再生可能エネルギーを巡る課題と 京都府南丹市における取組 京都大学名誉教授 IET研究会理事長 環境・エネルギー・農林業研究所代表 南丹市エコタウン推進協議会事務局長 芦田 讓 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 1 中国渤海湾の油田 新潟県岩船沖油・ガス田 3次元物理探査船「資源」 EPR(Energy Profit Ratio:エネルギー利得率) 出力のエネルギー / 入力のエネルギー = 1 (損得なし) > 1 (利益) < 1 (損失) 資源としてあっても、EPRが悪いとエネルギーとし て使われない。その良い例は日本の石炭である。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 2 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 2016年度 買取価格 期間 10kw以上 24円+税 20年間 10kw未満 31円 20年間 工場や集合住宅棟の大型施設 2017/2/11 一般の住宅 10kw未満(ダブル発電) 25円 20年間 太陽光発電とその他の発電の併用 もったいない学会&縮小社会研究会講演 3 再生可能エネルギーの全量買取制度の問題点 ・認定設備の電源構成の9割超が太陽光発電、かつ6割近くが メガソーラーである。 ・認定設備が急速に増加している反面、稼働した設備の比率が低い。 ・高い買取価格で設備認定を取得し、太陽光発電システムの価格の下 落を待って、安く導入することで、高い利潤を得ることが可能である。 ・再生可能エネルギー賦課金の増大:最も高価な太陽光発電が9割 以上占めることから賦課金の増大問題が生じる。 ・将来の買い取り価格の見通しをある程度与えることが必要である。 次年度の買い取り価格について予見できないと、事業者にとって 大きなリスクになる。 ・発送電分離や電力取引を視野に、送電網への実質的な優先接続や 優先給電を実施すべきである。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 4 従来エネルギーと再生可能エネルギーによる社会の違い 〔従来エネルギー〕 高エネルギー密度 〔再生可能エネルギー〕 低エネルギー密度 広く分布・再生可能 低収益 市場 低市場競争力 高収益 地産・地消 輸送コストの削減 2017/2/11 環境メリット 地域経済、地域メリット (地域のための地域のエネルギー) 再生可能エネルギーには国境なし、鉱区なし もったいない学会&縮小社会研究会講演 5 南丹市の概要 南丹市とは 平成26年度 バイオマス産業都市に選定 平成28年2月 南丹市の一部が京都丹波高原国定公園に指定 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 6 バイオエコロジーパークイメージ 各要素の有機的結合が重要 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 7 この中にどんな宝物があるでしょうか? 無いものを求めるのではなく、ある宝物を探そう 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 8 プロバイオティクス農法 南丹市エコタウン構想図 太陽光発電 ヒートポンプ技術 風レンズ風車 熱利用技術 園部町 製造・実験 竹炭・竹酢液・炭素繊維 南丹市 リサイクルプラザ 浄化センター排水監視 ピコ水力発電 2017/2/11 牛糞堆肥・メタンガス製造 間伐材もBTL装置で液体燃料に変換 もったいない学会&縮小社会研究会講演 BDF製造装置:廃食油の 軽油化 REVO 9 乾式バイオマス化プラント(1) 岐阜県から兵庫県までの廃棄物が集積 リサイクルプラザ 焼却施設消防自動車 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 10 バイオエコロジーセンター(1997年) 糞尿・おからを湿式方式でメタン発酵し、発電と堆肥を生成 2基の消化槽、2基のガスホルダー、6基の発電機で、 年間100万kWを発電している。 八木エコロジーセンター メタンガス・堆肥生産 小豆残渣物 おから 堆肥 乳牛・肉牛の糞尿 有機栽培野菜栽培 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 11 乾式バイオマス化プラント(2) 排熱で温室栽培 処理水タンク・メタン製造 焼却補助燃料 廃液タンク・廃油タンク 重機 ガス充てん装置 生ゴミを発酵させメタンガスを製造 2017/2/11 カンポ焼却炉 もったいない学会&縮小社会研究会講演 12 C-FUEL製造プラント(Revo International) 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 13 廃食用油回収BDF精製 京都市から料理店4,000軒、一般家庭2,000軒 から2,000l/日の廃食油を回収。平成26年度 南丹市では2万リッター/年回収し、炭酸ガスの 削減量は2.58kg/ℓ×20,000ℓ≒52トンになる。 ヨーロッパの航空会社に燃料として輸出、 さらに、ヴェトナムでジャトロハを栽培し、BDF を精製している。 