2016・2017・2018年度 日本経済の見通し(改訂)

平成29年2月16日
2016・2017・2018年度
~
日本経済の見通し(改訂)
1~3月期以降も、緩やかな回復が続く
~
富国生命保険相互会社(社長 米山 好映)は、2016・2017・2018年度の経済見通しを改訂しました。
【実質GDP成長率予測】
2016年度 +1.2%(前回+0.9%)、2017年度 +1.3%、2018年度 +0.8%
○ 10~12月期は、外需主導でプラス成長に
2016年10~12月期の実質GDP成長率は、
前期比+0.2%、
年率+1.0%と ナス成長と
4四半期連続のプ
ラ
4~6月期の実質GDP成長率は、
前期比年率▲1.3%と
3四半期連続でマイ
なっ た。
ス成長と
なっ
た。
輸出がア
ジ
ア
や米国向けを
中心に増加基調を
維持し
たこ
と
で、
7~9月期
日本経済は、 震災後の落ち 込みから 急速に立ち 直っ ている こ と で、 想定さ れたよ り も マイ
に続き 外需主導の成長と
なっ ラ
た。
一方、
内需については伸び悩んでいる
。 横ばい圏内で推
ナス幅は小幅と
なっ た。 サプ
イ チェ
ーン
の修復につれて、 自動車を 中心に生産活動は上
移し 、
てそれに伴い、
いる 設備投資は、
IT関連投資な
ど の増加で2四半期ぶり
ラ ス に転じ
、ぐ
住宅投資
向き
輸出も
前月比で増加に転じ
ている 。 ま た、 にプ
自粛ムード
が和ら
につれ
も 既往の着工分が進捗し
て微増と なっ 動き
た。 がみら
し かし れ、
、 民間需要の柱である
個人消費は、
生鮮
て、
薄型テ レ ビ など の耐久消費財にも
個人消費についても
上向いている
。
野菜の高騰と いう 一時的な要因など によ り 微減と なり 、 また、 公共投資は、 2016年度予算
を 前倒し 執行し た影響で減少が続いた。
○ リ1~3月期以降も、緩やかな回復が続く
バウン ド 局面と なる 7~9月期は、 大幅なプ ラ ス成長が見込まれ、 その後も 、 日本経済は
上向き
の動き が続く
だろ う 。 想定を 上回る
早さ で生産活動は正常化に向かい、
てい
1~3月期以降も
、緩やかな回復が続く
と 見込んでいる
。原油等の資源価格が持ち懸念し
直すなか、
た雇用環境の悪化は回避でき
る と 考えている 。 ており
その中、
復旧・ 復興に係る 需要も
引き
続き
先進国、 新興国と も に製造業の景況感が改善し
、 海外経済は回復傾向を
辿る
と 想定
顕在化する
こ と で、 内需は堅調に推移する
と 見込んでいる
。 一方、 金融資本市場の混乱に
し ている 。 それによ
り 我が国の輸出は、 当面、
増加基調を 維持する
と 見込んでいる 。 こ の
よ
り
、
欧米を
中心に海外経済は減速感が強ま
る
と
みら
れ、
海外需要は減退する
と 見込ま れ
よ う な海外需要の回復や円安にと も なう 企業収益の改善を 受けて、 製造業の投資意欲が高
る
り 、 輸出は供給制約がほぼ解消する
も のの、
年度下期に停滞する
だろ う 。 こ
ま。
る それによ
こ と で設備投資は引き
続き 持ち 直し ていく だろ
う 。 また、
2016年度補正予算における
のよ
う に足元の内需が急回復する
一方、 外需の先行き には陰り
がみら
れる ため、 2011年度
公共事業が進捗する
こ と も 成長率の押上げに寄与する
こ と になる
。 家計部門については、
の実質GDP成長率の予測を
+0.3%と
5月時点の前回予測を 据え置いた。
雇用環境の改善や既往の株高を
映し て家計の節約志向が幾分和ら
ぐ こ と で、 個人消費は概
ね底堅く 推移する だろ う 。 一方で住宅投資は、 空室率上昇への懸念など によ っ て貸家着工
がピ ーク ア ウト し ている ため、 緩やかに減少し ていく と 見込んでいる 。 日本経済の足取り
は、 こ れま での成長の源泉であっ た外需に、 設備投資や経済対策効果など が加わる こ と で
安定し ていく こ と になろ う 。 なお、 2017年度の実質GDP成長率は前年比+1.3%と 前回予測
から 0.3ポイ ン ト 上方修正し ている 。
○お問い合せ
富国生命保険相互会社
もりざね
担当:財務企画部 森実 潤也、大野 俊明
〒100-0011東京都千代田区内幸町2-2-2
TEL (03)3593-6813 (090)6493-3334
http://www.fukoku-life.co.jp
[email protected]
図表1.2016・2017・2018年度 経済見通し
(前年比、%)
2015
2016年度見込み
年度
実績
上期
2017年度予測
上期
下期
(前期比)
名目国内総生産(兆円)
実質国内総生産(兆円)
内
民
間
需
2018年度予測
下期
上期
(前期比)
下期
(前期比)
532.2
539.2
537.3
540.9
546.6
543.1
549.5
554.3
551.3
557.1
2.8
1.3
0.8
0.7
1.4
0.4
1.2
1.4
0.3
1.1
517.1
523.6
522.2
524.9
530.3
527.8
531.0
534.8
533.0
534.7
1.3
1.2
0.9
0.5
1.3
0.5
0.6
0.8
0.4
0.3
需
1.1
0.6
1.4
▲ 1.7
1.0
0.1
0.6
0.7
0.7
0.3
要
0.8
0.5
0.6
0.0
0.6
0.3
0.4
0.6
0.3
0.2
民
間
最
終
消
費
0.5
0.6
0.6
0.2
0.7
0.4
0.4
0.5
0.3
0.1
民
間
住
宅
投
資
2.7
5.5
5.3
▲ 0.2
▲ 1.7
▲ 1.9
0.7
0.6
▲ 0.8
2.0
民
間
設
備
投
公
政
的
府
需
最
終
消
資
0.6
1.7
1.0
0.9
2.6
1.7
0.8
1.3
0.5
0.8
要
0.3
0.1
▲ 0.1
0.1
0.4
0.3
0.1
0.1
0.1
▲ 0.0
費
2.0
0.8
▲ 0.3
0.6
0.8
0.3
0.3
0.7
0.3
0.3
0.4
0.9
▲ 2.0
