金融・物価集中審議に際して ~ 消費の活性化、人手不足の克服

資料5-2
~
金融・物価集中審議に際して
消費の活性化、人手不足の克服
(参考資料)
平成29年2月15日
伊藤 元重
榊原 定征
高橋
進
新浪 剛史
~
●消費の活性化に向けて
図表1 可処分所得変化の要因分解
• 賃金・俸給の伸びに支えられ、可
処分所得は増加(図表1)。
• こうした背景には、政策による押
上げも寄与(図表2)。
• ただし、正社員の年齢別賃金の動
きをみると、30歳代後半から40歳
代という子育て世代の増加テンポ
が緩やか(図表3)。
(兆円)
230.0
図表2 賃金・所得関連施策の効果
2013~2016年度
(前年 差、兆 円)
7
賃 金・俸 給+純 財産所 得
( 折線)
6
5
4
3
賃 金・俸 給
2
1
所 得税等
0
社 会負担
-1
-2
純 財産所 得
可 処分所 得
( 折線)
-3
そ の他
-4
2013
14
15
16
( 年)
(備考)内閣府政策統括官(経済財政分析担当)「日本経済2016-2017」図表第1-1-4
図表3 年齢階級別賃金(所定内給与)の変化
228.0
226.0
0.48兆円
③保育士、介護職員
の処遇改善による増
加分
224.0
222.0
(2013年から2015年の累積変化率、%)
8.7
7.0
(所定内給与月額、千円)
450.0
2015年(右目盛)
6.0
220.0
5.8
400.0
5.0
218.0
4.0
216.0
3.0
214.0
社 会給付
216.5
212.0
1.46兆円
②所得拡大促進税制
による増加分
0.81兆円
①最低賃金引上げに
よる波及増加分
210.0
2012年度の賃金・俸給
上記の施策による効果
アベノミクスの好循環による効果
(備考)内閣府政策統括官(経済財政分析担当)による推計。なお、①は最低賃金の引上げ
がパートタイム労働者の平均賃金を押し上げる効果を推計し、パートタイム労働者の平均賃
金、年間労働時間及び常用雇用者数を用いて、マクロの増加額を算出。②は当該税制の適用
額・減収見込み額及び税額控除率から、本税制の適用対象となった給与等支給増加額を求め、
アンケート調査を利用し、当該税制が「賃上げの実施の判断を後押しした」と回答した企業
の割合を乗じて算出。③は、保育士・介護職員については、一人当たり処遇改善額にそれぞ
れの人数を乗じて算出。2016年度の賃金・俸給は総雇用者所得の16年12月のまでの伸びを用
いて、その他の数値は政府経済見通しの数値により延伸した。
3.9
3.1
2.9
2.0
2.3
2.4
2.0
1.2
0.8
1.0
350.0
2.1
1.0
300.0
0.0
250.0
-1.0
-2.0
-3.0
2013年(右目盛)
-4.0
-19
200.0
累積変化率
(左目盛)
-3.0
20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69
150.0
70(年齢階級)
(備考)厚生労働省「賃金構造基本調査」により作成。男女計・学歴計・10人
以上の企業計の正社員・正職員。
2
図表4 所得・消費の推移(SNA)
112
(%)
(2010年=100)
• 所得の増加に対し、消費税率引上
げ以降の消費の増加は緩やかであ 108
り、マクロの消費性向は低下(図
104
表4)。
• 世帯主の年齢別・所得階級別にミ
クロの消費性向をみても、若年層 100
や高所得層に低下傾向(図表5)。
122
120
所得
(雇用者報酬)
消費
(民間最終消費支出)
118
116
114
消費・所得比率
(目盛右)
112
96
110
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
11
2010
12
13
14
15
16
(備考)内閣府「国民経済計算」により作成。
図表5 世帯主年齢別・所得階級別消費性向(家計調査、2人以上勤労世帯)
105
( %)
90
( %)
I
60~64歳
100
85
95
II
90
80
85
65歳以上
40~59歳
80
III
75
75
70
IV
70
65
V
39歳以下
60
1995
2000
05
10
65
1516( 年) 1995
2000
05
10
( 年)
1516
(備考)内閣府政策統括官(経済財政分析担当)「日本経済2016-2017」図表第1-1-5を総務省「月次家計調査」により2016年分を延伸。なお、所得階級5分
位(可処分所得月額)は2016年時点で、約25万、33万、41万、48万、67万円となっている。
3
図表6 10万円の国内旅行消費の行先(2014年)
• プレミアムフライデー(2月24日
開始)も活かした、国内旅行等の
活性化は直接的にも広く需要を喚
起(図表6)。
• 住宅リフォーム等に大きな潜在需
要(図表7)。
• 構造変化に伴う新たな需要の発生
も(図表8)。
鉄道、道路、航空運輸、水運
25,991
宿泊
16,105
飲食
11,808
製造業全般
11,047
卸小売業
9,192
旅行、その他運輸、通信等
7,047
菓子類、その他食品
6,843
金融・保険・不動産、その他サービス
5,099
スポーツ、公園、娯楽サービス等
2,674
農林水産業・農林水産食品
1,704
賃貸業(自動車含む)
1,375
社会教育、医療保健等
1,117
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
