クローン病の治療と予後

クローン病の治療と予後
札幌厚生病院副院長
本 谷 聡
(聞き手 池田志斈)
クローン病の最新の治療と予後についてご教示ください。
<東京都勤務医>
けれども、病気の本体としてはクロー
ン病のほうが腸の粘膜の奥深くまで炎
症が広がってしまうということになり
池田 病理学的な診断などは行われ
るのでしょうか。
本谷 はい。たいへん有名な非乾酪
ます。
池田 なかなか重篤ですね。
本谷 はい。
池田 そういった腸の症状があって、
病院を受診されて診断ということにな
性類上皮細胞性肉芽腫です。これは非
常に診断に有用ですけれども、この肉
芽腫、granulomaがきちんと出てこな
くて確定診断にならない場合、つまり
比較的まだ病変が早い段階、不規則な
りますが、どのように診断されるので
しょうか。
本谷 まず基本になるのは内視鏡検
潰瘍、不整の潰瘍などが上部・下部消
化管にそろってあるのだけれども典型
的な所見がない場合には、この病理所
見と合わせて確定診断するようにして
います。
池田 病理も助けになるということ
ですね。
本谷 そのとおりです。
池田 本谷先生、まずクローン病と
いうのは、大ざっぱにいうと、どのよ
うな病気なのでしょうか。
うか。
本谷 潰瘍そのものはたいへん深く
なりますので、穴があきやすい、 孔
査です。内視鏡検査で、縦走潰瘍、縦
に走行している川の流れのような潰瘍、
これは腸間膜の付着側に沿って4∼5
㎝以上の長さがあると一応定義づけさ
れていますけれども、これがあると基
本谷 クローン病は、基本的には原
因不明といわれていますけれども、腸
全体にただれが起こり、本来であれば
しやすい。あるいは、炎症が外側に広
がると、腸が密着している小腸では簡
単に腸同士がくっつく、癒着をする、
本的にはクローン病を強く考えて診断
をしてきます。
もちろん、そうなる前の潰瘍は、小
池田 それで診断がついて治療に移
っていくのですが、比較的浅いアフタ
が多発するタイプもあるけれども、深
おいしく食べられるごはんが、ただれ
がひどくなってしまって食べられない
という、たいへんつらい病気といわれ
ています。
池田 ただれといいますと、えぐれ
あるいはトンネルができる、内瘻がで
きるといった、腸管の機能不全、合併
症という言い方になりますが、そうい
ったことも容易に起こってくる病気で
す。
さい潰瘍が縦方向に並んでいたり、あ
るいは潰瘍までいかなくても、アフタ
という程度の病変が散在しているので
すが、傾向としては縦方向に並んでい
たりというような特徴を見つけて診断
く裂けるような潰瘍も起こる。これは
多分重症度と関係するのだと思うので
すが、治療ガイドライン上は軽症例、
重症例で、何か治療に違いはあるので
しょうか。
るとか、潰瘍ですね。
本谷 そうですね。病理学的には全
池田 簡単にいいますと、穴があい
たり、ひきつれたり、癒着したり、い
します。
決して大腸だけではなくて、小腸あ
本谷 自覚症状があまりない段階で
も、少し下痢ぎみ、あるいは肛門、お
層性の炎症といわれていますけれども、
粘膜表面に潰瘍が起こるだけではなく
て、その炎症が腸管全部に広がり、あ
るいは腸管の外側まで広がっていくと
いう特徴があります。
ろいろなことが起こってくると。これ
は潰瘍性大腸炎に比べて、そういう意
味では重症ということなのでしょうか。
本谷 潰瘍性大腸炎も確かにたいへ
んな病気ですけれども、潰瘍性大腸炎
るいは上部消化管にもそういった変化、
あるいは肛門にも瘻孔ですとか皮垂と
いった、特徴的なクローン病の病変が
起きます。そういったところを総合的
に勘案して、わが国の厚生労働省腸管
尻が痛いということで、クローン病の
確定診断に至る患者さんもいます。し
たがって、軽症の場合には、現在、た
いへん有名な生物学的製剤をいきなり
使うということではなくて、適宜、メ
池田 ということは、外まで裂けて
いくというようなイメージなのでしょ
は基本的に粘膜表面の病気になります。
病状が悪くて穴があくことはあります
障害の研究班が出している診断基準に
当てはめて診断していきます。
サラジン製剤を使ったり、やや症状が
強いときにはステロイドの治療をきち
56(56)
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ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
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クローン病の治療と予後
札幌厚生病院副院長
本 谷 聡
(聞き手 池田志斈)
