塗装の汚れ評価方法に関する研究 ~ 屋外暴露試験

平成 29 年 2 月
【WG報告】
塗装の汚れ評価方法に関する研究 ~ 屋外暴露試験
技術研究部会
材料施工専門部会
1.はじめに
外装材の汚れ評価に関するWG
は対象から除外している。
環境問題が注目され、建物の高耐久化が要求
汚れ評価は図1に示すように、「外力側」と
されるようになったことで、外装仕上材等の建
表1
WG参加会社(順不同)
図1
塗装の汚れ評価の考え方
材の耐久性能が向上し、性能評価にかかる時間
がより長くなることが予想される。そこで、比
較的短時間で評価を行うことのできる促進試験
の重要性がより高まってきた。
ここで外装材の「汚れ」に着目してみると、
促進試験方法に関しては、建材試験センター法
1
)
、 土木研究所法
2 )
などが提案されている。
前者については、汚れのメカニズムを忠実に再
現しているが、高価な装置を必要とすることか
ら、あまり実施されていない。また後者につい
ては、方法は簡便であるが、トンネルや透光板
等、土木構造物およびその付帯設備に使用され
る材料を対象としているため、建築系の仕上材
料の評価には適していない。その結果、メーカ
ー各社は独自の試験方法で自社製品を評価して
おり
3
)
、 ユーザーとして同じ土俵で適切な評
価を行うことができないのが実状である。
そ こ で 、 2012 年 7 月 に 、 ( 一 社 ) 日 本 建 設 業
表2
屋外暴露試験の暴露地
連合会では、適切な試験方法を提案すべく、
「外装材の汚れ評価に関するWG」(以下、W
G ) を 立 ち 上 げ 、 表 1 に 示 す 16 社 が 参 加 し て 活
動を行った。
ここでは、WGにおける活動概要、塗装の汚
れ評価の考え方およびそれに基づいて実施した
屋外暴露試験
4 ) ~ 6 )
について報告する。
2.汚れ評価の考え方
まず、汚れの実態を把握するために屋外暴露
試験を 2 年間実施して、そこで得られた知見を
基に、促進試験方法を提案することとした。な
図2
お、藻・カビおよびシーリング汚染は、ここで
暴露地の位置
1
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して汚れの原因となる物質の、地域に固有の特
徴や気象条件(気温、湿度、雨、日射等)と
「抵抗側」として塗料の種類・種別、塗膜物性、
使用部位とに分けて考えることができる。
暴 露 地 と し て は 、 表 2 お よ び 図 2 に 示 す 10 ヵ
所を選定した。
3.屋外暴露試験
3.1
試験方法
本研究では、塗装試験体と標準試験片の 2 種
類を使用した。前者は各種塗装の汚れ具合を、
図3
塗装試験体の形状と屋外暴露方法
表3
塗装の種類
数 字 は 試 験 体 No.
また後者は各暴露地の汚れ程度を調べるための
ものである。
塗装試験体の形状と屋外暴露方法を図3に示
す 。 120 × 400 × 1mm ( 一 部 、 2mm ) の ア ル ミ
ニウム板(アロジン
1000 処 理 ) を 中 央 部 分
( 端 か ら 200mm ) で 折 り 曲 げ 、 汚 れ 付 着 を 観 察
する傾斜部と雨筋汚れを観察する垂直部とを同
時に試験ができるものとした。
用 い た 塗 装 材 料 は 、 表 3 に 示 す 32 種 類 で あ る
( 暴 露 地 ⑦ ~ ⑩ は 、 17 種 類 )。 現 場 塗 装 で 一 般
的に用いられる常温乾燥形塗料について水系、
弱溶剤系、強溶剤系を選定し、それぞれについ
て弾性・硬質の塗膜硬さの違い、樹脂系の違い、
ナフロンが有名。静電気による汚れの付着を考
汎用品と低汚染品を比較できるようにした。ま
慮)の2つの耐候性の高い材質を用いた。
た、工場塗装で用いられる加熱硬化形について
測定は、以下の項目について、暴露経過 1 、
