、当該情報が正確であることを保証す るものではなく、当社は、本資料に記載された情報を使用することによりお客様が投資運用を行った結果被った損害を補償いたしません。本資料 に記載された意見・見通しは表記時点での当社および当社グループの判断を反映したものであり、将来の市場環境の変動や、当該意見・見通し の実現を保証するものではございません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。 2 年次レポート エグゼクティブ・サマリー 要旨 とは、J.P.モルガン・アセット・マネジメントが今後10~15年の見通しに基づき、 50を超える資産クラスや戦略について、10通貨における期待リターンや想定ボラティリティ、相関係数を算出するもので す。算出の結果については、8頁以降に円ベースで掲載しています。(他通貨の結果についてはお問い合わせください) 本稿では、世界経済の今後10~15年の見通しや、各資産クラスの期待リターン算出の背景について説明します。 主要なポイントは以下の通りです。 実質GDP成長率の見通しを下方修正し、先進国で0.25%、新興国で0.50%引き下げています。これは、人口の高齢化と 生産性の伸び悩みによるものです。その結果、幅広い国で均衡金利水準(経済成長やインフレ率見通しに整合的な短期 金利水準)は低下しています。 主要中央銀行が非伝統的な金融政策から脱却するには、以前考えていたよりもはるかに長い時間が必要と見ています。 非伝統的な金融政策の長期化と、均衡金利の低下によって、国債のリターンはほぼ現預金と同水準となりました。すなわ ち、デュレーション・プレミアムは、ついにゼロ%付近となりました。 各資産クラスについて見ると、均衡金利の低下は、株式リスク・プレミアムの上昇につながり、株価のボラティリティを上昇 させる要因となっています。一方、債券市場の中では社債投資(投資適格債券、ハイ・イールド社債を含む)が堅調と見て います。オルタナティブ資産の中では、実物資産が堅調に推移する見込みです。 結果として、株債比率が6対4のポートフォリオの期待リターンは、0.75%程度低下しています。当社は以前から「伝統資産 を用いた固定的な資産配分では現在の相場環境において苦戦する」という考えを持っていましたが、その見方はより強 まっています。よって、期待リターンを高めたいと考える投資家は、オルタナティブ資産についてより本格的に検討する、ま たはアクティブ運用やベンチマークに囚われない機動的な資産配分手法を検討する必要があると考えます。 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 レポート作成メンバーのご紹介 編集チーム コミッティー エグゼクティブ・スポンサー 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 はじめに:2017年の長期見通しでは、「矛盾」 や「逆説」がキーワードとなる 当社は現在の市場環境について、過去のトレンドが続き つつも、前例が全くない状態と考えています。具体的に は、この市場環境とは、低調な経済成長と冴えないリ ターンが引き続き見込まれる中、非伝統的な金融政策 からの脱却を目指す状態を指します。 2017年の長期見通しでは、「矛盾」や「逆説」がキーワー ドになります。例えば、米国の景気拡大は今や8年目に 突入していますが、政策金利は依然としてほぼ0%に位 置しています。また、資金調達コストは過去最低水準と なっていますが、設備投資は低迷したままです。さらに 企業利益の伸びは低調なままですが、株式市場は最高 値を更新しています。 これらの「矛盾」や「逆説」は、世界経済が抱える大きな 課題を暗示しているとも言えます。当社の経済見通し策 定にあたり重視している3つの問題(①人口の減少と高 齢化の進展、②生産性の伸びの鈍化、③レバレッジの 拡大)は、経済成長、ひいては期待リターンのさらなる下 方修正の要因となっています。 マクロ経済の見通し 当社は期待リターン算出の基礎データであるGDP成長率 見通しを、昨年に続き下方修正しました(図表1)。なお、こ の見通しの想定期間は、今後10~15年になっています。 先進国の実質GDP成長率見通しについては、昨年から 0.25%引き下げ、1.50%としました。高齢化に伴う悪影響は、 引き続き大半の先進国につきまとう課題です。また、生産性 の伸びの鈍化は、経済成長の下振れリスクを生み出してい ます。生産性の伸び悩みは過去に例がないわけではあり ませんが、低調な設備投資は、生産性の伸び悩みがさらに 続くリスクを増幅しています。 新興国の実質GDP成長率見通しについては、昨年から 0.50%引き下げ、4.50%としました。これは、先進国も直面 している人口動態や高齢化の問題を反映すると同時に、将 来的なレバレッジの解消(債務の積み上がりの解消)を考 慮しています。 