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資生堂、男性型脱毛の詳細なメカニズムを遺伝子レベルで解明
~毛 母 細 胞 に死 をもたらす自 殺 酵 素 “カスパーゼ”を究 明 ~
資 生 堂 は、これまで知 られていなかった男 性 型 脱 毛 に関 与 する自 殺 酵 素 の働 きを、遺 伝 子
レベルで解 明 しました。当 社 は、脱 毛 という現 象 について、タンパク質 の一 種 である「TGF‐β2」
が細 胞 死 をもたらす自 殺 酵 素 「カスパーゼ」を活 性 化 し、そのカスパーゼが毛 母 細 胞 を死 (アポ
トーシス)へと導 くことに起 因 しているという事 実 を既 に突 き止 めています。アポトーシスに関 わる
カスパーゼは幾 種 類 もありますが、資 生 堂 はこの度 、男 性 型 脱 毛 では「カスパーゼ3」と「カスパ
ーゼ9」が大 きく関 与 していることを究 明 しました。これによって脱 毛 にいたる詳 細 なメカニズム
が解 明 できました。さらに、「カスパーゼ3、9」の活 性 抑 制 にはユリアニア科 植 物 から抽 出 した
〝クアチャララーテエキス〟が有 効 であることを検 証 しました。今 回 の新 たな研 究 成 果 について
は、2002 年 12月 11~14 日 にパシフィコ横 浜 にて開 催 される第 25 回 日 本 分 子 生 物 学 会 年 会
にて発 表 します。
ヘアサイクルと男 性 型 脱 毛 の特 長
毛 髪 はヘアサイクルと呼 ばれる周 期 的 な生 まれ変 わりを繰 り返 しています。ヘアサイクルは、
(1)毛 髪 の成 長 が続 く【成 長 期 】(5~6 年 )、(2)成 長 が止 まり毛 包 が退 縮 していく【退 行 期 】(2
~3週 間 )、(3)毛 が抜 け落 ちるのを待 つ【休 止 期 】(2~3ヵ月 )、を経 て再 び新 毛 が育 つ成 長
期 へと向 かう 3 段 階 に分 かれます。
資 生 堂 は、男 性 型 脱 毛 の特 長 を下 記 の通 り究 明 しています。
① 毛 髪 の成 長 期 が短 縮 されることにより、毛 髪 が太 くなる前 に成 長 が止 まってしまいうぶ毛
化 するため、髪 が薄 く見 えること(髪 が薄 く見 えるのは、髪 の本 数 でなく髪 の太 さに起 因
すること)
② 成 長 期 から退 行 期 へ移 る際 には、男 性 ホルモンによって産 生 が高 められたタンパク質 の
一 種 「TGF‐β2」がスイッチとなって毛 母 細 胞 のアポトーシスが引 き起 こされること
男 性 型 脱 毛 予 防 への大 切 なアプローチのひとつとして、退 行 期 への早 期 移 行 をくい止 めるこ
とが考 えられます。そのためには、退 行 期 移 行 の詳 細 なメカニズムの解 明 が重 要 ですが、これ
まで、TGF‐β2がどのようにカスパーゼ群 に働 きかけ、どのような経 路 で毛 母 細 胞 をアポトーシ
スに至 らしめるのかは不 明 であり、それらの究 明 が求 められていました。
自 殺 酵 素 〝カスパーゼ〟の解 析
資 生 堂 は、マイクロアレイ(*1)およびリアルタイムPCR(*2)といった、ヒト遺 伝 子 情 報 をフル
に活 用 できる解 析 手 法 を用 いてTGF‐β2が誘 導 するカスパーゼ群 の遺 伝 子 を探 索 しました。
培 養 した毛 包 上 皮 細 胞 を用 い、TGF‐β2の添 加 、無 添 加 で各 々発 現 した遺 伝 子 を比 較 したと
ころ、TGF-β2を添 加 したものでは、「カスパーゼ3」と「カスパーゼ9」の遺 伝 子 の発 現 がそれぞ
れ3倍 程 度 増 加 していることが分 かりました。さらに、TGF‐β2を添 加 して培 養 した毛 包 器 官
培 養 (*3)の組 織 切 片 を染 色 して顕 微 鏡 で観 察 したところ、無 添 加 の培 養 細 胞 の組 織 切 片 で
はほとんど確 認 できなかった自 殺 酵 素 「カスパーゼ3」「カスパーゼ9」が、多 く出 現 していること
を確 認 できました。脱 毛 に関 わるカスパーゼが“3”と“9”であることの解 明 は、世 界 で初 めての
知 見 です。
今 回 の新 知 見 とこれまで多 くの研 究 者 が究 明 してきたアポトーシスに関 する知 見 を合 わせる
と、以 下 のような脱 毛 のメカニズムが構 築 できます。資 生 堂 は、活 性 化 したカスパーゼを特 異
的 に染 める抗 体 等 を用 いて、脱 毛 時 にどのような連 鎖 反 応 が実 際 に起 きているか検 証 をしたと
ころ、この推 論 が正 しいことを実 証 することができました。
TGF-β2発 現
カスパーゼ3がDNase(DNA分 解 酵 素 )を活 性
カスパーゼ3とカスパーゼ9の遺 伝 子 発 現
細 胞 核 の分 解
自 殺 酵 素 カスパーゼ3とカスパーゼ9が増 大
細 胞 死 (アポトーシス)誘 導
カスパーゼ9がカスパーゼ3を活 性 化
そこで、これらのカスパーゼの活 性 を抑 える物 質 を探 索 すべく、500種 類 もの生 薬 を検 討 し
た結 果 、ユリアニア科 植 物 から抽 出 した“クアチャララーテエキス”に高 い活 性 阻 害 効 果 がある
ことを見 出 しました。さらに、毛 包 器 官 培 養 を用 いて、精 製 したクアチャララーテエキスの効 果 を
検 証 したところ、通 常 に比 べて伸 長 期 間 が延 長 し、有 意 に長 く伸 びることが確 認 できました。
我 々は長 年 の育 毛 研 究 から、脱 毛 に至 る経 路 が一 方 方 向 ではなく、一 部 は相 互 に影 響 を
与 え合 い反 応 する結 果 、起 こることを見 出 しています。脱 毛 は多 くの因 子 が複 雑 に作 用 した結
果 であり、脱 毛 を防 ぐには連 鎖 反 応 を多 段 階 で阻 止 することが大 切 なのです。資 生 堂 は、今 後
も脱 毛 のメカニズムの解 明 を深 化 させ、各 段 階 に有 効 に作 用 する効 果 的 な育 毛 剤 の開 発 を積
極 的 に推 進 していきます。
(*1)マイクロアレイ
:異 なった細 胞 や組 織 における遺 伝 子 発 現 の差 異 を簡 便 に検 出 する方 法 。
これまで困 難 だった1万 個 にものぼる多 量 の遺 伝 子 の変 化 を、比 較 的
短 時 間 で解 析 することができる。
(*2)リアルタイムPCR:リアルタイムでかつ定 量 的 に、発 現 している遺 伝 子 を解 析 できる手 法 。
(*3)毛 包 器 官 培 養 :ヒトの毛 包 を培 養 する技 術 。2週 間 ぐらい生 体 と同 じように伸 長 する。