も、溶剤系と粉体の中から代表的な樹脂系等を
3 、 6 、 12 、 18 、 24 ヶ 月 に 行 っ た 。
選定した。
3.2
また、それぞれの地域の塗装試験体は、南向
評価方法
(1)色差(⊿ E*ab )、 明度差(⊿ L* )
き の 専 用 の 暴 露 架 台 に 、 塗 装 面 が 傾 斜 角 45 ° と
45 ° 傾 斜 面 と 垂 直 面 の そ れ ぞ れ の 塗 装 面 に つ
垂直面が表向きとなるように設置した。塗膜の
い て 、 色 彩 測 色 計 ( コ ニ カ ミ ノ ル タ 製 、 CR-400 )
汚 れ 評 価 は 、 南 向 き の 暴 露 で 45 ° 面 傾 斜 部 と
を用い、それぞれ上部・中央部・下部の計5カ
90 ° 面 垂 直 部 に つ い て 評 価 を 行 っ た 。
所を測定した。垂直面について雨筋が認められ
一方、標準試験片としては、磨りガラスおよ
た場合、雨筋部分は3ヵ所、雨筋がない部分は
び PTFE ( フ ッ 化 エ チ レ ン 樹 脂 ま た は ポ リ テ ト ラ
フルオロエチレン。商品名としては、テフロン、
5ヵ所測定し、初期値との差を取り塗装試験体
の ⊿ E*ab と ⊿ L* を 求 め た 。
2
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(2)光沢保持率
45 ° 傾 斜 面 と 垂 直 面 の そ れ ぞ れ に つ い て 、 光
沢 計 ( 村 上 色 彩 技 術 研 究 所 製 、 GMX-101 ) を 用
い、試験面の中央で上部・中央部・下部の計3
ヵ 所 に つ い て 、 60 度 鏡 面 光 沢 を 測 定 し 、 光 沢
保持率を求めた。
4.結
4.1
果
色差と明度差との関係
図4 45 °面の Δ E
*
ab
図4に、 1 ヶ月時において、塗装材料ごとに
求 め た 45 ° 面 の ⊿ E*ab の 最 大 ・ 最 小 ・ 平 均 を 示
す 。 ⊿ E*ab の 平 均 値 は 水 系 塗 料 が 弱 溶 剤 系 、 強
溶剤系、加熱硬化形よりも大きかった。
図 5 に 暴 露 1 ヶ 月 時 の ⊿ L* と ⊿ E*ab と の 関 係
を 示 す 。 ⊿ L* と ⊿ E*ab は ほ ぼ 対 応 す る 関 係 に あ
るが、弱溶剤系と強溶剤系の無機有機ハイブリ
ッ ド は ⊿ L* の 低 い 値 で 材 料 の 黄 変 と 思 わ れ る ⊿
E*ab の 大 き な 値 が 認 め ら れ た 。
4.2
図5
明度差 ( Δ L*) と色差 ( Δ E*ab) との関係
塗装種類による違い
(1)明度差
図6に、 6 ヶ月時において塗装材料ごとに求
め た 45 ° 面 の ⊿ L* の 最 大 ・ 最 小 ・ 平 均 を 示 す 。
水 系 塗 料 の 低 汚 染 品 に つ い て は 、 ⊿ L* が 小 さ
い材料は1品種のみであり、これ以外は汎用品
よ り も ⊿ L* が 大 き く 、 防 汚 性 に 劣 っ て い た 。 弱
溶剤系、強溶剤系、加熱硬化形の低汚染品およ
図6
45°面の明度差 Δ L*
図7
垂直面の明度差 Δ L*
び 加 熱 硬 化 形 の 汎 用 品 は ⊿ L* が 小 さ い 傾 向 に あ
った。
図7に、 6 ヶ月時において塗装材料ごとに求
め た 垂 直 面 の ⊿ L* の 最 大 ・ 最 小 ・ 平 均 を 示 す 。
塗 装 材 料 間 の ⊿ L* の 大 小 関 係 は 45 ° 面 の 結 果 と
同 じ 傾 向 を 示 し た 。 特 に 、 ⊿ L* の 最 大 と 最 小 の
較 差 に つ い て は 、 汎 用 品 の ⊿ L* の 最 大 と 最 小 の
差は大きいのに対し、低汚染品は 2 以内と小さ