インフレ率については、当社は大半の国において、実績の インフレ率がインフレ目標に近づくとの見方を維持していま すが、同時に、これが比較的長い時間を要する可能性も認 識しています。欧州と日本を中心に、インフレ率の先行きは 決して中央銀行の目論み通りに進んでいるとは言えません。 当社は先進国のインフレ率見通しを0.25%引き下げて 1.75%とする一方で、新興国の想定を3.75%に据え置きま した。 これにより、名目GDP成長率(実質GDP成長率+インフレ 率)の見通しを一律に0.50%下方修正し、先進国を3.25%、 新興国を8.25%としています。 2017年の長期見通しでは、実質GDP成長率の減速、概ね安定的なインフレ率を予想しています。 図表1:マクロ経済の見通し、想定期間は今後10~15年 2017年算出 変化率(%ポイント) 2016年算出 実質GDP(%) コア・インフレ率(%) 実質GDP(%) コア・インフレ率(%) 実質GDP コア・インフレ率 先進国 1.50 1.75 1.75 2.00 -0.25 -0.25 米国 1.75 2.25 2.25 2.25 -0.50 0.00 ユーロ圏 1.25 1.50 1.50 1.50 -0.25 0.00 英国 1.25 2.00 1.50 2.25 -0.25 -0.25 日本 0.50 1.00 0.50 1.50 0.00 -0.50 オーストラリア 2.25 2.25 2.00 2.50 0.25 -0.25 カナダ 1.50 1.75 1.75 2.00 -0.25 -0.25 スイス 1.50 0.75 1.75 0.75 -0.25 0.00 新興国 4.50 3.75 5.00 3.75 -0.50 0.00 ブラジル 2.75 5.25 3.00 5.25 -0.25 0.00 中国 5.25 3.00 6.00 3.00 -0.75 0.00 インド 7.00 5.00 7.25 5.00 -0.25 0.00 ロシア 2.25 5.50 2.75 5.50 -0.50 0.00 出所:J.P.モルガン・アセット・マネジメント、2016年9月30日時点 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 金融政策に関する見通し 日欧の中央銀行で行われているマイナス金利政策や量的 緩和政策については、今後10年~15年にわたって実施さ れ続けるとは考えていません。しかし、金融政策の正常化 には、多くの時間を要すると予想しています。 国別に見ると、米連邦準備制度理事会(FRB)は正常化プ ロセスの先頭を走っていますが、米国が均衡金利(経済成 長やインフレ率見通しに整合的な短期金利水準)に達する のは2020年になると見ています。欧州中央銀行(ECB)と 日銀は、2019年まで利上げに着手せず、均衡金利に達す るのは2023年になるとみています。 3点目は、現在の経済・金融環境では、資産価格の上昇は 実質的に将来の成長の「前借り」になっていることです。前 述のとおり、日欧の現在の金融政策は、マイナス金利や量 債券買入という手段を用いて、需要の喚起を狙ったもので す。ただし、将来の名目経済成長率がほとんど伸びないと の見通しの下では、需要の喚起は実のところ、将来の需要 の部分的な前借りになってしまいます。結果、前借りの分 だけ将来のリターンは低下します。これを考慮し、当社で は幅広い資産クラスで、期待リターンの引き下げを行いま した。 主要な資産クラスの見通し 1点目は、今後10年~15年の想定期間で見ると、米国の現 預金のリターンは実質ベース(物価変動を加味したベース) でマイナスとなっていることです(補足:米国の現預金の名 目期待リターンは2.00%、予想インフレ率は2.25%)。これ は、インフレ目標の達成にはより長い期間を要するという見 通しの下、想定期間の大部分で短期金利がインフレ率を下 回り続けると考えているためです。 主要な資産クラスの見通しについて当社の今年のメッセー ジを述べると、それは「慎重」の1語につきます。より丁寧に 述べると、当社の見通しは「楽観的」でもなく、一方で「悲観 的」でもありません。先の通り、近年主要中央銀行がとった 政策が、部分的な将来の前借りとなっていることは認識し ていますが、同時に、政策立案者らが対峙してきた数々の 危機は非常に深刻なものであったことも認識しています。 また、ここ数年の金融政策の発展についても、当社は感銘 を受けました。現行の非伝統的な手法が限界に達しても、 新たなイノベーションが期待できると考えています。 2点目は、米国長期国債のリターンが現預金のリターンをほ とんど上回らないことです。これは金融政策正常化の緩や かな進行に伴って、国債利回りの上昇(債券価格は下落) が予想されるためです。