公 的 固 定 資 本 形 成
▲ 2.0
▲ 0.6
0.2
5.1
4.3
▲ 0.4
0.4
財貨・サー ビス の純 輸出
0.2
0.6
0.3
0.4
0.2
0.0
0.1
0.1
0.0
0.2
財貨・サービ スの 輸出
0.8
2.6
0.3
3.9
4.0
1.3
1.4
3.3
1.2
2.8
財貨・サービ スの 輸入
▲ 0.2
▲ 1.0
▲ 1.6
1.6
2.4
1.1
0.9
2.4
1.1
1.8
注1.実質値は2011暦年連鎖価格
注2.内需、民間需要、公的需要、財貨・サービスの純輸出はGDPに対する寄与度
(主な経済指標と前提条件)
鉱 工 業 生 産 指 数
▲ 1.0
1.3
0.4
3.2
1.9
0.1
0.6
2.3
1.2
1.7
国 内 企 業 物 価 指 数
※
▲ 3.3
▲ 2.7
▲ 4.0
▲ 1.3
1.1
0.7
1.4
1.4
1.4
1.4
消 費 者 物 価 指 数
※
0.2
0.0
▲ 0.4
0.4
0.8
0.6
0.9
1.0
0.9
1.1
消費者物価(除く 生鮮 ) ※
0.0
▲ 0.2
▲ 0.4
0.0
0.7
0.5
0.8
0.9
0.8
1.0
貿 易 収 支(兆円)
0.5
6.4
3.0
3.4
6.7
3.0
3.4
8.1
3.6
4.5
経 常 収 支(兆円)
18.0
21.6
10.4
11.2
23.5
11.5
11.8
26.2
12.7
13.5
※
0.2
0.4
0.5
0.3
0.4
0.5
0.3
0.6
0.5
0.7
完 全 失 業 率 ( % )
3.3
3.1
3.1
3.1
3.0
3.1
3.0
2.9
2.9
2.9
住 宅 着 工 戸 数 ( 万 戸)
92.1
96.8
99.4
94.4
91.4
92.7
90.3
90.8
90.4
91.4
為替レート(¥/$)
120.1
108.4
105.3
111.5
114.2
113.8
114.6
116.3
115.7
116.9
($/b)
49.4
46.7
44.0
49.5
54.5
54.1
54.9
56.1
55.7
56.5
米国実質成長率(年率)
2.6
1.6
1.0
2.6
2.4
2.4
2.5
2.8
3.0
2.8
中 国 実 質 成 長 率
6.9
6.7
6.7
6.7
6.6
6.6
6.6
6.3
6.4
6.3
名 目 賃 金 指 数
原油価格
※
注1.原油価格は円ベースの入着価格を為替レート(月中平均、インターバンク中心相場)でドル換算
注2.米国・中国GDPは暦年ベースの成長率
注3.※印がついた指標の半期は原系列(前年比伸び率)、それ以外は季節調整値(前期比伸び率)
-1-
◇日 本 経 済 の現 状 と見 通 し
○10~12月 期 の実 質 GDP
2 月 13 日 に 発 表 さ れ た 2016 年 10
~ 12 月 期 の 一 次 QE に よ る と 、 実 質
GDP 成 長 率 は 前 期 比 + 0.2% ( 年 率 換
算 + 1.0% )と 4 四 半 期 連 続 の プ ラ ス 成
図表2.実質GDP成長率の寄与度分解
(前期比、%)
3.0
2.0
1.0
-1.0
や在庫投資のマイナス寄与などで内需
-2.0
の 寄 与 度 が 同 ▲ 0.0 ポ イ ン ト と な っ た
-3.0
っ た 。名 目 GDP 成 長 率 は 同 + 0.3%( 年
率 換 算 + 1.2% )と 、名 目 ベ ー ス で も 4
0.6 0.4 0.3
0.2
0.2
0.0
長 と な っ た( 図 表 2)。公 共 投 資 の 減 少
も の の 、輸 出 が 2 四 半 期 連 続 で 増 加 し
た こ と で 外 需 が 同 + 0.2 ポ イ ン ト と な
1.4
-0.1
民間最終消費
民間在庫投資
公的需要
実質成長率
-0.3
民間設備投資
純輸出
民間住宅投資
-4.0
-5.0
12
13
15
14
(暦年四半期)
16
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」
四 半 期 連 続 の プ ラ ス 成 長 と な っ た 。 物 価 の 動 き を 総 合 的 に 示 す GDP デ フ レ ー タ ー は
前 年 比 ▲ 0.1% と 2 四 半 期 連 続 で マ イ ナ ス に な っ た 。 10~ 12 月 期 の 実 質 GDP を 需 要
項 目 別 に み る と 、 民 間 最 終 消 費 は 同 0.0% 減 と 生 鮮 野 菜 の 高 騰 も あ っ て 家 計 の 節 約 志
向 が 続 き 、 4 四 半 期 ぶ り に 減 少 し た 。 住 宅 投 資 は 同 0.2% 増 と 増 加 が 続 い た も の の 、 7
~ 9 月 期 よ り 伸 び が 鈍 化 し た 。 設 備 投 資 は 、 同 0.9% 増 と 2 四 半 期 ぶ り に 増 加 し た 。
公 的 需 要 に つ い て は 、公 的 固 定 資 本 形 成 が 同 1.8% 減 と 2016 年 度 予 算 を 前 倒 し 執 行 し
た 影 響 も あ り 2 四 半 期 連 続 で 減 少 す る 一 方 、 政 府 消 費 は 同 0.4% の 増 加 と な っ た 。 外
需 に つ い て は 、 輸 出 が 同 2.6% 増 と ア ジ ア や 米 国 向 け を 中 心 に 増 加 し た 一 方 、 輸 入 が
同 1.3% 増 と 小 幅 な 増 加 に と ど ま っ た こ と で 、 外 需 は プ ラ ス 寄 与 と な っ た 。
今 後 の 日 本 経 済 に つ い て は 、1~ 3 月 期 以 降 も 、緩 や か な 回 復 が 続 く と 見 込 ん で い る 。
原油等の資源価格が持ち直すなか、先進国、新興国ともに製造業の景況感が改善して
お り 、海 外 経 済 は 回 復 傾 向 を 辿 る と 想 定 し て い る 。そ れ に よ り 我 が 国 の 輸 出 は 、当 面 、
増加基調を維持すると見込んでいる。このような海外需要の回復や円安にともなう企