かった。
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図 8 お よ び 図 9 に 、 18 ヶ 月 時 に お け る 塗 装 材
(2)光沢保持率
料 ご と の ⊿ L* の 最 大 ・ 最 小 ・ 平 均 を 、 45 ° 面 と
図 10 お よ び 図 11 に 、 6 ヶ 月 時 に お い て 塗 装 材
料 ご と に 求 め た 45 ° 面 と 垂 直 面 の 光 沢 保 持 率 の
垂直面とについてそれぞれ示す。
45 ° 面 に お い て は 、 6 ヶ 月 時 に 比 べ て 全 体 的
最 大 ・ 最 小 ・ 平 均 を 示 す 。 ま た 、 図 12 お よ び 図
に値が小さくなっているのに対して、垂直面に
13 に は 、 18 ヶ 月 に お け る 45 ° 面 と 垂 直 面 の 光 沢
おいては、値が大きくなっている。これは、
保持率の最大・最小・平均を示す。
45 ° 面 に 付 着 し た 汚 れ 物 質 が そ の 後 、 降 雨 に よ
45 ° 面 で は 、 経 時 に と も な っ て 全 体 的 に や や
って流れ落ちて垂直面に移るために、垂直面は
低 下 す る 傾 向 が あ っ た 。 特 に 、 水 系 の No. 1 ~
45 ° 面 よ り も 汚 れ が 遅 れ て 現 れ た と 推 察 さ れ る 。
4 、 強 溶 剤 系 の No.18 ~ 20 で 顕 著 で あ っ た 。
垂直面では、水系塗料の最大と最小の較差が
図8 45°面の明度差(18ヶ月)
図9 垂直面の明度差(18ヶ月)
図10 45°面の光沢保持率(6ヶ月)
図11 垂直面の光沢保持率(6ヶ月)
図12 45°面の光沢保持率(18ヶ月)
図13 垂直面の光沢保持率(18ヶ月)
4
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やや大きいが、平均値の差は小さかった。
さ ら に 、 低 汚 染 品 に つ い て は 、 45 ° 面 の 水
系でやや低下が大きかった。垂直面では低汚
染品と汎用品とで大きな差は見られなかった。
4.3
暴露地による違い
(1)明度差
図 14 お よ び 図 15 に 各 暴 露 地 に お け る 1 ヶ 月 、
3 ヶ 月 、 6 ヶ 月 お よ び 12 ヶ 月 時 の 45 ° 面 お よ
び 垂 直 面 の ⊿ L* の 最 大 ・ 最 小 ・ 平 均 を 示 す 。
図 14
暴 露 地 別 の 45 ° 面 の Δ L*
図 15
暴 露 地 別 の 垂 直 面 の Δ L*
45 ° 面 の ⊿ L* で は 、 す べ て の 暴 露 地 で 暴 露
月数の経過とともに最大と最小の較差は広が
った。その差は暴露地ごとで違う傾向を示し、
暴 露 地 ② 、 ③ 、 ⑤ の ⊿ L* の 較 差 は 大 き く 、 暴
露 地 ① 、 ⑦ お よ び ⑧ の ⊿ L* の 較 差 は 小 さ か っ
た。また、各暴露地で 3 ヶ月または 6 ヶ月を
ピ ー ク と し て ⊿ L* の 平 均 値 は 回 復 す る 傾 向 に
あった。
垂 直 面 の ⊿ L* の 平 均 値 は 45 ° 面 よ り 小 さ く 、
暴露月数の経過とともに最大と最小の較差は
広がり、⊿L * の平均値は3ヶ月以降の変化
が小さかった。
これら各暴露地間の違いは、暴露地ごとの
汚れの付着量に差があることによると考えら
れる。
(2)光沢保持率
図 16 お よ び 図 17 に 、 暴 露 地 ご と の 45 ° 面 お
図 16
暴 露 地 別 の 45 ° 面 の 光 沢 保 持 率
図 17
暴露地別の垂直面の光沢保持率
よび垂直面の光沢保持率の最大・最小・平均
