ISHIDO vol.218

2017.02.10 配信
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Vol.218
● ISHIDO Vol.218-1
医療現場に生かす「アンガ−(怒り)マネジメント」
第1回 あなたの「怒り」を分析する
● ISHIDO Vol.218-2
医師にオススメな4秒筋トレ
第1回 はけなくなったズボンが入るようになる筋トレ
企画・編集 株式会社日経BPコンサルティング
ISHIDO WEBサイト 》バックナンバー 》
Vol.218 医療現場に生かす
「アンガ−
(怒り)
マネジメント」
01
第1回
あなたの「怒り」
を分析する
些細なことにイライラしたり、ついカッとして声を荒げたりと、怒りの
感情に振り回されていませんか。怒りで自己嫌悪に陥ったり、人間
関係を壊さないように自分の怒りっぽさを何とかしたいと思ってい
る人の力になれるのが、
「アンガーマネジメント」です。アンガーマネ
ジメントは、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングで
す。内科医の藤澤貴史先生は、
「昔から“怒りっぽい”と言われた私
は、アンガーマネジメントと出合ったことで周囲と無用に衝突するこ
とが少なくなったと実感しています」と話します。藤澤先生は、
「ア
ンガーマネジメントは、医師のようにストレスが高い職場環境で働く
医療従事者にも役立つ」と考え、医療従事者対象のセミナーを開い
ています。患者さんへの対応や、多職種で連携するチーム医療のコ
ミュニケーションで、徐々に効果を発揮するようになっているといい
ます。連載第1回は、
「怒りを生かす人」になるために、そもそも「怒
り」とはどういうものか、怒りの感情の正体を確認します。
「怒り」は自然な感情。
「 怒ってはダメ」なわけではない
「怒り」は人間にとって自然な感情の一つです。さまざまな感情を表す言葉に
「喜怒哀楽」があり
ます。この言葉からも怒りが代表的な感情の一種であることが分かります。ただ怒りの感情は激し
く、エネルギーが非常に大きいために、自分自身が怒りの感情に振り回されてしまうことがありま
す。さらに他者をも振り回して周りを遠ざけ、人間関係を壊してしまうことも少なくありません。
怒ること自体は悪いことではありません。怒りは自分の身を守るための「防御感情」ともいわれ、
どんなに穏やかな人でも怒りが皆無であることはまずありません。怒りの感情はなくならないし、な
くす必要もありません。重要なのは、怒ったことを後悔しないように、怒るべきこと・怒らなくていい
ことの「線引き」ができることです。
怒りは伝達手段でもあります。怒ることで自分の思いを伝えることができます。けれど、怒りの伝
え方を間違えると逆効果になります。例えば、子供に「勉強しなさい」と怒って、果たして効き目が
あるでしょうか。
「勉強しなさい」という正論はかえって子供の反感を買う場合も多いでしょう。
患者さんによくなってほしい。けれど生活指導をなかなか守ってくれない。そうしたときには、つ
い反射的に怒りたくなります。アルコール依存症で入退院を繰り返している患者さんに、
「飲酒はダ
メ」と怒っても、そんな正論は通用しません。聞く耳を持たず、たちまちシャットアウトされます。
感情的になってしまっては伝えたいことが伝わりません。患者さんを思って怒るときは、反射的な
怒りで正論をぶつけないことです。ちなみに私は、依存症患者さんにやめられない理由や、患者さ
んが考える行動のメリット・デメリットを聞いて、そのメリットが誤解である場合はそれを説明し、デ
メリットは強調して伝えるようになりました。
怒りの奴隷にならないために、自分の怒りの傾向を知る
怒りには次のような性質があります。
① 高いところから低いところへ流れる
② 対象が身近なほど強くなる
③ 矛先を固定できない
④ 伝播しやすい
⑤ エネルギーになる
患者さんへのイライラを、近くにいる看護師さんに「八つ当たり」していないでしょうか。その場
合、①∼④の性質が当てはまります。
職場にイライラしている人がいると、場の雰囲気をたちまちピリピリとさせます。
「八つ当たり」は、
その原因となる最たる例です。また、怒るとモノに当たる人がいますが、パソコンのキーを叩く大き
な音は周囲に無言のプレッシャーを与えます。
このように怒りは周囲にマイナスの影響を及ぼすことが多いのですが、奮起するエネルギーに変
えることもできます。青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏の、
「研
究の原動力は怒りだった」という話は有名です。せっかくなら、怒りに負けて振り回されるのではな
く、怒りを生かせるようになりたいものです。
さて、怒りには、次の4つの問題点があります。
① 強度が高い
:一度怒り出すと止まらない、強く怒りすぎる
② 持続性がある
:根に持つ、 思い出し怒り をする
③ 頻度が高くなりがち :しょっちゅうイライラする、カチンとくることが多い
④ 攻撃性がある
:他人を傷つける、自分を傷つける、モノを壊す
例えば③の「頻度」。どんなに小さな怒りでも、いちいち腹を立てていては心身が疲弊してしまい