(円)
(備考)国土交通省観光庁(2016)「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究(2014年)」に
より作成。
図表7 住宅リフォーム需要の拡大
図表8 人口構造の変化による需要シフト例
(相談件数)
(億円)
35,000
1400
1281
リフォームに関する相談
(15年で36倍)
30,000
1300
子供用紙おむつ
25,000
20,000
9,852
新築等住宅に関する相談
(15年で4.4倍)
1200
1252
1100
1000
15,000
1036
900
10,000
18,786
270
800
5,000
700
4,229
728
大人用紙おむつ
0
2000 01
02
03
04
05
06
07
08
09 2010 11
12
13
14
15
(年度)
(備考)公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報」により作成。
600
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014(年)
(備考)経済産業省「工業統計調査」により作成。
4
●人手不足の克服に向けて
•
•
人材の獲得競争が始まっており、時代のニーズにマッチした人材供給が喫緊の課題。失業率と
欠員率の関係でみるとミスマッチが縮小するような構造変化は見られない。
景気回復に伴い人手不足が顕著、人手不足が慢性化する業種も多い(建設、製造、医療・介護、
家事支援、IT等)。
図表10 主な職種別の有効求人倍率
図表9 失業率と欠員率
(部門ごとに3年で増加幅の大きい3職種を掲載)
(雇用失業率、%)
7.0
2010年~2012年11月
【建設・採掘】
(倍)
6.0
ミスマッチ拡大
2005年1月
6.0
5.0
4.0
5.0
7.00
7.03
3.0
4.0
2.0
5.93
2.84
2.01
2.0
2.80
2.66
5.0
2.99
1.87
1.68
1.61
1.45
1.25
1.78
0.97
4.0
建設
2.15
1.0
2.08
1.68
1.31
2.88
2.34
2.26
土木
建設躯体工事(右軸)
3.0
0.0
2013年
2014年
2015年
2016年
2012年12月~現在
【専門的・技術的職業等】
(倍)
5.0
建築・土木・測量技術者
4.36
社会福祉の専門的職業
需給改善
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
6.5
7.0
(欠員率、%)
1.0
1.82
1.59
1.88
1.64
2.33
2.08
2.0
2.15
2.07
2.24
2015年
2.47
家庭生活支援サービス
接客・給仕
1.0
2014年
2.90
生活衛生サービス
1.96
1.38
2013年
2.62
2.61
2.26
2.59
3.44
3.09
3.02
2.22
3.58
3.53
3.0
3.69
3.0
(備考)内閣府統括官(経済財政分析担当)による。
・欠員率=(有効求人数-就職件数)/(有効求人数-就職件数+非農林雇用者数)
・雇用失業率=完全失業者数/(非農林雇用者数+完全失業者数)
3.91
3.75
3.16
2.0
【サービス】
(倍)
4.0
情報処理・通信技術者
介護関係職種
4.0
1.0
2.0
金属材料製造・加工・溶接等
2013年 2014年 2015年 2016年
2.0
1.5
製品検査(金属除く)
6.0
1.0
1.0
機械整備・修理
3.32
2005年~2010年
需給悪化
【生産工程】
(倍)
3.0
7.0
ミスマッチ縮小
3.0
7.31
(倍)
8.0
2016年
2013年
2014年
2015年
2016年
5
•
•
•
例えばIT分野では、先端IT人材と情報セキュリティ人材が2020年で最大37万人不足、2030年で
最大約80万人不足する見込み。足元ではプログラマやSEなどのIT人材の不足感が大きい。
当面の解決策として、若者や女性(例えば、理系女子)などに学び直しの機会拡充など重点的
に支援すべき。
外国人材は2016年に100万人を超過。高度外国人材の受入に引き続き積極的に取り組むべき。
図表11 IT人材の需給見込み
図表13 IT人材の職種別過不足感~北海道IT企業の調査~
(万人)
180
160
供給人材数(人)
140
人材不足数(人)
0
管理部門
70 75 79
53 57 62 66
37 41 45 49
33
29
17 21 25
120
100
80
デザイナー
20
オペレータ
64.9
(備考)経産省委託事業「IT ベンチャー等によるイノベーション促進のための人
材育成・確保モデル事業報告書」(2016年3月)高位シナリオに基づき作成。
91
60
49
56
65
69
68
72
0
32.9
20.3
79.7
22.9
0
77.1
16.3
0
83.7
適正
0
過剰
図表14 文系・理系学部入学者に占める女子の割合
108
80
0
(備考)一般社団法人北海道IT推進協会「北海道ITレポート2016」(2017年2月)
より。北海道内のIT系企業878社へのアンケート調査(調査実施2016年秋から冬)
(万人)
100
0
27.3
67.1
不足
図表12 外国人労働者数の推移
120
0.5
35.1
72.7