クローン病の最新の治療と予後についてご教示ください。
<東京都勤務医>
けれども、病気の本体としてはクロー
ン病のほうが腸の粘膜の奥深くまで炎
症が広がってしまうということになり
池田 病理学的な診断などは行われ
るのでしょうか。
本谷 はい。たいへん有名な非乾酪
ます。
池田 なかなか重篤ですね。
本谷 はい。
池田 そういった腸の症状があって、
病院を受診されて診断ということにな
性類上皮細胞性肉芽腫です。これは非
常に診断に有用ですけれども、この肉
芽腫、granulomaがきちんと出てこな
くて確定診断にならない場合、つまり
比較的まだ病変が早い段階、不規則な
りますが、どのように診断されるので
しょうか。
本谷 まず基本になるのは内視鏡検
潰瘍、不整の潰瘍などが上部・下部消
化管にそろってあるのだけれども典型
的な所見がない場合には、この病理所
見と合わせて確定診断するようにして
います。
池田 病理も助けになるということ
ですね。
本谷 そのとおりです。
池田 本谷先生、まずクローン病と
いうのは、大ざっぱにいうと、どのよ
うな病気なのでしょうか。
うか。
本谷 潰瘍そのものはたいへん深く
なりますので、穴があきやすい、 孔
査です。内視鏡検査で、縦走潰瘍、縦
に走行している川の流れのような潰瘍、
これは腸間膜の付着側に沿って4∼5
㎝以上の長さがあると一応定義づけさ
れていますけれども、これがあると基
本谷 クローン病は、基本的には原
因不明といわれていますけれども、腸
全体にただれが起こり、本来であれば
しやすい。あるいは、炎症が外側に広
がると、腸が密着している小腸では簡
単に腸同士がくっつく、癒着をする、
本的にはクローン病を強く考えて診断
をしてきます。
もちろん、そうなる前の潰瘍は、小
池田 それで診断がついて治療に移
っていくのですが、比較的浅いアフタ
が多発するタイプもあるけれども、深
おいしく食べられるごはんが、ただれ
がひどくなってしまって食べられない
という、たいへんつらい病気といわれ
ています。
池田 ただれといいますと、えぐれ
あるいはトンネルができる、内瘻がで
きるといった、腸管の機能不全、合併
症という言い方になりますが、そうい
ったことも容易に起こってくる病気で
す。
さい潰瘍が縦方向に並んでいたり、あ
るいは潰瘍までいかなくても、アフタ
という程度の病変が散在しているので
すが、傾向としては縦方向に並んでい
たりというような特徴を見つけて診断
く裂けるような潰瘍も起こる。これは
多分重症度と関係するのだと思うので
すが、治療ガイドライン上は軽症例、
重症例で、何か治療に違いはあるので
しょうか。
るとか、潰瘍ですね。
本谷 そうですね。病理学的には全
池田 簡単にいいますと、穴があい
たり、ひきつれたり、癒着したり、い
します。
決して大腸だけではなくて、小腸あ
本谷 自覚症状があまりない段階で
も、少し下痢ぎみ、あるいは肛門、お
層性の炎症といわれていますけれども、
粘膜表面に潰瘍が起こるだけではなく
て、その炎症が腸管全部に広がり、あ
るいは腸管の外側まで広がっていくと
いう特徴があります。
ろいろなことが起こってくると。これ
は潰瘍性大腸炎に比べて、そういう意
味では重症ということなのでしょうか。
本谷 潰瘍性大腸炎も確かにたいへ
んな病気ですけれども、潰瘍性大腸炎
るいは上部消化管にもそういった変化、
あるいは肛門にも瘻孔ですとか皮垂と
いった、特徴的なクローン病の病変が
起きます。そういったところを総合的
に勘案して、わが国の厚生労働省腸管
尻が痛いということで、クローン病の
確定診断に至る患者さんもいます。し
たがって、軽症の場合には、現在、た
いへん有名な生物学的製剤をいきなり
使うということではなくて、適宜、メ
池田 ということは、外まで裂けて
いくというようなイメージなのでしょ
は基本的に粘膜表面の病気になります。
病状が悪くて穴があくことはあります
障害の研究班が出している診断基準に
当てはめて診断していきます。
サラジン製剤を使ったり、やや症状が
強いときにはステロイドの治療をきち
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んと行うべきと考えています。
ただ、一方で典型的な縦走潰瘍が小
腸に複数存在する、あるいは大腸であ
㎎を2週間隔で使ってよいというお許
しをいただけましたので、二次無効対
策というところでも非常に治療の深み
イキン12とインターロイキン23に共通
の蛋白を抑えるモノクローナル抗体、
ウステキヌマブが、臨床の現場に出て
っても、非常に幅の広い潰瘍がたくさ
効果減弱、二次無効をなるべく起こさ
んある、あるいは、直腸、肛門にもう
せないということです。