確かに利息収入やロール・ダウン 効果によってある程度のプラス・リターンが期待できます が、これらでは金利上昇時の債券価格下落を補いきれない と考えています。 今回の期待リターン算出にあたっては、経済成長の見通し や金融政策の正常化に関する予想が、大きな影響を与え ています。言い換えると、低調な経済成長と金融政策の正 常化という2つの材料によって、債券、クレジット、株式、オ ルタナティブ資産など、幅広い資産クラスの期待リターンが 引き下げられています。図表2Aと2Bでは、米国や日本の 資産のリターンについて前回との比較を掲載しています。 金融政策に関するこの見通しは、3つの点から期待リターン の算出に影響を与えています。 幅広い資産クラスの期待リターンが、低調な経済成長と長期にわたる異例の低金利の影響で引き下げられています 図表2A:LTCMAの期待リターンの抜粋 図表2B:LTCMAの期待リターンの抜粋 (%、ドル・ベース) (%、円ベース) 6.25% 7.00% 米国株式 米国大型株式 2.00% 2.50% 米国長期債 6.25% 7.00% 2017 LTCMA 2016 LTCMA 2.00% 2.75% 未公開株式 5.50% 5.50% 米コア不動産 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 2017 LTCMA 2016 LTCMA 1.75% 2.25% 4.50% 5.25% 5.00% 5.25% 米国REIT 注: 2015年9月30日時点と2016年9月30日時点の比較。想定期間は今後10年~15年。 出所:J.P.モルガン・アセット・マネジメント 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 0.25% 0.75% 日本国債 米国総合債券 (為替ヘッジあり) 米国ハイ・イールド 社債(為替ヘッジあり) 5.50% 6.50% 8.00% 8.50% 新興国国債 5.25% 6.00% 日本小型株式 先進国株式 先進国国債 4.75% 5.75% 日本大型株式 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 債券 – クレジットは相対的に堅調 オルタナティブ資産 – 実物資産は底堅い 国債の期待リターンは、(当社が予想する)低調な経済成 長と、長期にわたる金融政策の正常化の影響を最も強く受 けています。主要国の国債利回りは低水準に留まり、期待 リターンは、正常化に伴う金利上昇によって下押し圧力を 受けると予想しています。 オルタナティブ資産については、実物資産が全般的に良好 です。特に不動産のバリュエーションは、一時的な供給不 足と営業キャッシュフローの改善によって、相応に魅力的に なっています。不動産のリターンは、経済成長見通しが悪 化する中でも、底堅く推移するとみられます。また相対的な 視点で見ても、他の資産と比較した不動産の魅力は著しく 高まっており、実物資産に対する需要は当社の想定期間全 体にわたり堅調に推移すると予想しています。 社債投資(投資適格債券およびハイ・イールド社債)は、債 券ユニバースの中でも、相対的に有望な分野です。年初時 点のスプレッド(社債利回りから同年限の国債利回りを差し 引いたもの)は過去に比べ低い水準でしたが、長期投資適 格社債とハイイールド社債の期待リターンは、当社の想定 期間全体にわたり魅力的な水準を維持すると考えています。 新興国債券の現在のスプレッド水準は、新興国が直面して いる構造的な課題と経済成長率の低下を、的確に表してい ます。当社は、新興国の急激な債務拡大を懸念しています が、とはいえ対GDP比での債務水準は先進国よりも格段 に低くなっています。さらに、より注視すべき対外債務は、 管理可能な水準に収まっています。その結果、新興国債券 は相応のリターンをもたらすと予想しています。 株式 – リターン水準は低下 株式の期待リターンは、経済成長見通しの引き下げに概 ね沿う形で、下方修正しています。また、一部ではバリュ エーションの割高さも下方修正の要因となっています。 主要国・地域の株式の期待リターンは、1桁台半ばから 後半(ドル・ベース)と予想しています。ただし、リターンの 源泉は国・地域によって大きく異なります。リターンの主 な源泉は、先進国においては「株主還元の増加」による ものですが、新興国では「1株当たり利益(EPS)の伸び」 となっています。 今回の見通しの下では、市場が織り込む株式リスク・プ レミアム(ERP)は、高止まりを続けるという想定になって います。ただし、当社は、ERPの高止まりについて株式 の割安さを示唆するシグナルとは考えていません。現在 の相場環境では、株式が割安なのではなく、むしろ債券 が割高と見るのが自然でしょう。 