業収益の改善を受けて、製造業の投資意欲が高まることで設備投資は引き続き持ち直
し て い く だ ろ う 。ま た 、2016 年 度 補 正 予 算 に お け る 公 共 事 業 が 進 捗 す る こ と も 成 長 率
の押上げに寄与することになる。家計部門については、雇用環境の改善や既往の株高
を映して家計の節約志向が幾分和らぐことで、個人消費は概ね底堅く推移すると見込
んでいる。一方で住宅投資は、空室率上昇への懸念などによって貸家着工がピークア
ウトしているため、緩やかに減少していくと見込んでいる。日本経済の足取りは、こ
れまでの成長の源泉であった外需に、設備投資や経済対策効果などが加わることで安
定 し て い く こ と に な ろ う 。な お 、2017 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 は 前 年 比 + 1.3% と 前 回
予 測 か ら 0.3 ポ イ ン ト 上 方 修 正 し て い る 。2018 年 度 に つ い て は 、雇 用・所 得 環 境 、企
業 収 益 の 改 善 と い う 好 循 環 が 途 切 れ ず 、潜 在 成 長 率 並 み の 成 長 を 辿 る と 想 定 し て い る 。
注目されるトランプ新政権の経済政策について、通商政策は、不透明な部分が多く交
渉にも時間がかかるとみられることから今回の予測では織り込んでいない。一方、所
得税・法人税の減税およびインフラ投資の拡大の効果を織り込んでいる(規模は共和
党 案 に 近 い 水 準 )。そ れ に よ り 2018 年 の 米 国 経 済 を 0.4 ポ イ ン ト 押 し 上 げ る と 想 定 し
ている。
-2-
なお、主要な需要項目については以下の通り。
○個 人 消 費 は、再 び弱 い動 きに
雇 用 環 境 は 改 善 傾 向 と な っ て い る 。12 月 の 有 効 求 人 倍 率 は 1.43 倍 と 約 25 年 ぶ り の
高 水 準 ま で 上 昇 す る な ど 労 働 需 給 は 引 き 締 ま っ た 状 況 が 続 い て い る( 図 表 3)。完 全 雇
用状況と言えるなか、失業率は一進一
退 の 動 き な が ら も 12 月 が 3.1% と 良 好
図表3. 有効求人倍率と新規求人数の推移
な水準を維持している。今後について
100
も雇用環境は緩やかに改善すると見込
90
んでいる。先行指標である新規求人数
は増加傾向となっており、人手不足を
(倍)
70
い。生産年齢人口が減少傾向となるな
60
1.4
1.43
0.8
有効求人倍率(右目盛)
0.6
0.4
50
0.2
0.0
40
05
11
12
(月次)
(資料)厚生労働省「一般職業紹介状況」
だろう。こうした状況を映して、所得
1.2
1.0
続することで雇用者数は緩やかに増加
し、労働需給は一層引き締まっていく
1.8
1.6
新規求人数
80
背景に企業の採用意欲は依然として強
かでも、高齢者や女性の労働参入が継
(万人)
06
07
08
09
10
13
14
15
16
は 増 加 基 調 と な っ て い る 。 10 ~ 12 月 期 の 名 目 の 一 人 当 た り 現 金 給 与 総 額 は 前 年 比
0.2% 増 と 7~ 9 月 期 の 同 0.5% 増 か ら 伸 び が 縮 小 し た ( 図 表 4)。 基 本 給 に あ た る 所 定
内 給 与 の 伸 び が 同 0.4% 増 と 伸 び 率 が 高 ま っ た 一 方 で 、 残 業 代 に あ た る 所 定 外 給 与 の
減少が続き、これまでプラスであった特別給与が横ばいにとどまっている。今後につ
いても、現金給与総額は前年比プラス
で推移するものの、低い伸びにとどま
ると想定している。ひっ迫する労働需
給によりパートタイム労働者の賃金に
は引き続き上昇圧力がかかるとみられ
図表4.名目・実質賃金指数の推移
(前年比、%)
2.0
名目賃金指数
1.0
0.2
0.0
るが、正社員の基本給にあたる所定内
給与は低い伸びにとどまるだろう。
▲0.1
-1.0
2017 年 春 闘 に つ い て は 、 物 価 低 迷 や
-2.0
2016 年 前 半 の 企 業 収 益 の 鈍 化 の 影 響
を受けて、ベースアップの伸び率は前
-3.0
年に続き鈍化すると見込んでいる。労
務行政研究所が公表したアンケート調
特別給与
所定外給与
実質賃金指数
所定内給与
-4.0
12
13
14
15
16
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計調査」 (暦年四半期)
(備考)直近のデータは2016年7月、8月の平均
査によれば、前年調査に比べ経営側が自社におけるベースアップを「実施する予定」
と回答した割合は低下したほか、賃上げ率(定期昇給を含む)の見通しも下回ってい
る。加えて、政府が進める働き方改革は、非正規社員の給与増を促すものの、短期的
には労働時間削減によって残業代が減少すると見込まれる。なお、実質賃金について
は、生鮮食品の高騰により消費者物価(帰属家賃を除く総合)がプラスに転じたこと
で 10~ 12 月 期 は 前 年 比 0.1% 減 と な っ た 。先 行 き に つ い て も 、実 質 賃 金 は 、消 費 者 物
価の上昇幅が徐々に拡大することもあって前年をわずかに下回って推移すると想定し
て い る 。 そ の た め 、 雇 用 者 数 は 増 加 傾 向 が 続 く も の の 、 実 質 総 賃 金 ( 実 質 賃 金 ×雇 用
者数)は低い伸びにとどまるだろう。
-3-
個 人 消 費 は 、再 び 弱 い 動 き と な っ た 。10~ 12 月 期 の 民 間 最 終 消 費 支 出 は 前 期 比 0.0%
減となった。雇用・所得環境の改善を受けて個人消費は基調としては持ち直している
も の の 、10~ 12 月 期 は 、夏 場 の 台 風 な ど の 影 響 で 生 鮮 野 菜 が 高 騰 し た こ と で エ ン ゲ ル
係数が一段と上昇し、家計消費を圧迫することになった。一方で、自動車の販売が持