100%BDFによる肥料散布 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 14 京丹後市仏主の既存の水車による水力発電 夜間街灯 電気柵 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 15 ピコ水力発電 浄水場からの水で水車を回し、発電 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 16 芦生の森の小水力発電 取水口 水路 芦生山の家 発電機 ・落差6mの旧発電所の 水路を利用 ・出力:1.5kW ・山の家の電気使用量 の1/3を賄っている 2017/2/11 発電所建屋 もったいない学会&縮小社会研究会講演 17 森林資源 自然文化村の河鹿荘 間伐材の活用 チップボイラー建屋 チップ チップ置き場 2017/2/11 貯湯タンク ボイラー もったいない学会&縮小社会研究会講演 18 竹材の資源化 竹炭窯 竹炭工芸品 竹炭・竹酢液製造装置 2017/2/11 竹炭 竹酢液原液と蒸留液 宮崎県の口蹄疫消毒にも使用 竹酢液原液の熟成 もったいない学会&縮小社会研究会講演 炭焼窯 19 瑠璃渓における太陽光発電 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 20 プロバイオティクス農法 ・善玉の乳酸菌、枯草菌、放線菌により農作物を栽培し、 安全・安心でおいしいコメ、野菜類を消費者に供給するこ とを、南丹市で15名の農家の方々と行っている。 ・平成29年度は、栽培面積6町7反(760アール)、収穫量 は30トンを見込んでいる。 ・販売先として、京都の老舗料理店、京都大学生協、南丹 市周辺のゴルフ場や介護施設、京都市内のスーパー、さ らに東京六本木のスーパーや一般の人々に提供してい る。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 21 プロバイオティクス農法取り組み 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 22 YM(高温好気性)菌による下水処理場(佐賀市) 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 23 風力発電 地域対応型小型風力発電装置 九州大学の風力発電装置 1KW・5KW 風レンズ 工場の電源に活用 3,500 W 実測値(1分間平均) 3,000 Cw=1.0(風レンズ風車) 2,500 Cw=0.4(従来風車) 2,000 1,500 1,000 500 0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 ローター周りにダクトを取り付けると、 強い渦が発生し、風車の後ろの気圧 が低下し、低い圧力部に風は吸い 込まれ、ダクト内の風速が1.3~1.5倍 に増速 m/s 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 24 自主防災組織への浄水装置の設置補助 安全な飲料水を造りだす高性能浄水システム 雨水 風呂水 凝集剤 攪拌済 逆浸透膜 クリスタルヴァレー 安全でおいしい水 池水 濁水 防火用水 15ℓ/時(110人分) 8.3kg:25万円 プール 消火栓 河川水 41ℓ/時(333人分) 20kg:150万円 プール水 海水 200ℓ/時(1666人分):淡水 83ℓ/時(666人分):海水 50kg:500万円 汽水域 地球上の水の97.5%は海。淡水は2.5%。しかし、その内7割は南極と北極の氷。我々が使える水は全体の0.01%である。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 25 Innovative Eco-Tech(IET)研究会の4本柱 1.IET熱水洗浄(認定技術) 2.セラミック化チタン(認定技術) 【グースアスファルトの除去】 【新脱塩法+耐塩害性付与】 【低温セラミック化技術】 ①IET熱水洗浄 ②壁面強化用透明塗料 140℃の亜臨界領域の水を使った洗浄方法 洗剤・溶剤不使用で汚れが落ちます。洗浄後②のチタン 水溶液(チタン錯体)を含浸させ耐候性を付与します。 有害な紫外線エネルギーを吸収し、強固なチタンセラミ ックを形成し、建物の経年劣化を抑制し外壁を守ります。 同時に光触媒効果で汚れも抑制します。 3.透明遮熱塗料(認定技術) 4 .熱放散-遮熱塗料 【波長制御nano技術】 ナノガードATO ③ガラス用透明遮熱塗料 【熱-放散・散乱】 【エネルギー形態変換】 (光電 熱電 熱音響) ④屋根用遮熱塗料 (有機塗料) 窓より侵入する有害な紫外線と暑すぎる赤外線を防ぎ、 カーテン・畳・家具のヤケや熱による劣化・変形を防 ぎます。 屋根・壁の熱を独特の熱エネルギー変換機能で、極端 な暑さ・寒さを緩和することで建物の経年劣化を抑制し、 資産価値を守ります。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 (開発中技術) 30 熱水洗浄 After Before 明治村 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 27 地熱発電とは 現在の技術では深さ何千km の地熱エネルギーを利用するこ とはできない。 現在は、降った雨が地下深部 (地下数km深程度)にしみ込み、 地球内部にある高温の岩石で 温められ、軽くなって上昇し(温 められた水を熱水という)、比較 的浅いところ(深さ1~3km程 度)に溜まった場所(地熱貯留 層と呼ぶ)にボーリングを行い、 蒸気あるいは熱水を取り出し、 タービンを回して発電する。 出典:地熱情報研究所 (http://igigeothermal.jp/about.php#1-1)に一部加筆 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 28 世界に冠たる地熱大国 平成31年度に秋田県湯沢市で三菱マテリアル、J-Power, 三菱瓦斯化学が出力5万kWの地熱発電所運転開始。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 29 持続可能・地方分散型社会の実現 宝物を手に入れるには 地元自治体の協力 事業計画策定 住民の認識 企業の協力 事業の予算化・実施 地域の資源 技術 資金 の三位一体に加え 再生可能エネルギーと地方分散型社会の構築の必要性の認識 が必要である。 2017/2/11 もったいない学会&縮小社会研究会講演 30
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