このように、当社は、低成長が企業利益の変動の高まり に繋がり、結果として株価の変動性も高まる状況を想定 しています。 プライベート・エクイティ(PE)の期待リターンは、上場株式 の期待リターン引き下げに伴い、下方修正しています。しか しながら、低調な伝統資産の期待リターンを踏まえると、相 対的に高いPEの期待リターンは魅力的と考えられます。た だし、現在の環境下では、PEマネジャーのパフォーマンス に大きなバラつきがある点に注意が必要です。平均的な PEマネジャーへの投資ではポートフォリオへ組み入れる意 義が薄く、一方、上位四分位のマネジャーについては シャープ・レシオ(リスク・リターン効率)の大幅な改善が見 込まれます。 コモディティは、期待リターンを昨年から引き上げた数少な い資産クラスです。世界経済の低調な成長と、なかでも中 国の減速を踏まえると、コモディティのスーパーサイクルが 早期に回復する公算は小さいと思われます。しかし、主要 なコモディティ・セクターにおける供給過剰の解消は、コモ ディティ価格の小幅上昇を示唆しています。 為替 – 均衡にはまだ時間がかかるが、 安定し始める 過去1年を見ると、割高な通貨のバリュエーションの一部は 反転し始め、均衡水準に向かいつつあります。しかし、米ド ルは依然として対ユーロと対円の両方で、過大評価されて いると当社では見ています。今後も、米国の金融政策の緩 やかな正常化と、日欧の持続的な金融緩和が今後数年間 続くとみられる中では、一段のドル安はごく緩やかなペース に留まると予想しています。 新興国通貨は、過去数年間にわたり著しく下落しています。 これは、コモディティのスーパー・サイクル終了による循環 的な減速を反映したものです。この先も、新興国は様々な 構造的課題に対応する過程で、さらに一時的な低迷に見 舞われる恐れがあります。しかし、新興国全体にわたる通 貨の下落は終わりに近づいており、当社の想定期間の後 半に新興国通貨は対米ドルで強含むと見ています。 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 投資家にとっての意味合い 今回の見通し変更によって、大半の資産クラスでシャープ・ レシオ(リスク調整後リターン)の低下が見られました。これ は、経済成長率の低下とデュレーション・プレミアムの急落 によるものです。 しかし、先進国の国債と、株式やハイ・イールド社債などの 高リスク資産との間には明確な違いがあります。国債の シャープ・レシオは昨年と比較して急激に低下しており、現 時点ではゼロ近辺にあります。これは、デュレーション・プレ ミアムの全般的な低下を如実に示すものであり、これまで の金融政策の結果とも言い換えられるでしょう。一方、株式 のシャープ・レシオの引き下げは、小幅に留まっています。 これは、当初のバリュエーションが若干高かったことと、経 済成長見通しの小幅鈍化を反映したものです。社債投資に ついても同様の理由で、小幅の引き下げに留まっています (図表3)。 株式とハイイールド債券のシャープ・レシオは低下。国債のシャー プ・レシオは急激な低下 図表3:資産クラス全体にわたる 予想シャープレシオ (%、ドル・ベース) 現在の相場環境は、伝統資産で固定的な資産配分を行 う投資家にとって、非常に厳しいものです。このような投 資家は以下の選択を迫られます。即ち、①固定的な資産 配分手法を維持し、より低水準のリターンを受け入れる、 ②オルタナティブ資産についてより本格的に検討する、 ③アクティブ運用、またはベンチマークに囚われない機動 的な資産配分手法を検討する、のどれかを選択する必要 があると考えます。特に③については、主要な資産クラス のリターンが当社の予想通りに低調である場合、アクティ ブ運用から獲得し得る超過収益はトータル・リターンの大 半を占めると見ています。 効率的フロンティア(次頁図表4)でも、先に述べた点が確 認できます。これを見ると、効率的フロンティアは、国債 の低調なリターンと株式リターンによって昨年から引き下 げられ、世界の投資家が目安にしてきたであろう8%のリ ターンを提供する資産はほとんどありません。中でも、ハ イ・イールド社債、新興国債券、新興国株式は全て、効率 的フロンティアを上回っており、更なる分散効果の追求に 向けた貴重な機会を示唆していますが、バランス型ポー トフォリオにおいて、8%のハードルをクリアすることは投 資家にとって一段と困難になるとみられます。 米国大型株式 今や将来はここに EAFE株式 新興国株式 デュレーション・プレミアムが低下している背景には、世界 金融危機以降の非伝統的な金融政策が挙げられます。今 後10年~15年の時間軸において、非伝統的な金融政策は 終了すると考えていますが、その効果は長期にわたって続 くとみられます。