ち直すなど耐久財に動きがみられた。家計最終消費支出の内訳をみると、耐久財とサ
ービスが増加する一方、暖冬による季節商材の売れ行き不振もあって衣服などの半耐
久 財 が 減 少 し た ほ か 、 食 料 な ど 非 耐 久 財 は 同 0.4% 減 と な っ た 。 今 後 の 個 人 消 費 に つ
いては、概ね底堅く推移するだろう。雇用環境の改善が続くなかで既往の株高も消費
意 欲 を 高 め る 要 因 に な る こ と に 加 え 、10~ 12 月 期 の 消 費 を 下 押 し し た 生 鮮 野 菜 の 価 格
高騰も落ち着きつつあることから、家計の節約志向は幾分和らぐとみている。そうし
た 状 況 下 、自 動 車 や 家 電 製 品 な ど の 耐 久 財 は 限 定 的 で あ ろ う が 増 加 す る だ ろ う 。ま た 、
年金生活者等支援臨時福祉給付金の一括支給や雇用保険料の一段の引下げといった経
済対策の効果も小粒ではあるが追い風になるだろう。もっとも、年金受給世帯におい
て は 、2017 年 度 の 年 金 支 給 額 が 前 年 比 0.1% 減 と 3 年 ぶ り に 引 き 下 げ ら れ る こ と が 重
石 に な る だ ろ う 。ま た 、前 述 の 通 り 、実 質 総 賃 金 が 増 え に く い た め 、2016 年 の よ う に
天候要因や食品価格の変動に左右される状況は続くとみられ、個人消費は力強さを欠
くと見込まれる。
○新 設 住 宅 着 工 戸 数 は、高 水 準 ながらも緩 やかな減 少 が続 く
住 宅 投 資 は 、貸 家 を 中 心 に 増 加 が 続 い た 。10~ 12 月 期 の 住 宅 投 資 は 前 期 比 0.2% 増
と 4 四 半 期 連 続 で 増 加 し た も の の 7~ 9 月 期 か ら 伸 び が 大 き く 鈍 化 し た 。 既 に 住 宅 投
資 に 先 行 し て 動 く 新 設 住 宅 着 工 戸 数 は 、 10~ 12 月 期 が 依 然 高 水 準 な が ら も 年 率 95.3
万 戸 と 4~ 6 月 期 を ピ ー ク に 2 四 半 期
図表5.新設住宅着工戸数の推移
連 続 で 減 少 し て い る( 図 表 5)。利 用 関
係別にみると、住宅ローン金利が低下
傾向となるなか、相続税対策等で需要
が強まっていた貸家は、既にピークア
ウ ト し た と み ら れ 、 12 月 は 年 率 38.5
万 戸 と 9 ヵ 月 ぶ り に 40 万 戸 を 割 り 込
んでいる。また、持家は概ね安定して
推移しているものの、7 月をピークに
減少傾向となっている。振れが大きい
分 譲 住 宅 は 、7~ 9 月 期 の 水 準 が 下 が っ
た こ と で 、10~ 12 月 期 は 微 増 と な っ た 。
今後の新設住宅着工戸数は、緩やかに
50
(年率、万戸)
(年率、万戸)
110
100
45
90
40
80
35
70
60
30
50
25
40
30
20
15
10
10
11
20
持家
貸家
分譲住宅
住宅着工(右目盛)
12
(資料)国土交通省「住宅着工統計」
13
14
15
10
0
16
(暦年四半期)
(備考)2016年第4四半期は10月、11月平均値
(備考)直近のデータは7月、8月の平均
水準が落ちていくだろう。けん引役であった貸家が減少傾向になると見込んでいる。
これまでの節税対策を目的とした旺盛な貸家建設によって、空室率上昇や家賃下落の
可 能 性 が 高 ま っ て お り 、金 融 当 局 も ア パ ー ト ロ ー ン へ の 監 視 を 強 め て い る 模 様 で あ る 。
住団連のアンケート調査をみても、低層賃貸住宅の引き合いは弱まっている。また、
分譲住宅についても、首都圏ではマンション価格が会社員では購入することが困難な
水準で高止まりしている。デベロッパーも収益重視の販売戦略をとっており、マンシ
ョン供給は慎重になると見込まれる。一方、持家は概ね現状の水準を維持すると見込
-4-
んでいる。雇用・所得環境の改善が続くなか、日銀の金融政策によって住宅ローン金
利は低水準での推移が見込まれ、良好な住宅取得環境が続くだろう。主に貸家の動き
を映して、住宅投資は減少傾向になると見込んでいる。
○設 備 投 資 は緩 やかな持 ち直 しが続 く
設備投資は、弱さが残るものの持ち
直 し て い る 。 10~ 12 月 期 の 実 質 設 備
投 資 は 前 期 比 0.9% 増 と な っ た 。 2016
年前半の円高による一時的な企業収益
の 悪 化 な ど も あ り 、2016 年 は プ ラ ス と
マ イ ナ ス の 動 き が 続 く な か で 、7~ 9 月
期の減少から増加に転じた。今後の設
備投資は、緩やかな持ち直しが続くと
見込んでいる。設備投資の先行指標を
図表6.機械受注の推移
3.0
(兆円)
民需(船舶・電力を除く)
2.5
2.0
非製造業(船舶・電力を除く)
1.5
1.0
0.5
製造業
みると、機械受注(船舶・電力を除く
民 需 )は 、7~ 9 月 期 の 大 幅 増 の 後 、10
0.0
10
~ 12 月 期 は 微 減 と な っ た が 、 1~ 3 月
11
12
(資料)内閣府「機械受注統計」
13
14
(暦年四半期)
15
16
17
(備考)2017年1~3月期は見通し
期 の 見 通 し は 前 期 比 3.3% 増 と な っ て
い る( 図 表 6)。非 製 造 業( 除 く 船 舶 ・ 電 力 )は 減 少 が 見 込 ま れ て い る も の の 、製 造 業
が二桁増となっている。輸出の増加を受けて生産活動は上向き、設備稼働率も高まっ
ていることで、製造業の投資意欲が高まっているとみられる。設備の老朽化に対応し
た維持・更新投資に加え、新製品開発に向けた研究開発費などが増加すると見込んで
い る 。11 月 以 降 の 円 安 に よ っ て 製 造 業 の 収 益 が 再 び 上 向 い て い る こ と も 追 い 風 に な る
だろう。ただし米新政権の政策に対する不透明感もあって、企業は米国の需要を見込