すでに瘻孔をつくるような病変がある、 一方、完全ヒト型抗体、アダリムマ
が出てきたのではないかと思います。
池田 そういう新しい治療が行われ
るようになり、予後はどのようになっ
くる見込みになっています。治験がす
でに終了していますので、クローン病
治療薬としては次なる期待の持てる薬
これに、喫煙者ですとか、若年発症と
いったところを加味して、今申し上げ
たような症例の場合には、できるだけ
早い段階で抗TNFα抗体製剤、インフ
リキシマブ、アダリムマブといったも
ブは、一段と優秀なのでしょうけれど
も、現時点では特に抗原性を制御する
ためにチオプリン製剤と併用するのは、
さほど大きな臨床的意義がないのでは
ないでしょうか。長持ちさせるという
たのでしょうか。
本谷 私どもの病院での経験になり
ますけれども、例えばインフリキシマ
ブを使って8週間ごとの維持投与をし
て、自覚症状がない、CRPも正常で、
剤かと思われます。
欧米ですと、すでにα4β7 のモノク
ローナル抗体、ベドリズマブが治療薬
のを導入するのが、現在のクローン病
治療の流れになっていると思います。
目的であれば、単独使用してもよいの
ではないかという考えになってきてい
内視鏡で見せていただいても病変がほ
ぼ消失してコントロールできていると
池田 現在使われているバイオロジ
クスは、どのように選択されるのでし
ょうか。
本谷 基本的にはクローン病の寛解
導入には、インフリキシマブでも、ア
ます。
池田 インフリキシマブの場合は、
導入して2カ月おきとか、アダリムマ
ブは2週間に1度ということがあるの
で、患者さんのライフスタイルに合わ
いう、昔でいうと夢のような状況の方
は、おおむね1年後で7∼8割ぐらい
達成できています。3年を経過しても、
二次無効さえきちんとコントロールで
きれば、60%ぐらいは達成できるよう
ダリムマブでも、そのパワー、効果は
ほぼ同等だという評価になっています。
ただ、インフリキシマブの場合にはマ
せて投与することになりますか。
本谷 点滴と皮下投与、あるいは投
与間隔などについては、患者さんの事
になりました。たいへんよい成績にな
っていると思います。
池田 すばらしい結果ですね。いろ
ウスのアミノ酸配列を25%有するキメ
ラ型抗体ということになり、どうして
も長く使うと抗原性になって、インフ
リキシマブの血中濃度を落とすとか、
情なども加味して使っていくことにな
るかと思います。
池田 二次無効になるということも
うかがったのですけれども、その際は
いろ新しい薬が出てきているとうかが
ったのですけれども、何か新しいバイ
オロジクス、薬物は出てくるでしょう
か。
あるいは新しい膠原病まがいの変化を
きたしてしまうこともあるので、抗原
性を制御することが非常に大事になり
ます。
したがって、インフリキシマブを選
択する場合にはチオプリン系の免疫調
節薬、アザチオプリンですね。それが
使えない方はメルカプトプリン少量な
どのように対処されるのでしょうか。
本谷 現在、インフリキシマブの場
合には通常量、体重1㎏当たり5㎎で
使うところを、10㎎まで増量すること
が健康保険で認められています。一方、
アダリムマブの場合にも、現在は40㎎
を2週間ごとに注射するという維持投
与が行われていますが、つい最近、80
本谷 まだ臨床の現場では抗TNFα
抗体製剤を一生懸命使って病勢をコン
トロールしているのが現状です。二次
無効になって、その対策をしても、言
葉として適切かどうかわかりませんが、
三次無効のようになってしまう患者さ
んがいらっしゃるのも事実です。近い
将来全く作用機序の異なるインターロ
58(58)
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どを併用して、抗原性を制御してきち
んと使っていくことが、長持ちさせる
秘訣になります。長持ちというのは、
ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
として承認されています。日本はまだ
現在、治験が進行中ですので、どうい
う結果になるかわかりませんが、これ
らの薬剤もまた登場してくれれば、患
者さんの選択肢、あるいは我々が使っ
ていく次なる治療の作戦という面では
たいへん心強いものになるかと思いま
す。
池田 あと、局所ステロイドが承認
されるという話をうかがったのですが。
本谷 冒頭にも申し上げました、ス
テロイドをきちんと使わなくてはなら
ない患者さんに使用しづらかった最大
の理由は、全身性のステロイドしかな
かったということです。プレドニゾロ
ンを使うしかなかった。ただ、最近、