を示す。
45 ° 面 は 垂 直 面 よ り も 光 沢 保 持 率 の 低 下 が
大きかった。
45 ° 面 で は 、 暴 露 地 ⑦ が 際 立 っ て 小 さ か っ
た ( 60 % 前 後 ) の を 除 く と 、 暴 露 地 に よ る 平
均 の 差 は 小 さ く 、 ① ~ ⑥ が 80 % 程 度 を 、 ⑨ と
⑩ は 85 % 程 度 を 示 し た 。
垂 直 面 で は 、 ⑦ が 80 % 程 度 を 示 し た 他 は 、
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90 ~ 100 % と 差 は ほ と ん ど な か っ た 。
(3)暴露地ごとの汚れ方の傾向
各 暴 露 地 の 45 ° 面 の 光 沢 保 持 率 と ⊿ L* と の
関 係 に つ い て 、 図 18 に 示 す 。 (A) は ⊿ L* の 較 差
が 大 き い タ イ プ 〔 暴 露 地 ⑤ 〕 を 、 (B) は 光 沢 保
持率の低下が著 し い タ イ プ 〔 暴露地⑦ 〕 を 、
(C) は ⊿ L* が 小 さ い タ イ プ 〔 暴 露 地 ⑧ 〕 で あ
る 。 暴露月数の経過 と と も に 、 光沢保持率 と
(A) Δ L* の較差が大きいタイプ
⊿ L* と の 関 係 は 一 様 に 広 が る 傾 向 に あ る 。 し
か し 、 各暴露地の広が り 方は同 じ ではな く 、
(A) 〔 ⑤ 〕 の 近 似 線 の 傾 き は 大 き く (0.311) 、 (B)
〔 ⑦ 〕 は 近 似 線 の 傾 き が 小 さ い (0.128) 傾 向 を
示 し た 。 (C)
〔 ⑧ 〕 は ⊿ L* の 値 は 小 さ い が 近
似 線 の 傾 き は 暴 (A) と (B) の 中 間 (0.230) を 示 し た 。
図 19 に 各 暴 露 地 の 45 ° 面 光 沢 保 持 率 と ⊿ L*
と の 関 係 の 近 似 線 の 傾 き お よ び R2 値 を 示 す 。
(B) 光沢保持率の低下が著しいタイプ
近似線の傾 き か ら 、 暴露地⑦ を 除 く と 暴露地
④ 、 ⑥ は 0.20 ~ 0.22 、 暴 露 地 ① 、 ⑧ 、 ⑨ は
0.23 ~ 0.24 、 暴 露 地 ② 、 ③ 、 ⑤ は 0.28 ~ 0.32
と な り 、 暴露地に よ っ て類似の傾向 を 示す と
考え ら れ る 。 こ の こ と は 、 汚れ物質の成分 ま
た は粒度等が共通 し て い る も の と 考 え ら れ る 。
ま た 、 光沢保持率の低下の著 し い暴露地⑦の
近 似 式 の R2 値 (0.8966) は 高 い 傾 向 を 示 し 、 光 沢
(C) Δ L*の較差が小さいタイプ
保 持 率 の 低 下 と ⊿ L* と の 間 に 高 い 相 関 が み ら
図18
れ た 。 45 ° 面 の ⊿ L* と 垂 直 面 の ⊿ L* と の 関 係
光沢保持率とΔ L* との関係
につい ては暴露地間の違いは認め ら れず 、 汚
れ物質の種類 、 汚れ物質の付着状態が影響 し
てい る も の と 考え る 。
5.標準試験片選定のための屋外暴露試験
5.1
試験方法
標 準 試 験 片 は 70 × 150mm で 、 厚 さ は 磨 り ガ
ラ ス 板 が 3mm 、 PTFE 板 が 2mm で あ る 。 磨 り ガ
図19
ラ ス 板は表面で汚れを 定着 さ せ る た め 、 凹凸
面 を 暴 露 面 と し た 。 PTFE 板 は 静 電 気 に よ る 汚
光沢保持率と Δ L* との関係の近似線
の傾きと R2 値
6