2030
2029
2028
2027
2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
0
100
46.8
SE(システムエンジニア)
回路設計者
(%)
80
2.2
52.7
プロジェクトマネージャー
89 90 91 91 92 92 92 92 92 92 92 92 92 91 91 90 89 88 88 87 86
60
83.2
プログラマ
(年)
40
14.7
営業部門
60
40
20
79
50
(%)
42.0
45
40
文系(人文・社会科学)
30
21.6
40
15
20
5
10
33.4
20.2
20
8.8
10.4
11.7
44.6
29.1
25.3
21.9
43.8
37.5
31.9
35
25
42.5
22.6
24.7
15.1
理系(理工・医歯薬看護)
0
1976
0
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (年)
(備考)厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況について」より作成。各年10月末現在の届出状況。
1981
1986
1991
1996
2001
2006
2011
2016
(年)
(備考)文科省「学校基本調査」各年度版より作成。文系は人文科学・社会科学と教養
課程文科、理系は理学、工学、医学・歯学・薬学・看護学と教養課程理科の合計。
6
•
自動化が生産性向上につながる産業分野が多数存在。中小企業、サービス業、教育や政府部門
を含め、あらゆる分野で省力化投資・IT化投資を促進していくべき。
【自動化による生産性向上の可能性】
マッキンゼー(2017年1月)は、ロボット、AI等の「自動化」が経済に与える影響を分析
 完全に自動化する職業は全職業の5%(のみ)。全職業の多く(6割)は業務の3割程度が自動化される
 技術・経済・社会的要因で自動化の可能性に差異。日本は業務の55%が自動化できる可能性(図表15①)
 日本は米国と比べて、製造業、サービス業、教育や政府部門など広範な分野で自動化できる可能性が高い
図表15
技術的に自動化可能な業務
②主要業種別の日米比較
①各国比較
~日本は国全体で、業務(時間ベース)の最大55%
を 自動化できる可能性~
30
35
40
45
(%)
55
50
60
55%
日本
52%
インド
51%
中国
米国
46%
欧州5か国
46%
米国
日本
製造業
小売業
建設業
公益サービス
卸売業
金融・保険業
不動産業
公務
医療・福祉(官民双方)
情報
経営管理
教育(民間含む)
72%
56%
58%
55%
59%
58%
52%
51%
38%
45%
50%
38%
60%
53%
47%
44%
44%
43%
40%
39%
37%
36%
35%
28%
(備考)McKinsey Global Institute “A Future that works: Automation, Employment and Productivity” (2017 Jan)より作成
7
•
人手不足を解消する方法として省力化投資を前向きに検討したいという企業・労働者は多い
が、実際に人手不足のために省力化投資を実施した企業はわずか。地域の中小企業・サービ
ス業を含め、省力化投資・IT化投資を後押しする環境整備を図るべき。
図表16 企業の人材過不足への取組意向
0%
(N=2,406社)
50%
24.4
教育訓練・能力開発強化
12.3
省力化投資(機械化、自動化、IT化等)
100%
55.3
図表18 人的投資、人手不足への対応
(大企業調査)
(%)
6.9
35.0
0
20
40
7.6
積極的に検討する
検討余地はない
無回答
64.3
34.4
8.4
作業工程や業務改善による生産性向上
状況に応じて検討する
分からない
25.8
0%
(N=7,777人)
20%
(社会全体で)教育訓練・能力開発強化
40%
60%
45.5
42.7
80%
賃上げ等待遇改善
14.5
外国人の採用拡大
15.8
100%
6.3
8.6
31.5
46.4
13.4
今後、省力化投資の増額を検討
省力化投資を実施済み
従業員の配置転換
16.7
48.7
18.3
稼働時間短縮・事業規模縮小
積極的に行うべき
行うべきではない
無回答
検討余地はある
分からない
(備考)独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材(人手)不足の現状等に関する調
査(企業調査)及び働き方のあり方等に関する調査(労働者調査)」結果(2016年6月、
12月)より作成。人材過不足に直面した企業の対策に関し、上位3項目を抜粋。
39.2
30.1
製造業(311社)
非製造業(455社)
12.2
9.9
現行人員の残業、シフト変更
省力化投資(機械化、自動化、IT化等)
42.5
23.8
27.6
外注、委託の活用
図表17 労働者から見た人材過不足対策へのニーズ
80
72.7
74.8
新卒・中途採用強化
21.7
女性・高齢者活躍拡大
従業員の配置転換
60
3.1
13.8
3.2
1.3
1.9
0.7
(備考)日本政策投資銀行 全国設備投資動向調査「特別アンケート 企業行動に関す
る意識調査結果(大企業)」(2016年8月)より作成。調査実施時期は2016年6月。資本
金10億円の企業対象。
8