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資生堂、in vivo 共焦点顕微鏡による皮膚内部構造の三次元解析システムを開発
資生堂は、慶応義塾大学と共同で、皮膚の内部を非侵襲的に(皮膚を傷付けることなく)
観察する測定技術の研究を進め、「in vivo(生体内)共焦点顕微鏡」により表皮形状の三次
元解析を行うシステムの開発に成功しました。これにより皮膚を切り取る等傷付けること
なく、生きたままの状態で皮膚内部の微細な構造変化を捉えることが可能になりました。
資生堂は、この技術を活用して紫外線や老化などの影響によって、ヒトの皮膚内部で実
際に起きている変化の研究を進めるとともに、皮膚を健やかに保つスキンケア製品の開発
へ応用を進めていきます。
in vivo 共焦点顕微鏡とは
in vivo 共焦点顕微鏡は、皮膚内部をリアルタイムに細胞レベルで観察することのできる
顕微鏡です。これまで皮膚内部の状態を調べるには、切り取った皮膚を染色して顕微鏡で
観察する手法が主に行われていましたが、皮膚を傷付け、痛みも伴うため、どんな人の皮
膚でも調べるというわけにはいきませんでした。in vivo 共焦点顕微鏡では、焦点面からの
レーザー光の反射を利用して観察を行うため、組織を染色する必要がなく、非侵襲的に皮
膚内部を観察することができます。これまで困難であった顔面皮膚の内部を調べることも
可能になり、皮膚内の細胞形態の観察をはじめ、表皮厚の測定や基底層付近のメラニン分
布状態の観察などを行えるようになりました。
資生堂は、この in vivo 共焦点顕微鏡を 1998 年に国内で最初に導入し、皮膚研究への応
用を図ってきました。
開発の背景と新しい解析システムの開発
皮膚の構造は外側の表皮とその下にある真皮とに分けられます。表皮と真皮の境界には
薄い基底膜が存在し、健康な皮膚を保つのに重要な役割を果たしていることが明らかにな
ってきています。この基底膜を含む表皮と真皮の境界面は必ずしも平坦ではなく、起伏に
とんだ形状をしていることが知られています。
しかし、この表皮-真皮の境界面の形状や、さらに、境界面が三次元的にどのような構
造になっているのかを直接的に調べることはできませんでした。
資生堂では、2001 年から慶応義塾大学理工学部の小澤愼治教授・斉藤英雄助教授と共同
で、in vivo 共焦点顕微鏡により皮膚内部を観察し、さらに画像処理により立体的に可視化
する研究を行いました。
顕微鏡から得られる画像は、皮膚表面に平行な断面となっていますが、焦点の位置を変
化させることにより、任意の深さの皮膚内部像を得ることができます。さらに、自動的に
焦点の位置を変化させながら画像を取得する仕組みを構築することにより、皮膚内部の断
層像が連続して得られます。この連続した断層像を積み上げて画像処理を行うことにより、
皮膚内部構造を立体的に表現することが可能となります。
しかし、表皮―真皮境界面の形状は複雑な構造となっている場合もあり、なかなか従来
の画像処理の手法では精度の高い結果が得られませんでした。様々な方法を検討した結果、
Snakes 法(動的輪郭法 ※1)と呼ばれる画像処理の手法を発展させ三次元に拡張させて
応用したところ、非常に良好な結果が得られることがわかりました。これにより生きたま
まの状態での皮膚の表皮構造が立体的にわかるようになりました(図1)。
表皮構造の可視化を実現したことにより、三次元データとして表皮構造を数値で表現す
ることが可能になり、表皮の厚みの変化や表皮―真皮界面の凹凸の状態をより詳細に解析
することが出来るようになりました。(特許出願済み)
資生堂では、今後この技術を活用して、皮膚に対する紫外線の影響や老化による変化、
化粧品の使用による皮膚内部での変化を調べるなど、生きている状態での皮膚研究をさら
に進め、健康な皮膚を保つスキンケア化粧品の開発を行っていきます。
※1
Snakes 法(動的輪郭法): 画像中の輝度の違いを指標にして、解析したい対象領域の輪郭を滑らか
な境界線になるように解析していく方法。
表皮上面
表皮-真皮境界面
<図 1:表皮構造の 3 次元表示>