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れの付着 を 考慮 し た 。 いずれの標準試験片 も 、
暴露前に中性洗剤で洗浄 し 、 よ く すすぎ 、 乾
燥 さ せて表面の状態 を 調整 し た 。 標準試験片
は塗装試験体の近 く に 、 水平上向 き に暴露 し
た 。 暴露状況の例 を 写真1に示す 。
写真1
5.2
標準試験片の暴露状況
評価方法
暴露 1 、 3 、 6 ヶ 月時に色彩測色計 を 用い 、
標準試験片の特定 さ れた箇所 を 5 ヵ 所測定 し
た 。 なお 、 各々の測定では暴露地 ご と に毎回
同 じ 色 彩 測 色 計 を 用 い た 。 汚 れ 具 合 は ⊿ L* で
整理 し 、 複数箇所の平均値 を 測定値 と し た 。
測色に あ た っ て 、 いずれの標準試験片 も 光 を
透過す る た めに 、 裏面 を 湿 っ た ウ エ ス 等で清
掃 し た上で 、 磨 り ガ ラ ス 板では測定器の白色
校 正 板 を 、 PTFE 板 で は 白 紙 を 2 枚 重 ね に し て
標準試験片の下に敷 き 下地の状態 を 揃 え て 測
(1) 磨りガラス板
色 し た 。 測定後の標準試験片は 、 表面が汚れ
た ま ま 暴露架台に戻 し 暴露 を 継続 し た 。
5.3
結果と考察
磨 り ガ ラ ス 板 と P T F E 板 の ⊿ L* の 変 化 を
図 20 に 示 す 。 全 般 的 に PTFE 板 の ⊿ L* の 低 下 が
大 き く 、 汚れの付着状況が識別 し やすい 。
磨 り ガ ラ ス 板 は 90 日 以 降 で は ⊿ L* の 低 下 割
合が非常に小 さ い も のが多 く 、 暴露地に よ っ
て は横ばい に な る 状態が見 ら れ 、 汚れ物質が
飽和 し て い る よ う に見受け ら れ る 。 磨 り ガ ラ
ス 板の凹凸面で物理的に定着 さ れ る 汚れの特
(2) PTFE 板
性が表われてい る も の と 思われ る 。
図20
磨りガラス板とPTFE板の Δ L* の変化
PTFE 板 は 暴 露 期 間 が 長 く な る に つ れ て ⊿ L*
の低下の割合が小 さ く な る 傾向 を 示す も の も
い る 。 暴露地 ご と に汚れ物質の種類や構成が
あ る が 、 磨 り ガ ラ ス 板ほ ど 明確では な い 。
異な っ て い る こ と が考え ら れ 、 それ ら の付着 ・
定着機構の違いか ら 両者の不整合が生 じ て い
図 20 の (1) と (2) と を 比 べ る と 、 比 較 的 汚 れ が
る と 推察 さ れ る 。
少な めの⑨⑩ 、 中程度の④⑧ 、 多めの①③⑥ 、
さ ら に多め の②⑤⑦ と 暴露地 を 大 ま か に組分
各 暴 露 地 の 磨 り ガ ラ ス 板 と PTFE 板 の ⊿ L* と
け で き る が 、 それぞれの順序が入れ替わ っ て
の相関 を 、 測定時 ご と の原点 を 通 る 回帰直線
7
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平成 29 年 2 月
と 併 せ て 、 図 21 に 示 す 。 図 20 で 見 ら れ た 磨 り
ガ ラ ス 板の汚れ経過の特性が表れてお り 、
比 較 的 汚 れ の 少 な い 暴 露 1 ヶ 月 時 ( 25 ~ 40
日 ) の デ ー タ で は 磨 り ガ ラ ス 板 は PTFE 板 に
比 べ て ⊿ L* が か な り 小 さ く 、 デ ー タ の ば ら
つ き が 大 き め で あ る 。 3 ヶ 月 時 ( 90 ~ 100
日 ) の デ ー タ で は 両 試 験 片 の ⊿ L* に は 良 い