ます。慢性的なイライラはより大きな怒りを引き起こす原因にもなります。
①∼④を軸に、自分の怒りの傾向を自己分析してみましょう。それぞれの項目について、10段階
でどの程度かをプロットし、点をつなぎます。三角形の大きさや形から、あなたの怒りの問題点を確
認します。自己分析したら、それを周りの人に見せて感想を聞いたり、外の目からも分析してもらい
ましょう。おそらくどこかにギャップがあると思います。
● 自己分析の三角形
怒りの分析
攻撃性の分析
10
10
強度
他人
0
0
10
10
持続性
頻度
10
10
自分
モノ
自分が怒ったとき、
「強度」
「持続性」
「頻度」がどの程度か、また、怒りが向く先は「自分」
「他人」
「モノ」の
いずれか、分析してみましょう。
私は「怒りっぽい」と公言していますが、実際は言うほどではないと思っていました。ところが周り
の人に聞いてみると、
「昔はよく怒られました」と言われたのです。人は、怒られたことを記憶してい
るものです。しかも、怒られた理由よりも、
「○○さんに怒られた」という場面をよく覚えています。
こちらは怒っているつもりがなくても、
「怒られた」と受け取られることもあります。怒りは誤解され
やすい感情であることからもマネジメントの必要性が分かるでしょう。
「アンガーマネジメント」には3つのステップがあります。
「衝動のコントロール」
「思考のコントロー
ル」
「行動のコントロール」です。この3つを、連載の第2回と第3回で解説します。次回は、カチンと
したときの対処法「衝動のコントロール」と、怒りやすい人・そうでない人の違いの理由についてお話
しします。
社会医療法人製鉄記念広畑病院 糖尿病内科部長 アンガーマネジメントコンサルタントTM/シニアファシリテーター TM
藤澤 貴史 氏
ふじさわ たかし
プロフィール
1983年神戸大学医学部卒業、神戸大学医学部第2内科入局、その後IHI播磨病院、新日鐵広畑病院、加古川西市民
病院などを経て、現在製鉄記念広畑病院内科勤務。専門は消化器病、消化器内視鏡、緩和ケア、糖尿病。多くのチ
ーム医療を牽引した活動経験をもとに、患者や他職種とのコミュニケーションの重要性を感じ、一般財団法人生涯
学習開発財団認定コーチの資格を取得し、コーチングの医療現場での活用を実践する。その過程でアンガーマネ
ジメントに出合い、これまで自分が怒りに振り回されてきたことに気づき、その反省をもとに、日本アンガーマネジ
メント協会認定アンガーマネジメントシニアファシリテーターの資格を取得。医療現場へのアンガーマネジメントの
活用を推進する活動に邁進している。
Vol.218 医師にオススメな4秒筋トレ
02
第1回
はけなくなったズボンが入るようになる筋トレ
身体が資本の医師という職業。
頭の中では分か
っていても、忙しさからなかなか自分の健康管理
にまで気を回せない方も少なくないでしょう。そ
んな先生方に向けて、短期間で成果が期待で
きるプログラムをご紹介します。1カ月間でウ
エストのサイズダウン、
「カラダの引き締め」を
実感できる方法です。
診療や研究で忙しい毎日を送る医師の中には、患者さんの健康を優先するあまり、自分の健康管
理を先送りしてしまっている方も少なくないようです。特に、座り仕事で身体を動かす機会がなく、
普段から外食や間食、アルコール摂取が多いという方は要注意。年を重ねるごとに筋肉が衰え、そ
の代わりにお腹回りに脂肪がつき、貫禄のある体型になっても仕方がありません。
何を隠そう、私自身も身長170cmで、体重100kg、ウエスト100cm、体脂肪率も30%を超える
肥満の時期がありました(現在は69kg、75cm、14%)。学生時代はパワーリフティングという競技
をやっていたので、肥満というより筋肉が無駄に!?ついていた状態でした。しかし、研修医になっ
た25歳を境に、トレーニングをやめただけでなく、ストレスと緊張を食べることによって解消してい
たところ、あっという間に肥満になったのです。20代で高血圧に不整脈など、笑うに笑えない状況
でした。
リバウンドを繰り返すほど太りやすい体質に
先生方もご存じのように、私たちは、何も努力しないでいると、徐々に筋肉が減少し、それに伴っ
て消費されるエネルギー量も低下していきます。こうした加齢現象に反発して、引き締まった健康的
な身体を維持しようと思うならば、食事管理と運動の両方を意識して取り組むことが必要です。
食事制限だけでも体重を落とすことは可能ですが、運動を併用せずに急激に体重を落とすと、余
分な脂肪は減らないままに、筋肉が落ちてしまいます。極端な食事制限によるダイエットを実行して
も、結局は長続きしません。そのせいでまたリバウンドしてしまった場合には、減少した筋肉が戻る
のではなく、脂肪が増えます。
平均年齢25歳の細身の女性5人を対象として、食事制限だけのダイエットによるリバウンドの影響
を検証したことがあります。その際、次のことが確認されました※1。
食事制限によるダイエットに何度もチャレンジし、リバウンドを繰り返すほど、筋肉は減少。その
結果、基礎代謝が低下して、かえって太りやすい体質になっていきました。また、ダイエットに伴って
血圧は上昇。甲状腺ホルモンのバランスが崩れるなど、さまざまな弊害が生じました。