んだ投資に対して一時的に様子見姿勢を強める可能性もあろう。一方、非製造業につ
いても、製造業には見劣りするが、東京五輪・パラリンピックを見据えた投資や、人
手不足に対応した効率化・省力化投資なども増加が見込まれる。
○公 的 固 定 資 本 形 成 は、経 済 対 策 により増 加 に転 じる
公 的 固 定 資 本 形 成 は 、減 少 が 続 い た 。
10~ 12 月 期 の 公 的 固 定 資 本 形 成 は 前
期 比 1.8% 減 と 2 四 半 期 連 続 で 減 少 し
図 表 7 .公 共 工 事 請 負 金 額 ・ 出 来 高 の 推 移
2.0
1.6
算 の 前 倒 し 執 行 の 効 果 で 4~ 6 月 期 に
増加した反動もあって、足元では低迷
1.4
1.2
している。今後については、公的固定
0.8
に よ り 増 加 に 転 じ る だ ろ う 。12 月 以 降
の熊本の公共工事請負金額をみると、
急 増 し て い る こ と か ら 、 2016 年 度 1
次補正予算による熊本地震の復旧対応
公共工事出来高
1.8
た 。2015 年 度 補 正 予 算 や 2016 年 度 予
資本形成は、大規模な経済対策の効果
(兆円)
1.0
0.6
0.4
公共工事請負金額
0.2
0.0
11
12
13
14
(月次)
15
16
(資料)国土交通省、各保証会社資料より富国生命作成
(備考)公共工事出来高、公共工事請負金額は富国生命による季節調整値
が一段と進捗するとみられる。また、全体の公共投資請負金額の動きをみる限り、当
-5-
初 の 想 定 よ り 遅 れ て い る が 、 大 規 模 な 経 済 対 策 と し て 2016 年 度 2 次 補 正 予 算 で 組 ま
れた復旧対応、防災、インフラ関連の公共投資については、次第に顕在化していくと
想 定 し て い る 。そ れ に よ り 公 的 固 定 資 本 形 成 は 1~ 3 月 期 に 増 加 に 転 じ た 後 も 2017 年
度前半は高水準で推移するだろう。また、東京五輪・パラリンピックに向けた投資の
本格化なども下支え要因になると見込んでいる。
○輸 出 は、海 外 需 要 の回 復 を映 して緩 やかな増 加 が続 く
輸 出 は 、増 加 傾 向 と な っ て い る 。 10
~ 12 月 期 の 実 質 輸 出 は 前 期 比 2.6% 増
と 2 四 半 期 連 続 で 増 加 し た 。実 質 輸 出
は 2015 年 以 降 一 進 一 退 の 動 き が 続 い
ていたが、中国経済の安定化や資源価
図表8.輸出数量指数の推移
120
115
110
105
95
速に歯止めがかかったことでトレンド
90
感 を み て も 、2016 年 半 ば 頃 か ら 先 進 国 、
新興国ともに上向くなどグローバルで
需要が回復しつつあり、それに沿う形
でわが国の輸出も増加している。輸出
米国
100
格の持ち直しを受けて新興国経済の減
が変わったとみられる。製造業の景況
(2010年=100)
輸出計
EU
アジア
中国
85
80
75
70
10
11
12
13
14
15
16
(月次)
(資料)財務省「貿易統計」より富国生命作成
(備考)データは後方3ヵ月移動平均、各地域の季節調整は富国生命
数 量 指 数 に つ い て も 、10~ 12 月 期 が 前 期 比 + 3.9% と 2 四 半 期 連 続 で 上 昇 し て い る( 図
表 8)。仕 向 地 別 に み る と 、ア ジ ア 、米 国 向 け を 中 心 に 上 昇 し て い る 。特 に 中 国 向 け に
ついてはスマートフォン向け部品の需要が堅調なことに加え、小型車減税の効果によ
り 好 調 な 自 動 車 販 売 を 映 し て 自 動 車 部 品 も 増 加 し 、足 元 の 輸 出 増 加 を け ん 引 し て い る 。
今後についても、輸出は緩やかな増加が続くだろう。海外需要については、前述の先
進国、新興国の景況感の改善が示すように循環的には回復傾向になると見込まれる。
な か で も 詳 細 は 後 述 す る が 、中 国 経 済 が 安 定 的 に 推 移 す る こ と が 大 き い と 考 え て い る 。
そうした状況を映して、当面輸出は増加基調になると見込んでいる。なお、米国の通
商 政 策 が 過 度 な 保 護 主 義 を と る 可 能 性 は あ る も の の 、通 商 交 渉 に は 時 間 が か か る た め 、
今回の予測では特段考慮していない。
【米 国 経 済 】
米 国 経 済 は 、緩 や か な 回 復 が 続 い て
い る 。10~ 12 月 期 の 実 質 GDP 成 長 率
( 速 報 )は 、前 期 比 年 率 + 1.9% と な っ
た( 図 表 9)。外 需 の マ イ ナ ス 寄 与 に よ
り 7~ 9 月 期 か ら 減 速 し た も の の 、 内
需は個人消費を中心に堅調さを維持し
ている。家計部門については、個人消
費 が 同 2.5% 増 と な っ た 。 サ ー ビ ス の
伸びは鈍化したものの、自動車・同部
品などの耐久財を中心に増加が続いた。
また、住宅投資は、3 四半期ぶりの増
図表9.米国実質GDP成長率の推移
(年率換算前期比、%)
6.0
5.0
2.0
4.0
3.0
2.6 2.0
1.4
0.9
2.0
3.5 1.9
0.8
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
個人消費
設備投資
住宅投資
在庫投資
政府支出
純輸出
-4.0
12
(資料)米商務省
-6-
13
14
(暦年四半期)
15
16
加 と な る 同 10.2% 増 と 高 い 伸 び に な っ た 。 企 業 部 門 に つ い て は 、 設 備 投 資 が 同 2.4%
増と 3 四半期連続の増加となった。産業設備などの機器が増加に転じたほか、原油価
格 が 持 ち 直 し た こ と で シ ェ ー ル 関 連 の 投 資 に 動 き が み ら れ た 。 在 庫 投 資 は 同 + 1.0 ポ