このため、投資家にはこれまでと異なるア プローチが求められるでしょう。 米国中期国債 2017年 米国長期国債 2016年 インフレ連動債 米国総合債券 米国ハイ・ イールド社債 新興国国債 ヘッジファンド コモディティ 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 出所:J.P.モルガン・アセット・マネジメント 2015年9月30日時点と2016年9月 30日時点の推定 上記で見られた、幅広い資産クラスでのシャープ・レシオ の低下から、二つの極めて単純な事実が導き出されます。 それは、①過去と同じ期待リターンを求めるならより多くの リスクを負う必要があり、②リスクを負えないならば期待リ ターンは下がる、というものです。 10年以上前であれば、一般的なファンド・マネージャーが バランス型ポートフォリオ(リスク許容度は中)で達成可能 なリターンは、8%程度だったと見られます。しかし、ここ数 年のLTCMAにおいて、当社は「6%が新たな8%である」と 主張してきました。そして今年も過去同様、株債比率が6 対4の固定的なポートフォリオの期待リターンは5%~6% となっています。期待リターンの低下を防ぐには、実物資 産、クレジット、新興国株式、オルタナティブ資産へのさら なる分散が必要と言えるでしょう。 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 各国の中央銀行は今や、国債のイールドカーブ全体に関し て、場合によっては社債市場についても、影響を与える意 思と能力を持っています。その結果、リターンに関して言え ば、国債は現預金の代理変数になっており、投資適格債券 は国債の代理変数になっています。そして先進国の株式リ ターンの大半を株主還元が占める中で、株式の性質はます ます社債に類似しています。これは公開市場に対する持続 的な圧力となり、資金調達の際には、未公開市場へのアク セスを強めざるを得なくなっています。確かに現在の金融 政策は景気後退を未然に防ぐ、もしくは景気加速を狙い実 施されています。しかし、本稿の結論は、非伝統的な金融 政策の結果得られるリターンは将来からの前借りであると いうものです。今や将来はここにあるのです。 投資家は厳しい選択に直面しています。すなわち、①静的な資産配分手法を維持し、より低水準のリターンを受け入れる、②オルタナ ティブ資産についてより本格的に検討する、③アクティブ運用、またはベンチマークに囚われない機動的な資産配分手法を検討する、 のどれかを選択する必要があります。 図表 4A:ドル・ベースの効率的フロンティアと、株債比率が6対4のポートフォリオのリスクとリターン 10% 2016年算出の効率的フロンティア 2017年算出の効率的フロンティア 株債比率が6対4の ポートフォリオ(2017年算出) 9% 8% 複利リターン プライベートエクイティ (大型) EAFE株式(先進国 から米国・カナダを 除いたもの) 世界株式 米国大型株式 60/40ポートフォリオ(2016年) 米国ハイ・イールド社債 7% 新興国株式 株債比率が6対4の ポートフォリオ(2016年算出) 6% 米国不動産 5% 60/40ポートフォリオ(2017年) 4% 米国TIPS コモディティ 3% 米国総合債券 米国 現預金 2% 米国中期国債 1% 0% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 想定ボラティリティ 図表4B:各資産の円ベースでのリスクとリターン 10% 新興国株式 9% 8% 複利リターン 7% 先進国株式 (除く日本) 6% 米国REIT 米国ハイ・イールド社債 (為替ヘッジあり) 5% 4% ファンド・オブ・ヘッジ・ 米国総合債券 ファンド(為替ヘッジあり) (為替ヘッジあり) 3% 新興国国債 (為替ヘッジあり) 米国不動産 新興国国債 日本大型株式 金 コモディティ 2% 1% プライベートエクイティ (大型) 日本短期金利 日本国債 0% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 想定ボラティリティ 図表4A 出所:J.P.モルガン・アセット・マネジメント、2016年9月30日時点と2015年9月30日時点 図表4B 出所:J.P.