検証結果からも、食事制限だけのダイエットは、一見手っ取り早い方法のように思えますが、実は
非常にリスクが高い方法です。メリハリのある健康的な身体を目指すのであれば、先に申し上げたよ
うに、食事とともに運動習慣を見直すことが不可欠です。単に体重を減らせばよいのではなく、脂
肪を減らして筋肉を増やしていくことが求められます。しかし、これらを同時に達成することは容易
なことではありません。
1カ月間でウエストの引き締め 効果を発揮
この連載では、1日わずか10分ほどでできる筋力トレーニングを紹介します。1つの動作を4秒か
けてゆっくり行うので、
「4秒筋トレ」と呼んでいます。運動といっても、時間のかかるトレーニングを
多忙な先生方に強いるわけにはいきません。今回ご紹介する4秒筋トレの特長は次の4つです。
(1)時間をかけずに実行できること。仕事の空き時間を使ったトレーニングも可能
です。
(2)スポーツ施設に通う必要がありません。施設に行かないとできないようでは多く
の方が挫折してしまいますので、その場でできるトレーニングに絞りました。
(3)大がかりな器具を用いません。器具をわざわざ用意しなければいけないとな
ると、取り掛かりが難しくなってしまいます。思い立ったらすぐ挑戦できるよう
に、何も器具を使用しない、あるいはボールやイスなど身近な物で行えるよ
うに工夫しました。
(4)単純な動作だけで構成。誰もが取り組めるように開発しました。
9人の中年男性を対象にした効果検証では、食事管理とともに4秒筋トレを1カ月間続けることで、
全員がウエストのサイズダウン(平均101.1cm→94.6cm)を達成しています。開始前の腹囲が
100cm超えと、ある意味「減り代」のある方たちでしたが、これまでリバウンドを繰り返してきた方
たちにもかかわらず全員結果を出しました。そのほかにも、4秒筋トレの効果を15年間、6000人を
超える方に協力いただいて検証してきましたが、やり方が間違っている、3日でやめたという方以外、
諦めずに本気で取り組んでいただければ、身体は変わります。
また4秒筋トレは、関節への負担が少ない運動です。高齢者の方でも取り組めるため、介護やリ
ハビリテーション、被災地支援などの現場でも活用されています。
「カラダの引き締め」
効果だけで
はありません。HbA1c、インスリン抵抗性を改善する効果も認められていますので※2、生活習慣病
の予防や改善、併せて筋力も鍛えられて足腰が丈夫になり、健康寿命の延伸も期待できます。
有酸素運 動だけでは筋肉の衰えを防げない
特に、若いころのズボンがはけなくなってしまっている方は、連載を通じて紹介する4秒筋トレの
プログラムをぜひ試してみてください。また、普段からジョギングやウォーキングなどをしていると
いう先生方にもお勧めします。なぜなら、こうした有酸素運動だけでは、脂肪の燃焼を促すことが
できても、筋肉の衰えは防げないからです。有酸素運動とともに筋トレを併用することで、さらなる
効果が得られます。そして、ご自身で効果を実感できましたら、患者さんや地域の方々にも、4秒筋
トレのプログラムを広めていっていただけたらうれしく思います。
次回は、勤務場所でも簡単にできる具体的な実践方法をご紹介します。第2回まで待ち切れない
という方は、エクササイズの例を動画で紹介していますので下記のURLをチェックしてみてくださ
い。
■スロー筋トレ(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=eXTG8ek3eAA
熊本大学政策創造研究教育センター 教授(予防医学)
都竹 茂樹 氏
つづく しげき
プロフィール
1991年高知医科大学医学部卒業、1995年名古屋大学大学院医学研究科修了、2006年ハーバード大学公衆衛生大
学院修了。国立長寿医療研究センター疫学研究部研究員、ハワイ骨粗鬆症財団研究員、ホノルルハートプログラム
研究員、高知大学医学部公衆衛生学教室 准教授を経て、2011年から現職。スポーツ選手へのトレーニング指導や
疫学研究の経験を踏まえ、現在は教育工学
(インストラクショナルデザイン)
の手法も活用した健康を維持するた
めの運動や食事プログラムの開発・普及に取り組む。著書に
『高齢者の筋力トレーニング』
などがある。
参考文献
Kajioka T, Tsuzuku S, Shimokata H, Sato Y: Effects of intentional weight cycling on non-obese young women. Metabolism 51: 149-154, 2002
※2
Tsuzuku S, Kajioka T, Endo H, Abbott RD, Curb JD, Yano K: Favorable effects of non-instrumental resistance training on fat distribution and metabolic
profiles in healthy elderly people. Eur J Appl Physiol 99: 549-55, 2007
※1
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