イントと 2 四半期連続でプラス寄与となった。外需については、堅調な内需を映して
輸 入 が 同 8.3% 増 と な る 一 方 、輸 出 は 7~ 9 月 期 に 大 幅 増 と な っ た 食 糧 の 反 動 減 な ど に
よ り 同 4.3% 減 少 し た こ と で 、 1.7 ポ イ ン ト の マ イ ナ ス 寄 与 と な っ た 。
今 後 に つ い て は 、緩 や か な 回 復 が 続 く と 想 定 し て い る 。雇 用・所 得 環 境 に つ い て は 、
非 農 業 部 門 雇 用 者 数 の 前 月 差 が 11~ 1 月 平 均 で 18.3 万 人 増 と 安 定 的 に 増 加 し 、 失 業
率 は 1 月 が 4.8% と 引 き 続 き 低 水 準 を 維 持 し て い る 。 こ の よ う な 労 働 需 給 の 引 き 締 ま
りを映して賃金上昇圧力は緩やかに高まっている。こうした良好な雇用・所得環境に
加え、大統領選以降の株高もあって消費マインドは良好さを維持するとみられ、個人
消費は引き続き堅調に推移するだろう。また、住宅投資についても、住宅ローン金利
の上昇は重石となるものの、未だ低水準にとどまっていることから、引き続き底堅く
推移すると見込んでいる。企業部門については、設備投資は、企業収益が回復傾向に
あることに加えて、原油価格の安定によりエネルギー関連投資が持ち直すとみられ、
底堅く推移するだろう。輸出については海外需要の回復を映して増加すると見込んで
い る が 、既 往 の ド ル 高 が 重 石 と な り 力 強 さ を 欠 く 動 き と な る だ ろ う 。2017 年 の 米 国 の
実 質 GDP 成 長 率 に つ い て は 、前 年 比 + 2.4% と 予 測 し て い る 。FRB の 利 上 げ ペ ー ス に
つ い て は 、 2016 年 は 年 前 半 の 景 気 減 速 な ど に よ り 年 1 回 に と ど ま っ た が 、 2017 年 は
景気の回復基調が続くなか、年 2 回の慎重なペースで利上げすると想定している。今
後の米国経済の行方を大きく左右する新政権の政策について、今回の予測では、所得
税、法人税の減税およびインフラ投資の拡大の実施(共和党案に近い水準)を想定し
て い る 。 た だ し 、 法 案 成 立 の 遅 れ な ど に よ り 、 そ れ ら の 政 策 効 果 は 2018 年 以 降 に 顕
在化するとみている。
【欧 州 経 済 】
欧州経済は、緩やかな持ち直しが続
い て い る 。10~ 12 月 期 の ユ ー ロ 圏 の 実
質 GDP 成 長 率 は 前 期 比 + 0.4% と な っ
た ( 図 表 10)。 ド イ ツ に つ い て は 、 同
+ 0.4 % と 前 期 ( 7 ~ 9 月 期 ) の 同 +
0.1% か ら 伸 び 率 が 高 ま っ た 。政 府 最 終
消費支出の増加に加えて、総資本形成
図 表 10.ユ ー ロ 圏 実 質 G D P 成 長 率 の 推 移
1.5 (前期比、%)
1.0
0.8
0.4
0.5
0.5 0.5
0.3
0.3
0.4 0.4
0.0
も拡大したことなどが伸びを高めた要
因とみられる。その他主要国について
は 、フ ラ ン ス は 同 + 0.4% と 個 人 消 費 を
中 心 に 前 期( 同 + 0.2% )か ら 成 長 が 加
速 し 、イ タ リ ア は 同 + 0.2% と な り 、ス
-0.5
-1.0
12
13
14
15
16
(暦年四半期)
(資料)Eurostat
ペ イ ン は 同 + 0.7% と 高 い 伸 び が 続 い た 。こ の よ う に ギ リ シ ャ を 除 く 多 く の ユ ー ロ 圏 各
国はプラス成長を辿っている。
今後についても、緩やかな持ち直しの動きが続くと見込んでいる。1 月のインフレ
率 が 前 年 比 + 1.8% と 伸 び を 高 め て お り 、物 価 上 昇 に と も な う 実 質 購 買 力 の 低 下 が 個 人
-7-
消費の重石となるものの、雇用環境の緩やかな改善が続くことで、個人消費は増加傾
向を維持するだろう。また、輸出についても、ユーロ安が下支え要因となるなか、海
外需要の回復を映して緩やかに増加するだろう。一方、固定資本形成については、伸
び 悩 む と み ら れ る 。 ECB の 2016 年 第 4 四 半 期 の 銀 行 貸 出 調 査 に よ れ ば 、 企 業 向 け 貸
出 態 度 は 過 去 3 ヵ 月 が「 厳 格 」に な る な ど 、ECB の マ イ ナ ス 金 利 政 策 に よ る 収 益 環 境
の悪化などで金融機関の貸出姿勢は慎重化している。また、フランス大統領選挙やド
イ ツ 議 会 選 挙 な ど 重 要 な 政 治 イ ベ ン ト が 控 え て お り 、政 治 リ ス ク が 意 識 さ れ る な か で 、
企業の投資意欲も盛り上がりにくい状況が続くだろう。ユーロ圏のインフレ動向につ
いては、これまでの原油価格の持ち直しによって短期的にインフレ率が高まっている
ものの、景気の持ち直しが緩やかにとどまることで基調的な物価動向を示すコアイン
フ レ 率 ( エ ネ ル ギ ー ・ 食 料 等 を 除 く ) の 上 昇 幅 は 限 定 的 に な る と 見 込 ん で い る 。 ECB
の目標を下回る伸びが続くことで、当面は緩和的な金融政策が維持されるだろう。
【中 国 経 済 】
中国経済は、概ね安定的に推移して
い る 。10~ 12 月 期 の 実 質 GDP 成 長 率
は 前 年 比 + 6.8% と 7~ 9 月 期 よ り 0.1
ポ イ ン ト 成 長 率 が 高 ま っ た( 図 表 11)。
内 訳 を み る と 、第 2 次 産 業 が 伸 び 率 を
図 表 11. 中 国 実 質 G D P 成 長 率 の 推 移
9.0
(前年比、%)
8.5
8.0
維持するなか、卸売・小売、運輸等に
けん引されて第 3 次産業の伸び率が高
ま っ て い る 。12 月 の 主 要 経 済 指 標 を み