相 関 が 見 ら れ 、 磨 り ガ ラ ス 板 は PTFE 板 の 半
分 程 度 の ⊿ L* で あ る 。 図 20 の 経 時 変 化 の 傾 き
が 小 さ く な る 6 ヶ 月 時 ( 180 日 ) に は 両 者
の関係が再びば ら つ く よ う に な り 、 磨 り ガ ラ
ス 板 の ⊿ L* の 変 化 も 相 対 的 に や や 小 さ く な っ
図 21 磨りガラス板と PTFE 板との Δ L* の相関
た 。
表4
各暴露地の塗装試験板の平均的 な 汚れ具合
塗装試験体の Δ L* の平均値
を 表 す 値 と し て 、 全 塗 装 試 験 板 の ⊿ L* の デ ー
タ を 45° 面 と 垂 直 面 の 区 別 無 く 平 均 し た 値 を
表 4 に 示 す 。 図 21 で 磨 り ガ ラ ス 板 と PTFE 板 で
良い相関性が見 ら れた暴露 3 ヶ 月時につい て 、
暴 露 地 ご と の 塗 装 試 験 板 の 平 均 ⊿ L* と 標 準 試
験 片 の ⊿ L* と の 関 係 を 図 22 に 示 す 。 い ず れ の
標 準 試 験 片 の ⊿ L* も 塗 装 試 験 板 の ⊿ L* 平 均 値
と 相関が見 ら れ 、 塗装試験板に対 し て磨 り ガ
ラ ス 板 は や や 汚 れ に く く 、 PTFE 板 は 汚 れ や す
い と い う 特性が得 ら れた 。 今後 、 塗装の種類
や暴露地 、 汚れ物質等 を 変動因子 と し て詳細
に分析す る こ と で 、 標準試験片の適性が明確
にな る と 考え る 。
図22
塗装試験体と標準試験片の Δ L* の関係
8
一般社団法人 日本建設業連合会
平成 29 年 2 月
6.まとめ
学 術 講 演 梗 概 集 ( 材 料 施 工 )、
pp.845
~ 852 、 2014.9
32 種 類 の 塗 料 を 施 工 し た 塗 装 試 験 体 を 用
5)
い て 、 国 内 10 ヵ 所 に て 屋 外 暴 露 試 験 を 行 っ
小座野ほか:塗装の汚れ評価方法に関
する研究その5~8、日本建築学会学
た 。
術 講 演 梗 概 集 ( 材 料 施 工 )、
その結果 、 以下の知見が得 ら れた 。
pp.875 ~
887 、 2015.9
・ 塗料の種類におけ る 性能差が確認 さ れた 。
6)
・ いずれの塗料 と も 、 汚れは 6 ヶ 月経過 ま
板谷ほか:塗装の汚れ評価方法に関す
で増大 し 、 その後 、 減 る こ と が確認 さ れ
る研究その 1 ~ 2 、
た 。
会
研究発表論文集、
日本建築仕上学
pp.87 ~ 94 、
2014.10.
・ 暴露地別では 、 一部 を 除い て類似 し た 傾
向が見 ら れた 。
・ 暴露地に よ る 汚れの程度 を 調べ る た め に
標準試験片 を 採用 し 、 塗装試験体の汚れ
と の相関が得 ら れた 。
【謝辞】
本研究において、塗装試験体の作製にあ
たっては、日本建築仕上材工業会
技術委
員会のご協力を、また、屋外暴露試験の実
施および測定にあたっては、日本大学生産
工学部建築工学科
永井香織准教授ならび
に研究室の学生諸氏にご協力いただきまし
た。ここに、謝意を表します。
【参考文献】
1)
建 材 試 験 セ ン タ ー 規 格 (JSTM)J 7602:2003
「建築用外壁材料の汚染促進試験方法」
2)
国立研究開発法人
土木研究所:土木
試 験 方 法 ( PWTM - 3 - 2000 pr )
3)
( 社 ) 建築業協会:「ユーザーから見
た 建 築 材 料 の 機 能 ・ 性 能 比 較 」、
2006.12 、
月刊建築仕上技術
4)
板谷ほか:塗装の汚れ評価方法に関す
る研究
その 1 ~ 4 、
日本建築学会
9
一般社団法人 日本建設業連合会