モルガン・アセット・マネジメント、2016年9月30日時点 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 グローバル債券 除く日本 グローバル債券 除く日本 為替ヘッジあり 新興国国債 新興国国債 為替ヘッジあり 新興国国債 現地通貨 新興国社債 新興国社債 為替ヘッジあり 日本大型株式 日本小型株式 米国大型株式 米国小型株式 英国大型株式 株式 欧州大型株式 ユーロ圏大型株式 先進国株式 先進国株式 除く日本 世界株式 世界株式 除く日本 アジア株式 除く日本 新興国株式 未公開株式 米国不動産 米国バリュー・アッド不動産 欧州不動産 グローバルインフラ 米国REIT グローバルREIT 除く米国 オルタナティブ ファンド・オブ・ヘッジファンド ファンド・オブ・ヘッジファンド 為替ヘッジあり ロング・バイアス ・ヘッジ・ファンド ロング・バイアス ・ヘッジ・ファンド 為替ヘッジあり イベント・ドリブン イベント・ドリブン 為替ヘッジあり レラティブ・バリュー レラティブ・バリュー 為替ヘッジあり マクロ・ヘッジ・ファンド マクロ・ヘッジ・ファンド 為替ヘッジあり コモディティ コモディティ 為替ヘッジあり 金 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 新興国国債 グローバル債券 為替ヘッジあり グローバル債券 除く日本 為替ヘッジあり グローバル債券 グローバル債券 除く日本 先進国国債 除く日本 為替ヘッジあり グローバル債券 為替ヘッジあり 先進国国債 除く日本 グローバル債券 先進国国債 為替ヘッジあり 先進国国債 除く日本 為替ヘッジあり 先進国国債 先進国国債 除く日本 債券 ユーロ圏総合債券 為替ヘッジあり 先進国国債 為替ヘッジあり ユーロ圏総合債券 先進国国債 米国レバレッジド・ローン 上位格付 為替ヘッジあり ユーロ圏総合債券 為替ヘッジあり 米国レバレッジド・ローン 上位格付 ユーロ圏総合債券 米国ハイ・イールド社債 為替ヘッジあり 米国レバレッジド・ローン 上位格付 米国ハイ・イールド社債 米国レバレッジド・ローン 上位格付 為替ヘッジ 米国総合債券 為替ヘッジあり 米国ハイ・イールド社債 為替ヘッジあり 米国総合債券 米国ハイ・イールド社債 米短期債券(国債・社債)為替ヘッジあり 米国総合債券 為替ヘッジあり 日本国債 米国総合債券 日本短期金利 日本国債 期待リターン 2017年、幾何 (%) 日本インフレ率 米短期債券(国債・社債) 為替ヘッジあり 年率ボラティリティ 期待リターン 2017年、算術 (%) 日本短期金利 期待リターン 2016年、幾何 (%) 日本インフレ率 長期見通し(円ベース) 金 コモディティ 為替ヘッジあり コモディティ マクロ・ヘッジ・ファンド 為替ヘッジあり マクロ・ヘッジ・ファンド レラティブ・バリュー 為替ヘッジあり レラティブ・バリュー イベント・ドリブン 為替ヘッジあり イベント・ドリブン ロング・バイアス・ヘッジ・ファンド 為替ヘッジあり ロング・バイアス・ヘッジ・ファンド ファンド・オブ・ヘッジファンド 為替ヘッジあり ファンド・オブ・ヘッジファンド グローバルREIT 除く米国 米国REIT グローバル・インフラ 欧州不動産 米国バリュー・アッド不動産 米国不動産 未公開株式 新興国株式 アジア株式 除く日本 世界株式 除く日本 世界株式 先進国株式 除く日本 先進国株式 ユーロ圏大型株式 欧州大型株式 英国大型株式 米国小型株式 米国大型株式 日本小型株式 日本大型株式 新興国社債 為替ヘッジあり 新興国社債 新興国国債 現地通貨 新興国国債 為替ヘッジあり 長期見通し(円ベース) 10ページ目の「ご留意事項」を必ずご覧ください。 ご留意事項 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」という。)が作成したものです。本資料は投資に係る参考情報を提供することを目的とし、特定 の有価証券の勧誘を目的として作成したものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。 当社は信頼性が高いとみなす情報等に基づいて本資料を作成しておりますが、当該情報が正確であることを保証するものではなく、当社は、本資料に記載された 情報を使用することによりお客様が投資運用を行った結果被った損害を補償いたしません。本資料に記載された意見・見通しは表記時点での当社および当社グ ループの判断を反映したものであり、将来の市場環境の変動や、当該意見・見通しの実現を保証するものではございません。また、当該意見・見通しは将来予告 なしに変更されることがあります。 商号:JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号 加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会(010-00105号)、一般社団法人投資信託協会、日本証券業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
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