る と 、 固 定 資 産 投 資 は 、 1~ 12 月 累 計
で 同 8.1% 増 と イ ン フ ラ 投 資 の 拡 大 が
一 服 し た こ と な ど で 、 1~ 11 月 累 計 と
7.5
7.0 7.0
7.0
6.9
6.8
6.7 6.7 6.7
6.8
6.5
6.0
12
13
14
15
16
(暦年四半期)
比較して伸び率が鈍化している。生産
(資料)中国国家統計局
については、概ね安定して伸びている。調整が続いていた粗鋼、セメントなどの過剰
生 産 業 種 で 持 ち 直 し つ つ あ る こ と が 下 支 え し て い る 。一 方 、小 売 売 上 高 は 同 10.9% 増
と伸び率が拡大している。オンライン販売が堅調さを維持するなか、自動車販売が当
初 の 減 税 期 限( 12 月 末 )を 見 据 え た 駆 け 込 み も あ っ て 高 水 準 と な っ た 。な お 、輸 出 に
つ い て は 、 12 月 ま で 前 年 比 マ イ ナ ス が 続 い た も の の 、 1 月 は 10 ヵ 月 ぶ り に 前 年 比 プ
ラ ス に な っ た 。た だ し 、昨 年 は 2 月 中 で あ っ た 旧 正 月 の 休 暇 が 今 年 は 1 月 下 旬 か ら 始
まっており輸出を前倒した影響で増加した可能性もあろう。
今 後 に つ い て も 、安 定 的 に 推 移 す る と 想 定 し て い る 。12 月 の 中 央 経 済 工 作 会 議 で は
「 穏 中 求 進( 安 定 の 中 で 前 進 を 求 め る )」の 方 針 が 堅 持 さ れ て お り 、積 極 的 な 財 政 政 策
を実施することが示されている。その財政拡大がインフラ投資の拡大などを通じて景
気の安定弁になろう。固定資産投資は、認可されたプロジェクトの進捗によってイン
フラ投資が拡大し、企業収益の改善を受けて低迷していた民間投資が持ち直していく
と見込んでいる。不動産投資は、一級都市など需要が強い地域の投資拡大が下支えす
るものの、政府が住宅バブル抑制に本腰を入れている影響が徐々にでてくるだろう。
ま た 、個 人 消 費 は 概 ね 底 堅 く 推 移 す る と 見 込 ん で い る 。引 き 続 き E コ マ ー ス の 浸 透 と
いう構造的な変化が追い風になることに加え、けん引役となる自動車販売は、減税規
-8-
模 が 縮 小 し た こ と で 一 時 的 に 増 勢 は 一 服 す る も の の 、そ の 後 は 堅 調 に 推 移 す る だ ろ う 。
輸出は、輸出拠点として労働集約的産業から高付加価値産業へと転換する端境期にあ
り、水準回復には時間がかかると見込んでいる。過剰生産能力の調整や金融機関の不
良債権の増加が引き続き成長の重石になるものの、財政が下支えする構図になると見
込 ま れ る 。2017 年 は 秋 に 最 重 要 会 議 で あ る 党 大 会 を 控 え て お り 、成 長 率 が 大 き く 下 振
れ す る よ う な 改 革 は 先 送 り さ れ 、 経 済 活 動 は 安 定 が 優 先 さ れ る と 考 え て い る 。 2017
年 の 実 質 GDP 成 長 率 は + 6.6% と 前 年 を 下 回 る も の の 、 6% 台 半 ば の 成 長 率 を 維 持 す
ると見込んでいる。
○今 後 の伸 び率 などについて
日本経済は、輸出の緩やかな持ち直しが続くことに加え、経済対策によって公共投
資 が 増 加 に 転 じ る こ と で 、1~ 3 月 期 は 年 率 1% 程 度 の 成 長 に な る と 想 定 し て い る こ と
か ら 、 2016 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 は + 1.2% で 着 地 す る と 見 込 ん で い る 。
2017 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 は + 1.3% と 前 回 予 測 か ら 上 方 修 正 し た 。海 外 需 要 の 回
復を受けて輸出が増加基調になることに加え、その輸出の増加や円安にともなう企業
収益の改善を受けて設備投資も引き続き持ち直すと見込んでいる。それに経済対策の
押 し 上 げ 効 果 も あ る こ と か ら 、 年 度 前 半 の 四 半 期 ご と の 成 長 率 は 年 率 1% 台 半 ば を 見
込んでいる。
2018 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 は + 0.8% と 予 測 し た 。雇 用 環 境 や 企 業 収 益 の 改 善 と い
う好循環が途切れないと見込んでいる。そうしたなか、米国が財政政策の効果から成
長率を高めることもあって輸出が堅調に推移するだろう。一方で、経済対策による公
共 投 資 の 押 上 げ 効 果 が 剥 落 す る こ と で 、 四 半 期 ご と の 成 長 率 は 0% 台 半 ば の 成 長 に と
どまると想定している。
○消 費 者 物 価 と金 融 政 策 の見 通 し
2016 年 12 月 の コ ア CPI( 生 鮮 食 品 を 除 く 消 費 者 物 価 総 合 ) は 前 年 比 ▲ 0.2% と 、
10 ヵ 月 続 け て マ イ ナ ス と な っ た( 図 表 12)。コ ア CPI は 着 実 に マ イ ナ ス 幅 が 縮 小 し て
いるが、それはエネルギーのマイナス寄与度が縮小している影響が大きい。原油価格
の持ち直しを受けてガソリンや灯油などが含まれる石油製品価格は前年比プラスに転
じ、ガス代や電気代などもわずかではあるがマイナス幅が縮小傾向になっている。一
方、エネルギー以外の物価上昇率は伸
図 表 12. 消 費 者 物 価 上 昇 率 の 推 移
びが鈍化している。日銀が公表してい
る生鮮食品及びエネルギーを除く総合
指 数 は 、 12 月 が 同 + 0.1% と 2015 年
12 月 の 同 + 1.3% を ピ ー ク に プ ラ ス 幅