回腸末端から右側大腸のほうに、まる
で腸の中に軟膏を塗るような感じで広
がっていくブデソニドが、欧米では昔
から使われていましたが、ようやく日
本でも使えるようになります。これも
たいへん我々にとっては朗報かと思い
ます。
池田 どのように使われるのでしょ
(59)59
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んと行うべきと考えています。
ただ、一方で典型的な縦走潰瘍が小
腸に複数存在する、あるいは大腸であ
㎎を2週間隔で使ってよいというお許
しをいただけましたので、二次無効対
策というところでも非常に治療の深み
イキン12とインターロイキン23に共通
の蛋白を抑えるモノクローナル抗体、
ウステキヌマブが、臨床の現場に出て
っても、非常に幅の広い潰瘍がたくさ
効果減弱、二次無効をなるべく起こさ
んある、あるいは、直腸、肛門にもう
せないということです。
すでに瘻孔をつくるような病変がある、 一方、完全ヒト型抗体、アダリムマ
が出てきたのではないかと思います。
池田 そういう新しい治療が行われ
るようになり、予後はどのようになっ
くる見込みになっています。治験がす
でに終了していますので、クローン病
治療薬としては次なる期待の持てる薬
これに、喫煙者ですとか、若年発症と
いったところを加味して、今申し上げ
たような症例の場合には、できるだけ
早い段階で抗TNFα抗体製剤、インフ
リキシマブ、アダリムマブといったも
ブは、一段と優秀なのでしょうけれど
も、現時点では特に抗原性を制御する
ためにチオプリン製剤と併用するのは、
さほど大きな臨床的意義がないのでは
ないでしょうか。長持ちさせるという
たのでしょうか。
本谷 私どもの病院での経験になり
ますけれども、例えばインフリキシマ
ブを使って8週間ごとの維持投与をし
て、自覚症状がない、CRPも正常で、
剤かと思われます。
欧米ですと、すでにα4β7 のモノク
ローナル抗体、ベドリズマブが治療薬
のを導入するのが、現在のクローン病
治療の流れになっていると思います。
目的であれば、単独使用してもよいの
ではないかという考えになってきてい
内視鏡で見せていただいても病変がほ
ぼ消失してコントロールできていると
池田 現在使われているバイオロジ
クスは、どのように選択されるのでし
ょうか。
本谷 基本的にはクローン病の寛解
導入には、インフリキシマブでも、ア
ます。
池田 インフリキシマブの場合は、
導入して2カ月おきとか、アダリムマ
ブは2週間に1度ということがあるの
で、患者さんのライフスタイルに合わ
いう、昔でいうと夢のような状況の方
は、おおむね1年後で7∼8割ぐらい
達成できています。3年を経過しても、
二次無効さえきちんとコントロールで
きれば、60%ぐらいは達成できるよう
ダリムマブでも、そのパワー、効果は
ほぼ同等だという評価になっています。
ただ、インフリキシマブの場合にはマ
せて投与することになりますか。
本谷 点滴と皮下投与、あるいは投
与間隔などについては、患者さんの事
になりました。たいへんよい成績にな
っていると思います。
池田 すばらしい結果ですね。いろ
ウスのアミノ酸配列を25%有するキメ
ラ型抗体ということになり、どうして
も長く使うと抗原性になって、インフ
リキシマブの血中濃度を落とすとか、
情なども加味して使っていくことにな
るかと思います。
池田 二次無効になるということも
うかがったのですけれども、その際は
いろ新しい薬が出てきているとうかが
ったのですけれども、何か新しいバイ
オロジクス、薬物は出てくるでしょう
か。
あるいは新しい膠原病まがいの変化を
きたしてしまうこともあるので、抗原
性を制御することが非常に大事になり
ます。
したがって、インフリキシマブを選
択する場合にはチオプリン系の免疫調
節薬、アザチオプリンですね。それが
使えない方はメルカプトプリン少量な
どのように対処されるのでしょうか。
本谷 現在、インフリキシマブの場
合には通常量、体重1㎏当たり5㎎で
使うところを、10㎎まで増量すること
が健康保険で認められています。一方、
アダリムマブの場合にも、現在は40㎎
を2週間ごとに注射するという維持投
与が行われていますが、つい最近、80
本谷 まだ臨床の現場では抗TNFα
抗体製剤を一生懸命使って病勢をコン
トロールしているのが現状です。二次
無効になって、その対策をしても、言
葉として適切かどうかわかりませんが、
三次無効のようになってしまう患者さ
んがいらっしゃるのも事実です。近い
将来全く作用機序の異なるインターロ
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どを併用して、抗原性を制御してきち