が 縮 小 し て い る 。2016 年 入 り 後 夏 場 に
かけて円高が進行した影響がタイムラ
グをもって生鮮食品を除く食料や耐久
消費財の価格を押し下げる要因になっ
2.0
消費者物価(除く生鮮食品)
その他
1.5
生鮮食品を除く食料
エネルギー
1.0
0.5
0.0
-0.5
ている。また、消費者物価指数を品目
-1.0
別にみても、5 割以上の品目が上昇し
-1.5
ているものの、その割合は低下傾向に
(前年比、%)
12
13
14
15
(月次)
(資料)総務省「消費者物価指数」より富国生命作成
(備考)消費者物価指数は消費税率引上げの影響を除いている
-9-
16
あ る 。今 後 に つ い て は 、2017 年 2 月 に プ ラ ス に 転 じ た 後 、緩 や か に プ ラ ス 幅 が 拡 大 し
ていくと想定している。その主因は、これまで物価を押し下げていたエネルギーが、
反対に物価の押上げ要因になるためである。原油価格は緩やかに上昇すると想定して
いるが、ガソリン、灯油などの価格は前年比プラスで推移し、輸入燃料価格の上昇が
遅れて反映される電気代やガス代についても、前月比ではプラスに転じており、対前
年 で も 次 第 に プ ラ ス に な る と み ら れ 、2017 年 度 前 半 に か け て エ ネ ル ギ ー は プ ラ ス 幅 が
拡大するだろう。エネルギー以外の財価格については、昨年夏までの円高進行が食料
品 や 耐 久 消 費 財 の 輸 入 物 価 を 押 し 下 げ て い た が 、11 月 以 降 の 円 安 進 行 が 次 第 に 物 価 の
押上げ要因になろう。サービス価格については、人手不足にともなう企業のコスト増
が 見 込 ま れ る も の の 、家 計 の 節 約 志 向 が 残 る な か で は 強 気 の 価 格 設 定 は 困 難 と み ら れ 、
当 面 、 伸 び は 限 定 的 に な る だ ろ う 。 こ う し た 動 向 を 映 し て コ ア CPI は 、 2017 年 2 月
頃 に プ ラ ス に 転 じ 、次 第 に 前 年 比 プ ラ ス 幅 が 拡 大 し て い く と 見 込 ま れ 、2017 年 度 の コ
ア CPI は 前 年 比 + 0.7% と 想 定 し て い る 。
な お 、日 銀 が 1 月 に 発 表 し た 展 望 レ ポ ー ト で は 、政 策 委 員 の コ ア CPI の 見 通 し の 中
央 値 は 、2017 年 度 + 1.5% 、2018 年 度 + 1.7% と 10 月 予 測 を 据 え 置 き 、物 価 目 標 の 達
成 時 期 に つ い て も「 2018 年 度 頃 」に な る 可 能 性 が 高 い と し て い る 。先 行 き の 金 融 政 策
については、当面、現状の金融政策の枠組みを維持すると想定している。
○リスク要 因
日本経済は、緩やかな回復が続くとの見方が当社のメインシナリオであるが、下振
れリスクもある。現時点では、トランプ政権の政策は不透明な面が多く、通商政策で
中国等に対し過度な保護主義をとれば、相手国も制裁措置をとることも想定されグロ
ーバルの貿易活動が低迷する可能性もある。特に中国は日本企業のサプライチェーン
に組み込まれており、我が国にとっても間接的に悪影響が及ぶ可能性もあろう。最も
懸念されるのは、中東などにおける米国の影響力が一段と弱まることで、テロなどの
地政学的リスクが高まることである。また、欧州においては、オランダ議会選挙をは
じ め フ ラ ン ス 大 統 領 選 挙 、 ド イ ツ 議 会 選 挙 な ど 重 要 な 政 治 イ ベ ン ト を 控 え 、 反 EU 勢
力の躍進などで政局が不安定化する可能性があり、これらを受けて金融資本市場が混
乱すると、わが国においても企業や消費者のマインドが悪化する可能性がある。さら
に、新興国においては、米国が利上げ局面にあることで資金流出や通貨安が加速し、
景気が腰折れする可能性もある。こうした要因が顕在化すれば金融資本市場の混乱あ
るいは外需の減少を通じて、日本経済を下押しする可能性もあろう。
以
- 10 -
上
図表13.デフレーターの伸び率(2011暦年連鎖価格)
(前年比、%)
2013年度
国内総支出
2015年度
0.0
2.5
民間最終消費
0.3
2.2
▲
0.0
民間住宅投資
2.9
3.6
▲
民間設備投資
0.8
1.3
0.3
2.0
公的固定資本形成
1.5
2.9
財貨・サービスの輸出
9.3
2.5
財貨・サービスの輸入
11.0
0.3
政府最終消費
▲
2014年度
▲
2016年度
1.4
2017年度
2018年度
0.1
0.1
0.6
▲
0.4
0.2
0.6
0.0
▲
0.7
0.1
0.4
0.4
▲
0.8
0.2
0.3
0.3
▲
0.5
0.1
0.1
0.5
▲
0.7
0.1
0.3
▲
1.5
▲
7.2
1.4
1.7
▲
9.0
▲ 10.6
2.7
0.9
▲
▲
予測
図表14.需要項目別の寄与度
(%)
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
2018年度
実質国内総支出
2.6
▲
0.4
1.3
1.2
1.3
0.8
民間需要
2.4
▲
1.0
0.8
0.5
0.6
0.6
民間最終消費
1.6
▲
1.6
0.3
0.3
0.4
0.3
民間住宅投資
0.3
▲
0.3
0.1
0.2
0.1
0.0
民間設備投資
1.0
0.4
0.1
0.3
0.4
0.2
0.0
0.3
0.1
0.4
0.1
0.1
0.4
0.2
0.2
0.1
0.0
0.2
公的需要
0.8
政府最終消費
0.4
公的固定資本形成
0.4
財貨・サービスの純輸出
▲
財貨・サービスの輸出
財貨・サービスの輸入
▲
▲
▲
0.1
▲
0.1
▲
▲
▲
0.0
0.5
0.6
0.2
0.6
0.2
0.1
0.6
1.4
0.1
0.4
0.6
0.6
0.8
0.0
0.2
1.2
▲
注1.四捨五入の関係上、内数の合計は必ずしも合計項目に一致しない
- 11 -
▲
0.4
▲
予測
0.4