んと使っていくことが、長持ちさせる
秘訣になります。長持ちというのは、
ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
として承認されています。日本はまだ
現在、治験が進行中ですので、どうい
う結果になるかわかりませんが、これ
らの薬剤もまた登場してくれれば、患
者さんの選択肢、あるいは我々が使っ
ていく次なる治療の作戦という面では
たいへん心強いものになるかと思いま
す。
池田 あと、局所ステロイドが承認
されるという話をうかがったのですが。
本谷 冒頭にも申し上げました、ス
テロイドをきちんと使わなくてはなら
ない患者さんに使用しづらかった最大
の理由は、全身性のステロイドしかな
かったということです。プレドニゾロ
ンを使うしかなかった。ただ、最近、
回腸末端から右側大腸のほうに、まる
で腸の中に軟膏を塗るような感じで広
がっていくブデソニドが、欧米では昔
から使われていましたが、ようやく日
本でも使えるようになります。これも
たいへん我々にとっては朗報かと思い
ます。
池田 どのように使われるのでしょ
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うか。
本谷 経口の薬剤になります。
池田 経口すると、特異的部位で溶
ドはちょっとどうかというような患者
さんにも、もちろん病変の部位は気を
つけなくてはならないのですが、たい
出していくということでしょうか。
本谷 被膜がpHのかげんで割れる
ので、回腸末端で薬剤を放出して、右
へん心強い治療の選択肢になるかと思
います。
池田 新しいドラッグデリバリーシ
側大腸のほうに局所ステロイドを放出
するかたちになります。
池田 患者さんは、ただのめばいい
のですね。
本谷 そうですね。プレドニゾロン
ステムですね。
本谷 そうですね。
池田 すばらしい薬が次々と開発さ
れつつあるということで、将来的に予
後もさらによくなるのでしょうか。
のように全身のステロイドの影響が非
常に少ないという利点を持っています
本谷 そうなっていただきたいとい
うことを願いつつ、日々診療に当たっ
ので、比較的ステロイドの全身副作用
が少ないのが特徴になります。これは
今まで副作用が気になって、ステロイ
ています。
池田 どうもありがとうございまし
た。
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
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ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
レム睡眠行動障害
東京医科大学睡眠学教授
井 上 雄 一
(聞き手 池脇克則)
レム睡眠行動障害の診断方法、治療法についてご教示ください。
<新潟県開業医>
池脇 睡眠に関しては、不眠症と治
療薬で時々質問をいただくのですけれ
ども、レム睡眠行動障害ということで、
レム睡眠の時間帯の行動障害とはどう
いうものなのか、そこから教えてくだ
さい。
井上 レ ム 睡 眠 行 動 障 害、 REMsleep behavior disorder、略してRBD
と呼ぶのですけれども、この疾患概念
まうのです。ですから、夢体験に応じ
て体が動く。悪い夢だったりすると、
暴れたりとか、立ち上がって走ろうと
したりという行動を起こすのです。こ
れがRBDの症状の特徴ですが、だいた
い好発年齢は65歳以上、しかも圧倒的
に男性に多くて、8対1ぐらいといわ
れています。
池脇 高齢の男性ですか。
が確立したのは1986年と比較的新しく、
まだ30年ぐらいです。アメリカで提唱
されたものですが、この病気の特徴は、
レム睡眠期、夢を見る睡眠のときに悪
夢を見て、悪夢に伴って行動してしま
井上 もちろん女性にもありますが、
男性に比べてかなり少ないです。
池脇 レム睡眠のときに夢を見ると
いう点では多分男女の差はないのでし
ょうけれども、通常は動かないはずの
うことです。
通常、レム睡眠というのは筋の緊張
がなくなって、そのためによく金縛り
を起こしたりするのですが、筋の緊張
消失というレム睡眠の特徴が損なわれ
て、レム睡眠のときに筋肉が動いてし
筋肉が、脱抑制するのは男性に多いの
ですね。
井上 そうですね。
池脇 一緒に寝ている方にとっては、
ちょっと厄介な病気ということでしょ
うか。
ドクターサロン61巻1月号(12 . 2016)
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